第八回:「琵琶湖ドラゴンボート大会 200mスプリント・競技開始!」(その1)
数回に渡り連載中の「ドラゴンボート」特集
第八回は、9/18に行われた琵琶湖大会のレポート「その1」である。
・・・むう、何だこの設備は・・・
大会公式カメラマンとして、7時半に会場入りした私が見たものは、琵琶湖競艇場の凄い
映像設備とクーラーや多数の売店のある巨大な競艇観戦施設である。
超巨大なテレビスクリーンには、常時あらゆる角度からのドラゴンのレースの模様が映し
出されている。
・・・これは、いままでのドラゴンボートの試合とは環境が全然違うなあ・・・
開会式前、8時を回ったところで、一旦外に張りかけていた各チームのテントも全部屋内の
観戦施設に引き上げ・・・さて、今までの酷暑の環境とは違うこの状況が、レースの結果
に微妙な影響を及ぼすのだろうか? しかし、まあ、それはそれ、私は今日も外の暑い中で
写真を撮るだけである。 暑さがなければ、ドラゴンの「熱さ」を写真に表現することは
できないだろう。 もちろん無理は禁物であるがレースや選手と一体にならなければ
良い写真を撮ることはできない。
----
8時半、開会式がはじまった・・ いきなり「ブラックシャドウズ」の選手宣誓で「噛んで」
一同大爆笑であるが、これもまたドラゴンボートの和気藹々とした雰囲気を盛り上げる
のに良かった。今日の参加は38チーム。1000人ほどの参加者皆の緊張が一瞬で
ほぐれた、今日もきっと楽しいイベントになるであろう・・・
ブロガーの人達も沢山集まってきた、地元琵琶湖のkayo さんをはじめ、さこやん、
ビワハマさん、平社員さん、razuさん、HIDEさん・・ フォトコンの噂を聞いた
地元らしきカメラマンの人達も来ている。 さあ、皆さんはフォトコンに向けて頑張って
バシバシ撮ってもらいたい。
私の方は、正規のアシスタントが、ドラゴン撮影ベテランの若きM嬢。
そして、前回関空大会でドラゴンを撮影したU嬢が今回も自由参加で写真を撮りに来ている。
彼女らはそれぞれ軽快な中型一眼レフ2台に各レンズ1本の装備である。
丸一日の撮影が義務づけらている上に酷暑、おまけに女性であるので、装備的にはそれで
良い・・・ 私も同様に軽量デジタル一眼2台にそれぞれ広角ズームと望遠ズーム。
そしてGR21である。
銀塩のU嬢は、α-7には私と同じ安価で高性能なTAMRON 200-400を今日は
持ってきているようだ、女性が1日振り回すにはしんどいだろうから、途中でこまめに
休憩するように言ってやらないとな・・なにせU嬢はいつでも黙ってたらいくらでも写真を
撮リ続けているほど熱心だから・・・
----
開会式直後のイベントで梅花女子大のチアリーディングがはじまった。
その数40名くらいか・・・ 3段のピラミッドの一番上からさらに空中回転をする
華麗なパフォーマンス、さすがに全国でも有名なチームである、その高度で完璧な演技に
皆引き込まれていた。。
チアガールの写真は残念ながらここには載せられない、元々そういう申し合わせだし、
もちろん肖像権もある。 個々に交渉してOKであれば可能であるが、それは
まずは滋賀県ドラゴンボート協会とチアガール部との話し合いによる。
---
さて、レースがはじまった、予選はまあ、皆全力で漕ぐことも無いであろう、
最初から飛ばしすぎると、準決勝や決勝までもたない。。 そのへんは駆け引きである。
初戦は、いきなり混合レース優勝候補の「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」である。
琵琶湖kayoさんが先日練習にお邪魔して、すっかりメンバーと打ち解けているので
今回も体当たり突撃取材である。 出走準備に入ると凄い速さで引き返してきて、
ゴール地点で望遠を構えて待っている。
