安価な中古ミラーレス機とマニアックなレンズを組み合わせ
「アダプター遊び」を楽しむシリーズ記事の17回目。
今回注目するのは「アポダイゼーション・エレメント」の話だ。
「それは何か?」と言えば、簡単に言えば、グラデーションの
かかったフィルターであり、中心が明るく周囲が暗い、これが
レンズに内蔵されている。
カメラは、FUJIFILM X-E1
Xシリーズとは、FUJIの主力高性能カメラのシリーズ名であり、
高級コンパクト、ロングズーム機、そしてレンズ交換式の
ミラーレス機が販売されている。
X-E1は2012年発売のミラーレス機だ、小型軽量でEVF搭載機
であり、ローパスレス、アナログライクな操作性(操作系ではない)等、
スペックだけ見れば高性能であり、以前から欲しかったカメラだが、
高価であったのと、純正交換レンズが少なかったので、しばらくは
我慢して手を出すことはなかった。しかし3年待って2015年末に購入
したのは2つの理由がある、1つは中古価格が安くなってきた事だ、
購入価格は25000円程度であり、例によってミラーレス機の相場の
下落は激しい。この高性能機がこの価格で?と驚いてしまう。
もう1つの購入の理由が、この装着レンズだ、これを使えるのは
Xマウント機しか無い。
XF56mm/f1.2R APD
そう、今回の記事の特集内容である「アポダイゼーション・
エレメント」を搭載した唯一のAFレンズである。
「唯一の」と言っているが、AFでなければ昔からそうしたレンズ
は存在していた(その話は後述する)
2014年末に発売されたこのレンズがどうしても欲しかったのだが、
定価が20万円近くもする高額の為、中古が出るのを待っていた。
約1年待ってやっと中古が出た、価格は11万円程と高価だったが、
ちょっと無理して購入した。
XF56mm/f1.2R APD (以下APD)に適したカメラは何か?と考え、
以前から欲しかったX-E1が候補に上がった。
本ブログでは昔から「カメラとレンズの予算配分は、2対8」と
持論を述べているが、今回もそれに準じ、レンズ価格の1/4程度の
2万円台で購入できるボディが適正なのだが、数ヶ月前まで3万円を
超えていたX-E1が、ここのところ少し相場が下がってきていたため、
合わせての購入となった次第だ。
さて、APDレンズの写りは・・
ボケが恐ろしく綺麗である。でも、それは購入前からわかっていた。
私は20年近くも前から、STF(後述)というレンズを使っていたからだ。
そう「アポダイゼーション・エレメント」とは、レンズの
「ボケ質」を良くする目的で開発された機構である。
このような設計コンセプトを持つレンズは、このレンズを含め
4機種しか存在していない、うち2機種がアポダイゼーション機構
によるものである。(ごく最近、交換アポダイゼーション機能を
実現する米国製レンズの開発が発表された模様だが、
8万円以上出資しないと出来上がったレンズが買えないと聞く)
何故ボケ質が良くなるか?、というのは、概念の説明が難しい。
ただ、感覚的に言えば、グラデーションのかかったフィルターを
レンズに内蔵させることで、点像からの光の拡散が、絞り形状の
影響を受けること無く、ゆるやかにボケが広がる、と解釈する事が
できると思う。
理屈はともかく、その効果は絶大で、いつもこのシリーズ記事で
書いている「ボケ質が悪い」とか「ボケ質の破綻」とかいう問題は
このAPDレンズに関して言えば一切無い。
このレンズの開放絞り値はf1.2であるが、グラデーションの
かかったフィルターが入っているから、実際の明るさは減って
いる事は容易に想像できるだろう。なので、このレンズの場合は、
本来ならば絞りはf値ではなく、実効絞り値の「T値」を用いて
性能を表すべきだ。
したがって、このAPDレンズは、f1.2[T1.7]となる。
レンズの写り自体は何ら不満は無い、だが、最短撮影距離が70cm
と長いのがまず第一の問題だ、おまけに、ピントリングが無限回転式
(距離指標が無い)タイプである、この形式は実のところMF操作に
向かない。(まあ、AF+MFの機構を実現する為には、しかたが無い
のだが・・MFレンズとして割り切れなかったのが問題なのだろう)
T1.7とは言え、被写界深度はf1.2相当であり、極めて浅い。
この浅さが近接撮影時のAF精度に影響があるから、最短撮影距離
を伸ばしたのであろうか?56mmレンズであれば50cm位まで寄れる
のが本来の性能な筈だ。もしそうならば本末転倒ではなかろうか?
