大阪府高石市、府立漕艇センター前の浜寺水路で行われた
第5回堺泉北港ドラゴンボート大会の模様より、中編
前編では、本大会会場へのアクセスと、市内の部の模様について
紹介したが、今回は、市外の部、すなわち、ドラゴン専業チーム
による「男女混合の部」の状況についてレポートしてみよう。
混合カテゴリーへの参加チームは10チームだ。
浪わ、みっくちゅじゅーちゅ、Banana、常翔喜龍、関西龍舟バーバリアンズ、
表面張力、琵琶ドラ、打艇、関西龍舟シンバ、吹田龍舟、の各チームだが、
この中に、聞きなれないチーム名が2つ混じっている。
「みっくちゅじゅーちゅ」が、その1つであるが、実は、昨年も確かこの
高石大会だったか?このチーム名で出場し、実況放送席が言いづらい
名前に苦戦されていたのを覚えている。で、このチームはODBA
(大阪府ドラゴンボート協会)に所属するチームの混成チームだったはずだ。
今回は、聞くところによると、風、いっとこ、パイレーツ、近畿車輛、
(元)常翔喜龍、関空飛龍、GPO・・ だったかな?
(多すぎてちょっと定かでない・汗)7つのチームの混成である模様だ。
「表面張力」こちらは、完全に初耳のチームだ。
いったい、どこの混成チームか?と、たずねてみると・・
匠「あれ? ”もっこりドラゴンボート部”さんが”表面張力”なの?」
も「あと熊野水軍、それと和歌山だけじゃないですよ、ジャングルマニア、
トリッドストーム、未来、ぶっとばせまいど、の混成チームです」
匠「へ~ 東京、大阪、和歌山のコラボねぇ・・ 私が覚えている限り、
東京と静岡、滋賀と大阪、とかは前例があるけど、
関東と関西の混成チームというのは、史上初じゃあないかなあ?」
も「そうかもしれませんね」
匠「誰がまとめたのかな・・・」
R「は~い!」
匠「ああ、Rさんだったか、そうか、異チーム交流会長さんだっけね!」
それにしてもTシャツに手書きで書かれた「密会」って何?と思ったけど、
確か「ジャングルマニア」のユニフォームに「密林」って書いてあるので
それのパロディか・・と納得。
匠「それにしても、なんで”表面張力”なの?」と、もっこり部長に
聞いてみると
も「なんか4文字だったら、強そうでしょう?」
匠「う~ん、関西龍舟、東京龍舟、東海龍舟・・ まあ、確かに
4文字で強いチームは沢山あるけど、それらは皆、”龍舟”だし、
”表面張力”だったら、はたして強いと思うのかなあ??」
なんか良くわからないけど、でも、混成メンバーの所属チーム名だけ
聞いていたら、強豪チーム揃いなので、結果的にかなりの実力派
チームであることが想像される。
その後も、他のチームから
他「表面張力って?」と聞かれるたびに
匠「ああ、表面張力さんは、もっこり、熊野、ジャングル、トリッド・・・」
と説明すると、
他「それって、強いんじゃないの?」
匠「そうでしょうね・・ きっと今回の大会のダークホースになりますよ」
案の定、予選第一回戦(注:専業チームも ”2回戦ベストタイム制”だ)
での、「表面張力」のタイムは、2分21秒と、決勝進出の可能性の高い
好タイムをたたき出す。
ん? 2分・・? と思うかもしれない。
まあ、普段の短距離(200~250m)レースでの、ドラゴンのタイムは
概ね1分程度だ、しかも市内の部の20人艇10人漕ぎとは異なり、
市外の部(混合)は、20人漕ぎのレギュラールールである。
そう、つまり、この堺泉北港大会の、ドラゴン専業チームによる、混合、
オープンの部は、他のドラゴン大会ではあまり無い、中距離、すなわち
500mのレースなのだ。
市内の部(250m戦)が終了したあと、わずかな時間で、スタートラインを
ずらさなければならない。勿論、スタート審判席(テント)の移動は大変だが
私は特に、PA(放送用システム)の移動を心配していた。
スタート席にいた現場のPAマンさん(専門業者)の方に、
匠「こちらのミキサーの接続は、キャノンケーブルですか? これを、あと
250mも伸ばすの大変ですよね、ケーブル重いし、長いと値段も高いし」
P「はい、バランス(XLR,キャノンとも言う)でないと、ノイズ乗りますしね」
匠「まあハインピ(インピーダンス)でないと難しいですよね、でも、最近では、
アナログではなく、イーサ(ネット)で、デジタルで繋ぐのもありですよね」
P「そうなんですよ、色々とデジタル系が増えてきてますね」
