コストパフォーマンスに優れるレンズをカテゴリー別に紹介する
シリーズ記事。今回第2回目はMF(マニュアル・フォーカス)の
標準レンズ編だ。なお、#1というのは、MF標準カテゴリーは
対象となるレンズ数が多い為、2回に分けて紹介する為だ。
まず、最初のシステム、

カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-GX7
レンズは、MINOLTA MCロッコール PF55mm/f1.7
(中古購入価格 3,000円)
ミラーレス・マニアックス第51回記事で紹介した、
1960~70年代のMF小口径標準レンズ。
約50年前の時代のレンズとなると「オールドレンズ」とも
言えるだろう。
しかし、本レンズの写りは決して「オールド」では無い。
実は、ミラーレス・マニアックス名玉編第2回記事で、
11位にノミネートされたランキングレンズなのだが、
その11位には極めて近いスペックのMC50mm/f1.7が
存在していて被った為、本レンズはランキング対象外となり、
名玉編では紹介できなかった訳だ。

さて、初級中級ユーザーは「オールドレンズ」と言うと、
「酷い写りである」と誤解している人が極めて多い。
また、その誤解を助長するように「オールドレンズ写真集」
とか言った類の書籍等では、わざわざ露出オーバーやアンダー
あるいはゴーストやフレア、収差の強調、軽いピンボケなど、
そうした「あえて酷い写りになるような技法」を多用している
ケースが殆どだ。
まあそれはそうだ、「オールドレンズで撮る」と言いながら、
現代のレンズと同等かそれ以上の描写力を持つ所を見せたら、
そのコンセプトやテーマとしての面白味がなくなってしまう。
さらに、ひねくれた見方をすれば、現代の最新鋭の高価な
レンズが、50年前の数千円のレンズに負ける場合もある事実を
多くのユーザーが知ってしまったら、レンズ市場そのものの
価値感覚が崩壊してしまうであろう。
あくまで公式には「新しく高いレンズは良く写る、安かったり
古かったりのレンズは写りが悪い」という常識(価値観)を
一般ユーザーに持ってもらわないと、世の中のレンズ販売の
ビジネス論理が成り立たない。
さて、まあそれは「大人の事情」として理解していただこう。
本シリーズ記事では、あくまで、取り上げたレンズの優れた
コスパを紹介していくまでだ。
ちなみに本レンズは、3000円の価格だが、これはちょっと
悪いタイミングで買ったからで、現代においては本レンズは、
より安価な相場で見つかる事もあるだろう。
まあ、概ね1000~2000円が買い頃だと思う。
外観がボロボロの古いレンズだが、性能的には申し分が無い、
特に良い点は、解像感に優れる事だ。
小口径タイプであり、当時の同社製大口径標準ラインナップ
との差別化を行うために、描写の味付けも変えているのかも
知れない、つまり、こちらをシャープネス中心に設計した
という事だ。
具体的には同時代のMC50/1.4(ミラーレス第44回記事)
MC58/1.2(同46回、補足編1)、MC58/1.4(同65回)
といった大口径版では柔らかなボケ質重視の設計として、
本MC55/1.7やMC50/1.7(同35回、名玉編第2回)とは
あえて異なる特性を持たせたのだろうという推測だ。

まあ、大きな弱点は見られないレンズである、絞り値による
描写特性や解像感にもあまり変化はなく、ボケ質破綻も
絞り値設定で回避するだけで十分だ。
逆光耐性は高くなく、フレアっぽいが、これはこの時代の
レンズを使う上では必ず回避しなくてはならない点だ。
フレアが出ても、その、なすがままの状態で使っていたら、
冒頭に述べた「オールドレンズの弱点ばかり強調している」
ような撮り方と同じになってしまう。
それはそれで、オールドらしさを求めるのには1つの考え方
なのかもしれないが、そんなレンズまかせの受動的な撮り方
ばかりしていて「オールドには味がある」等と、もっとも
らしい感想を言ってはならないと思う。
オールドでも、ちゃんと性能を引き出せば、現代のレンズに
勝るとも劣らないのだ。

