2016年7月24日(日)、滋賀県高島市・近江今津にて行われた
第25回記念びわ湖高島ペーロン大会の模様より、前編。
本大会は四半世紀もの長い歴史を誇るペーロン大会である。
だが、他地区で行われているドラゴンボートやペーロン大会との
類似点はあまり多く無い。例えば艇は上写真のように他の地区の
どの艇とも違う全長10m強の本大会専用の艇である。
また、クルーは、漕手15人、指揮、ドラ、舵手の計18名、
この他に、艇には乗れない(陸上待機)の監督1名が必須だ。
レギュレーションは、ターン有りの300m往復,計600m戦だ。
この点については、百年の伝統を誇る「相生ペーロン競漕」の
ルールと同じであり、それを参考にしていると思われる。
タイムアウト制があり、その時間は6分間だ、6分の間に600mの
コースを往復してゴールしないと失格となる。
ちなみに「相生ペーロン競漕」では、同大会連覇中のペーロン&
ドラゴンボートの超強豪チーム「磯風漕友会」は、その600mmを
3分を切るタイムで漕ぎきる。
本大会では、初期は異なるタイプの艇でレースを行っていたと聞くが
現在の艇になってからは、昨年2015年にドラゴン専業チーム
「池の里Lakers!」の樹立した3分23秒が最速だったと思う。
現在使用しているFRP製専用艇は計8艇あり、4艇づつを交互に
用いる。よって、4艘建てのレースを基本とする。
さて、本大会は非常にユニークな大会だ、その理由は追い追い説明
していくことにする。
まあ、本ブログのドラゴン・ペーロン大会観戦記事の読者であれば
ご存知だと思うが、年末に特集している総集編「ベスト大会編」に
おいて、2014年第1位、2015年第3位となったのが本大会である。
つまり、それだけの魅力がある大会という事だ。
だが、他地区の人気大会と同一日程で被りやすい事と、
ドラゴンボート日本選手権大会の翌週に行われる事で、これまで、
あまりドラゴンの選手達には知られていなかった大会ではある。
しかし、数年前より滋賀県の強豪ドラゴン専業チームである
「小寺製作所」「池の里Lakers!」が本大会に参戦し始め、
本大会の、その驚愕の内容とユニークな面白さが、ドラゴン界にも
だんだん知られるようになってきた次第である。
私も非常に楽しみにしていた大会である。
本大会は、JR新快速停車駅である湖西線の近江今津駅より
徒歩10分程度の琵琶湖畔で行われる。
早朝、JR近江今津駅に降り立つ。昼間であれば湖西線新快速が、
京都はおろか大阪、神戸方面まで直通で走っているのだが、
開会式に間に合うようにするには、朝早くは京都からの普通列車
しか走っていないので、観戦の場合は、その点要注意だ。
(まあ、選手達は前泊で前日練習や観光をしていると思うが)
JR近江今津駅には、ペーロン艇の縮小模型が飾ってある、
本日は大会の日であるので、勿論その案内ポスターも置かれている。
大会会場近辺には露天の飲食店がいくつか出るので、昼食等の
飲食には困らないと思うが、必要とあれば駅前にコンビニもあるので、
そこで何か買ってから会場に向かうのも良いであろう。
---
さて、この大会の何がユニークなのか?という点を上げるが、
まず最初に説明しておかなければならない事は・・それは、
「あらゆるアクシデントが起こる、極めてデンジャラスな大会」
である、という事だと思う。
本大会専用ペーロン艇の操船が極めて難しい為、蛇行、スピンは
もとより、衝突、転覆、舵の破損、クルーの落水等のアクシデント
が日常茶飯事的に起こるのだ。
写真は全て本年(2016年)の模様、早速転覆による沈没が発生
した。自力での復帰は困難であるので、こうなると3艇の救助艇が
すぐにかけつけ、クルー達の救助が行われる。
このような事はドラゴンボートの大会ではあまり起こらない、まあ
あったとしても、艇同士の軽い接触程度であろう。
詳しく述べれば、転覆あるいは沈没というのはドラゴンボート大会でも
起こった事がある。でも、それには理由があって、ビギナーチームが
優勝の喜びでクルーが皆、立ち上がってしまって転覆した事が一件。
強風による高波で艇に浸水して、そのままゆっくり水没した事が
4件である、私がここ十数年間に100以上ものドラゴン関連大会
での5000を超えるレースを見てきた中で、たったそれだけだ。
確率的には、高く見て5000分の5で、およそ0.1%だ。
衝突は、まあ無い事は無いが、私が見ている範囲ではこれも
5件以下だったと思う。
それを合わせても、僅かに0.2%の事件発生率だ。
ところが本大会は、毎年平均20数レースの中で、少なくとも5回
以上は衝突や転覆が起こる、その確率およそ 20%!