匠「フェーダーのシーケンスを覚えさせるとか・・ 新しい技術が出てくると、
PAさんもなかなか大変ですよね。まあ、カメラなんかも同じですよ、
私はやってませんが、最近では「ドローンを飛ばせ」とか言われる
らしいですしね、
そんな事いったって、今まで、スティルとかビデオ撮ってた人が、いきなり
ラジコン飛ばせって言われたってねえ・・ 出来るわけないですよね(汗)」
P「あはは、まさしくそうですね」
PAだけではなく、500m戦となると、スタッフもまた大変だ。
ス「あれ~ 匠さん、これ撮ったら、遊んでるみたいぃぃ・・・」
と、自転車でスタートラインから本部席に激走するスタッフ。
まあ、心配しなくても、500mでは業務連絡が大変なのはわかりますよ、
もちろん無線はありますけどね、話すだけではなく、色々持っていったり
持って帰ってくるモノもあるだろうし。
ちなみに、写真だが、疾走感とかを出すのに、「流し撮り」やら「ブラし撮り」
やらの面倒なテクを使わずしても、自転車の進行方向に下に傾け、ぎりぎりに
寄せた構図にするのみでも、走っている感じは出る。人間が、直感的にそういう
画像を見れば、そう感じるからだ、ただ、進行方向に対して縦位置にカメラを
構えるのは思っているよりずっと「心理的」に難しく、下手をすれば流し撮りや
ブラし撮りよりも困難かも知れないが・・
さて、こちらは「常翔喜龍」、大阪産業大学のチームなので、毎年メンバーが
入れ替わる、今日は顧問の先生が来ていられたので、そのシステムについて
長所も短所もあるという話から、「クラブ化はしないのですか?」と聞くと
顧「今は同好会ですよ、その場合はむしろ特別な予算がつくのです、クラブと
なると、また別の予算獲得方法になるのですので、むしろ大変かな?
まあ、私は、早くクラブ化するべきと考えていますけどね・・」との回答。
「常翔喜龍」の、今日の予選ベストタイムは2分32秒、
(男女)混合の部での、今日のコンディションでの決勝進出ラインは
2分28秒以下と予想されるので、ちょっとだけ届かないか・・
こちらは「一寸防士」最近はちょっと活動のアクティビティは下がっているが、
この「高石大会」は、以前からずっと参加し続けている模様だ。
一「あまり練習していなくて」ということだが、まあ、他の多くのチームも
同様の悩みを抱えている。
消防士さんのチームなので、女性の比率が低いチームだ、よって、
今回も「混合の部」には出られず、強豪揃いの「オープンの部」に
出場せざるを得ず、かなり苦戦しそうな雰囲気だ、まあ、それでも、
古くからの常連チームなので、できるだけ長く続けて欲しいと思う。
・・と、ここで、ちょっとしたハプニングが発生。
高石市の広報のスタッフ2名が、カメラを持って大会の模様を撮影して
いたのだが、レンズキャップを落として、それが運悪く、コンクリートの隙間に
挟まってしまった。そのキャップは上から見えているのだが、木の枝などでは、
うまく取り出せない。
高「う~ん、取れないなあ」
匠「ご自分のカメラですか?」
高「いえ、(高石)市のカメラなんですよ、弁償しないと(汗)」
匠「まあ、ニコンってロゴの入っていないキャップだったら、250円くらいで
買えるとは思いますけどね」
高「そうなんですか、じゃあ、もういいかな・・」
匠「でも、見えていて取れないのは、しゃくですよね。
ちなみに私の場合は、キャップは落としやすいので、家に置いてきます」
高「はあ、なるほど!」
・・と、そのとき
J「どれどれ、どうしたの?」
JDBA(日本協会)のスタッフが2名近寄ってきた、簡単に事情を説明すると
J「それなら、ちょっとやらせてみて」と、なんとかキャップを吊り上げようとする
まあ高いものではないし、高石市の広報マンは、もうあきらめていたのだが、
実はJDBAのスタッフは、特に器用な2人だ、故障した艇や用具の修理
までこなしてしまうし、元々そういうのが好きなのであろう、針金を
釣り針型に曲げるなり色々工夫して、数分で見事にキャップを回収した。
高「なんとお礼を言ったら良いものか・・ ありがとうございました」
J「いえいえ、これしきのこと」
匠「特に、修理とか、こういうの得意な人達だから」
J「また~、そういう風に言うから、修理とかあれば、すぐ廻ってくるし!」
匠「あはは・・ まあ、頼られているということですよ」
今回の大会では、ちょっとしたハプニングがいくつか起こっている、
