安価な中古ミラーレス機とマニアックなレンズによる
コスパの良いアダプター遊びを楽しむシリーズ第61回目。
まず、このシステムから。

見るからに怪しげな、というか節操が無い組み合わせだ。
本システムで使ったパーツを右から順番に挙げよう。
・SONY NEX-3
・Nikon Ai→Eマウントアダプター
・KENKO Macro TelePlus MC7
・SIGMA SUPER WIDEⅡ AF24mm/f2.8
・52mmΦ→62mmΦ ステップアップリング
・KENKO メタルフード25mm 62mmΦ→67mmΦ
・67mmΦ→72mmΦ ステップアップリング
・ZENJIX 20mm延長筒
・ZENJIX soratama 72
実に9つのパーツを組み合わせた異様なシステムだ。
このうち最も重要なのは、最後(一番左)の「soratama 72」
これは、宙玉(そらたま)と呼ばれる、透明球が入ったレンズの
事である。この宙玉を使う為に、他の全てのパーツの必要性がある。
で、宙玉とは、果たしてどんな写りなのか?

「円周魚眼レンズ」と似たような写りだ。
すなわち、透明球に写り込む映像を、他の写真用レンズ
(マスターレンズ)を用いて撮影している事になる。
「円周魚眼」との写りの差は4点ある。
1:被写界深度が浅い事
(これは宙玉を撮影するマスターレンズにもよる)
2:円周外にも(ボケた)画像が映る事
3:円周魚眼ほど、歪み(ディストーション)が多くは無い事
4:上下が逆に写る事
で、上写真では、チューリップも川の水面も真っ直ぐ写っていて
全然「円周魚眼」っぽくは無いのだが、それについては、
本シリーズでの「魚眼レンズ」関連の内容でいつも書いている
ように「魚眼レンズは、中心点に向かう直線は歪まない」という
特徴に留意して撮影したからである。
あまりそのあたりを意識せず、普通に風景を撮ると以下のような感じ。
(注:レンズのゴミが写るのは本システムの欠点だ)

構図の微調整はなかなか難しい、何故ならば上下逆転して
写るからだ。
銀塩時代の二眼レフ等もそうだが、ファインダーを見ながら
構図を調整しようと思ってカメラを振ると画像が逆に動いてしまう。
さて、宙玉とは何か?と言えば、結局の所、空中に浮く透明球を
撮影するシステムだ。
数年前からカメラ自作派の間で流行していたものであるが、
工作はかなり手間な様子であった。
その後、発明者により最も工作が難しいと思えた透明球とガラス
部分が結合されているパーツが市販されたが、それでもまだ、
鏡筒部分を自作しなければならないので依然手間であった。
2014年になって、簡単な鏡筒部が付いた製品が発売された、
2015年頃になって、カメラ量販店でもこの製品を扱うようになり、
私も購入に至った次第である。