通常のドラゴン大会よりも100倍もデンジャラスな大会なのだ(汗)
また1チーム蛇行し、吸い寄せられるように隣のレーンの艇への
衝突コースに乗る・・(汗)
チーム名は書かないが地元の常連チームで、しかも、かなり操船が
上手い。私が昨年見た中ではトップクラスのターンの上手さを
誇っていたチームだ。しかし、そんなベテランであっても本専用
ペーロン艇の扱いは難しい、ほんのちょっとしたミスや気の緩みで、
「琵琶湖の魔女の囁き」に引き寄せられてしまう。
先に「監督は艇に乗れない」と書いたが、監督の役目は、
転覆や落水などでちりじりに陸に戻って来たクルーの「安否確認」
をする事が役目なのだ!これは誇張では無く、真面目な話であり、
こうした状況の中では当然の措置だ。
でも、危険だから・・という選手や関係者の声は一切聞こえてこない。
まあ、各地のお祭りなどでも、これよりもっと危険なイベントは
星の数もほどある、本大会で怪我をした人は、私が見ているこの
3年間では無い。むしろ地元のお祭り的要素の大きいイベントと
しては、安全な類ではなかろうか?
心配そうにチームの様子を見守るのは、「笑美(WARABI)」チーム
の女性監督さん。
実は昨年から知っている。初参加だったろうか?とても目だっていた
チームだ。でも、昨年はその理由やチーム名を記事には書かなかった。
まだチームの人達と話もしていなかったし、あまり誇れる目立ち方でも
なかったからだ。
昨年の本大会で「WARABI」は、1mも進めなかった。
普通のドラゴンボートの選手達にその話をすると、
選「え~? 何で? 漕いだら前に進めるでしょう?」
と聞き返されるのだが、話はそう単純では無いのだ。
匠「いや、ちょっとは進むんですよ、でもすぐに曲がってしまって、
そのままゴールに戻って、さらにゴールを超えて反対向きに
進んでしまう。正しい方向に戻そうと悪戦苦闘しても、
その場でくるくるとスピンするだけ。そのうち6分間が経過して
タイムアウト、記録無しの失格です・・」
選「ひょえ~、そんなに難しい艇なんですか?(汗)」
だが、今年、それを見かねた2014年の覇者「小寺製作所」が、
「WARABI」に事前特訓を行ったとのことだ。
笑「小寺さん、なかなか厳しくて・・」
匠「いや、見た目は怖いですが(笑)優しい人ですよ」
猛特訓が効いたのか、予選レース「WARABI」は、前に進んだ!!
匠「ほら、監督さん、見て! 前に進んでますよ、凄いなあ・・」
監「はい、ちゃんと進んでますね! 進んだ、進んだ!涙」
まるで”クララが立った”時のような感動だ!
フラフラ、ヨタヨタと頼りないし、とても遅いが、ともかく前に
進んでいる、後は無事完走できるかどうかだ、なにせ、仮に真っ直ぐ
進めたとしても、最難関のターンが待っている(汗)
行きの300mをおよそ2分半かかって進んだ、このあたりは私の感覚
なので、正確さは無いかも知れない。「WARABI」がターンに入る。
匠「ここです、ここでちゃんと曲がれるかどうか?」
監「キャー・・・ 頑張って~」
「WARABI」の美人監督さんは写真に撮られるのはちょっと嫌がって
いたので後姿だけの登場なのだが、その声援が届いたのかどうか、
「WARABI」は、だいぶコースを膨らみ、ヨタヨタしながらも無事
ターンを終える、この時点で時間は3分強というところか・・?
