ミュージシャン兼タレントである友人の”たつを”君から
連絡があった。
た「匠さん、今度、”たつをカップ”をやるんですよ」
匠「なにそれ? ライブ演奏のバトルとか?」
た「いえいえ、バスケットボールの試合ですよ」
匠「またバスケ? 最近凝ってるねえ・・」
た「試合の日、来られませんか?」
匠「バスケの撮影って言う事かな? 無理無理、ルールも
良く知らないし、選手達も動きが速く、しかもどう動くかも
わからないよ。以前1~2回撮ったけど、思うような写真が
撮れずに相当苦戦したし・・」
た「じゃあ、PA(音響)係って言う事でどうです?
匠さん、音響関連も詳しいでしょう?」
匠「むむむ・・(音響、大事だけど座ってるだけで退屈そうだしなぁ)
う~ん・・ わかった、じゃあ、写真を撮りますよ」
た「じゃ、よろしくです!」
ぐう・・ すっかり”たつを”君の誘導尋問にハメられた(苦笑)

という事で、苦手なバスケの撮影に向かう・・
2014年7月21日、ドラゴンボート日本選手権大会の翌日で、
家には未整理の写真が沢山溜まっている状況だ、この上
またバスケの写真が山のように溜まったら、もう整理する
気にもならなくなるかも知れない、気が重いなあ・・(汗)

大会会場は、大阪、近鉄奈良線河内花園駅より北に徒歩15分
程度の「HOS花園」 まあ、ラグビー場で有名な「花園」の
ほど近くと言えば、だいたい場所の想像はしやすいだろうか?

まあ、HOS花園は、フィットネスクラブのような施設だが、
立派なバスケットコートが2面ある。たつをカップというのは
その”たつを”君が個人的に主催する大会なのだが、いくつか
のスポンサーがついているらしく、なかなか本格的だ。
参加チーム数は8、トーナメント方式で全順位を決定する。
隣のバスケコートでは、なんとプロバスケチームの
「大阪エヴェッサ」が練習を行っている、どうやらここが
練習場の1つであるらしい。

さて、開会式、”たつを”君は、つい最近足を痛めたらしく
た「今日は、さすがに試合には出られません」と言っていた。
参加チームというのは、もちろんアマチュアのチームなのだが
果たして実力はどんなものなのだろう? なにせ、こちらは、
バスケなどは、中学校の体育の授業で少しやったくらいで、
戦術はおろか、ルールすらもよくわからない。
それでも実力を気にするのは、写真を撮る上で、選手達が
どれだけの動きをするのか?という部分と、同じく選手達や
チームがどんな気持ちで試合に臨んでいるのか?という点が
ポイントになると思うからだ。
被写体を知らずして写真を撮ることは難しい。
さあ、試合がはじまった。

今日の機材は、メインが NIKON D2H + AiAF85mm/F1.8 、
加えて 小型のミラーレス機に広角レンズをつけている。
D2Hは、2003年発売と、私が現在使っているデジタル一眼の
中でも、最も古い時代のもので、画素数は僅か400万画素だし
LBCASTという名前のイメージセンサーは、CCDともCMOSとも
異なり、ちょっと癖がある写りをする。
しかし、Hという名前がつくニコンのハイエンド機は銀塩時代
より高速連写性能に特化したものであり、秒8コマと、現在の
ミラーレス系カメラの連写速度に比べたらたいしたことは
なさそうなのだが、連写中のブラックアウト(ファインダーや
モニター画像が見えなくなる事)が無く、かつ、ミラーの動きが
かなり速いため、像消失時間が極めて少なく、ファインダーで
画像がほぼ見えたままで高速連写が出来る、という稀な特徴を
持つカメラだ。
必要ならば、連写中に、ファインダーを見ながらマニュアル
フォーカスでピント位置を変えることもできる。このような
特徴があるから、バスケ撮影には向いているかと思ったのだ。

だが、ホワイトバランスは古いカメラだけあり、どうもうまく
合わない、D2HはLBCASTという特殊なセンサー故にか?
本体内での調整機能に色々な制限がある。赤みがかった色味は、
まあ、場所の雰囲気ということで気にせず撮ることとしよう。
それに、カメラの性能で写真を撮るわけではない、問題は
どう撮るか?なのだ、しかし、そのどう撮るかが、どうにも
イメージしずらい、理由は明白で、自分がよく知らないジャンル
であるから、どういう風に撮るかというイメージが無いのだ。

新聞社の取材カメラマンの方が来ていたので、色々と話を
聞いてみた、なんでも、その方、ベテランの模様で、バスケの
撮影も良くするらしく、アマチュアの試合より、プロの試合の
方が撮りやすいとも言っていた。
匠「でも、それって、動きが予想しやすいって事ですよね?
私は、選手の動きが読めないので、難しいなあ・・」
新「それでしたら、ゴールの真後ろで構えていたら大丈夫ですよ、
広角でも撮れるし、プロの試合の時のカメラマン席も
だいたいその場所にありますよ」
匠「ふうむ・・・」
いちおう参考にはしたが、私がおぼろげながらに持つ、バスケ
写真のイメージは、あいにくそういうものでは無く、なんというか
もっと臨場感がある、たとえば、選手達が動いていて、ボールが
手から離れる瞬間とか、選手達の表情とか、そんな風なものなのだ。

