今年の「熱い季節」ドラゴンボート観戦記事は、2015年5月10日に、
京都・宇治にて行われた、宇治川・源平・龍舟祭からの幕開けだ。
大会の開催場所は、宇治川。
ドラゴンの観戦をほとんどしたことの無い宇治在住等の知人に、
匠「今度、宇治川でドラゴンボートの大会がありますよ」と言うと、
知「え?宇治川の何処でボートを漕ぐの? 流されるでしょう?」
と聞き返される。
まあ、宇治川は、水量も多く、流れが速い時もあるので、そう思うので
あろう、なにせ、琵琶湖を流れ出る唯一の川である瀬田川の下流が
宇治川になっている(さらには淀川となっていく)わけだから・・
匠「いえ、宇治川の本流ではなく、塔ノ島をはさんだ支流の方ですよ」
知「ああ、なるほど、普段は、観光船が運航している所ね!」
匠「そう、そこですよ、見に来てくださいね」
というわけで、この会場は、写真に見える橋の先で、支流の流れを
塞き止めていて、水流はほとんど無い。なので、まあ、ドラゴンを
漕ぐには比較的適している環境であろう。(「比較的」と書いたのは
ちょっと問題があるということだ、それはまた後編で詳しく説明するが・・)
で、支流の川幅はさほど広くない、したがって、各レースは2艘建ての
マッチレース(1対1)で行われる。
マッチレースの場合、通常の、予選→敗者復活→準決勝→決勝という、
勝ち上がり方式のルールは、トーナメントが細分化されすぎて採用しにくい、
したがって、この場合は、2回戦方式、すなわち、各チームが2回づつ漕いで、
全体のベストタイムの上位が、以降の準決勝などへ進出するという、
「ベストタイム制」のルールが用いられる場合が多い。
(小規模大会では、2回戦合計タイム制というルールの場合も良くある)
で、2艘建てマッチレースであるが故に、大会名も、宇治の源平合戦に
なぞらえたタイトルとなっているし、宇治で使う10人漕ぎスモール艇も
それぞれ、義経・義仲・高綱・景季といった、源平の「宇治川先陣争い」
の故事の武将にちなんだ愛称がつけられている。
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さて、本大会も、すでに3年目。
その特徴としては、第一に、観光客の観戦が多い大会であること、
第二に、選手の仮装あり、のルールであること、そして第三に、
「宇治スイーツ」のイベントと連動していることだ。
仮装と観客の多さは非常に関連している。勿論、誰も見ていないような
場所で行われる大会であれば、仮装をする必要もないからだ。
そういう意味では、宇治大会は、ドラゴンボート大会では「見られる事」
を意識した部類の大会である事は間違いない。
例えば、将来的なドラゴンボートのプロ化を想定した場合、そうした
「観客目線」は非常に重要な要素となる。
実は、前述のように、まったくドラゴン観戦の経験の無い数名の知人に
声を掛けたのは、「観客目線」において、どういった点が気になるのか?
すなわち、わかりにくい、つまらない、といったネガティブな要因を
ヒヤリングしたい、という意図もあった訳だ。
私はもう、ドラゴンボートの事を知りすぎている、だから、レースのルールも
チームの特徴も、果ては、レースの勝敗まで予想できてしまう。なのでまあ、
ドラゴンを見ていても、面白いのであるが、もし、これが観戦ビギナーで
あったら、「どのチームが強いかわからない」といった不満ばかりか、
もっと根本的に、「どこが勝ったのかわからない」、いや、そもそも、
「ルールがわからない」という事になり、きっと、色々と大会の問題点が
目につくだろうと思う。観光客の観戦が多いというのは、まさしくそういう
課題をはらんでいることになり、そのリサーチは重要であると認識している。
さあ、早速「仮装」チームが出てきている。
舵取りが「牛魔王」とくれば、チーム本体はやっぱり・・・
「ドラゴンボール」、そう来るよね、勿論「亀仙人」も何処かに居るのでしょう。
「ドラゴンボート」と、ネットで検索しようとすると、普通ならば先読み機能が
あって、全ての文字を入力しなくても済むのだが、ドラゴンボートに関しては
ドラゴンボールの検索ワードがあるので、最後の1文字まで入力しないと
ならない。まあ、昔、どこかの大会か実況か、ニュース用のMCだったか?