匠「あとは6分以内に戻ってこれるかどうかです、完走できたら
素晴らしい結果です。曲がらなければ時間内にゴールできると
思います。」
監「あ、また、曲がった・・・」
ヨタヨタしながら約5分を経過、このあたりで、解説の放送席も
残り時間を気にしてカウントダウンを始める。
解説は毎年同じ男女コンビ、男性は芸人さんで、女性の出自は
良く知らないが、MCの喋りがとても上手な方だ。
で、いつも、ボケ・ツッコミ系の、笑いを誘うようなコミカルで
ユルい解説を身上としていて、専門的な部分の解説は何も無い。
だが、実際のところ、解説を毎年やっていて、ペーロンを知らない
筈もなさそうだ、たぶん、知っていても、わざとボケて解説して
いるのであろう、まあ、芸人の性(さが)という事であろうか・・
解「さあ、今5分40秒です、時間内にゴールできるか?」
「WARABI」は、ゴールまであと数十m、なんとかぎりぎりセーフ
という感じだろうか・・・
こちらが「笑美(WARABI)」のクルーの人達。
匠「5分55秒でした、ぎりぎりセーフでしたね、完走おめでとう
ございます」
笑「いや~昨年1歩も前に進めなかったので、この結果は満足です」
匠「そうでしたね、良く覚えております(笑)
ところで、皆さん、京都からですか?」
笑「いや、京都だけでもなくて、大阪とか奈良とかからも・・
友達の友達とか、まあ寄せ集めですね」
ふうむ、例えば今日参加している大津市の「小寺製作所」は企業の
チームだし、「池の里」は、大津市の町内会チームだ、いずれも
はっきりとしチームの出自がある。
だが、寄り合い所帯のチームというのも他に無い訳ではない。
例えば、今年本大会に初参戦している、滋賀のドラゴン専業チーム
「龍人(どらんちゅ)」もそれだ。
「龍人」は、もう10年近くの間、滋賀県近隣の各大会で見ていて
匠「龍人さんは、なんの集まりですか?」
と何度も聞いた事があるのだが、そのたびに
龍「いや、色々ですよ、友達とか、仕事関連とか・・」
と、詳しく教えてくれる事は無い(汗)
でも、何故かそれ以上聞けないんだよね(それ以上聞くと、何だか
ヤバそうで怖い・笑)
まあ「WARABI」も、仕事もバラバラだし、外国人の選手
(英会話の講師だそうだ)も混じっているのだが、それ以上は
聞きそびれてしまった。
せっかく完走できたのだ、また次のレースでも頑張って頂きたい
と思う。
さて、ここ高島ペーロンの、もう1つの魅力だが、風光明媚な
土地柄である。この点については、毎年の本大会の観戦記事で
伝えているので、繰り返しになるので割愛するが、まあともかく
良い所だ。
私としては、「都会の喧騒を離れた夏休みの避暑地」という
イメージを持っている。気温も大阪や京都より少し低いし、
水もとても綺麗だ。
---
本大会だが、今年25回という節目を迎え、レギュレーションが
少し変わっている。
昨年までの実力別2カテゴリー制は、本大会では廃され、
ノンカテゴリーで42の参加チームが競う状態になっている。
何故そうなったかは、実は詳しく知らされていない、まあでも、
節目の記念大会であるが故の措置であろう。