AF精度に問題が出るのならば、MFレンズにしてしまえば良かった
と思う、どうしても「世界初のAFアポダイゼーション」を謳いたかった
のだろうか?
その想像の根拠として、Xシリーズのマクロ機構の問題点が
上げられる。初期のXシステムでは、一般的なレンズであっても、
近接撮影では、わざわざ(いちいち)マクロボタンを押して
切り替えないとピントが合わないのだ。
それは、AFのステップ数の精度に問題を抱えているのでは
なかろうか?まあ、X-E1は、コントラストAF方式だ、一眼レフのような
AFセンサーを用いた高精度な位相差検出方式は採用できない。
何故ならばミラーレス機はその名の通りミラーが無く、AFセンサー
用に光路をミラーで分割できないからだ(注:X-E2以降は撮像素子
上に位相差センサーを配置している)
で、X-E1の場合、AFのステップ数が技術的理由、あるいはコスト的な
理由で少ないと思われる。
ここで、シンプルな例を上げて、その問題点を説明しよう。
まずレンズの最短撮影距離を仮に50cmとする、そこから無限遠∞
迄、何段階で距離を表現するか? ∞のままだと計算できないので
これを、仮に100m50cmとしよう。計算を簡単にする為にその間を
100分割する(実際には128とか256とかの2のN乗数であろう)
すると、1mごとにピントが合う位置が来るということになる、
ボデイとレンズの間は、合焦情報、距離情報等を相互にやりとりして
ピントが合うまでレンズを動かし、ピントが合えばレンズを止める。
しかしこの例だと、50cmの次は1.5m、その次が 2.5m・・・という
事になり距離が粗すぎる。逆に遠距離側では、98.5m,99.5m・・
のようになり、そんな遠距離で1mづつピントが変わっても意味は無い。
なので距離のステップは、近距離で細かく、遠距離で粗くするのが
基本である。けど、もしステップの総数が少ない場合、近距離でも
細かくする事ができない、だから、そういう場合は、同じ100段階
(注:仮の設定値)であっても、それを1m~∞の範囲で使うか、
50cm~1.5mの間を100段階にするか(これならば1cm刻みだ)
マクロボタンで切り替えて用いるという事になる。
このAPDレンズの場合、感覚的だが1.3m以下のあたりからAFが
合いにくくなる、その場合は、マクロスイッチをONにすると
近距離用のAFステップ幅に切り替わり、ピントがスムースに合う
ようになる。しかし、そのままだと遠距離のステップが無いので、
遠距離にはピントが合わない、その場合は、マクロをOFFに
しなければならない。
・・・正直、面倒な操作だ。システムとして上手く成立させる為の
仕様や技術がきちんと詰められていない感じがある。
まあ、無理やり最短撮影距離から無限遠まで切り替え無しで
ピントをあわせようとするのは、ミラーレス機では難しいのかも
知れない。事実、PENTAX K-01、GXR等では、そのあたりの理由
でAFピント精度が極めて悪く、近接撮影や大口径レンズなど、
被写界深度が浅い状況では、まず、いや、絶対と言っていいほど
ピントが合わないという致命的な課題を抱えている。
そういう意味では、マクロ切り替えもやむを得ないのかも知れない、
・・しかし、仮にそうであっても、だったら、マクロボタンを
押したら、いちいち選択メニューが出る必要は無い。
GRデジタルや、多くのコンパクト機のように、ボタン1つでONと
OFFを交互にトグル切替方式にすれば良いでは無いか!