ただ、自作をしなくても良くなったとは言え、この宙玉を
そう簡単に使う事はできない。
宙玉の原理から考えてみるとわかる事であるが、レンズ前
数cmにある透明球にピントを合わせなければならないのだ。
いったいそんな事が出来るのか?
まず考えたのはマクロレンズ、それも最短撮影距離の短い物、
すると標準マクロなどはどうだろう? 最短が22cm前後だ。
え~と、22cm? レンズ前数cmで撮りたいのに最短が22cmかあ。
ちなみに、レンズ前から被写体までの距離は「最短撮影距離」
ではなく「ワーキング・ディスタンス」と呼ばれている。
最短撮影距離とは、フィルムまたは撮像素子の面からの
距離を示しているので、レンズ先端からの距離の意味では無い。
で、ワーキング・ディスタンス(以下WD)を数cmにしたいのだが、
標準マクロであっても、WDを数cmにする事は出来ない。
ならば接写リングか?試してみたが、やはりWDをそこまで
短くするのは容易では無い模様だ。
では逆の発想で、宙玉の撮影距離を伸ばせば良いのだろうか?
従来の自作派は、たいてい10数cm位の長さの延長筒を設け、
それで宙玉を撮影していた、
その方法であれば宙玉は比較的小さく写り、まあ、一般的な
宙玉の作品と同じような雰囲気となる。
けど、私はもっと宙玉を大きく写したかったし、それに
せっかく完成品を購入したのに、ここでまた鏡筒を自作したく
無かった訳だ。
ならばWDの短いレンズか? そんなのあったかな?
SONY E30/3.5Macro? いや口径が小さすぎて装着が難しい
なにせ宙玉は72mmΦもあるのだ。
SIGMA AF20mm/f1.8? うん、これならレンズ前5~6cm
まで寄れるので良さそうだが、逆にフィルター径が82mmΦと
大きすぎる。
SIGMAの旧型のAF24/2.8だったらどうか?これも確か最短が
18cmくらいだ、けどレンズが短いのでWDは逆に大きくなる。
まあでもレンズはこれで良いだろう。WDが足りないのでレンズ
の前に市販メタルフードを1つつけてみよう、このメタルフードは
前部にもネジが切ってあって延長可能なものだ。
しかし、まだWDが少々足りない。ならばアレがあったはずだ、
そう、秘密兵器の「マクロテレプラス」(第18回、第30回、
第46回記事で紹介)を使うことで、最短撮影距離、すなわち
WDを縮める事が可能になる。
これでいちおう宙玉は写るようになった、けど、冒頭の写真の
ように、つぎはぎ、寄せ集め、で、いかにも格好悪いし、
しかも宙玉が大きく写りすぎるようになってしまった。
宙玉は、透明球の周辺にボケた画像が写るのが、雰囲気が
あって良いのだが、透明球が大きく写りすぎると周囲のボケ部
が少なすぎる。

まあでも今回はこれでも良い、いずれ他のレンズを用いて、
より適正な組み合わせを試してみよう。
本レンズ(soratama 72)の購入価格だが、本年2016年に、
約6000円であった。
これ自体はさほど高価では無いのだが、ただ、一般的な初級
ユーザーの持つ機材(レンズや付属品)では、sotarama 72
を購入しただけでは、まず写すことが出来ないであろう。
別売の延長筒を数個購入して、やっと宙玉が小さく写る、
という感じになると思う。
延長筒は、そこそこ高価(5000円弱)なので、本レンズの
撮影原理を良く理解して、必要とあれば購入したら良いし、
手持ちの部品や、自作でなんとかなるのであれば、それでも
勿論良いと思う。場合によりマスターレンズも購入しなければ
ならないかも知れない、意外にお金がかかるシステムだ(汗)
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さて、次のシステム。

レンズは、CANON EF 85mm/f1.2 L USM である。
1990年代の AFレンズ、EF(EOS)マウントである。
Lタイプなので、高画質仕様という意味だ。
本来、上写真のミラーレス一眼に装着して紹介する
つもりであったのだが、しかし、ここで大問題が発生。
なんと、本レンズはMFが動作しないのだ。
レンズスイッチをMFに切り替えて、ピントリングを廻しても
空回りするだけだ。
当初、故障かと思って、EOSに装着して電源を入れると
MFは問題なく動作する。
すると、USM(超音波モーター)関連部品が電源を通電しないと
何も反応しないのか?いや、他にもUSMレンズを持っているが
そんな事はなかった筈だ。
量販店に行ってキヤノンの様々なUSM仕様のレンズを触ってみる、
すると、本レンズの新型のEF85/1.2LⅡのみがMFが効かない、
他にも、近年のSTM(ステッピングモーター)仕様のレンズも
どうやらMFが効かない模様だ。
「う~ん、仕様だったか。しかし、困るんだよね・・これでは、
ミラーレス機に装着できないでは無いか」
色々考えてみたが回避の手段が無い、電子接点つきのマウント
アダプターであれば動作するかも知れないが、あいにくその手の
アダプターは高価すぎるので所有していないのだ。
(そのアダプターでAFが効いてEXIFが入る程度であれば、
個人的には興味が持て無い)
やむを得ない、ミラーレス・マニアック記事だが、今回のみは、
デジタル一眼レフ (EOS-30D)を用いてみよう。それは数年前に
中古で15000円程度で購入した型遅れ品だが、まあ十分に使える
ので、ドラゴンボート等、過酷な撮影環境で使用している。
(つまり、水や暑さで、いつ壊れても惜しくない)