四半世紀もの長い歴史の大会であるから、レギュレーションが
変わる事はあるだろう、時代は必ず変化していくからだ。
そういう中での、1つの試みであったのかも知れない。
だが、正直言うと、私は、ドラゴン・ペーロン大会は
実力別カテゴリー制を推進するべきだと常々思っている。
その理由は、いわゆる「ドラゴン専業チーム」と私が呼んでいる
極めてモチベーションの高い専門的チームがいくつも出てきており、
その実力値が一般のビギナーチームと大きく差が開いているからだ。
本大会においても、ここ2年間の優勝チームは、2014年が
「小寺」、2015年が「池の里」であり、いずれも高島市から見れば
市外のドラゴン専業チームだ。
他地区大会においても同様、例えば大津市の「びわこペーロン」
では、6~7年前より他地区のドラゴン専業チームがエントリーを
始めていて、現在では、従来のカテゴリー分けでは地元のビギナー
チームが勝てる可能性はゼロとなってしまった。
ぶっちゃけ言って、現在の「専業チーム」と、地元ビギナーチーム
との実力差は天と地ほどもある、これらを同じ土俵で戦わせようと
するのは無理があり、実力別のカテゴリー分けは必須である。
ドラゴンボートにおいても、歴史の新しい大会は、いずれも
そうした方向性に、ここ2~3年、急速に方向転換してきている。
しかし歴史の長い大会は、なかなか急に舵を切ることはできない。
ちなみに、本大会の専用ペーロン艇は、舵の効きが鈍く、
舵を切ってもすぐには曲がらない、おかしいと思って、さらに舵を
当てると、急に効きだし、いわゆる「オーバーステア」状態と
なって、蛇行やスピンをしてしまうのだと聞く。
まあ、それと同様に、歴史の長い大会で急にカテゴリー分け等の
レギュレーションを見直すのは難しいかも知れない、急に舵を
切ったらオーバーステアになって、混乱してしまうかも知れない
からだ。
だが、まあゆっくりでも良いから、各大会は、必ず実力別
カテゴリー分け、あるいはハンデ戦とするのが必須であると思う。
まあ、世界を見れば、依然、男女混合、シニア、女子、オープン
といった、レガシー(伝統的)なカテゴリー分けなので、国内でも
同じにするべき、という意見はあるかも知れないのだが、それは
世界を目指すチームは、当然そうすれば良いのだが、そうでない
大多数(95%以上)のビギナー・中堅チームは、世界を目指す事が
目標ではないのだ。そうした中で、ドラゴンやペーロンの門戸を
広げ、新しいチームをどんどん増やし、育ていく上では、
「絶対に勝ち目の無い戦い」などを最初からやらせる事は、
あってはならないと思う。
日本選手権大会に、かつてフラリと参戦し、翌年から来なくなった
チームがいかに多い事か。それは記録を調べてみれば容易にわかる
事であろう、彼等ビギナーチームは「場違いな場所に来てしまった」
と考え、2度とドラゴンをやらなくなってしまった訳だ。
まあでも日本選手権はそれでも良い、レベルを高くすることが
その大会の存在意義の1つでもあるからだ。
だが、「高島ペーロン」や「びわこペーロン」はどうであろうか?