でも、ボールが手から離れる瞬間と言っても、こういう写真じゃあ
ないんだよね、もっとスピード感とか躍動感があって・・

ええい、難しいなあ、困ったもんだ! 思うように撮れないと
言うよりも、撮りたいイメージがわからないという状況だ。
そして、技術的にも極めて難しい、もとよりいくら速いAFでも
選手やボールの動きに間に合うというものではないし、無知と
経験不足ゆえに、選手達の次の瞬間を予想することもできない。
高速連写と言っても、たかだか秒8コマだ、1コマあたりの
0.1秒強という時間は、スポーツの世界ではかなり長い時間だ。
具体的な例をあげれば、野球のピッチャーが時速120kmの
ボールを投げたとすれば、それは、秒速に直せば33m強だ、
秒8コマでそれを捉えるとすれば、1コマ1コマの撮影の間に
ボールは4mも進んでしまう! バスケではそこまでボールは
速く動かないとして、仮に野球の半分の速度だったとしても、
1コマの撮影の間にボールは、2m以上動くという計算だ。
これでは僅か2~3枚連写している間に、ボールは完全に
フレームアウトだ(汗)
知人の、某新聞社の元写真部長の方が、引退後、高校野球の
カメラマンをやっているのだが「どんなに速い連写カメラでも
一番良い瞬間は捉えられない、単写でタイミングを合わせる
しかないね」と言っていた事を思い出す。

そして、撮影に関して、気持ちの余裕がまったく無い。
メインの85mmのレンズは、APS-Cでは、中望遠の127mm相当だ、
この焦点距離だと、目で見て狙った位置にレンズを向けても
微妙な差異が出る、レンズの焦点距離が長くなれば長くなるほど
その誤差は大きくなり、ドラゴンボート撮影などで使う600mm
相当のレンズで、ほぼ物理的な限界だ、これよりさらに長い
換算1000mm相当のレンズとなると、もう、レンズを向けた位置と
実際の被写体の位置は全く違うというのが常の状態となる。
レンズを向けても、微妙に、考えている構図にならないとか、
そもそもボールがフレームに入っていないとか、イライラする
状況が続く。(ちなみに、ここで言う構図とは、一般的な意味
での構図ではなく、撮りたいと思っっている映像の構成の事だ)
その誤差よりも、大きな問題は、バスケのプレーヤーはあまり
長時間ボールを持っていない、という状況だ、すぐに他の
プレーヤーにパスしてしまうのだが、どこに(誰に)パスする
のかは、見ていても殆どわからない。なので、レンズをあっちに
向けて、こっちに向けて、ただ単にバスケの試合に振り回されて
いるにすぎない状況になってしまう。
これはいわゆる「イベント・ドリブン」だな、元はコンピュータ
用語であるが、私は最近では、「振り回される」というあまり良く
無い意味で使っている。 様々なイベント(催しもの)ばかりを
追いかけてみたり、目の前の被写体の不意の動きや変化にだけ
振り回されて、自主的な意図を持った撮影ができなくなる状況だ。

その振り回される状況にハマりそうになっていたのが、こちらの
ビデオカメラマンの女性の方。使っている機材は、3CCDの
なかなか本格的で高価そうなビデオカメラだし、撮影の腕前も
そこそこ出来る雰囲気だ、このビデオカメラを、かなりしっかりした
三脚に乗せて撮影するのだが、中望遠の画角にセットし、ボールが
動くたびに、カメラをパンして(振って)撮影している。
まあ、「大会を一通り記録するということなので」という目的と
聞いているので、ズーミングとかまではいちいち行ってないようだが、
その調子で、あっちへパン、こっちへパンと、数時間も撮影していると
「手がパンパン(笑)」に疲れてしまう、とのことだ。
試合の合間にも、両手を振って手首をほぐしている、彼女は三脚撮影
なので、楽そうだ、とも当初思っていたのだが、全然そんな事は
なさそうで、むしろ、ビデオという機材は、全てのシーンで撮りこぼしが
許されないので、かなりしんどそうだ。(大変お疲れ様でした・・)
まあ、それに比べたら、スティル(静止画)写真は、自分が撮りたい
時に撮れば良いので、多少は楽にも思えてくる。
ちなみに、良く言われる「スチール写真」というのは、どう考えても
誤りであり、本来「Still picture」だから、それを日本語読みしても、
「スティル」か、せいぜい「スチル」であり、「スチール」と言ったら
Steel(鋼鉄)か、Steal(盗む、盗塁)という風に聞こえてしまう。
どうして、こういう風に間違った言葉のまま、それが広まって
しまうのであろう、そして、誰もそれを疑問に思わないのであろうか?
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試合の方だが、8チーム中、2チームはかなり本格的で上手なチーム
であるように見える、しかし、上手いだけに動きも速く、ほとんど
手におえない状況。 堺と吹田、その2チームは準決勝であたって
しまう事となり、それが事実上の決勝戦という感じの組み合わせだ。