FUJIのカメラは多数持っているが、ほぼ全てのカメラでマクロボタン
を押してから、マクロと通常モードを選択するという、うっとうしい
操作性である、まあ、中にはスーパーマクロという機能を持つカメラ
があり、それは、3種類の切り替えであるからメニューでなくては
ならない、けど、2種類の場合では同様にする必要は全く無い。
これは「操作性」の共通化を計ったあげく「操作系」を劣悪にして
しまった悪い例である。
(注:X-E2S以降は自動でマクロに切り替わる)
Xシステムでは、絞りリング、シャッターダイヤルを備え、それぞれ
A(自働)位置があり、それらを組み合わせる事で、M,S,A,Pの露出
モードを切り替える操作系である。合理的な方式であるが、20年も
前の1995年のPENTAX MZ-5から既に使われている方式である。
(もっと以前にもあったかも知れない)で、この方式は露出モード
ダイヤルを省略するする事ができ、本機では、そのかわりに専用の
露出補正ダイヤルを備えている。(使いやすい位置ではないが)
まあレンズ側に絞りリングがあるのは良い事だ。レンズの絞り環が
無くなったのは、開放f値が変化するズームレンズが普及した際、
絞り環と実際の絞り値に矛盾が生じるのを嫌ってであったと思う。
だが、単焦点レンズや、f値固定ズームであれば、そんな矛盾は
起こらないので、そういうレンズであれば、絞り環がついていた
方が使いやすい。
総合的に言えば、X-E1の操作系は決して褒められたものではない、
ミラーレス機は全般的に「操作系」に問題を抱える機種が多いが
それでも他機種に比べて、厳しく言えば「未完成」であると言って
も過言で無いであろう。そのあたりの詳細を本記事で述べていくと
長くなるので、追々このシリーズ中で、どこが欠点なのか?どこが
優れているのか?を他機種と比較しながら述べていくとしよう。
なお、何度も言うが「操作系」とは、写真を撮る上で必要な時に
必要な機能を速やかに呼び出すことができるか否か、という話であり、
ボタンやダイヤルの形状や配置といった単純な「操作性」とは異なる。
つまり、インターフェース全体のシステム設計という意味である。
ただまあ、カメラもレンズも完璧なものは無い。どの機材も何らか
の欠点を抱えている、その欠点ばかり気にするとストレスとなり、
写真を撮っていても楽しく無い。なんとか長所を見つけて、それを
活用するしか方法が無い。それは本シリーズ記事の1つのコンセプト
でもあり、マウントアダプターを用いる事で、カメラとレンズの各々
の欠点を相殺し、使いやすくする術を模索する事も重要だと思う。
まあ、X-E1の最初の印象はがっかりであったし、APDも最短撮影距離
とボディ本体との連携の問題でのAFの精度の悪さに辟易してしまうが
(ちなみに、MF操作系も劣っていて使い物にならない)それでもまあ、
さすがに「アポダイゼーション」だ、ボケ質に全く不満は無い。
実は、このブログでは10年も前から、何度かSTFレンズの紹介を
していているのだが、それらの記事でも「50mmのSTFが欲しい」と
書いてあったと思う。STFはミノルタ製であり、αがSONYに移って
からも、一応STFは継続生産されたが、SONYのスタンスでは、
絶対に新しいSTFは作ってくれない、と10年間も諦めていたのであった、
まさかFUJIから、STF(APD)が出るとは予想だにしていなかったが・・
ということで、次のシステムは「アポダイゼーション」の元祖
STFレンズだ。
レンズは、MINOLTA STF 135mm/f2.8 [T4.5]である。
(以下STF)
カメラはNEX-7 、Eマウントのミラーレス機であるので、
STFのオリジナルマウント(α Aマウント)では無い。
「オリジナルマウントボデイが現存している場合は、アダプター
ではなく本来のカメラを使った方が良い」と何度か書いているのが、
今回は特例である、まあ、ミラーレスマニアックスの記事だし、
という庫もあるが、実はこのレンズはαマウントの中では
ほぼ唯一のMFレンズであるし、かつ、ほぼ唯一の「絞りリング」を
持つレンズなのだ。
だから、STFをαのボディで使った場合でも、マウントアダプター
