2014年10月5日に、琵琶湖漕艇場にて行われた
「第9回びわ湖ドラゴンボート1000m選手権大会」の模様より。
台風18号の本州直撃が迫っているこの日、
本来であれば、近畿圏では同時に4つのドラゴンボート大会が
行われる予定の日であった.ドラゴンはそんなにメジャーな
競技ではないので、競技人口はおそらく万のオーダーには届いて
いない、だとすると、同時にいくつもの大会があると、参加チームが
分散してしまうという課題が発生している。
これは結構大きな問題であり、主催者側の都合をどのように調整
していくのか? そして各地の主催者に、いちはやく他地区の大会の
日程などのスケジュールをどう伝えるのか?そうした点が今後の改善
ポイントになると思ってはいたのだが、たまたま台風の直撃によって、
2大会が中止となってしまった。しかし、出場予定の大会が中止に
なったからと言って、チームは、急に、開催する他地区の大会に
エントリーしなおす、という訳にもいかない。
まあ、なので、今回の大会は例年より少ないチーム数での実施と
なっている。
ちなみに、通年のドラゴン大会スケジュールの傾向については、
以前の記事、猪名川大会の観戦記事の中篇で記載している。
全国レベルで調べてみると、実に多くのドラゴンボートあるいは
関連競技(ペーロン、ドラゴンカヌー、ハーリーなど)が
行われていて、大会主催側は、このような多くの情報の全体像を
把握する手段が無いのであろう、だから同じ日に多数の大会が
開催されるという問題が発生してしまうのではなかろうかと思う。
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さて、冒頭の写真は、1回戦(注:本大会は、長距離1000mの
2回戦の合計タイムで勝敗を決める)で、4分32秒の好タイムを
出した、地元滋賀の強豪「池の里Lakers!」、ただ、本日は、
フォローの風約5m、追い潮約40cmというレースコンディション
により、通常の条件よりも、20秒以上タイムが短縮されるという
状況だ。こうした状況で「池の里」のタイムは1回戦ベストではなく、
「チームSH」(相生ペーロンの強豪、IHI相生の若手チーム)が
4分30秒というタイムを出して1回戦トップとなっている。
池の里との差は約2秒、せっかく台風の中、遠方の相生から参戦して
いるので、このまま初優勝して、賞品をがっつり貰って帰りたい所だ。
そうはさせじと、虎視眈々と入賞を狙っているのは、こちらの
「Rスポーツンマンクラブ」だ。 予選タイムは4分50秒と
平凡ではあるが、今のところ2強に続くタイムであり、2回戦で
さらにタイムを伸ばせれば、3位入賞のチャンスはある。
もっとも、「R」の監督(写真右)は、計算に長けた”戦略家”で
あり、こうしたタイムとか、状況の分析はお手の物だ、
私がいちいち言わなくても、とっくに、各チームのタイムは頭に
入っていて、緻密な戦略をたててくる。
戦国大名で言えば「毛利元就」か「宇喜多直家」タイプの戦略家で
あると言えようか。
これゆえ、「R」は、現役最年長とも言われるベテランチームながら
毎年いくつかの大会で3位入賞、準優勝などの”結果を残す”事が
出来るわけなのだろうと思う。
そして「R」の本命は、この「1000m大会」に引き継いで
行われる「グランドシニア大会」(予定では午後開催になっているが、
天候の状況から、できるだけ前倒しで行われるであろう)である。
「グランドシニア大会」は年齢ハンデ戦なので、「R」は、マイナスタイムの
ハンデを貰えるのだ、通常で戦っても、他の中堅チームと同等の
実力であるから、ハンデを貰えば鬼に金棒、事実、昨年の「グランド
シニア」では、見事優勝しているので、今回は2連覇を狙っているのだ。
本年度好調の地元大津市の「小寺製作所」チーム、
短距離での「ロケットスタート」が持ち味であって「長距離レース」
は苦手としている、今回も案の定、タイムは伸びず、もう早々に
あきらめ、こちらも「グランドシニア」狙いにシフトした模様だ。
同様に、滋賀の強豪「龍人(どらんちゅ)」も元気が無い、
メンバーが足りず、無理やり集めての参戦の様子だ。
まあ、確かに、ここ2年くらいは、スモールドラゴン(10人漕ぎ)
が主流になりつつあるので、そのレギュレーションに慣れてくると、