本レンズ、MINOLTA MCロッコール PF55mm/f1.7は、
ハイコスパレンズの代表格とも言えるレンズであろう。
ミラーレス・マニアックスのシリーズ記事での数百本もの
新旧レンズ群の中から、第11位相当にノミネートされた実力は
決してあなどれない。
----
さて、次のシステム

カメラは、SONY NEX-7
レンズは、YASHICA ML50mm/f1.4
(中古購入価格 8,000円)
ミラーレス・マニアックス第25回記事で紹介した
1970年代後半の京セラ・コンタックスRTS系一眼用の
MF大口径標準レンズだ。
同一メーカーの同一マウントの同一スペックのレンズで、
CONTAX RTS プラナー50mm/f1.4が存在する
(ミラーレス第22回記事)
両者はレンズ構成も若干異なるが、最大の差異は、
片方には、CONTAXという超強力なブランドネームがあり、
方や、ヤシカにはその神通力が少ない事だ。
銀塩時代の初級中級ユーザーであれば、CONTAXのブランド
バリュー(価値)は圧倒的だ、その名前だけで、しかも
「プラナー」であるから、当然良く写る高級(=高価な)
レンズだと思い込んでしまってもやむを得ない。

しかし、過去の当該記事等を読んでもらってもわかるが
RTS プラナー50mm/f1.4と、ML50mm/f1.4の性能差は、
どっちが良いとも悪いとも言えない状況なのだ。
こういう状態だと、初級中級ユーザーからは必ず質問が出る
「どっちの方が良いレンズなのですか?」
あるいは、もう少しちゃんとした質問であれば
「高いレンズの方を買う価値(意味)があるのですか?」
・・まあ、比較したがる気持ちは良くわかる。
けど、その答えは簡単ではない、撮影条件によって、
あるいは撮影表現の意図によって、どちらが良いかは
ケースバイケースだからだ。
だから、初級中級ユーザーだからそういう質問をするという
のは、実は逆だ。
上級ユーザーであれば、レンズの良し悪しは一概には言えない
事がわかっているから、そういう無意味な質問はしない。
それに、CONTAXとヤシカを比較したがるのは、同じメーカーの
製品だからであって、それもあくまで、30年も40年も昔の話だ。
現代から見れば、どちらも、とっくの昔に生産中止の
オールドレンズであり、加えて、今は、それらのレンズを
そのまま装着できるデジタルのボディ(カメラ)は存在せず、
どっちの中古を買っても、若干の値段差以外に、真剣に悩む
要素など、どこにも無い。
どちらも、あくまで、星の数ほどある中古MF標準レンズの
1本でしかない、そしてCONTAX P50/1.4が、本シリーズ記事に
ノミネートされず、ML50/1.4が選ばれた事で、コスパという概念
からは本レンズに軍配が上がった事は想像に難くないであろう。
まあ、それでも「どう違うんだ」という疑問点は残るであろう。
しかたが無い、この2本のレンズはどうしても比較されてしまう
運命にある。
例えば、初級中級ユーザーが両レンズで撮影した場合だが、
「CONTAX P50/1.4は、数十枚に1枚程度しか、ズバリと決まった
写真は撮れないであろう、けど、決まった時の描写力は凄い。
ML50/1.4は、多くの確率で、そこそこの写真が撮れると思うが、、
飛びぬけて凄いという描写の写真は無いかも知れない」
つまり、ML50/1.4で安定したヒットを狙うのか?
P50/1.4で、まぐれ当たり的なホームランを狙うのか?という
差だ。
けど、強打者(上級者)となれば、ML50/1.4で確実にヒットを
狙いつつも上手く当たってホームランとなる事もあるだろうし
P50/1.4でホームラン狙いとしながら、長打、または犠牲フライ
という「結果」を出すようにも出来るかも知れない。