そうそう・・・自分もあたかもレースに参加しているような気持ちで写真を撮る、
それが一番いんですよ・・・ kayoさんの今回の写真はきっと凄いんだろうなあ・・
ジャンジャン・・ドラが鳴る。 喚声と太鼓の音、掛け声・・・
レースがはじまった、200mは短距離なので50秒ほどで勝負が決まる。
スタートの失敗や漕ぎ手と太鼓(鼓手)のリズムの乱れは致命的である。
地元琵琶湖チーム速い、速い・・・グングンスピードに乗っている。
・・琵琶湖ドラゴンボートクラブは堂々の予選1位通過。 当初2位まで予選通過だと
勘違いしていたので、2位までで入るだろうと思っていたのだが、予選突破は1位のみで
あった、だからまあ、順当な勝ち上がりではあるのだが、ずいぶん差が開いての1位
だったと思う、ちょっと速過ぎなかったか? 地元の声援で力が入ったのか。。
まあ、きっと高度な作戦があるのだろうと思うので、それは見ている方も、次のレースでの
楽しみになってくる。
----
午前中は日差しがキツイ。 そして、琵琶湖の西側に面する競艇場は午前中はモロに
東からの太陽を受けて水面は逆光になってしまう。
陸上の逆光の選手達を撮る場合はまだ昼間でもフラッシュを用いる「日中シンクロ」も
使えるが、日中シンクロは、カメラ内蔵フラッシュではシャッター速度に限界があり、
ISO感度を下げて絞り込まないとならない、その状態では背景をボカしたショットを
撮る事ができなくなるので、構図上、背景の選択は重要である。
また、絞込み過ぎて、カメラのフラッシュのGN(ガイドナンバー)を絞りで割った
値がISO100の時に撮影距離(m)を上回るとフラッシュが到達しない。
具体的には、GN=11で絞り11ならば、ISO100だとフラッシュは1mしか届かない、
ISO200にすれば1.4m、ISO400で2.0m届くが、この場合今度は、絞りf11での露出が
カメラのシンクロ速度(中級機で1/125秒~1/200秒程度)を上回ると、背景が真っ白に
露出オーバーになってしまう。(注:本来はもっと速いシャッター速度で撮らなければ
ならないのに、カメラのシンクロ速度の限界までしかシャッター速度が上がらない為)
「じゃあ、そんな時は具体的にどうするんだ?」
・・・ISO100で絞り11で背景がオーバーしないのであれば、GN=11のカメラだったら、
撮影距離を1m以内に設定して日中シンクロをすれば良い。
そのために足で前後して1mの位置に立ち、そこから標準ズームで構図を設定するのである。
このため、絞り環があってかつ開放f値が変動するズームだと難しい。
現代のダイヤル設定式のカメラであれば絞り込んだ状態であれば絞り値はズーミングでは
変化しないので大丈夫であるが、開放近くではそれも変動してしまうので苦しい。
カメラやレンズの性能や原理をよく理解していないと、たかが日中シンクロと言えども
上手く撮れないことになる。 暗算しながら撮る必要があるので、逆に計算が容易な
撮影条件を意識しながら撮るのが良い。 少々難しいがそれは物理的にしかたがない、
それを理解しなければ、偶然はもとよりカメラまかせでも絶対に撮れない。
「しかし、遠方のドラゴンボートを逆光で撮るにはどうしたら良いのだ?」
そう、100mも200mも先のボートを望遠レンズで捕らえるならば、当然フラッシュは
届かずに使用できない。 だから露出補正をプラスにして対応する。
ドラゴンボートの面積が大きければスポット測光も可能であるが、被写体の速度と揺れから
考えて、たとえ地上からの撮影でもスポットは無理であろう。 だから、露出補正を適宜
かけておくしかない。 その値は、今回は +2/3段前後であった、光線の状況や角度に
応じて +1/3段から +1.3段程度まで変化するのであるが、そこまで細かい調整は
