今回が初開催となる「第一回猪名川ドラゴンボートフェスティバル」
が、大阪府池田市、猪名川(いながわ)河川敷で、2014年9月28日
に行われた。 今回が観戦記事の最終回(後編)
さて、会場となった、大阪府池田市について、少し紹介しておこう。
池田市は、大阪府西部、兵庫県との県境に位置する街だ、
主要駅である阪急池田駅は、大阪のターミナル駅(阪急)梅田駅より
急行で約20分と近く、古くからベッドタウンとして栄えている。
また、あまり知られていないが「伊丹空港」の一部は池田市となっている。
関西人にとっては、池田市は、いくつかの名産、名所のある町として
知られ、まず名産としては「チキンラーメン」の発祥の地であり、
同記念館では、300円で、自分オリジナルの「カップヌードル」を作る
ことができる。
五月山は、桜や紅葉の名所である他、著名な「五月山動物園」がある。
「五月山動物園」は、池田市立で、入園料は無料、かつては「日本で
一番小さい動物園」と言われていた(現在は、さらに小さい動物園
があるらしい)日本で初めて「ウォンバット」の繁殖に成功し、
「アルパカ」などの人気の動物が見れる、私も何度か訪れたことがある。
阪急池田駅から五月山に向かう道は商店街となっていて、商店街の
いたるところに、ウォンバットやアルパカ、ワラビーなど、脱力系の
人気動物達のイラストや像がフィーチャーされている。
今回のドラゴンボート大会の企画および運営は、一般社団法人池田青年
会議所(池田JC)によるもので、町おこしの一種として行われている。
とは言え、ドラゴンを町おこしと考えるには、大会実施にかかる費用との
バランスを考えると、経済効果を出す為には、数千人規模の集客が欲しい
ところ。しかし実際には、なかなかそれだけの人数を集める事は難しい。
すると、大会開催のトータルの効果としては、赤字(マイナス)に
なってしまう危険性がある、しかし、それでも大会は続けていく必要が
あるため(=前年よりも知名度を上げ、集客を増やすため)だんだん
主催側の負担が重たくなってくるのだ。その状況を解消する為には、
なんらかの際立ったアイデアや企画が必要になるのだが、実現可能性
のある、ユニークかつ効果的なアイデアは、どの大会においても、
なかなか簡単には生まれてこないというのが現状だ。
さて、大会の方だが、こちらは「常翔喜龍」(じょうしょうきりゅう)
前編の最後で「全員揃った集合写真を撮ろう」と言っていたのが、
やっと揃ったようだ。
予選タイムは、1分4秒と、あまり振るわず、残念ながら準決勝進出は
ならなかった。
午後からのレースコンディションは、やや強いフォローの風、
猪名川を「ラバーダム」でせき止めてあるとは言え、わずかな水流、
中堅ドラゴンチームで(200mを)1分少々、強豪ドラゴンチームで
1分を切るあたりが標準的なタイムとなっている。
ちなみに、市内の部では、準決勝進出タイムが1分ジャスト~1分1秒
と、各チーム、初めてとしては、なかなかの好タイムをマークしている。
ドラゴン専業チームが主体の「オープンの部」では、当初57秒台
あたりを予選突破(=準決勝進出)タイムと予想していたのだが、
予選1回戦で55~58秒に強豪各チームのタイムが集中し、
また、大会は合計タイム制ではなく、ベストタイム制なので、
1発勝負で速いタイムを出せば準決勝に進むことができる状況だ。
加えて、本大会はメンバー交代有りのルールになっている。
これは、大会によってそれぞれ取り決めが異なる、なんだか麻雀の、
喰いタン有りor無し、といった風に、ルールが、その都度定められる
ようなものに近い。つまり、どちらのルールがメジャー(一般的)だ
という訳ではなく、一長一短あったり普及率が五分五分だという事だ。
こうした状況から、予選2回戦は(主にダブルエントリーチームの)
メンバー交代等を含めた、”戦略的な要素”を含む熾烈な戦いとなり、
結果として、ハイレベルな準決勝進出タイムとなった。
中でも、頭脳的な戦略で大幅にタイムを伸ばし、予選を勝ち抜けた
のは、琵琶湖ドラゴンボートクラブの派生チーム「びわにゃん」
であった。(詳細は、中編を参照のこと)
で、オープンの部の準決勝進出チームとタイムは以下の通り
55秒47 「都島」(大阪市立都島工業高等学校 M's Power)
55秒84 「びわにゃん」
56秒43 「team BANANA 蒼龍」
56秒47 「DDT」(道頓堀ドラゴンボート大会 Coming Soon!)