撮影モードは、AFとMFを適当に混ぜて・・
でも、こういうf1.2という大口径レンズの場合、一眼レフでも
ピント精度に不安がある、AFは完全には信用でき無いし、
MFでは、光学ファインダーのみではピント合わせは困難だ。
デジタル一眼では、デジタルズームもエフェクトも無いし、
自由度が少ないように思えてしまう。ましてやEOSは操作系に
優れたカメラでは無い。このあたりは色々と理由や原因があるの
だが、それを書いていくと極めて長くなるので今回は割愛しよう。
ともかく比較的不自由な状態での撮影を強いられる事になる。
さて、本レンズEF85/1.2Lの最短撮影距離は95cmだ、
もう一声寄れて欲しい所だが、最短よりもっと大きな問題がある、
それは本レンズの重量だ、なんと1kg以上もある。
大きく重いレンズだ、たとえミラーレス機で(MFで)使えたと
しても、重量バランスが悪い事であろう。
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で、実は、個人的には嫌いなレンズである、それも筆頭格だ。
もう理由は想像できるであろう、値段が高価すぎるのだ。
発売時の定価は17万円以上、それも1990年頃にだ、
バブル期レンズだったのかも知れない。
で、恐らくだが、その後少しづつ値上げした事であろう。
現在はⅡ型となったが、本レンズとの大きな変更点は無い、
そしてⅡ型の定価は、現在税込みで25万円強もする。
これでは当然の事ながらコスパが悪すぎる。

ボケ質の破綻が起こりやすいので回避の必要があるが、
デジタル一眼では困難だ、その技法はミラーレス機でないと
使えない。
逆光耐性もやや問題ありで、ゴーストが出やすい。
そして大きく重いレンズだし、おまけに高価でもあるので、
他のレンズのように、自由に振り回して撮るという訳にも
なかなか行かない。
AFで使ったとしても極めて遅い。USMと言っても1980年代の
技術で1kgもの重いレンズ群を動かすのは難しかったのだろう。
私は、85mm大口径レンズは色々使っていた。ごく近年の高価な
新製品とか、特殊な限定モデルを覗き、各社のほぼ全ての85mm
大口径を所有していた。だが、それらの多くは、4万円台の
中古価格で購入している。プラナー85/1.4もAi85/1.4も、
FA★85/1.4もαAF85/1.4もいずれも4万円台であった、
さらに近代のSAMYANG 85/1.4にいたっては、新品でも
3万円そこそこであった。
それに比べ、本レンズの値段はいったいどういう事なのか?
より大口径の1.2だからと言って、性能が良くならない事は
本シリーズ記事でさんざん述べているとおり。そして価格と
性能は全然比例しないのだ。
高くても感動的な写りであれば良いが、ただ高いだけで、写りが
それに伴わなければ、コスパの悪いレンズとして、評価は大幅に
減点となる。

左手の花にピントを合わせ、手前の右手の花も被写界深度内に
入れ、右手奥の花は被写界深度外にしたい、しかし、こうした
微妙な調整が、デジタル一眼レフでは極めて困難なのだ。
光学ファインダーから見えている映像は、絞り開放の場合だ、
絞りを絞ってもファインダーの映像は変化しない。
プレビュー操作というものがあるが、画面が暗くなって
わかりにくく、かつスリガラスのファインダースクリーンでは
正確な被写界深度は掴みようが無い、おまけにボケ質の確認も
できない。これらの、ミラーレス機では簡単に出来ることが
一眼ではできず、ストレスとなる。
カンで被写界深度を想定して適当に絞ったが、右手前の花は
被写界深度外となってしまった。想定したよりも被写界深度が
浅かったのだ、これは撮影距離によっても被写界深度は大きく
変化するので、暗算は勿論無理で、カンでも難しい。
皆、一眼レフでどうやってこういう事をやっているのだろうか?
絞りを適当に変えて、まぐれ当たりを期待するしか無いではないか。