たとえば、レースの最中、ボラが驚いて飛び上がって、ドラゴン艇の中に
飛び込んでくるとか、異チーム交流会長R氏が海に財布を落とした
(実際には、そうなりかけただけ)とか・・まあ、そうした小さい事件が
いくつかあって、それが後になって、本日の「最大のハプニング」にまで
発展するのだが、その話は、また後編でのお楽しみとしておこう。
「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」
まあ、”滋賀県の雄”と呼ばれる強豪チームであるから、よほどの事が
なければ、決勝進出は固いところであろう。
けど、今回の混合の部のチームを見ている感じでは、A登録の「シンバ」は
まあ、頭ひとつ抜けている実力と思うが、他のチームが比較的実力伯仲で
混戦模様になると予想している。
順当に行けば、シンバ、琵琶ドラ、吹龍、バナナ・・・ という予想で、
「バーバリアンズ」は、昨年は関西龍舟は、メンバー再編成の途中であり、
新メンバー主体のサブチームは、まだ実力がついていなかった。
まあしかし、いつまでも編成中、という訳でもないだろうし、そのあたりは
どこまで仕上がってきているか、良くわからない。
また、混成チームである「表面張力」や「みっくちゅじゅーちゅ」の実力も
コラボの状態によりけりなので不明だ、ただ、予選第一戦を見るかぎり、
この2つの混成チームはかなり好調、予選突破ラインの2分28秒を
超えてきている。
特に表面張力は2分21秒と、「シンバ」に続く第二位のタイムであった
から、予選2回戦はメンバーを休ませる(減らす)戦略に出てきている。
2回戦では、そのすきに、一回戦不調だった「バーバリアンズ」が
タイムを伸ばして、なんとか2分29秒を出してきた、しかし、これでも
予選突破の当確ラインぎりぎりだ、その付近のタイムにひしめく、
バナナ、吹龍、浪わ、常翔あたりと、コンマ秒単位での決勝枠争いに
なっている。
そして、そうやって決勝進出をとげたとして、「シンバ」に続く順位は、
残りのチームがほぼ実力伯仲なため、順位不明の混戦になることは
間違いない。
大会の記録撮影をしていた、高石市、高石商工会、サンスポなどの若手
カメラマン達に、そうした大会の機微というか、見所を説明してあげた。
そうしたレース予想などによって、写真を撮る場所も、適正なアングルも
すべて影響するのだと。具体的には、混戦模様ならば、ゴールラインで
撮るのが面白く、独走レースならば、スタートでしか複数の艇は同時には
撮れないと。また、自分から見て手前のレーンの艇が速い場合は、
斜めアングルで他の艇との差を圧縮して撮れるが、逆に奥のレーンが
速い場合は、そのアングルからではどうにもならないこと。
さらには、予選と決勝の時刻差で、太陽の位置も変わり、逆光、順光
などで影が出たり、水面が反射したり、あるいは露出補正がどの程度
必要になったりするかなど・・ また、満潮や干潮、風の様子などの
コンディションによってもレースに影響があること。
全ては、チーム毎の実力差、速度差を把握して、レース予測を立てながら
でないと、撮るべきポイントが決まらない、あるいは、過去のレースによる
チーム間の順位やライバル関係などを知った上でないと、ストーリーのある
写真にはならないことなど、である。
若手カメラマン(記者)達は
若「なるほど~ そういう視点でレースを見ると、とてつもなく面白いです、
うん、なんとなく、わかってきました、確かにドラマですね~」
匠「なので、記事を書くにしても、”何月何日、どこそこでドラゴンのレースが
行われました、太鼓の音にあわせ、ヨイショと漕ぐ熱戦が繰り広げられ
どこそこが優勝しました”、とかでは、読者が全然感情移入できないん
ですよ。もっと、そのレースに隠れた人間ドラマとかを記事にしなくては」
若「ふうむ・・耳の痛い話です、まあ、記事の掲載枠が限られているので、
どうしてもそうなるのですが、せめて1行だけでも、数十文字だけでも、
記事の中にドラマを書いていきたいですね」
匠「まあ、今日、ドラマが生まれるとするならば、関ドラがワンツーフィニッシュ
するか、初の関東関西混成チーム表面張力が優勝するか、bpが磯風に
勝つか、あるいは磯風が2分を切るか・・どれも、まずありえないのですが、
それくらい面白いことが起きたら、それはもう完全にドラマです!