惜しかったのは、56秒75だった「吹田龍舟倶楽部*」
本大会では、3チームをエントリーした最大勢力であったし、
予選1回戦では、全体の2番目となるタイムを出していたのに、
2本のベストタイム制のルールであった為、僅かの差で予選敗退と
なり、ちょっとがっかりした表情の「吹龍」
また、相生ペーロン強豪の「南風」(なんぷう)も、1回戦では
3位の成績であったのだが、コンディションが良くなった2回戦で
他チームほどタイムを伸ばすことができず、こちらも残念ながら
予選敗退。 私は「南風」が実力的には、決勝で「bp」軍団と
戦えるレベルであると思っていたのだが、重量級の相生ペーロン艇と
超軽量のスモール・チャンピオン艇とは、漕ぎや舵など、ずいぶん
勝手が違う様子で、思いの他苦戦していた様子であった。
ちなみに、↑の写真は、各記事中で、たびたび話題となっている、
今年の”相生ペーロン”での、「南風」の「レインボーカラー」だ。
非常に美しく、かつ目立つ為、対岸にいる多数の観客の注目を
集めていた。
さて、市内の部の準決勝、決勝の模様であるが。
予選突破タイムが非常に接戦であった事や、殆どのチームが
初ドラゴンであり、過去のデータが無いため、順位予想は困難だ。
ただ、あえて言えば、元ドラゴン専業チームのメンバー1名と
若干のボート競技経験者を含む、居酒屋チームの「わいるどふぁーむ」
そして、今年の「高石大会」の市内の部でも、武道系(空手)の
チームが優勝した前例から、本大会でも「田邉道場やわら」(柔道)
がやや有利か?と注目していた。
市内の部準決勝1回戦は、
居酒屋チーム「わいるどふぁーむSC]対、猪名川対岸の川西市より
参戦の「川西青年会議所」チーム。
予選では、タイム制(2回の予選漕ぎの良い方のタイムを選ぶ
ベストタイム制)であったのが、この準決勝からは「マッチレース」
となる、つまり、タイムは関係なく、相手チームより僅かでも速く
ゴールした方が決勝に勝ちあがれる。
この対決は、ボート競技経験者の居る「わいるどふぁーむ」が1秒差で
制した。
同、2回戦は、地元「池田市役所野球部」対「田邉道場やわら」
この戦いも接戦であったが、1秒差で「野球部」が勝ちあがり。
30分置いての(注:ドラゴンの大会では、同じチームの
レース間隔を30分置くこと、との内規がある)決勝戦は、これも
大接戦・・
WEBメディアによるニュース記事では「抜きつ抜かれつ」といった
表現もあったのだが、実際には、ドラゴンボートの短距離レースで
そうした展開になることは皆無だ、先行逃げ切りか、途中逆転か
ほぼ同着の混戦か、その3パターンしかありえない。
(抜きつ抜かれつ、が発生するのは、500m以上の長距離で、かつ、
ターン制などの不確定要素があるレース、たとえば相生ペーロン
(決勝900m)や、西琵琶湖高島ペーロン(600m)、Head of The
Seta (最長7000m)などの場合だ)
で、「わいるどふぁーむ]vc「野球部」は、その混戦パターン、
肉眼では判別できないコンマ秒差の微妙な状況で審議(ビデオ判定)
となったが、結局勝ったのは「池田市役所本庁野球部」チームであった。
市内の部の順位は以下の通り、
優勝「池田市役所本庁野球部」
2位「わいるどふぁーむSC]
3位「川西青年会議所 梅野丸」
ちなみに、3位は、決定戦は行われず、準決勝でのタイム上位の
チームが自動的に3位となるルールだ。
さて、次いで、オープンの部の準決勝、決勝の模様より。