22人乗りのレギュラールールである本1000m大会は、
メンバーを揃え難い大会、というイメージに変わってきている。
それに、「龍人」の主力メンバーの1人が、昨日は高熱を発して
寝込んでいた模様で、今日は病み上がり、そうした悪条件が
重なってか、今日の「龍人」はタイムが伸び悩み、優勝戦線から
脱落してしまっている。
台風18号直撃まで、あと十数時間、雨は現状降ったり止んだりだ、
風はやや強めの5m程度、瞬間的には7m程度にもなっていると
思われる。
合羽を着ての撮影、雨が強くなった際には、傘もさすのだが、
勿論傘をさしたら片手がふさがるので、カメラは片手撮りとなる、
なので、今日は横着して「レンズ一体型高倍率コンパクト」
いわゆる「ネオ一眼」とか「ロングズーム機」とか呼ばれている
カメラを持ってきている、
これなら、最大の400mm望遠でも、無理をすれば片手撮りが出来るが、
センサーサイズが小さい為、逆光や高コントランスト被写体に弱く、
かつ高倍率ズームは設計に無理をしているため、望遠側で解像度が
低下するという問題を抱えている、つまり、まともに写らないのだ。
けど、一眼に望遠を持ってきたところで、このコンディションでは
まともに写らない、いずれにしても雨中では無理があるのだ。
ビギナーカメラマンなら、こんな状況で誰も撮影しようと思わない、
であろう、まずカメラが壊れるのが怖いし、そもそも、フルオート
等の、カメラまかせで撮れるシチュエーションでも無い。
条件や撮り方にあわせ、ISO感度、露出補正量(構図で変わる)
ダイナミックレンジ調整(光や構図で変わる)、撮影距離(遠距離
になれば雨粒などでコントラストや解像度の低下が激しい)などを
考慮したり、カメラ設定を変えないとならないのだ。
そうして色々やったとしても、やはりまともには写らない(汗)
けどまあ、選手達は、こんな悪条件の中でも大会に参加してくださって
いるし、雨の中、ずぶぬれになりながら、1000mレースを2本、
これはスタート地点まで行かなくてはならないから、都合4kmにも
およぶ距離を漕ぎ、さらに続けて行われる「グランドシニア大会」
でも、最低でも200mx4の800mを漕ぐわけだ。
スタッフもまた大変だ、選手達は出番が無いときは、テントで休む
事ができるが、スタッフは休み無しでずぶぬれのまま大会の運営を
行われなければならない、ハードな条件は、選手達もスタッフも
撮影班も一緒。そもそも、過去、雨の大会がなかったわけではないし、
事実、1年のシーズンのうち、数回の大会は必ず雨に見舞われるのだ、
選手もスタッフも、あるいは私も、雨には慣れている。
まあ、という事で、無理を承知で、こちらも、そうした選手達や
スタッフの姿を、写真で記録していくことにしよう。
スタッフの多くは、地元瀬田の体育振興会などのご協力によるもの
であるが、一部は「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」や「GPO」等、
地元のドラゴンボートチームの選手達も運営に尽力していただいて
いる。ただ、やはり選手であるから、レースを見ていると漕ぎたく
なるのであろう、写真の「琵琶ドラ」の選手も、「私も漕ぐぞ」
とばかり、どこかのチームの助っ人として乗るようだ。
台風が迫っているため、今日は「超早回し」でのレース展開だ、
普通のペースであれば、1000mの場合、乗船5分、往路10分、
出走待機5分、レース5分、帰路5分、の30分に1レースペースに
なりそうだが、今日は、4艘の艇を2艘建てで交互に用い、レース
終了と同時に往路に向かうようにしている、このため、レース間隔は
15分程度と短くなり、予定を大幅に繰り上げ、できれば午後1時位
にグランドシニア大会を含む十数レースを終えてしまいたい所だ。
まあ、それはそれで良いのだが、選手達のインターバルのタイムが
殆どなく、漕ぎ終えてテントに戻ったと思ったら、すぐさま次の
出走の召集がかかる、下手をすれば「そのまま降りずに艇で待機
してください」という指示も出るのだが、「せめて水分補給くらいは
させて」との要望で、一応テントには戻れる時間は設けている。
あれ、こちらは、前編の冒頭で紹介した「IHI相生」の応援団の
女性たち、今日の相生チームのメンバーは皆若手なので、
奥様という雰囲気じゃあないなあ、メンバーの彼女さん達か?