間違えて「ドラゴンボール」と言ってしまった事を記憶しているが、
確かに一般の方には、間違いやすいかも知れない。勿論、そういう”洒落”を
今回の仮装のコンセプトとしているのであろう。
で、こちらの仮装チームは、和歌山の強豪「もっこりドラゴンボート部」だ、
毎年、かなり凝った仮装をしてきて、対戦相手に
「あんな、ふざけたチームに負けたくない」と言わせるのだが、
どっこい、実力は決してふざけたものではなく、和歌山の大会をはじめ、
琵琶湖や各地の大会で、優勝や準優勝の経験多数の強豪チームで
あるが故に、対戦チームは「あ~、やっぱ負けてしまった~!」ということに
なる事が多々ある。今回もまた、そんな風に、対戦相手の、兵庫の強豪
チームである「Team BANANA(葵)」を1回戦で下している。
(2回戦では僅差で BANANAの勝ち)
まあ、実際のところ、今回のレースは、2回戦のベストタイム制ルール
なので、個々のマッチレースの勝敗は、ほとんど意味が無い。
同様のルールの以前の他の大会で、中堅チーム「打艇龍舟倶楽部」が、
”1度も対戦相手のチームに勝つことなく”準優勝を果たした実例がある。
これは、すなわち、速いチームに当たりつづけて負けていたのだが、
速いチームのペースにひっぱられて、自然と良いタイムが出ていたからだ、
だから、個々のレースでの直接対戦の勝敗よりも、目に見えない、どこかの
チームが叩き出した好タイムとの戦いとなる。これは、ある意味、かなり
厳しい戦いだ。目の前の敵ではなく、仮想の(仮装ではないです・・笑)
敵チームの漕ぎを想像しながら対戦する事になるわけだから・・
さて、宇治大会は、2カテゴリー制だ、その区分は
「市内の部」および「オープン(市外)の部」となっている。
これはすなわち「実力別カテゴリー分け」を行っている事と等しい。
数年前までのドラゴンボート大会では、基本的なカテゴリーは「男女混合」と
「オープン(性別無関係)」の2分類で、大規模大会では、さらに、これに加えて
「女子」や「シニア(40歳以上)」が追加される、という風であった。
しかし、近年、いわゆる「ドラゴン専業チーム」が、組織的かつ合理的な
トレーニング方法を取り入れるようになり、専業チームの実力が飛躍的に
アップした、その結果、これまでのカテゴリー分けであると、ビギナーチーム
や新規参戦チームなどが上位に入賞する事は、99%不可能な話になって
しまった。
なので、数年前から、静岡県の御前崎市長杯、ツナカップ大会や、
地方の大会などで、実力別カテゴリー分けが採用されてきている。
この宇治大会も一種のその方式であるし、8月に行われる大阪南港
ATC大会でも、今年からは「エキスパート」(ドラゴン経験3年以上)と
「チャンレジ」(その他)の実力別カテゴリー分けを採用する。
また、ドラゴン艇は、本来22人乗り(漕ぎ手20人+太鼓+舵)であるが、
ライフスタイルの多様化から、現代においては、それだけの人数をチームで
集めるのは非常に難しい。なにせ、サッカー2チーム分の人数であるから、
メジャースポーツのサッカーの場合ですら、クラブ内で紅白戦ができる
ほどの人数は、なかなか集まりにくいであろう。
というわけで、近年は、スモールドラゴン(10人漕ぎ+太鼓+舵)が
各地の大会で主流になってきている。
一昨年から「スモールドラゴン日本選手権」が琵琶湖で行われるように
なってきているし、同年から始まったこの宇治大会も、昨年から本大会
専用の「スモール艇」を新規購入して運用している。
変則的なところでは、大阪ATC大会では、22人艇を用いた10人漕ぎの
ルールだ、これは大会に併設された「親子体験乗船会」が人気で、そのために
乗船人数をできるだけ多くするための措置だ(しかし、レースでは10人漕ぎ)
さらに変則ルールといえば、今年6月に、静岡で行われる御前崎市長杯では
22人艇を用いた「16人漕ぎ」のルールだ、まあ、クルーが4人減るだけでも
ずいぶんと参加しやすくなると予想される。
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さて、色々と寄り道しているが、まず「市内の部」の状況を偵察してみよう。
こちらは、「チームカオスドラゴンボート部」
今回初出場だが、タイムは 1分15秒台、これはなかなかのタイムで
1回戦を終わった段階では、4位と、準決勝候補となる大健闘だ。
匠「カオスさんは、どんな集まりなのですか?」
カ「いや~ 宇治市内の居酒屋の常連客で結成されたチームなんですよ」