ML50/1.4おいては、ホームランすなわち、解像度が良く、かつ
ボケ質も良い、という状況を得るのはやや難しい。
けど、少なくとも絞りを開け気味で良好なボケ質を得る事は、
さほど難しくないレンズだ。そこで同時にシャープネスを得る
為には絞りを中間程度まで絞らなくてはならない、その最適な
バランスを得るのは被写体状況によりけりだ。
このあたりの「美味しいバランス」の幅、というか懐の深さが
あるのが、ML50/1.4の魅力だ。
P50/1.4は、そのバランスの幅がピーキーという特性がある、
つまり、滅多な事では、そこにハマらない、という事だ。
そして価格の問題がある、ML50/1.4は、8000円という安価な
購入価格であったが、現在P50/1.4は、3万円台前半という
価格にまで高騰してしまっている。(私が1990年代に購入した
際には19000円だった)まあ、ブランドのイメージだけが一人
歩きして相場が高騰した悪い例であろう、P50/1.4は1975年に
発売された、かなり古い設計の「昔のレンズ」でしかない。

で、コスパという観点では、ML50/1.4は、最強とは言わない
までも、かなり良い部類である。それ故に、本シリーズ記事で
紹介する運びになっている訳だ。
このコスパという点においては、P50/1.4は、比較の対象にすら
ならないのだ。
そして、マニアックさも、ML50/1.4が遥かに勝っている。
----
さて、次のシステム

カメラは、PANASONIC LUMIX DMC-G6
レンズは、COSINA 55mm/f1.2
(新品購入価格 17,000円)
ミラーレス・マニアックス第30回記事で紹介した、1980年代の
MF大口径標準レンズ。
当時のCOSINA製のMFレンズは、各種マウント対応で販売する
事が普通であったが、本レンズのみPENTAX Kマウント版しか
流通していなかった。大口径レンズ故に後玉の径も大きく、
マウント形状で設計上の制約が生じたのであろうか?
当時のCOSINAは他社にOEMでレンズやカメラボディを供給する
メーカーであった。別の言い方をすれば、有名メーカーの製品
であっても、COSINA製である事も多々あった訳だ。
現代では、いわゆる「ブランド信奉」はかなり薄れてきたが、
20世紀の当時は、「有名メーカーの製品でなくちゃ嫌だ」
というユーザー層が、カメラにおいては勿論、その他の様々な
製品分野においても、ごく普通に存在していた。

COSINAは、各社から製造を(時には設計も)まかされる位の
メーカーなので技術力は非常に高かった。しかし、そういう
ブランド信奉の時代であるから、カメラ店に「コシナ」の
レンズが置いてあっても、いったい誰が興味を持つだろうか?
皆が、ニコンやキヤノン等の名前がついたレンズを欲しがるに
決まっていた。
そして、他メーカーのOEM製品である場合、高い定価をつける
ことができる。だから、有名メーカー製品であれば、それが
コシナで作っていようがなかろうが、良い材料を使ったりして
高品質な製品を作る事が可能であった訳だ。
まあ、現代においても同様で、有名メーカー製レンズは、
手ブレ補正や超音波モーター等の機能を入れて、結果的に
恐ろしく高価なレンズとなってしまっている事が多々ある。
これは、別の言い方をすれば「付加価値」ではあるが、
一部のユーザーにとってみれば、自分には不要な機能が入って
いるせいで価格が高くなるのは、たまったものではない。
ただ、国内一眼レフ市場は、現代では縮小傾向が続いている。
メーカーとしては、高価な(=利益の大きい)製品を売らないと
ビジネスそのものが成り立たなくなってしまう。
で、私としても、デジタル初期の2000年代前半のように、
いくつものカメラメーカーが市場から撤退してしまうような
事は、もう起こって欲しくない。各カメラメーカーには
ちゃんと儲けて貰ってビジネスを継続してもらいたい訳だ。
だからまあ、あまり本質のわかっていない初級ユーザー等に
高価すぎるカメラやレンズを買っていただいて、市場を支えて
もらうしか無い訳なのだが・・
そうした状況もあるからか?現代におけるカメラやレンズに
関する一般的な”情報”(雑誌やWEB記事など)では、
「高いものは、やはり良い」という結論になるように、
全てコントロールされてしまっている様子も垣間見える。
2000年代後半以降、機器の弱点をズバリ書いてしまうような
辛口批評は、公的なメディアにおいては無くなってしまった。
ある意味、なんとも面白みの無い時代のようにも思う・・