あるいは、IHIの会社の同僚という感じだろうか?
すでに色々話をしてきているので、カメラへの警戒感も消えて
自然な表情になってきている。
匠「あれ、皆さんも漕ぐのですか?」
女「ええ、次のシニアレースに出ます」
匠「グランドシニアは、年齢ハンデ戦なのですよ、
年齢が若いと、プラスのハンデになってしまうんです、
皆さん、お若いから、たぶん苦戦しますよ(笑)」
女「え~、逆ハンデがつくの!? それ、いやだ~」
・・と言いながらも、まあ、さほど嫌そうでは無い雰囲気、
まあ、若いっていい事ですよね(笑)
と、その間に、兄貴分の「チームSH](IHI相生若手チーム)が
2回戦を終えている、タイムは驚異の4分28秒、1回戦よりさらに
2秒タイムを縮めてきている、これは、若い選手達だから、疲れを
知らないという事か?(事実、1000mの最終地点まで漕ぎに
乱れは無い)あるいは、レースコンディションがさらに好条件に
働いてきているのか(風や水流の影響)
次の「池の里」のタイム次第で優勝が決まる、
「池の里」の監督も、「R」の監督同様に数字に強い、
池「IHIさんが28秒ということは、ウチ(池の里)は、
26秒台でないと逆転できないということですね」
匠「さっき1回戦で2秒差をつけられているので、そうなりますね。
まあ、4分26秒は無理なタイムでは無いと思います、
1000mならば、レース毎に10秒程度の差というのは
良くありますからね、心配なのは「池の里」さんのメンバー
が疲れてないか・・? なにせ、「SH」は若いですからね」
池「あはは(汗)、まあ、ともかく頑張ります」
「池の里Lakers!」、必死の漕ぎを見せる・・ 対戦相手は、
今回絶不調の「龍人」だが、すでに大差をつけられてしまって
いる模様で、カメラの画角に収まっていない。
匠「まあ、「龍人」は調子悪そうだけど、4分50秒くらいは
出してくるかな?4~5艇身の差、20秒の差という感じかな?
すると、「池の里」は4分30秒ペース、この様子だと、
ラストでの、ひと漕ぎひと漕ぎが勝負だな、バテたら負けは確実、
漕ぎきって、1秒2秒の差で決まる接戦になりそうだ・・・」
「池の里」、最後まで漕ぎがバラけず、無事ゴール!
まだ正式タイムは出ていないが、確かな手ごたえを感じたのであろう、
選手達はお互いの健闘をたたえ合う・・
本部からタイムが発表される
本「ただいまのレース、1着、「池の里Lakers!」 タイムは
4分27秒XX・・・」
匠「あちゃ~、1秒、あるいはそれ以下、「チームSH」に届いて
いないかなあ? すると「SH」が初優勝、「池の里」はまた
準優勝かあ・・」
それでも「池の里」のタイムは、「SH」の2本目を上回り、
本日の最速タイムをマークした。
まあ、見ごたえのあるレースであった。
しかし、本大会はタイム合計制なので、実際のところのレースは、
相手のチームと競り合うわけではない。
けれど、選手達の頭の中には、仮想の相手チームのタイムや
ペースが映像として浮かんでいるのだ。その見えない相手に
勝利するために、必死でペースを守り、自分自身と戦う。
ドラゴン観戦初心者には、なかなかわからないと思うが、これは
実に面白いレース展開なのだ。
こうしたレースの醍醐味が、ドラゴンボートの観客に伝わるのは
いつの日になる事だろうか・・? と思ってしまう。
残念ながら、今の段階では、
観「あ、オレンジ色のチーム、速いねぇ・・
あれで優勝? え? 違うの? じゃあ、何処が勝ったの?」
くらいの感想に過ぎないであろう。
このあたり、観客のレベルアップが図れないと、将来的な
ドランボートのビジネスモデル革新には結びつかないのだ。
たとえば、「優勝チーム予想投票」というイベントをやったと
しても、恐らくはテキトーな予想にしかならないであろうし、
分かりやすい”決勝戦”くらいしか、観客の興味を引く対象には