匠「はあ、なるほど・・」
カ「変でしょう? 大会が終わった後、飲むことだけが楽しみです」
匠「そういえば、昨年の大阪の猪名川の大会でも、居酒屋常連客チームが
上位に入賞していますよ、だから、あまり変とは思わないですよ」
カ「へえ~ 大阪でもね」
匠「では、2回戦も頑張ってくださいね・・」
こちらは、注目の市内強豪「よゆうちからこぶ」
匠「こんにちは、よゆうちからこぶさんですよね?」
よ「あ、昨年も写真撮られてましたね?」
匠「よゆうちからこぶさん、昨年は確か、予選トップのタイプを叩き出しながらも、
3位に甘んじた、という結果でしたよね?」
よ「よく覚えてますね~ まさしくそうでした(汗)」
匠「確か、市外の強豪チームの方が目をかけて、漕ぎ方のアドバイスを
されましたよね、もしかして、あれで負けたと・・(汗)
まあ、あのアドバイスは決して間違ってないんですよ、
ただ、それを実行するのは、相当練習していないと難しいと思います」
よ「では、今日も、市内で、どこか速いチームがあったら、そこに
アドバイスしてもらいますか」
匠「あっはっは、それは良い作戦だ!」
さて、こちらは、宇治大会のホスト側である「宇治市商工会青年部」の
チームだ、3度目の出場ともなると、なかなかサマになってきているが、
タイムの方は、ちょっと伸び悩み 1分22秒台。
ちなみに、今日のレース距離は、公称「220m」である、
通常の短距離大会は、200mの距離なのだが、この会場は、
ブイやスタート、ゴールのラインの設置の問題からか?、わずかに
長めの220mということだ。しかし、微妙にコースは曲がっており、
タイムの傾向から逆算すると、225~230m程度の距離に
なっているようにも感じる。(通常200mを60秒程で漕ぎきる
チームが70秒弱かかっているため)
で、宇治の「市内の部」は、常連チームが固定化しつつあり、
今、一番、観戦側にとっても、面白いタイミングだ。
第一回、第二回の大会とも、決勝は「チーム賑やかし」と「エンブレムジャパン」
の一騎打ちとなり、どちらも「賑やかし」が優勝している。
すなわち「エンブレム」は万年二位から脱却し、初優勝を当然狙っているし
「賑やかし」は、それを阻止してV3を実現したいところ。
さらに、それに加えて、前述の、昨年最速「よゆうちからこぶ」や、
この宇治大会からドラゴンをはじめ、各地の大会にも出場してきている
「メタルスタイリスト福田」が今年も「ブルー」「レッド」の2チームを
送り込んで、入賞を狙っている。(昨年はぎりぎりで4位)
ちなみに「メタルスタイリスト福田」は、ブルーとレッドの他、
琵琶湖のキッズ大会で、「イエロー」のチームを送り込んだ事があり、
できれば、女子チーム「ピンク」とシニアチーム「グリーン」を結成し、
「ゴレンジャー」とするのが目標だと聞く(笑)
さて、市内の部の1回戦では、結局のところ、
エンブレム、team Coro Coro Japan 、賑やかし、カオス、
よゆうちからこぶ、メタルスタイリスト(レッド)のタイム順位と
なっている。現在2位の Coro Coro は初参加だが、こちらはスポーツ
ジムの集まりということで、この手のビギナーチームは基本的な体力に
優位があり、他大会ても、市内の部等では上位に来るケースが良くある。
準決勝に進めるのは上位のタイムを出した4チームだ。
さて、このあたりで「ちょっと波乱気味だなあ」と思っていたのだが、
それがコースコンディションに起因するものだとは気がつかなかった。
(まあ、そのあたりは、また後編で詳しく述べるとしよう)
こちらは、オープン(市外)の部 超ベテランの「こいさんず」チームだ、
現役最年長の女子チーム、20年以上も前からドラゴン大会に出ている。
まあ、最近は、ちょっと休み休みだが・・
匠「お、こいさんずさん、ひさしぶりに復活ですね!」
こ「はい、今回は10人漕ぎですしね、しかし、今日の回りも
みんな速いチームばかりですねぇ」
匠「まあ、かなり厳しいでしょうね・・
そう、ATC大会はいかがでしょう? 今年から”チャレンジの部”
をやりますので、そこに出られたら? ちなみに、賞品は韓国釜山
の往復フェリーチケットがあるそうですよ」
こ「ATC大会、ああ、昨年ちょっと様子を見に行きました、
今年は出たいですね、ちなみに、韓流大好きですよ」
匠「あ、そうでしたね、雨の中、観戦しに来ていただいた・・
特別賞があるとかいうことで、優勝しなくてもいけるかも(??)