さて、COSINAであるが、1980年代から1990年代には
ブランド力が無い(知名度が低い)為、OEM製品はさておき
自社ブランド製品は、新品であっても定価の7割引とかの、
とんでもない安値で売られていた。勿論これは最初から
定価で売るつもりは毛頭なく、あくまで定価はダミーである。
つまり、それくらいの値引率が無いと、誰もCOSINA製品に
興味を持たない状況であったのだ。
本レンズ55mm/f1.2も、確か定価は5万円程度だったと思う。
実売価格は14800円~17800円であった、勿論新品価格だ。
よって、その実売価格に見合った製造コストで作られている、
つまり、相当に安価に作っているものである、という事だ。
そのあたりの理由で、性能的に少々見劣りする部分もあるが、
こうした事情を知った上で、問題点を回避しながら使う必要が
あるレンズだ、という事も言える。
まずは長所だが、f1.2という大口径である事だ。
当時であっても、f1.2標準レンズは各社でも存在していたが、
いずれも、かなり高価であった。ビギナー層が、おいそれと
買えるレンズでは無かったとも言えるだろう。
ただ、私も1980年代前後のf1.2級標準は、後に中古で何本も
購入し、ミラーレスマニアックス記事でも何度か紹介して
いるが、いずれも、価格に見合う高性能なレンズという
訳ではなかった。どちからと言うと、大口径にする為に
設計に無理をしたレンズである、という印象が強い。
この時代のf1.2級標準は、現代の中古市場でも高値で取引
されている、で、大口径なので欲しくなるのはやむを得ない
(私も、そう思って購入した)しかし、性能には期待できず、
「コスパ」が最も悪い類のレンズである事は、よく認識して、
覚悟して購入する必要がある。
本レンズも同様、確かにf1.2の大口径は被写界深度の浅さ、
つまりボケ表現能力に優れるが、あいにく最短撮影距離が
60cmと長い。前記事AF標準編でも数値をあげたが、最短が
長い大口径標準は、意外にも被写界深度を浅く取れない。
また、暗所でも撮影が出来るという長所は、ISO感度が
100~400程度のフィルム時代であれば有利だったが、
現代のデジタル時代は、高感度性能は青天井である。
ISO感度数万程度を使えば、大口径レンズでなくても暗所での
撮影は自在な訳だ。

本COSINA55/1.2の短所であるが、まず極端にフレアっぽい
描写をする事がある、これは絞りを絞ってもあまり回避できず、
被写体の光線状況を慎重に判断して撮影をする必要がある。
また、絞り開放近くでは諸収差により、解像度が低下して
描写が甘い、ここについても、その特性を良く理解した上で
被写体や撮影設定を選ぶ必要がある。
加えてボケ質破綻も発生する、これも回避の必要があるだろう。
すなわち、本レンズでは、どんな被写体条件においても、
優れた描写力が得られる訳では無いのだ。それを良く意識し
様々な課題を回避して、やっと、まともに撮影ができる。
しかし、その際での、55mm/f1.2の高級レンズ並みの仕様が
僅かに1万円台の新品価格で得られる事は大きな魅力である。
結局、これは、上級マニア向けレンズと言えよう・・
----
さて、今回ラストのシステム