本レンズの中古購入価格だが、1990年代に94000円であった、
勿論高すぎる、いや、中古相場と比較しては若干安かったかも
知れないが、他社の同等品の2倍程度の価格だったのだ。
しかも、性能的にも他社を上回る訳では無い。
その予算があれば、当時であれば、FA★85/1.4、αAF85/1.4
の両方が一緒に買えてしまった訳だ。
ということで、大口径85mmを使った事が無いユーザーであれば
高価な本レンズを初めて購入したら、描写に驚くかもしれないが、
他社の様々な大口径85mmを使ってみてから、比較してみると
様々な事がわかる思う。まあ、その結果として本レンズが良いと
思うのであれば、それは個人の好みなのでやむを得ないが・・
で「EOSユーザーだから EFマウントの高性能レンズを買う」
という理由は成り立たない、何故ならば、レンズの方が
カメラよりずっと重要だからだ。なので、もし自身が保有して
いないマウントで気に入ったレンズがあれば、そのマウントの
ボディごと新たに買ってしまった方が簡単だ。
中古のデジタル一眼は安価だし、いつも説明しているように
レンズとカメラの予算比は8対2が適正だ。
カメラにあまり予算をかけてしまうと、結局そのマウントの
純正レンズしか選択肢がなくなり、高すぎるレンズを買わざるを
得なくなる恐れもある。
で、どうしても大口径85mmが欲しければ、一眼ユーザーならば
SAMYANGでも中一光学でも、そのあたりを買えば良いではないか、
それらであれば新品で2~3万円で買えるし、MFである以外は
描写力にさほど不満は無い事であろう・・
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さて、次のシステム

カメラは、望遠アダプター母艦のDMC-G5
レンズは、キヤノン FD100-200mm/f5.6 である。
1970年代のMFズームレンズ、旧F-1と同時代のものだ。
普通の目線で本レンズを見れば、古いゴミレンズであろう。
事実、ジャンクであったし、最初に購入価格を書いてしまえば
2010年代に僅かに1000円であった。
だが「ジャンク大放出」の時代のものだ、1000円~3000円の
レンズであっても、それは「理由あり」商品であったので、
性能が悪いから値段が安いという訳では無い。
本シリーズ記事では、こうしたジャンク望遠ズームを良く
とりあげているが、たとえば同じキヤノンであれば、第52回記事
で紹介した (New)FD70-210mm/f4が、購入価格2000円
ながら、大変良く写るレンズとして印象的であった。
本レンズも良く写る類なのだろうか?

う~ん、ちょっと微妙な印象だ。
ボケ質の破綻が出る場合があるが、開放f値が5.6と暗い
レンズである、よって、ボケ質破綻を絞り値の調整で回避
するのは難しい、1段絞ってf8、2段絞るとf11となり、
これでは望遠レンズらしくない使い方になるし、ISO感度を
相当高めないと、手ブレを誘発してしまう。
これくらいしか絞りの可変範囲が無いとすれば、ボケ質破綻
回避はもとより、本来の被写界深度調整の目的も厳しい。
なお、デジタルでは「回折現象」により「絞込み過ぎると画質が
低下する」などと、良く言われるが、それは今回においても、
あるいは一般的状況においても、あまり気にする必要が無いと思う。
そもそも絞りには、被写界深度の調整、シャッター速度の調整、
ボケ質破綻の回避、という3つの重要な主目的が存在する。
それらに比べたら、絞り込み過ぎによる画質の低下など
さしたる重要事項では無いと思うし、そんな事を気にしていたら、
撮りたい写真も撮れなくなってしまう。
で、そもそも私はその事実を実験などで確認していない、
たいして難しい実験では無いと思うが、その事に興味も無いし、
やる気もしないのだ。
もとより、絞りをMTF向上等の画質調整の為に使うという発想
自体に反対なのだ、「画質よりも、何をどう撮りたいか」だろうと
常々思っているからだ。
余談はともかく、とりあえず、本レンズにおいてはボケ質破綻を
避ける為、できるだけ平面被写体とかボケ質が問題にならない
背景柄を選ぶなどしてみよう。
そして、手ブレを誘発する換算焦点距離であるが、なにせ、
G5に装着した時点で、すでに本レンズは、200-400mm/f5.6
という超望遠ズームとなり、まるで銀塩AF時代のTAMRONの
名レンズと同様なスペックであるが、勿論本レンズの描写力は
TAMRON 200-400/5.6には遠く及ばない。
で、画質よりも、そもそも焦点距離が長いことが問題となり、
便利なG5のデジタルズームを併用すると、800mm相当あたりの
画角で、シャッター速度とISO感度のせめぎ合いとなる。