是非、韓国とかに行ってきてくださいね」
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パ「匠さん、こっちのチームも撮ってよ~」
匠「あ、パイレーツさん(大阪のベテランチーム)、すぐ行きますよ」
・・はいはい、「じゃあ、皆さん並んで」背景はこの角度が良いかな?
パ「匠さん、気が向かないとブログに載せてくれないからなあ」
匠「気が向くって・・ いや、そうじゃあなくて、記事の流れになるか
どうか、ですよ。 何か面白いドラマやエピソードがあるとか・・」
パ「ん? たとえば?」
匠「ああ、そうだ、たとえば、”パイレーツ、びわにゃん(琵琶ドラの
女子チーム)に、2回戦連敗!!”とか」
パ「(苦笑) まあ、そりゃあ、あちらさんは、毎週練習しているだろうし」
匠「ちょうど隣に居るので、聞いてみましょう。
”びわにゃん”さん(今回は実際には「琵琶湖龍舟」の名前でエントリー)
練習ってどれくらいやってますか?」
び「毎週ですよ、しかも土日」
パ「ほら、勝てるわけないよ~」
匠「あはは・・ まあ、頑張ってください」
ということで、「パイレーツ」は、隣のレーンを走る「びわにゃん」を
チラチラと見て意識しながらのレース展開となったが、悪い予想が的中で、
1回戦、2回戦とも、女子チーム「琵琶湖龍舟」(びわにゃん)に
連敗となってしまった(汗)
まあ、タイム制だから、個々の勝敗はあまり関係ないけど・・
しかし、「パイレーツ」、2レーン(写真では、奥の側に見えるレーン)で、
ずいぶんとタイム差が出てしまっているなあ、いくら強豪の「びわにゃん」
とは言え、男子ベテランチームが、女子チームに3秒以上の差をつけられて
しまうのは、なかなか考えにくい。もしかして何かレーンにクセがあるのかな?
(たとえば、2レーンは距離が長いとか? 曲がっているとか?
実は、この件が、後半の勝敗に大きく左右することになるのだが・・)
さて、こちらは、元気いっぱいの「大阪産業大学 常翔喜龍B」チーム
匠「あれ?だいぶメンバー変わりました?」
常「はい、卒業した先輩達がいますので」
匠「そういえば、昨年の天神大会で、”交替式”をやってましたね、
まあ、大学だからね、メンバーが変わっていくのはしかたないですね」
常「はい、今日は若手で頑張ります!」
まあ、オジサン目線で見れば、現役でも卒業生でも十分若手だけどね・・
常翔喜龍 A,Bの2チームは、1分13秒台と、健闘したのだが、
ドラゴン専業チームばかりの、市外オープンの部では、残念ながら
このタイムでは準決勝には残れない。準決勝進出タイムは、ズバリ
1分8秒台までで、安全圏は、1分7秒台と予想されるからだ。
さて、市外(オープン)の部では、結局1回戦を終えた時点で、
bp、都島(大阪市立都島工業高等学校ドラゴンファイターズ)、
池の里Lakers!、すいすい丸(京都工場保健会すいすい丸プレミアムドック)
琵琶湖ドラゴンボート部、小寺製作所、あたりが、1分10秒までのタイムだ。
午後からは、ちょっと向かい風が強くなりそうな気配で、コンデイションが
悪くなる恐れがあり、恐らくは、1回戦のベストタイムのまま、準決勝進出の
4チームが決まるであろう。
なので、当落線上にある「すいすい丸」「琵琶ドラ」「小寺」あたりは、なんとか
頑張って、2秒程度はタイムを縮めたいところ。
さらには、現在3位の「池の里」も、他に、2つ以上のチームが頑張って
タイムを伸ばしてくる可能性もあるので、できれば2回戦では、1秒程度
縮めて、1分7秒台のいわゆる「安全圏」を確保しておきたいところだ。
このへんの微妙なタイムの駆け引きの面白さは、残念ながら、
観光客(ビギナー観客)には、伝わるとは思えない。
そのあたりが、冒頭に述べた「見せる大会」での、課題なんだろうな、
と思われる。 この問題は、引き続き、また後編でも述べていくとしよう。
さて、長くなってきたので、このあたりで、後編に続く・・