カメラは、FUJIFILM X-E1
レンズは、PENTAX SMC Takumar 55mm/f1.8
(中古購入価格 3,000円)
ミラーレス・マニアックス第40回記事で紹介した、
1960~1970年代のPENTAX M42マウント一眼レフ用の
安価なMF小口径標準レンズ。
恐らくは膨大な生産本数があったと思われ、安価に入手でき、
しかも写りが良い事から、中上級マニアで本レンズを所有して
いない人を探す方が難しいかも知れない。

1990年代後半の第一次中古カメラ(レンズ)ブームにおいては、
初級マニアの間で「銀のタクマー」と呼ばれていたレンズだ。
ただ「金」(SMCT 50/1.4)と「銀」の価格差が大きかったのは
当時か、それ以前の時代の話であり、現代においては、どちら
の標準タクマーも、かなり安価な相場で中古購入できる。
私の中古購入価格3000円は、実は1990年代以降に、何度か
本レンズを買った中での最高値で、最も程度が良いものだ。
それ以降も何度か本レンズを購入しているが、いずれも
1000円~3000円程度であり、友人に「良く写るレンズ」として
譲渡したりしていた。
現代においても入手性は良く、およそどんな中古カメラ店に
行っても入手可能であろう。
本レンズの弱点は殆ど無い、わずかにホケ質破綻が出る場合が
あるが、回避は容易だ、また、逆光耐性も高く、当時の「SMC」
というコーディングが、相当にエポックメイキング的な技術で
あった事だろうと思われる。

総合的には、優秀なレンズであり、コスパは最高クラスである
と言える。
ミラーレス・マニアックスにも良く書いたが、大口径標準と
小口径標準を比べた場合、たいてい小口径標準の方が良く写る
という感覚がある。
実際に50mm/f1.4級と50mm/f1.7級のレンズを解像度チャート
等を用いて撮り比べると、概ね各々のレンズでの、開放から
f4あたりまでは小口径(f1.7)の方が解像力が高い。
そしてf5.6程度より絞ると両者あまり差が無くなる。
銀塩時代から、同一マウントで大口径標準と小口径標準の
両者を保有しているような中上級マニアの間で良く言われて
いたのは
「大口径は(絞り)を開けて、小口径は絞って使え」
という事であった。
この事は「描写表現力」の面から言えば、何ら疑問が無い。
だって、せっかくf1.4やf1.2の大口径レンズを使っている訳だ
それを絞って使ったら、レンズの特徴が失われてしまう。
けど「描写性能」の面からすると、実は逆なのだ。
同一の撮影シチュエーションで両レンズを使い分けるとすれば、
大口径レンズは絞って、小口径レンズは絞りを開けて使った
方が、解像力等の描写性能面では相対的には有利になる。
だが勿論、「描写力」というのは、単なる解像度や収差等の
数値的なスペックだけで語れるものでは無い。
そういう数値スペックだけを追ってレンズの性能を評価する
ユーザーが現代でも依然多いのだが、その理由は、昔から
カメラ誌等でのレンズ評価、あるいはレンズのカタログ等では、
解像力やMTF特性等しか載っていないからだ。
そりゃあまあ、Aというレンズが解像力 80ラインペア/mmで
Bというレンズが、100ラインペア/mmだ、という数値が
出れば、Bのレンズが良いだろう事は、誰にでもわかる。
けど、Aのレンズの方がボケ質が優れていたらどうだろうか?
「じゃあ、Aは、Bより、”何ボケ”高いのだ?」
と、ビギナーは数値のスペックで聞きたがるかも知れない、
でも、それは勿論、感覚性能だから、何ボケという数字を出す
訳には行かない。
だから、そうした「感覚性能」は、雑誌の評価やカタログでは
一切出てこない、あくまで買ってみないとわからないのだ。
おまけに、感覚性能で重要なボケ質に関しては、さらに厄介な
問題がある。「ボケ量」であれば、被写界深度等である程度
定量的に測れるのだが「ボケ質」は、測りようがないし、
加えて「ボケ質破綻」も発生する。
「ボケ質破綻」は、本ブログでは毎回のように出てきている
用語・内容なので詳細は割愛するが、その発生条件は特定
できず、また、再現性が極めて困難だ。
だから、マニア等が「このレンズはボケ質が悪い」と言ったと
しても、いったい、それが、どんな条件で発生したのかが
見当がつかない。
そして、ボケ質破綻の回避技法を使っていたかどうかも不明だ。
最も簡単なボケ質破綻の回避は、絞り値を色々変えて撮って
みることだ、それだけではカバーできないケースも多いのだが
それ以上のレベルとなると実際には奥が深く高難易度だ。
したがって、「このレンズはボケ質が悪い」という他人の
評価は、そのまま信用する訳にはいかない。そのレンズを
適正な撮影条件のもとで、自分で納得がいくまで使い込んで、
かつ、撮影条件を変えながら多数の実写を行って、その上で
やっとレンズのボケ質を評価するしかない。
おまけに、ボケ質破綻回避技法は、高性能なミラーレス機で
絞り込み(実絞り)測光で使った状態でしか使えない。
一眼レフでは、まずわからないのだ。