で使った場合でも、操作性(操作系では無い)の差異は殆ど無い。
なので、今回は、NEX-7にSTFを装着して使っている次第だ。
元祖「アポダイゼーション」、ただし、その名前では何のことやら
わからないので、スムース・トランスファー・フォーカス、略して
STFというのがこのレンズの名前の由来だ。
まず、STFやAPDの基本的な使い方だが、
「絞りを絶対に絞ってはならない」という鉄則がある。
必ず絞り開放で使わなければならないのだ。
というのも、STFやAPDの効果は絞り開放が最も顕著だからだ。
けどまあ、作画表現上、少しだけ絞るのは勿論ありである。
STFの場合は、実効絞り値がT4.5と暗い為、ISO100のベース
感度を持つボディを使えば、日中でも1/4000秒のシャッター速度が
オーバーする心配は無い、なのでND(減光)フィルターを装着
せずとも、ほぼ全ての条件でSTFを絞り開放で用いることができる。
絞り開放での口径食(ボケが半月状になる)とかが心配かもしれない
が、そこらへんも大丈夫だ。STFはf2.8[T4.5]のレンズであるのに、
かなり大柄で、f2級の筐体設計として余裕を持たせているので
口径食はおろか、収差やゴーストの類もほとんど出ないという
奇跡的なまでに優秀なレンズである。
勿論フードを装着するのがフレア防止には望ましいが、ただでさえ
デカいレンズなので、私は、その高性能を信じて、多くの場合で
フードは装着していない。
同様にAPDレンズも、絞り開放で使う必要がある。しかし、APDは、
f1.2[T1.7」だ。これを開放で使うのは、昼間では光量が多すぎる。
よって、APDにはND8(減光1/8)のフィルターが最初から付属して
いるのだ。冒頭の写真もこれを装着している為、レンズが真っ黒
に見える。なお、NDフィルターは暗い場所では光量が不足するが、
いちいちフィルターを外すのは面倒だ。
1つの対策として、X-T1という同社最高級機では最高1/32000秒
の電子シャッターが使える模様だ。そうであれば、f1.2レンズを
いつでも絞り開放で使える。ただまあ、それは静止被写体の話で
あり、電子シャッターでは動きものは撮れない。
また、X-T1は高級機であるし、多数のダイヤルを備えているので
「操作性」には優れていそうだが、が、X-E1の「操作系」と同等な
部分が多いのであれば、ちょっと困ったものなので、買おうと
思った時には取扱説明書を先にダウンロードして「操作系」が
良くなっているかどうか、調べてから買う事にするか・・
もう1つの超大口径への対応だが、デジタルNDフォルターを持つ
機種が存在する。ただ、今のところ PENTAX Q7とか、ごく一部に
しか搭載されていない、Q7はともかく、大口径レンズを使う
可能性のある高性能ボディでは、是非搭載してもらいたい機能
だと思う。
STFとAPDの描写力やボケ量は殆ど同等だ、STFの方が焦点距離が
長く良くボケそうだが、APDの方が開放f値がはるかに小さい。
だが、STFの最短撮影距離は87cmと、焦点距離135mmに比べて
かなり寄れる(=近接撮影ではボケ量が大きくなる)が、APDは、
70cmと、56mmの焦点距離では、お世辞にも良いとは言えない
近接性能だ、当然ボケ量も減る。これらを色々考慮しても、やはり
両者は同じくらいのボケ量だと思う。
つまり両レンズの使いこなしには焦点距離の差しか無いという事になる。
APS-C機においては、
APDの56mmは約85mm相当のポートレート画角であり、
135mmのSTFは、200mm相当の望遠画角だ。
だから85mmの方が使いやすいか?といえばそうでもなく、200mmは
寄れない人物撮影(結婚式や舞台など)では適していると言える。
結局両方必要だ、という事になるのだが、問題はその価格だ、
定価では、いずれも税込で20万円近くになる、勿論新品値引きが
あると思うが、それでも15万円近くにはなるであろう。
そして中古はまず出てこないし、出たとしても、両者11~13万円
程度はすると思われる。
STFは、SONY製ではなくミノルタのバージョンであれば、中身は
同じで、中古は10万円を切っていた時期もあったが、SONYに