オープン準決勝1回戦は、「都島]対「team BANANA 蒼龍」
今日の「都島」は好調だ、予選1回戦、2回戦ともに、全チーム中の
ベストタイム55秒台を叩き出している。
「都島」は準決勝では、さらにベストタイムを伸ばし、54秒台。
恐らく今日の状況(チーム力や、レースコンディション)であれば
このあたりのタイムが限界に近いであろう。
「team BANANA 蒼龍」も、ここまでよく頑張ったのであるが、
58秒と、ここで力尽きた感じだ・・
準決勝2回戦は、「びわにゃん」対「DDT」
ここまでの予選では「DDT]は、58秒、56秒と「bp」に
しては、いまいちタイムが伸びておらず、準決勝にもぎりぎり
4位で進出となった状況だ。
中編記事でも書いたように、私も今回の「DDT]の戦略がよく
見えず、ちょっと不気味な静けさがあるように感じていた。
だが、ここに来て、ついに「DDT」も本気になったのか?
これまでの予選とは明らかに異なる漕ぎを見せ、ハイペースのまま
先行逃げ切り、タイムは驚異の53秒台だ。
限界と思われた54秒を超えてくるようであったら、残念ながら
滋賀の強豪「びわにゃん」(=琵琶湖ドラゴンボートクラブ)
であっても、ちょっと途中で戦意喪失という形となり、約1艇身の
差をつけられ、56秒のタイムに終わった。
この結果、「びわにゃん」が自動的に3位となり、中編の最後で
記述したように、記録として「bp」軍団2チームに続いて
「びわにゃん」が3位と「後でどう説明したら良いのかわからない」
結果となったのだが(汗)、まあ、こういう事情であったのだ。
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さて、決勝戦は今回もまた「bp」軍団直接対決となった、
ここで、今年のスモール艇による各大会の決勝と結果を思い浮かべて
みよう・・・
*ATC大会、決勝順位「bp」「DDT]「都島」「吹田龍舟」
*宇治大会、決勝順位「bp」「都島」「DDT]「しげる」
*スモール選手権、選手権決勝「bp」2位、
同、一般オープン決勝「DDT」「東郷」「都島」「関空飛龍」
・・すなわち、「bp」軍団3チームにおいて、本家の「bp」が
同カテゴリーで参加している場合は、いずれも「bp」が優勝、
「bp」が他カテゴリーの場合は、「DDT」が優勝となっていて、
意外なことに「都島」の優勝が無い。
決勝戦発走前の「都島」のドラマー「新・美少女」にそのあたり
含めて一言入れておこう。
匠「まだ「都島」は優勝経験が無いのですよ、おまけに、今日の
「DDT」のドラマーは、都島の教師のT先生だし・・
ここは、是非「都島」の力を見せつけ、優勝して、「DDT]
に一泡吹かせてやってください!」
美「はい、がんばります」
・・とは言うものの、「bp」が「DDT]と「都島」を編成
する際、「DDT」にベテラン選手を乗せ、「都島」には、
育成中の若手を乗せる暗黙の了解がある模様だ。
予選から準決勝では「都島」のタイムが「DDT]を上回って
はいたが、実力伯仲な決勝戦において、レース経験の少ない
「都島」および指揮する「新・美少女」が、百戦錬磨の「DDT]を
下せるかどうかは、わからないところだ。
先ほどの準決勝のように、「DDT]は、いきなり本気を出して
くるから、底が知れない、まあ、ここはあえて「都島」の方を
応援したくなってきた。
「Attention Go!」
近年の大会では珍しく、予定時間よりも20分以上も早く決勝戦が
スタートした、「都島」やや先行か?