なりえない、そのあたりが、ドラゴンボートのメジャー化を阻む
最大要因なのだろうと思う。
チームもまた競技志向が強く、悪い言い方をすればアマチュア的で
魅せる要素が伴っていない、なので、観客にはなかなか、そうした
スポーツ競技観戦としての醍醐味が伝わりにくいのだ・・
だが、観客にはわからなくても選手には十分それがわかっている。
だから、「池の里」が戻ってきたとき、「SH」は、全員で出迎え、
好レースを讃えていたのだ・・
一緒に隣のレーンで競わなくても、心の中では、仮想のレースを
戦ってきたのだ、だから気持ちは通じ合う。
さて、今日の1000m大会の結果としては、
「チームSH」は、コンマ7秒差で、嬉しい本大会初優勝。
「池の里Lakers!」、地元大会で今回もまた悔しい準優勝。
3位には、上位2強のタイムには及ばないまでも、2回戦で
頑張った「Rスポーツマンクラブ」が入った。
優勝した「チームSH」のメンバー達、
賞品の「近江米」60kgをゲットした模様だ。
ちなみに、近江米はなかなかの高級ブランドで、60kgとも
なると、時価4万円くらいに相当すると思われる。
あるいは、びわこペーロンの賞品の「近江牛」も高級品であり、
100g単価が1800円くらいするので、それが5kgとなると
なんと9万円相当にもなるという高額賞品だ。
場合により「近江牛」+「近江米」が出たときもあったので、
金額としては相当なものになる、最近は(夏場の大会の為)
その場で賞品を渡さず、目録にて後で自宅発送としている
様子であるが、数年前までは、その場渡しの時もあったので
びわこペーロン大会終了後、各カテゴリーでの優勝4チームが
現地で焼肉BBQを行って食べて帰ったという話も聞いている。
でも、それって、近江牛20kg、げっ・・! 36万円相当では
ないですか! それが、僅か30分か1時間で、腹をすかした選手達の
胃の中に消えていくわけですね・・ 1時間で36万円(汗)
まるでホストクラブで豪遊しているようなものでしょうか?
まあ、今度から優勝チームは、まず、近江牛を拝んでからいただく
ようにしてくださいね(笑)
S「匠さん、撮影お疲れ様、これどうぞ」
「SH」(IHI相生)の選手から、ビールを手渡される。
匠「お、ありがとうございます!」
S「まだ撮影のお仕事中でしょうから、後で飲んでくださいね」
匠「了解、家に持って帰って飲みます」
S「あ、今、いいこと思いつきました!
来年のIHIチーム名ですが”プリン体オフ”にしようかな?」
匠「ぐっ・・・(汗)」
ちなみに、各地のドラゴン大会では、試合中の飲酒は厳禁と
なっている、過去に飲酒による事故があったからだとも聞いているが、
まあ、アルコールが入った状態で、水上でアクシデントがあった場合
は危険なのは確かだし、選手達は車で来ることが多いので飲酒運転も
まずい、飲酒禁止というのは極めて順当な措置だと思うので、
是非その点だけは、各大会で選手の皆様に守っていただきたいと思う。
勿論、今日のIHI相生も、レースの最中はまったく飲んでいない。
それにしても、相生のチームって、人に何かをあげる事が多いように
思える。相生の超強豪「磯風漕友会」が大会に参加している際、
チームのテントに行くと、たいがいドリンクだの、相生名物だの、
色々なものをいただく事が多い。相生の文化(慣習)なのだろうか?
まあ他人に無関心な今時のご時世としては、ちょっと古典的にも
思えるが、逆にそういう時代だからこそ、こうしたちょっとした
好意(行為)で親近感が高まるようにも思える。
さて、そんなこんなで1000m大会は終了、
時刻は午前11時あたり、台風がますます近づいて来ていて
今日の深夜には関西を直撃するか掠める模様だ、
次いで「グランドシニア大会」が行われるが、なんとかあと2時間程
で残りの全レース(7レースほどある予定だ)を消化したいところ。
以下、グランドシニア大会編に続く・・