変わって軒並み、全てのレンズの価格が2割アップしてしまったので、
連動して中古価格も、元々定価の安いミノルタ版でも
2割値上がりするという、理不尽な事になってしまった。
ちなみに私は、ミノルタ版のSTFが出た際、これは絶対に中古は
出ないと判断し、発売直後(1998年ごろ?)に新品を約12万円で
購入している、やや高価であったが満足度は非常に高かった。
もし「APDとSTFと、どちらか良いか?」と聞かれれば、選ぶのは、
すっぱりとMFで割り切っていて、かつマクロ的な撮影もできる
STFの方であろうか・・?
APDは、操作系に問題のあるXシリーズのミラーレス機でないと
使えないのが最大の難点だ、X-E1の例をあげれば、AFでもMFでも、
各々操作系に弱点があり、ピント合わせがストレスだ。
この点においても、STFであれば、豊富なαマウントのデジタル
一眼や、α用マウントアダプターを使用して、様々なボディで
利用可能だが、APDは、今のところ Xシリーズカメラで無いと使用
できない。結局、MFの操作性(操作系では無い)は、STFの圧勝だ。
まあ、その分、APDはAFが使える。
けど「AFでなくちゃ撮れない」といった泣き言を言うビギナー向け
のレンズでは決して無いのである。アポダイゼーションを購入する
ユーザー層は、上級者以上であるだろう、であれば、MFだけでも
十分だと思われる。何だかんだ考えると、やはりSTFかな?
APDにしても、STFにしても主要被写体は人物であろう、
けど、実際、ポートレート撮影なんて、そんなに機会があるもの
だろうか?本ブログでは当初から比較的多くの人物写真を掲載
しているが、1つはモデルになってくれる友人知人が多かった事、
もう1つは、イベント撮影が多かったからである、けどイベントの
撮影では、APDやSTFといったややこしいレンズは使う事はできない、
じっくり構えて撮る暇は無く、安直なAFズームで撮る事となる。
成人式や七五三、着物撮影などでは、比較的じっくり撮ることが
可能であるが、それらはMFレンズは問題ありで、AFの高性能レンズ、
例えば、PENTAX FA77/1.8 、FA85/1.4 、NIKON DC105/2,
AiAF85/1.8 、MINOLTA AF85/1.4Limited、AF35/1.4 等、
使う(使える)レンズは限られてくる。ちなみにズームはNGだ、
f値が暗く、ボケ質が固く、MF操作性も問題ありだ。
そして、あえてMFレンズを使うとしてもノクトンのf0.95シリーズや、
アポランター90/3.5等、適切な高性能レンズは非常に限られる。
そういえば七五三撮影でSTFを使った事があった。2014年の記事
でも紹介していると思うが、未公開のSTFの例を上げてみよう。
こちらの写真は、カメラは、NEX-7ではなく、α700だったと思う、
だいぶ色味や絵の雰囲気がNEX-7とは異なるが、それもまた、
それぞれの差異という事で興味深い。
総括であるが、APDもSTFもどちらも魅力的なレンズである。
ボケ質は、これらに勝てるレンズは世の中に存在せず、
まさしく東西両横綱という感じである。
ボケに拘るカメラマニアならば必携であると思う、、
ただ、STFの昔から周囲の様々なカメラ好きの人達にすすめては
いたが、購入したのはただ1人だけであった(それも若い女性だ)
「一生使えるレンズであれば、清水の舞台から飛び降りるつもり
で買う」と言って2002年頃に珍しく1本出た中古を購入したのだが、
確か8万円台だったと思うので「それで清水の舞台か?STFならば
十分安いじゃあないか!」と、ひやかしたのを覚えている。
両横綱は安泰であるが、実は、大関クラスとして、DCレンズと
いうものが存在している。
これは、ニコンのAFレンズで、DC105mm/f2,DC135mm/f2の2本が
販売されている、これが東西両大関であるが、私もずっと昔の記事
でSTFとDCを比較していたと思う。DC105/2は今でも保有しているので
今回、比較の為に紹介したかったのだが、記事の文字数限界を超えて
しまうので、残念ながらまたの機会にさせてもらおう。
東西両横綱は、一般のアマチュアカメラマンに必携のレンズか?