残念ながら、この時間、池田市側の会場からは、レース後半の模様は
超逆光となり、写真を撮ることが難しい。趣味で撮っている写真で
1枚だけでもちゃんと撮れていれば良いというスタンスであるならば
猪名川の対岸の川西市側から撮影するところであるが、
そこまでは遠方の橋を渡って徒歩30分の距離だ、
決勝からウイニングラン、そして陸にあがっての、健闘をたたえ
あう様子、安堵の表情、負けたチームの悔しさ、閉会式にいたる、
そのあたりの様々な人間模様を撮るには、対岸からでは無理だ、
レースの撮影はあきらめ、より重要な、大会に関わる選手達の
人間ドラマを優先することにしよう。
レース中盤から後半まで「DDT]と「都島」は終始接戦であった、
しかし、こうした場合はやはり若さゆえの課題が出てしまうので
あろう、百戦練磨の「DDT]は、最後の1漕ぎで、相手より僅かに
先にゴールするような、感覚的な「勝ち方」を知っているのであろう
実際には最後の50mで「DDT]が「都島」を差して(抜いて)
そのままゴール、残念ながら「都島」は初優勝のチャンスを逃した。
ただ、このレベルの高い大接戦は、初めて本格的なドラゴンレースを
見る池田JC(青年会議所)スタッフを始めとする観客には、
「凄いレースだ」「速いなあ」「低いなあ」(注:漕ぐフォームが低い)
というインパクトを与えていたようだ、だが、ここでも残念なのは、
観客等が「DDT]や「都島」の背後の事情や情報を知らないで
観戦している事だ、それを知っていたのならば、この決勝戦の
観戦はさらに面白く、興味深いものとなったのに違いないのに・・
こちらが優勝した「DDT}、しかし、何故か「派遣舵」だ
(注:主にビギナーチーム等が、チーム内で舵取りが出来る選手が
居ない場合、ドラゴン協会よりベテランの舵取りを派遣してもらえる
システム)
「bp」軍団のような、既に日本を代表する立場の超強豪チームで
あるならば、舵取りもどんどん育成してもらいたいように思う。
ただ、「bp」の神戸・船坂の秘密練習場は山の中にあって、そこには
自作巨大水槽があるのだが、そこでは、漕ぎの練習は出来ても舵取りの
練習が出来ない、という状況も影響しているのかも知れない。
優勝した「DDT]の表彰式の模様。
トロフィー、賞金、賞品の他、池田市らしく、参加賞として
「チキンラーメン」(30個入り箱)も配られていたようであった。
猪名川大会、まあ、第一回大会としては運営もまずまずスムース、
まあ、これは、例によって手馴れた運営の日本協会、大阪協会の
ヘルプもあっての話ではあるが・・
大会の印象としては、2艘建てはやや寂しい、まあ、川幅の問題や
艇の数の制約があってなかなか難しいところだが、これが3艘建て
になるだけで、レースの見た目がぐっと本格的になると思う。
さらには、大会の告知をもう少し工夫すれば、参加チーム数や
観客数も、まだまだ増えるように思う、町おこしの意図があるので
あれば、なおさら観客は増やしたいところ、ただ、良くあるありきたり
の企画で、ゆるキャラ招致とか、フォトコンとかは、思いの他、集客
効果が出ないと思われるので念のため。
池田市らしい集客効果を狙うのであれば、やはり1つは五月山動物園
の人気動物との何らかの連携を狙いたいところ、それから、年間50
万人の集客がある人気施設「チキンラーメン博物館」との連動・連携
も良いかも知れない。
あと、京都で流行っている新しい、町おこしの手法だが、その土地を
フィーチャーした「アニメ」を作って、アニメロケ地探訪的なツアー
やスタンプラリーを行うというものがある、もっとも、この手法は
時間がかかるし、ドラゴンではちょっとやりにくいかも知れない。
という感じで、猪名川大会は無事終了、池田JCを含むスタッフは
ODBA(大阪協会)恒例の「大阪締め」で・・
猪名川大会記事終了、次回大会記事(恐らく琵琶湖1000m)に続く・・