ISOとは何か? この言葉自体は「国際標準化機構」という意味であるが、まあ、
色々な事を決めている団体の事である、この番号系列の中でには、たとえば会社
での品質管理(仕事のやり方や書類の管理の手順や方法)を決めるISO9001とか
言うのもある。
どこぞやの中小企業向けビジネスセミナーでの話・・・
講師「この中でISO9001を取った会社の社長さんはいますか?」
・・・パラパラと10人くらいが手をあげる。
講師「では、その中で、ISOを取って売り上げが上がった会社は?」
・・・シ~ン。
まあ、それはどうでもいい(笑)、ISOはフィルムやデジタルの感度の数字でもある。
ISOは普通は「イソ」と読むが、「アイ・エス・オー」がなお良いし、「アイソ」でもまあ
通じる事もあるだろう。
(追記:sealionさんより、ギリシャ語の語源からすると、「アイソ」が正しいとのこと
なるほど、国際標準化機構のHPにもしっかり書かれている・・・英文だけど・汗)
省略語をローマ字読みにするのは日本の文化であって、たとえばUFO を「ユーフォー」
と言っても国によっては通じないで、「ユー・エフ・オー」と呼ばないとわからない
事もあるので、海外に行った場合などでは、注意すると良い。
その昔のカメラだと、ASA(アサ、アーサー)とか、DIN(ディン)などという
規格もあった、これは、それぞれ米国、(旧西)ドイツの規格であって、ASAは
現在のISOと同じ値である。
(↑ NIKON F3のISO変更ダイヤル。 実際にISOを上げてザラついたわけでは
ないが、粗しレタッチ加工により、画質が低下したイメージを出している)
銀塩フィルムのISOは、デジタルのように1枚1枚変える事はできない。
フィルム1本ごとで丸々決まっている。
★ISOの低いフィルムは、同じ明るさでも、より多くの露光量を必要とする。
だから、普通はシャッター速度が遅くなるか、絞りを開けないとならない。
その代わり、画質が良い(きめ細かくなる)長所を持つ~感度が低い。
★ISOの高いフィルムは、暗いところでも少ない光に感光しやすくなる。
よって、低感度のフィルムよりもシャッター速度を速くしたり、絞りを絞ることが
できる。その代わり画質が多少悪くなる(きめが粗い、ノイズっぽい)~感度が高い。
じゃ、どれくらいのフィルムを低感度といって、どれくらいを高感度というか、
実は、フィルムの品質は、年々進歩しているので、この定義ははっきりしていない。
その昔は、ISO400でも高感度フィルムであったが、今時は、ISO400はごく普通の
標準的な感度である。
まあ、だいたいであるが、ISO50~100が低感度、ISO100~400が中感度、
ISO400~800が高感度、ISO1600~が超高感度、といったところであろうか。
ISO感度の数字が2倍になるというのは、感光する光の量が2倍になると
いうことなので、撮影上では、同じ明るさの場合、以下のいずれかの効果がある。
★シャッター速度を1段早めることができる(例: 1/250秒→1/500秒)
★絞りを1段絞ることができる(例: f8 → f11)
◇ISOが低い低感度フィルムの優位点は、以下の通りである。
①画質が良い
②シャッター速度が遅くなるから
A:スローシャッター効果を出しやすい(動体の撮影、流れの表現、ブラし効果)
B:カメラの最高シャッター速度の制約を免れる
③絞りを開けることができるから、明るい日中でも、同じシャッター速度で被写界深度
を浅くして、背景をボカす効果を出しやすい。
逆に低感度フィルムのデメリットは以下の通りである。
■シャッター速度が遅くなり、ブレやすく、被写界深度の深いパンフォーカス効果が
出しにくい。
■フラッシュ光の到達距離が短くなる。
◇ISOが高い高感度フィルムの優位点は、以下の通りである。
①シャッター速度が速くなるから
A:高速動体を止めて写すのに有利になる
B:手ぶれしにくくなる
②絞りを絞ったパンフォーカス撮影をやりやすい
③フラッシュ光を遠くまで届かすことができる
逆に高感度フィルムのデメリットは以下の通りである。
■明るい場所で絞りを開けると、カメラの最高シャッター速度の制約を受けやすい。
■画質が悪い。
■フィルムの価格が高いものもある。
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ちなみに、私が銀塩(ネガ)で使う場合のフィルムの選択は、以下の通りである。
ISO100=日中用、特に快晴の場合
ISO400=曇天、夕景、室内撮影用
ISO1600=夜景撮影用(注、結婚式や曇天時の動物園望遠レンズというのも有り)
そして、銀塩(ポジ)を使う場合の選択は以下である。
ISO50=(ベルビア)高精彩な風景、花など自然撮影用
ISO100=晴天時の一般撮影、大口径レンズ使用、低速シャッター機使用
ISO200=晴天~曇天時の一般撮影用
ISO400=曇天から夕景までの一般撮影用
増感撮影=夜景用(詳細は後述)
一般の方は、ISOの選択は、その画質とコスト、それからせいぜい天候によって
わけるのであろうが、ネガならともかく、ポジの場合は、さらに、フィルムの種類
によって、発色や絵づくりの傾向が異なるので、さらにフィルムの性質という
要素が加わってくる。
たとえば、ISO400のポジで発色の濃いものはほとんど無いので、そういう派手な