しかし、本当は、もっと、ごく普通に、淡々と進行していくレースの中にも
様々な人間模様がドラマチックに潜んでいるのですけどね・・・」
結局、混合の部は、2回戦を終えて、ベストタイムをたたき出した以下の
5チームが決勝進出となった。
関西龍舟シンバ、表面張力、みっくちゅじゅーちゅ、琵琶ドラ、バーバリアンズ
まあ、ある程度は予想通りだが、混成チーム2つ(表面張力、みっくちゅ)の
健闘が光っている、それと、チーム再編成中の関西龍舟バーバリアンズは
予選1回戦で苦戦したがうまく持ち直し、コンマ1秒差でなんとか決勝進出だ。
コンマ1秒差で決勝を逃した「バナナ」(上写真)は、悔しいところだが、
バ「まあ、それが、今の俺達の実力だよ」と、達観した様子。
混戦が予想される混合の部の決勝を見ようとゴールラインの近くに移動
すると、上に居るスタッフ席から声がかかる
ス「匠さん、こっちも撮ってる?」
匠「ああ、ずっとそこに居てたから、撮れてない、と思う・・・」
まあ、今日の大会、いや、今日にかぎらず、1つの大会では、選手達だけ
でも500名は軽く超える、それにスタッフなどを加え、大規模な大会では、
おそらく2000名近くになったケースもあったであろう、実のところそれらの
人達を、もらさず撮るというのは不可能な話だ。
JDBAスタッフのMさんたちも、外に出て色々歩き回っているのであれば
出会う確率も高くなるのだが、今回は決勝審判として持ち場を動けない
立場だったので、なかなか撮るチャンスはなくなってくる。
そうそう、撮影枚数の話だが、フィルム時代での、1つのドラゴン大会での
撮影枚数は、100~200枚程度であった、まあ、フィルム5本前後という
感じだったと思う。
それが、デジタル時代の初期(10年前前後)で、200~300枚となった。
メモリーも高価だったし、バッテリーの持ちも悪かったからおのずと限界は
あった。
その後、デジカメの性能が上がり、メモリーや本体等のコストも下がって
くると、500~700枚となり、近年では、撮影枚数は1000枚を軽く超える
時もある。
しかし、それらを選別したり編集したりする手間は、撮影に擁した時間を
はるかに越える。普通は、編集時間は、撮影時間の5割増から2倍、
すなわち、8時間の撮影であれば編集に12~16時間もかかってしまう、
それは、コスト(すなわち手間)的には大問題だ。
最近では、4Kフォト(毎秒30枚撮れる)などが、新機能としてろ喧伝
されているが、そういう機能は、短時間だけしか撮影しない人向けの
機能だと思う。もし、丸一日そんな調子で撮っていたら、何万枚もの撮影
枚数となってしまう、そんな枚数を選別や編集する暇など、どう考えても
あるわけが無い、あったとしても、撮っている時間のギャラで、編集時間が
まかなえるはずがない(見合わない)
デジタル時代の当初には、フィルム時代の10倍の撮影枚数といわれて
きたが、さすがにそれでは実務コストが見合わない、現代の状況では、
無駄打ちをいかに減らすかが、むしろポイントになってきているのだ。
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さて、余談はこのあたりまでにして、
混合の部の決勝戦だが、
予想通り「関西龍舟シンバ」が先行逃げ切りで優勝。
「シンバ」は、本大会の第3回、第4回で優勝しているので、これで3連覇だ。
次いで、初の関東関西コラボの「表面張力」が2位、まあ、健闘したとも言えるし
メンバー構成からすれば順当、とも言うこともできるであろう。
ちなみに、メンバーとして数名入っている「トリッドストーム」は、
本大会の第1回、第2回で混合の部で連覇している、また「熊野水軍」も
第2回大会ではオープンで優勝している。
そして、3位には、尻上がりにタイムを伸ばしてきた「関西龍舟
バーバリアンズ」が入った。こちらは、勿論、「シンバ」の兄弟チームである。
結果的には混合の部は、極めて順当な、つまりハプニングも無い穏やかな
結果となったのだが、この次のレースで、誰もが驚く、信じられない状況が
起こるとは、この時点で誰が予測できただろうか?
さて、波乱の後編に続く・・