という事で、レンズの評価は、単純に数値スペックだけでは
良し悪しを判定できない上、撮影条件でレンズ性能は変わって
しまい、正当な評価は極めて難しい。
そもそも「価格の高いレンズであれば、高性能である」
という図式すら成り立たない世界なのだ。
特定条件において良く写るレンズあっても、他の条件あるいは
作画意図において、そうでない事すら多々ある。
最もシンプルな例を上げれば、「ピント面の解像度がやたら
高くくっきりシャープに写るが、ボケ質が極めて汚い」
といった類のレンズだ。
平面被写体を、あくまで被写体の主体性を中心に撮るので
あれば、それでも良いが、ボケの中に浮き上がらせるような
意図で撮影する際とか、背景のボケの中に、副次的な主題
(サブテーマ)が存在するような意図を狙った写真等では、
そうしたレンズ特性では困ってしまう。
で、このような特性のレンズは概ね現代の高価なズームレンズ
や銀塩時代のMF単焦点レンズ等で多く、すなわち報道写真等で
「被写体の主体性のみが重要視される」ケースで威力を発揮
するレンズという訳だ。
業務上の撮影であれば、そういう特性は大きな長所となる事
だろう。被写体がくっきり写っていなければ、商売にならない
からだ。
だが、趣味の撮影、またはアート撮影ではどうか? 様々な
被写体状況や表現力を持たせた意図を持つ場合、まったく別の
特性を持つレンズの価値が高くなるという事になる。
近年のSIGMAでは、SportsやArtという製品カテゴリーを設け、
そうした特性が、一般ユーザーにもわかりやすくなっている。
けど、そうしたカテゴリーが無くとも、元々それぞれのレンズ
には、多かれ少なかれ、そうした特徴が存在していたのだ。
この事実は「コスパ」を決める上でも、かなり関連性が高い、
私が、私の求める特徴において「コスパ」を決めたとしても、
他の人が別の要素やニーズにおいて、同じレンズを同様な
「コスパ」だとは決めれない訳だ。
だが、そうやって「じゃあ、永久に決まらない」としては
記事の主旨が成り立たなくなってしまう。
私は私なりの観点で「コスパ」を評価し、本シリーズ記事を
書いている訳だ、そこは読む人によっては、その人の趣旨や
指向と異なる点が出てきたとしても、やむを得ないと思う。
結局「コスパ」とはそういう類の概念であると言えよう。
----
さて、今回はこのあたりまでで、
ちなみに、本記事では、全てのカメラボディはミラーレス機
となっているが、これはたまたまで、本シリーズでは、ボディ
の種類は問わず、一眼レフとミラーレス機を適宜使用する。
なお、レンズの価格に対してボディの価格が高くなりすぎで
突出する「オフサイド」は、本ブログでは本来は「反則」
として禁止しているのだが、本シリーズではレンズの価格が
飛びぬけて安価となるので、そのルールは無視する事とする。
次回シリーズ記事に続く・・