ここではさらにデジタルテレコンを併用して、1000mm強程度
の画角となっている、この機能を使うと画質が劣化するが
その事は論点ではなく、長い焦点距離でどのようにブレ対策を
行うか?という点だ。
それを考えると、少しでも開放f値は明るい方が望ましい。
画質面であるが、ボケ質の破綻および解像度の低さが目立ち、
最短撮影距離も2.5mと長すぎる。
やはり初期のズームレンズという感じだ、
現代の感覚からすればズームレンズはごく普通に実用的であるが、
今から約50年前の1960年代になるまで実用的なズームレンズは
存在せず、そして1960年代後半~1970年代のズームは、
性能的に実用範囲を下回る未完成と言うべき物ばかりであった。
で、本レンズもその時代のものである(1971年発売)

まあ、丁寧に使えば、すなわちまずμ4/3機など小型センサーで
周辺収差をカットし、撮影時は適正な絞り値(f8程度)にしつつ、
背景パターンを考えて、ボケ質破綻が起こらないようにし、
かつ適正な距離(中距離以上)であり、逆光にも注意すれば、
そこそこちゃんと写るのであるが、まあ、あまりにも制約が
多すぎるであろう。
現代においては必要なレンズでは無いと思う。ジャンクには
使える物もあれば、性能的に使えない物もあるという事だ、
特にズームなどは、少なくとも1980年代以降のものでないと
実用には厳しいであろう。そして勿論機種毎に良し悪しもある、
中には良く写るものもあるかもしれないが、むじろ稀であり、
ほとんどは残念ながらNGだ。
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さて、次は今回ラストのシステム

カメラは、NEX-7
レンズは、京セラ・コンタックス プラナー100mm/f2
すでに第32回記事で紹介しているが、その際はμ4/3機に
装着していた、今回は、APS-C機で使ってみよう。
出自などは、当該記事を参照していただくとして、
最初に言ってしまうが、これは高価なレンズだ。
本記事で紹介したEF85/1.2Lと同等の定価の178000円、
時代はEF85/1.2より、もう少し古いのだが、さて価格に
見合う写りをするものかどうか・・?

この時代、コンタックスには(RTS)プラナー85mm/f1.4
という超人気レンズが存在していた。
しかし、他の記事で何度も述べている通り、ピント歩留まりや
焦点移動、ボケ質破綻などの課題を持つレンズであり、
それらを回避しながらの使いこなしは相当に難しく、
なかなかビギナーが使いこなせるレンズではなかった。
だが、偶然それらの問題が回避できて、見事に決まった時の
写りは「さすがプラナー(85mm)」と言うべきものでもあった。
でもプラナー85/1.4の制御は難しく、銀塩時代、私は、それを
下取りに出して、およそ2倍の定価であるプラナー100mm/f2
に乗り換えた。
本レンズの評価は、マニアの間でもあまり話題には上がって
こなかった。高価なレンズだし、一般的にはP85/1.4の方に
興味が集中しているため、P100/2は目立たなかったのだ。
だが、本レンズを使ってみて、それまでのP85/1.4の問題点の
多くが解消している事に気がつく、これは良いレンズでは無いか、
と思ったのだが、ある意味それはP85との比較でしかない。
絶対的基準でP100を見たらどうか?という点を今回はちょっと
意識してみよう。