少なくとも実力別カテゴリー分けを維持あるいは実践していく
必要はあると思う。
余談が長くなった、ノンカテゴリー制となった本大会であるが、
本大会には、1つユニークなイベントが併設されている。
それが「優勝チーム予想投票」制度である。
こちらがそれ、投票箱が設置されいる。
現在「池の里Lakers!」の選手達が皆投票している模様だ。
このイベントには昨年ちょっと複雑な思い出がある。
私は昨年、これまで本大会での優勝が無かった「池の里」を推して
投票した。その結果、予想は見事的中し「池の里」が本大会初優勝
となった。閉会式後に、正解者の中から抽選で賞品が当たるのだ。
私以外に「池の里」の優勝を予想した人は居ないと思っていたが、
他に1名おった模様で、その方は抽選に当たり賞品をゲット、
賞品は他に3つもあり、必ず当たると確信したが、他の3つは、
いずれも「池の里」の選手達が自チームへ投票し、抽選で総取り
していったのだ。
私は、ちょっと冗談交じりで「池の里」に、
匠「ずるいなあ、自チームへの投票は無しにするべきだ」
と言ったが、それは後の祭り。
まあ、どうしても賞品が欲しいという訳ではないのだ(笑)
私はドラゴンやペーロンには詳しい、と自負しているので、
単に優勝を当てたいだけなのだ。で、その証拠あるいは副産物と
しての賞品な訳だ。観戦記事のネタになるか?とも思っていた。
まあなので全く気に病んではいない。
匠「さあて、今年は何処に投票しようかな?」
正直に言えば、選択肢は5つしかない。
と言うか、ドラゴン専業チームは5チームしか参戦していないからだ。
うち2チームは大津市出身で、既にこの大会に数年連続出場している
「小寺製作所」(2014年優勝)、「池の里Lakers!」(2015年優勝)
「小寺」は堅実かつターンが上手い、「池の里」は直線が速いが
ターンは若干苦手である。(上写真は「小寺製作所)
それと、次は地元強豪「松陽台」(2013年他、多数優勝、上写真)
こちらは元々本大会をホームとするチームであったのだが、
2014年頃から、滋賀を中心に各ドラゴンボートの大会にも参戦
するようになった、つまり、ドラゴン専業チームとしての仲間入り
を果たした事となる。
「松陽台」の長所は、その戦績と、それにともなう決勝慣れ、
あるいは本ペーロン大会自身への慣れから来る経験値の高さと
安定感がある、まあ、タイムこそ他の専業チームには数秒程度
遅れるが、ミスが少ない安定感は評価したいところだ。
----
今年から新規参戦の専業チームは2つある。
1つは、滋賀県大津市の「龍人(どらんちゅ)」である、
直線は「池の里」と同等に速い、だが初出場で操船が困難な
ペーロン艇だ、果たしてどうなのか?曲がれるのか?
上写真が「龍人」だ。
予選レース前に「龍人」のテントに寄って話しを聞く。
匠「どうですか、曲がれそうですか?」
龍「さて?10年ほど前に1度出た事があるのですが、その時は
駄目でした、でも今のメンバーはまるで変わっていますが」
匠「ふうむ、龍人さんに優勝投票しても良いですか?」
龍「あはは、無理でしょう・・」
軽~く、否定されてしまった。
「龍人」が無理だとすると、残りの1つの選択肢は・・
こちらは「からしれんこん」、大阪からの参加と書いてあるが、
大阪・兵庫などを中心とするドラゴン選手達の混成チームだ。
各選手は数多くの大会で優勝・入賞しており、実力値・経験値は
申し分ない。
匠「からしれんこんさん、どうですか?曲がれそうですか?」
か「昨日ちょっと練習した感じでは上手くいきそうですよ」
ふうむ、ここが本命かな? しかし、この大会では何が起こるか
わからない、よく考えて、カンもはたらかせて投票しよう。
---
さて、予選レースは順調に進んでいる、
本命「からしれんこん」は、序盤から猛ダッシュ、他のビギナー
チームの3倍は速いのではないか?と思われる、まるで「シャア」
のような彗星的(笑)な漕ぎだ。
この分だと片道1分30秒、往復で計3分、ターン減速が10秒、
計3分10秒という超絶記録が出るかも知れない。
だが、中盤、いきなり「からしれんこん」が蛇行を始める。
匠「ああ、やっちゃいましたか、さしもの”関・・” もとい、
”からしれんこん”でもこの艇は難しいかぁ・・」
「からしれんこん」は、フラフラと蛇行しながらも、なんとか
ターンをクリア、この時点で2分半程度の時間を消費している。
既に地元チームの1つが80m近くも先行している、だがその
地元チームは帰路に軽く2分以上を要するであろう、
匠「こりゃあまずいな、抜いちゃいそうだな」
予選で1位になったら自動的に準決勝進出だ。
しかし「からしれんこん」は明らかに操船練習不足、ここはあえて
敗者復活に廻り、1レースでも余分に練習機会を増やすのが
得策だ。
だが「前に他のチームが居ればそれを抜く」というのが強豪チーム
の性(さが)である、「からしれんこん」は直線でどんどんスピードに、
乗り、ゴール直前で地元チームを捉え、僅差で抜き去った。
実況席からの放送は、大興奮でその模様を伝えていたが、
私は「からしれんこん」の監督さんと以下の話をしていた
匠「やっちゃいましたねえ・・・1位抜けは失敗だったのでは?