撮り直しのきかない被写体ではもう無理である。
そして、露出補正をプラスにすると絞り優先ではシャッター速度が低下する。
この時に、望遠レンズの35mm換算焦点距離分の1秒、のシャッター速度を下回ると
手ぶれが酷くなる可能性がある。 しかし今日の条件では、ISO200でも、1/1000秒前後
のシャッター速度が切れたので、手すりに腕を乗せて撮影をすれば、三脚を使う必要は無い。
というか、三脚を立てると1レースにたった1回しか撮影チャンスが無くなるのでそもそも
使う事はできない。 手持ちで自由なアングルで、1レース内でも様々な角度から
ボートを、あるいは陸上で応援するチームメートの様子を捕らえて何枚も撮影をする。
----
さて、午前の予選の間にも色々なチームの取材にも回っていかなければならない、
下手をすると予選敗退で帰ってしまうチームも出てくる。
・・お、そこにいるのは、「ドラゴンSUI SUI」のキョンキョンではないか。
パドルネームというのがあって、これは、まあ、ブログで言うハンドルネーム、つまり
ニックネームである。 恭子さんだから、キョンキョンである。
長くドラゴンボートを撮影していたら、色々知った顔も増えてくる。
では、ちょっとインタビューといきますか。
・・・「キョンキョン、前回は休んでたみたいだけど、今回はどう?練習できた?」
「はい、バッチリですよ。 でも、うちのチームは40歳以上のシニアが主力になって
きているので若手が少ないんですよ」
・・・「そうだね、同じ大阪なら、バナナ、未来、浪わ、あたりが凄く伸びているよ、
SUI SUI も少し若手補充してがんばらないとなあ」
・・・じゃあ、ちょっと写真1枚とらせてね。 カシャ。
・・・うん、いつもながら可愛いねえ、じゃ、キョンキョンの魅力で若手補充してね!
「あはは、がんばりま~す」
----
関西圏でドラゴンボートが盛んな地区は、まず第一に相生、ここは、古くからドラゴン
ボートの親戚競技である「ペーロン」のレースが盛んであり、ドラゴンでも数多くの
強豪チームを生み出している。
そして、関空、和歌山地区である。 こちらも毎年行われている和歌山大会や
昨年からはじまった関空大会で、ドラゴンレースが盛んである。関空を中心とした
新チームも恒例化されたことで今後戦力を補強していくであろう。
大阪・阪神地区も、天神大会(大川)をベースに、多くの古豪チームがある。
大阪・阪神の各チームは、現在若手の戦力補強に余念が無く、若手が加わって
練習量もパワーも増加しているチームが伸びてきている。
そして、ここ地元琵琶湖・京都地区である。環境に恵まれ非常に沢山の種類の
ボートレースが行われている。
最近のTVでも女子ボートチームが琵琶湖に行く事を合言葉に苦しい練習をするという、
人気ドラマがあった。いわばボートの甲子園であり、ドラゴンボートも今回の第一回
琵琶湖大会を機に、ますますの盛り上がりを見せることであろう。
----
さて、今回の大会のポイントは、5つのクラスそれぞれの見所があることである。
1)中学クラス
その、ボートがさかんな琵琶湖周辺を中心とした3チームが出場、超若手であるが、
将来のドラゴン界を担って活躍する選手がこの中から出てくるのであろうか?
キャピキャピの女子中学生チームは見ているだけで楽しくなり、写真を撮ると言うと
一瞬でキャ~っと群がってくるので、オジサンカメラマンはなかなか大変なのである(汗)
2)シニアクラス
琵琶湖ドラゴンのシニアチーム、SUI SUI のシニアチームなどに加えて、今回から
有名な熟女チーム「こいさんず」もシニアに参加するとのことで旋風を巻き起こす
ことであろう。 タイムは出ないだろうが百戦錬磨の各チームの駆け引きが見所。
3)女子クラス
今回は、常勝の「河童」をストップできるチームは現れるのであろうか?