天候はあいにくの雨、一般的なアマチュアカメラマンの感覚から
したら、雨が降ったら撮影はお休みだ。ましてやMFでしかも
高価なレンズを持ち出すなんて論外であろう。上手く撮れないし、
もし壊れたりカビが生えたらどうするのか?と。
けど、これも良く書いていることだが、私は雨中の撮影経験が
かなり多い、なので注意するべき色々な点もわかっているし、
雨はあまり問題無い。
ただ、雨が降ると、レンズの描写はがらりと変わってしまう
事も多い。望遠系のレンズにとっては、遠距離の被写体との間
の雨粒などで大幅にコントラストが低下し、実質的に使い物に
ならなくなる。広角系では、遠距離の風景などを撮る際に
同様な問題が発生するが、近距離に徹すれば問題ない。
マクロ系では、むしろ面白い、描写力の低下は無いので、
草木などに雨粒がついている様子も撮れるし、雨が降ると
出てくる珍しい生物も居るかも知れない。まあでもそれは
描写力と言うよりは被写体の問題か・・
で、晴天時に比べ光源や被写体のコントラストが低くなるので、
コントラスト性能が飽和しやすいオールドレンズ、オールド
デジカメなどではむしろ有利だ、また逆光に弱いレンズも
その欠点が消えて使いやすくなる。
プラナー100/2の場合は、元々描写性能に優れたレンズだ、
だが、これを望遠として使うと、やはり空気中の雨粒の
影響を受けて、描写力の低下が甚だしい。
できるだけ近接撮影に持ち込みたいが、最短撮影距離は
1mと標準的で、マクロプラナーのような接写は出来ない。
すると、近中距離の被写体を探すしか無いし、結局のところ
レンズの様々な限界性能(逆光とか、ボケ質破綻とか)の
チェックはやりずらくなる。

ボケ質破綻は、本レンズもプラナーなので発生する。
しかし絞り値の調整程度で比較的容易に回避ができる。
中間絞りでそれが発生するならば、より絞り込んでも良いし、
逆に絞りを開けてボケ量を増大させて質を目立たなくしても良い。
雨中の低輝度差被写体においては、コントラスト表現力が高い
本レンズにおいては、むしろ使い易い状態になり、描写の特徴が
良く出る。
「結構楽しいではないか」と思うようになってきた。
高価すぎるレンズであっても、なにか気持ちに訴える部分が
あれば、その値段はあまり気にする必要がなくなる。
レンズを評価する際「撮っていて楽しいかどうか」という点
は、あくまで感覚的ながらも重要な要素であろう。
撮っていて、つまらないレンズはいくらもである、それは値段
とか性能とか、個人的な好き嫌いとかいった話ではなくて、
レンズから「もっと使い込め」というようなメッセージが
聞こえてくるような、1種の「奥深さ」なのだろうと思う。
本レンズには、そうした「奥深さ」を感じる。
より描写力を発揮するために、ここをこうしてやろう、この場合は
こう試してみよう、今度はあれを撮ってみよう、とか言った面白さ
が出てくるレンズであるのだ、そして、そうして色々と工夫した際、
その手間に報いるように、意図した通り、あるいは想像を超える
ような写りが得られるのであれば、それこそ高級レンズの醍醐味
ではなかろうか。

本レンズは確かに高価ではあったが(2000年代に10万6000円)
「コスパが悪い、減点!」とは簡単には切り捨てれない
良いレンズであると思う。値段がもう少し安ければ、
そう中古で6~7万円程度で売っているのを見つければ、
CONTAX党であれば買って損は無いレンズだ。
P85/1.4よりもむしろこちらをおすすめする。
文字数限界につき、次回記事に続く。