と聞かれれば、それは無いと思う。
まず一般的には人物撮影などで使用する機会は少ないだろうし、
通常の被写体に使った場合は、どんな条件でもボケ質が極めて
良いので、むしろ逆に「つまらなさ」を感じてしまう事もある。
これは、レンズに限らずカメラでも同様だが、あまりに高性能な
ものを使って綺麗に撮れたりすると、自分の腕前が上がったように
錯覚するが、良く考えれば当然そういう事では無い(笑)なので、
「なんだ、レンズ(カメラ)が良いからかあ・・」と思って、
面白く無いのだ。
つまり、レンズにしてもカメラにしても長所や短所をよく理解して
上手く使いこなすのが面白いのであって、パーフェクトなボケ質を
誇るこれらの超高性能レンズが、必ずしも利用者に満足感を
もたらしてくれる保証は無い。
なので実は、最近はSTFはあまり持ち出さなくなっていたのだ、
やはり、写りが良すぎて面白味が無いというのが最大の理由だが
APS-C機では約200mm相当と画角が狭いのも持ち出しにくい
原因かも知れない。
望遠を使うシチュエーションでは、f2.8以下の大口径であれば、
ライブや舞台など、それなりの用途はあるのだが、
[T4.5]の暗さでは、なかなか使い道が無い。
まあ、その点、APDは[T1.7]と明るいし、STFに比べてはるかに
小型軽量であるから、今後はその手の暗所の撮影にも重宝するかも
知れない。これまでは、暗所の中距離撮影は、ノクトン25mmや
同42.5mmのf0.95レンズを使っていたのだ。ただ、動きものが入ると
MFのノクトンはピント合わせの技術が相当に必要になる。
けれども、APDがAFが使えるからと言って、XシリーズとAPDのAF性能
では実質的に動きものに対してはAFは使い物にならず、MF操作系も
良くない。なので、やっぱ結局APDの利用はしんどいかな・・
まあ、追々、STFもAPDも長所を生かせる撮影シチュエーションを
探していくとしよう、そうしないと、いつまでも控え投手のまま
になってしまう。そういう意味では、ボケ質の優れたものが必要な
シチュエーションで最も汎用性が高いのはPENTAX FA77/1.8
であろう、これまで、明所も暗所も近距離も遠距離も、あらゆる
状況で色々と役に立ってくれた。
APDとSTFは両横綱かも知れないが、休場続きで年棒(価格)だけ
高かったら意味が無い。ちゃんと活躍してもらわないと、つまり、
レンズは、減価償却をしていかないと、いくら性能が良くても、
コストパフォーマンスの良いものにはなりえないのだ。
さて、そろそろ記事文字数も限界なので、では最後にSTFの写真を
もう1枚だけ。
今回はちょっと高価すぎるシステムの紹介になってしまった、
基本的に、いくら性能が良いものでも10万円を超えるのは
コスパが良いとは言いがたい。私自身、そういうレンズは
「スーパーレンズ」とは呼ばず、単なる「贅沢レンズ」と定義
しているのだ・・
次回記事はまたいつものように、安価で良いものの紹介を・・・