まだ操船が不安定なので敗復で練習するべきでした」
監「ああ・・・まあ、そうだったかも知れませんね」
でもまあ勝ってしまったものはしかたがない、準決勝でさらなる
強豪チームとぶつかりつつ、実戦の中でコツをつかんでいくしか
無いであろう。
さて、こちらは地元の「うさぎさん リターンズ」チームである。
前述の「WARABI」と同様、昨年、ほとんど前に進むことが出来な
かったという目立ち方をしていたチームだ。まあ、高島市役所の
職員さんチームであるので、ビギナーである事は確かだが、
「リターンズ」の名前をつけて2年目の参戦だ、今年はちゃんと
リターンできるのだろうか・・?
予選を見ると、なんとか前に進んでいる、クルーの人数は定員に
満たず、見るからに艇が重そうだ。しかし、着実に真っ直ぐ進んで
いる、これはもしかすると完走できるかも・・
他の地元3チームは、あっというまに先行、中には昨年のフレンド
シップの部(下位カテゴリー)の決勝進出という強豪チームも居る。
匠「最下位でも、とりあえず完走できれば良いけどなあ・・」
ところがここでもアクシデントが発生、先行する3チームが次々と
蛇行を始めた・・・昨年の決勝進出チームですらもだ(汗)
あれよあれよという間に、3チームそれぞれが明後日の方角を
向いて、艇は停止、あるいはその場でスピンから復帰不能。
3チーム全てがタイムアウトの危機の中「うさぎさん リターンズ」
が着実にえっちらおっちらとターンをこなし、ゴールに向かって来る。
匠「これではまるで”ウサギとカメ”のカメの話だ!」
大声援の中「うさぎさん リターンズ」が4分56秒のタイムで
1位抜け、なんと準決勝進出である!これはすごい快挙だ!
まあ、準決勝でも同じ偶然が重なるとは思い難いが、ともかく
たいしたものであった。こうした「ドラマ」は実に面白い。
----
さて「専業チーム」の方はどうか?
まず、昨年優勝の「池の里」と一昨年の覇者「小寺製作所」が
当たる予選レースに注目しよう。
序盤から2チームが独走状態、まあ予想通りだ。
予選は1位抜けだが、それはあまり関係ない、この場合、
どちらが敗復に廻っても、必ず勝ち上がってくるからだ。
むしろライバルチーム同士の意地と意地のぶつかり合いだ、
少しでも先行し、相手チームに「どうだ」と言ってやりたい。
「池の里」が先行してターンに入る、しかし、この2チームを
比較すると、直線は「池の里」が速いが、ターンは「小寺」が上手い。
私はスタート地点からの観戦、ターン地点迄は300mもあり、
距離は遠いが最大望遠で様子を見てみよう。
匠「あちゃ~、”池の里”やっちゃいました、ブイの内側を
廻っているよ」
「池の里」は、あわてて艇を戻し、もう1回ブイを廻り直す。
これで約1分のタイムロスだ、その間に「小寺」が余裕の1位抜け、
タイムも3分30秒と速かった。
帰ってきた「池の里」いわく
池「練習の時は約半数のクルーで、あの角度でぴったりでした、
が、本番では重くなり、舵が余計に効いてしまいました(汗)」
優勝予想だが、私は色々考え、実は「小寺」に投票してあった、
この安定感が一番信頼できるかと思っていたのだ。
さて「池の里」はこのイージーミスのショックから立ち直れる
であろうか?そのあたりが今後のレースの見所だ。
さて、波乱ぶくみの予選であるが、そろそろ記事文字数が限界だ、
以降は「中編」に続く、としよう。