準決勝を制した方のチームが優勝という事になるのであろう。
そして、ドラゴン大会の記事でも良く書いている事だが、選手の人達
と会話をする事も非常に重要だ、選手達の気持ち(心理)、考え方
や事情、目標、それらの人間模様が撮影するイメージにも影響する。
けど、しかし、こちらがバスケに詳しくないため、突っ込んだ話が
できずに、世間話程度になってしまう事が情けない状況だが・・

さて、次は、優勝候補同士の準決勝だ、最も見ごたえがある試合と
思われる。
赤のユニフォームが堺のチーム、黒が吹田のチームだ。

「ペネトレイト?」 いったいなんじゃそれ?
ドリブルと何処が違うのだろうか?
ルールはおろか、バスケ用語すら、よくわからない(苦笑)
いやあ、まあ、知らないというのは、当面はしかたがない、
知る為には、沢山試合を見て、沢山撮って、色々と勉強して、
そうやって経験を積んでいくしか無いからだ。
しかし、もしかすると、バスケ撮影は、選手以上に疲れる
かもしれない(汗)
結局、準決勝を制したのは、黒の吹田チーム。

そのままの勢いで、決勝戦にも勝ち、見事優勝となった。
得点?点差? そんなの見ている余裕は無いよ(苦笑)、
まあ、そのあたりの余裕の無さが問題なのだろうなあ・・
ドラゴンの試合だったら、選手の皆さんと世間話をしている
時にでも、横で行われているレースの着順やだいたいのタイムは
横目でチラリと見ればわかる、チームの実力も状況もおおむね
わかっているし、まあ、余裕があるという事は、そういう事なので
あろう。 結局のところ対象となる事柄への知識や経験や興味に
依存する、という事だろうか・・
そういえば、ドラゴンボートの大会を撮りに来ているアマチュアや
報道系のプロのカメラマンも多く見かけるが、彼らも、レースを
追っかけるのに必死で、思い起こせば、余裕が無い、という風に
見える。まあ、知らないジャンルの被写体であれば、それは
最初のうち、とりあえずは、しかたが無い事なのかも知れない。

表彰式には、隣のコートで練習をしていた、プロバスケチーム
「大阪エヴェッサ」の選手の方々数名が、激励に来てくださった。

エ「隣からチラチラ見てましたが、なかなか皆さん上手ですね」
と、上位入賞チームの選手の方々に握手をして廻る。
選手達はとても嬉しそうであった。
そうだよなあ、たとえばドラゴンボートの世界においても、
こうしたカリスマ性のあるスター選手とかが欲しいよなあ、
プロがあって、それにあこがれるアマチュア選手がいて、
まあ、ドラゴンもそんな構図にしていく必要がありそうだ。

こちらが優勝した吹田チーム。
子供さんが混じっているが、この子供さんがなかなかの
名プレーヤーで、大人に混じってゴールを連発し、
特別に表彰された。

「たつをカップ」選手と関係者・観客で総勢百数十名程度の
まあ、小規模な大会ではあるのだが、アットホームな雰囲気が
なかなか良い。選手達は、皆、やりきったという表情をしている。
それにしても、今回もまたバスケ撮影の難しさを思い知らされた、
技術的難易度は確かに高い、私がいつも撮っている、ドラゴンボート
や演劇、ライブなども難易度はそこそこ高い被写体ではあるが、
それらより格段に1ランクも2ランクも難しい撮影だと思われる。
ただ、それはたとえばカメラをより高性能なモノに変えてもどうにも
なるものでもないし、あるいは修行中のシェフが夜中に砂の入った
フライバンを振って練習するように(?)、カメラを狙った位置に
向ける特訓をしたところで(笑)克服はできないであろう。
なによりも必要なことは、撮りたいイメージを持つことと、それと、
次の瞬間の予測である、これらを得るためには、あまりにバスケに
関する知識不足や、バスケ撮影の経験不足が痛いところだ。
おまけに結構な枚数を撮影しているので、帰ってからの編集作業が
気が重い、どうせ9割以上がボツになるとわかっているし、
思うように撮れなかった写真を見るだけでも、気が滅入ってしまう(汗)
苦手なものは、がんばって克服するか、あるいは逃げてしまうか、
どちらかしかない、さて、どちらにしようかなあ?(笑)
まあ、そのあたりは、今決めなくても、今後の状況で決まって
くることであろう・・