絵づくりをしたかったら、低感度のベルビアやフォルティア、ダイナハイカラー
のようなフィルムを使わざるを得ない。
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そして、匠流には、さらに、そこに使用機材のカメラとレンズの組みあわせによる
要素が非常に重要になる。
たとえば、最高シャッター速度が1/1000秒までの銀塩のマニュアル機にf1.4級大口径
レンズをつけていった場合、ISOが高いフィルムを使うのは厳禁である。
明るい日中で絞りを開けるとすぐにシャッター速度が限界の1/1000秒に達するので、
ISOは、100、あるいは50を使用する。
銀塩コンパクトの場合は、シャッター速度は、1/500秒~1/1000秒であるが、
同時にレンズの開放f値も明るいものでも、f2.8前後であるから、この場合は、
ISO200前後(100も400も可)を用いる。
最高シャッター速度1/2000秒の中高級マニュアル機または、普及AF機を用いる
場合は、取り付けるレンズの開放f値に応じて。
f1.4級=ISO100 f2.0級=ISO200 f2.8以上=ISO400 としている。
最高シャッター速度1/4000秒の高級マニュアル機あるいは中級AF機を用いる場合も
同等にレンズの開放f値に応じて、ISO200またはISO400を用いるが、もはやあまり
問題はなくなってきている。
最高シャッター速度1/8000秒以上の高級AF機を用いる場合は、もうISO400を常時
使っていてもシャッター速度オーバーになる事は無い。
あるいは、夜景撮影をにらんで夕刻からISO1600に詰め替えて使う場合でも、
最高シャッター速度に余裕があるので安心である。
私の場合は、単焦点が中心であるから、f3.5よりも暗いレンズを単独で使う場合は
非常に稀であり、望遠を除きほとんどがf2.8よりも明るいレンズを用いるから、ISOも
同様に落とし気味であり、一般のズームレンズを使う場合は、暗いし、手ブレもしやすい
から、この解説にこだわらずに、ISO400を常用フィルムとしても差し支え無いであろう。
ただし、最近は、f1.4級の明るい単焦点レンズを使うスタイルが、見直されてきていて、
特に中級以上の写真ブロガーの間では「流行」と言っていい程になってきているので、
この考え方は、少なくとも銀塩では必須。また、デジタルでも、感度設定の際の目安に
なるので、是非覚えておいてもらいたい。
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さて、現在の銀塩フィルムはずいぶん進化しているので、ネガ、ポジともにISO400は
もはや常用フィルムであり、ネガであれば、ISO1600の「NATURA」なども、ほとんど
粒状性やノイズも気にならない高性能のフィルムとなって常用が可能である。
ただ、以前のN嬢の話では無いが、夜景撮影でISO1600のフィルムを残したままにして
おき、翌日そのフィルムで、フラッシュを使って撮ったら真っ白になったという事も
あるので注意しなければならない。 ちなみに、フラッシュの到達距離は、フィルムの
ISOを100で割った値のルート倍になるので、√(1600/100)=4倍も届く計算となる。
(注:光の量は16倍になるのだが、面(2次元)で広がるのであるから、到達距離は、
1次元で計算する必要があるので、ルートを取ると考えるとわかりやすい)
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ポジフィルムを使って夜景撮影をする場合などは、「増感撮影」が良いであろう、
これは、たとえば ISO400 のフィルムを2段高いものと設定して撮影する。
2段というのは、4倍(2倍で1段)なので、ISO400→ISO800→ISO1600相当となる。
この結果として、2段速いシャッター速度が得られるので、たとえば夜景撮影で
50mm/f1.4レンズで1/15秒のシャッター速度で手ブレ必至だったのが、
1/15秒→1/30秒→1/60秒となって、手持ちで十分に安全圏となる。
増感撮影をした場合は、現像所で「増感現像」を依頼しなければならない、
これは、現像の方法に多少手を加えて、フィルムの中からより暗い画像を引き出すこと
になる。 多少画質が荒れて、黒い部分(シャドウ)のしまりがなく、ザラザラした
感じになる。 フィルム単位で現像するから、1本のフィルムの途中で感度を変えては
ならない、全部1本丸々増感撮影をして、増感現像しなければならない。
ポジでの増感現像の費用はだいたい200円増しくらいになる。
プロ用あるいは高性能と謳ったポジフィルムは増感現像に強く、2段くらいは平気である。
安価なポジフィルムは通常撮影では差が出ないが、増感現像をすると、
ザラつきがひどくなり、黒が灰色あるいは他の赤系統の色がついてきて締まりが悪くなる。
日中の撮影では、「硬調」の表現になりコントラストが高くなったりする。
ただし、そういう「ザラつきや硬調な表現」も写真の表現技法の1つであるから、
わざと増感に弱いフィルムを使ってそういう表現を好む上級者もいる。
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最近のフィルムのほぼ全てには「DXコード」という銀色のバーコードのような