天神大会までは、超強力なライバルチーム「スーパードルフィン」が対抗していたが、
今は相生地区は女子も色々新たなチーム編成をしていると聞く。
4)混合クラス
混合で常勝の「陸(くが)ペーロン」が世界を目指して次の段階に進むために
先の関空大会からオープンクラスに出場しはじめた。 今回地元出場の「琵琶湖ドラゴン
ボートクラブ」に優勝の期待がかかる。 そしてここのところ急速に力をつけている
大阪地区の「未来」や「バナナ」がどこまで食い込めるか、彼らの初表彰台はあるのだ
ろうか? 注目のクラスである。
5)オープンクラス
関空で優勝の「磯風漕友会」は今回は、新たなチーム編成で「ワンピース」に混ざって
出場。 「陸(くが)」はオープンで優勝を目指す。 そして今回から新規参加の
「立命館カヌー部」さて、新規の琵琶湖・京都勢力は新たな風を吹き入れるのだろうか?
カヌーからドラゴンにパドルを持ち替えたその実力はいかに・・ 最大注目である。
----
予選は続いているが、注目の「未来」の出走である。 関空ではほんの数秒差で表彰台
を逃したのであるが、今回はいかに・・・
・・・むう、なんか今回は気合が入っているなあ。
協会の幹部の方が近づいて来て耳打ちする「未来はここのところ頑張っているよ・・・」
予選スタート、案の定未来は、予選をトップで勝ち抜け・・・ふむ、なかなか強い。
----
「うわ~!」 出走待ちの場所のあたりで喚声があがる。
どうしたと駆けつけると、相生看護学校チーム「相看」の屈強な若者と、中学生男子
チームの体の大きな子が相撲を取り始めた。
別に喧嘩をしているわけではないから、誰も止めるわけも無い。
やんや、やんやの喝采で、水入り直前の好勝負であった。
力が有り余っている若者達の熱い祭典、様々なところでハプニングが起こるから楽しい。
午前の予選は順調に進み、各自めいめいに昼食を取る、ブロガー・フォトコンチームは
暑さで少々へばり気味である。
うん、それもそうだろう、ブロガーチームは機材が超重量級なのである。
まあ、遠距離のボートを捕らえるのをメインに考えたら、大口径超望遠レンズや
それに見合うボディ、あるいはスナップ用のサブ機までもが必須と考えるのが当然の
選択なのであろうが、8時間の長丁場の撮影である事を忘れてはいけない。
できるだけ軽量な装備で決勝の盛り上がりに備えて体力を温存しなければならない。
レースをやっている選手達と同様に撮影する方も作戦があるのである。
クーラーの効いた観覧席で足に根が生えてしまったブロガーチームに檄をとばす
・・・「さあ、ぼちぼち準決勝で盛り上ってくるから、存分に撮ってな!」
写真もまたスポーツである、大会の一員として自ら参加していかないと面白くない。
空調の効いた観覧席からの窓越しの撮影では、まさに、そこには「温度差」と「壁」が
ある事になってしまう。
暑い日ざしの中で選手達と一緒に汗をかきながらの撮影、それが、スポーツ撮影の醍醐味、
ブロガー写真チームもその事が分かったようだった。午後からは、あちらこちらで選手達に
話しかけて写真を撮らせてもらって、汗びっしょりになって自らも楽しんで撮影している
ようであった・・
そして、レースはますます白熱した後半戦に向けて1000名を超える参加者は盛り上がって
いった。。 (琵琶湖大会レポート「
その2」に続く)
【関連記事参照】
ドラゴンボート記事 第5回
「関西国際空港大会(1) 誇り(ホコリ)ある勝利」
ドラゴンボート記事 第6回
「関西国際空港大会(2) 熱闘そして飛翔!」
★琵琶湖kayoさんのドラゴン関連記事
★さこやんのドラゴン関連記事
★平社員さんのドラゴン関連記事
★ビワハマさんのドラゴン関連記事
★razuさんのドラゴン関連記事
★HIDEさんのドラゴン関連記事