ものが入っていて、ここ15年くらいのカメラのほぼすべてに装着すると、自動的に
フィルムから感度を読み取って、自分でわざわざフィルムの感度を設定する必要が
なくなっている。
しかしながら、それ以前のカメラには、DXコードの読み取り機構は無いので、
カメラにフィルムを装填した時点で「忘れずにISO感度を手動設定」しなくては
ならない。 これを忘れた場合、フィルム全体が真っ白になったり、真っ黒になったり
するので十分に注意しなければならない。
ただし、ネガの場合には、プラス側に1段、あるいは2段程度間違ったりしても、
(例:ISO200に設定したまま、ISO400のフィルムを入れた)プリント時の
補正で救済されるので、あわてて減感現像(増感の反対)を依頼する必要は無い、
ネガでの増感、減感はポジほどの効果が無いし、そもそもそんなに致命的な結果には
ならないので、間違ってもあわてる必要は無い。
逆に最近のカメラにおいては、DXが自動で働いてしまうから、ポジにおいては
増感撮影がやりにくい場合もある。
こういうときは、カメラのISO設定を手動で増感に設定する必要がある。
たとえば、ISO100のフィルムを2段増感する場合は、ISOを400に手動設定する。
同様に、ISO400を2段増感する場合は、ISOを1600に手動設定する。
3段増感もできないわけではないが、相当画質は荒れるのを覚悟しなければならない。
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ごく稀に、ISO設定ができない普及機あるいは、マニュアル機がある。
こういう場合は、増感撮影の原理(結果)が、シャッター速度2段上げる、あるいは
絞りを2段絞るという事実に是非着目してもらいたい。
これは、すなわち「マイナス2段露出補正をする」という事と同じことなのである。
「えっ? マイナス補正と増感は同じことなのか?」
・・・そう、ここでも、カメラの3要素はピント、絞り、シャッターしか無い事を
もう一度思い出して欲しい、ピントはこの場合関係ないので、ISOを変えるという
事がカメラにもたらす結果としては、絞りやシャッター速度を変えるということと
同じことにほかならない事を是非理解してもらいたい。
けど、2段マイナス補正にしたまま写していたら、2段までしか露出補正が無い
カメラでは、もうそれ以上マイナス補正ができなくなってしまう。
なので、ごく稀に変わった仕様のカメラでは、プラスマイナス5段の露出補正が
できるものがある(例:CONTAX TVS) これは最初は「なんやこれは、こんなに
露出補正したらフィルムのラティチュード(露出変化の許容範囲)を超えて
ぐちゃぐちゃになるのに、設計ミスだな」と笑っていたのであるが、良く考えると
ポジで3段増感現像をした場合に、さらに2段のマイナス補正をしてもピッタリと
収まる仕様となっていた事がわかった。 それを知ると、最大2段の露出補正の
カメラは、ISOの手動変更機能が無いと増感・減感撮影が苦しい事もわかる。
さらに言うと、露出補正をする際に2段まででは足りなくなったときにはどうする
のか? たとえば女性ポートレートで超ハイキー表現(背景が真っ白になるほど
の幻想的な表現)をしたりする場合。(↓ハイキー表現の例)
あるいは、昔の普及カメラで露出補正が付いていない場合などにおいて・・
それぞれISO感度を変更する事で露出補正の代わりになる事がわかると思う。
この場合、ISO感度を1段落すと(例:100→50)プラス1段の露出補正と等価であり、
ISOを1段上げると(例:400→800)マイナス1段の露出補正と同等になる。
これは、ISO感度変更の裏技と言われるものであるが、古いマニュアル機と言って
も、AE(自動露出、すなわち、プログラム、絞り優先、シャッター優先モード)の
ついているものの場合には、効果がわかりやすい。
ちなみに、M(マニュアル)露出機においては、露出計のISOを変えたとしても、
露出計が狂った値を示すだけであるので、そこにさらに絞り値やシャッター速度を
追従させた場合にのみ、初めて露出補正と同等の効果を用いたことになるので、
たとえば、露出計の指針と、現状自分が設定した絞り・シャッター速度のでの
露出値がずれていても(指針と設定値に差があっても)その時点では露出補正の
効果は出ていないので注意する必要がある、これは、ややこしいのであるが、
中上級者は冷静に考えれば簡単にわかることであろう。 初級者は、混乱する
恐れがあるので、M露出モードでのISO変更はやらない方が望ましい。
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さて、ISO(銀塩編)のまとめである。
★フィルムそれぞれにISOが決まっている
★ISOの高い高感度フィルム、低い低感度フィルムにはそれぞれ長所短所がある
★天候や被写体、使用機材などの条件に応じて、使うフィルムのISOを決める
★(ポジでは)増感(減感)撮影ができる、その場合には、増感(減感)現像をする
★DXコードがあって、最近のカメラではISOは自動設定される
★古いカメラでは、ISO設定を忘れると致命的になる場合もある
★ISOの変更は、露出補正と等価である(M露出時は操作に注意する)
次回は、デジタルカメラでのISOについて説明しよう。)