「熱い季節」のピークとも言える、国内最高峰の大会
「天神祭奉納・日本国際ドラゴンボート選手権大会」
(以下、日本選手権大会)の模様より、今回がラスト記事。
さて、激戦の「混合」カテゴリーであるが、準決勝
(5艇x2戦)に残ったチームは、以下の10チーム、
準決勝第一試合
・東海龍舟アズーロ
・関西龍舟シンバ
・東海龍舟
・INO-G
・TOKYO DRAGON
準決勝第二試合
・Team BANANA
・吹田龍舟倶楽部
・東京龍舟
・Torrid Strom
・琵琶湖ドラゴンボートクラブ
いずれも名だたる強豪チームであるが、本大会ではメジャーな
強豪チームは、サブチームを同時にエントリーしている場合がある。
具体的には、混合の部では、「東京龍舟」「東海龍舟」「関西龍舟」
「琵琶ドラ」がそのパターンだ。、
オープンの部では「bp」が「ジュニア」チームを従え、
そして(出身地域が異なるが)「IHI」が居る。
また、瀬戸内海から参戦の「坊勢」は、オープンとシニアの部の
ダブルエントリーだ。
ちなみに、女子の「KACHIDOKI CEERS」「どやさっ!」は、それぞれ
混合の部の各チームの選手達による混成チームとなっている。
「東海龍舟」や「bp」のように、予選や準決勝などで兄弟チームが
当たってしまう場合もある、どちらのチームも実力があれば、
両方とも勝ち残れるのだが、近年は、こうしたダブルエントリーに
おいては、2つのチームの実力を均一化するよりも、強弱にメリハリを
つける場合が増えてきている。
何故そうするか、と言えば、1つは、近年の日本選手権は超激戦区であり、
強豪チームと言っても、そう簡単に勝たしてはもらえないからだ。
従来のように、組み合わせなどの運の要素が不利になったとしても、
どちらかが勝てば良い、という、まるで”関ヶ原の戦いにおける真田家”
のような、お家分割戦略は通用しなくなってきている。
なので、どちらか本命チームを思い切り強くしておき、新人メンバー
などは、弱い方のチームに乗せておいて、シビアな日本選手権を
経験させておき、モチベーションを発揮させたり、試合度胸をつけたり
するようにしている様子だ。
だから、逆に言えば、チーム名を聞いただけでは強豪チームであるとは
判断できなくなっている。
そして、大激戦の準決勝を制し、決勝に上がれたのは以下の5チーム
・関西龍舟シンバ
・Torrid Strom
・INO-G
・東京龍舟
・東海龍舟
前編での予想通り、予選で1位抜けした5チームが残る形となった。
奇しくも「XX龍舟」と名がつく3チームは、それぞれサブチーム
を出場させていたのだが、一部は実力差をつけた模様で予選落ち、
また別の一部は、準決勝でつぶし合いの形になってしまった。
まあ、でも、チーム名だけ聞けば、いずれも強豪チームであり、
極めて順当な決勝進出チームとも言える。次点予想で考えられたのは、
それぞれ「XX龍舟」のサブチームと「琵琶ドラ」あたりであった。
混合はこのように超激戦区であるが、オープンは孤高の存在・・
そう、本大会連覇中、そしてここ数年は出る大会のほとんで優勝して
いる、国内最強チームの「磯風漕友会」だ。
あまりにも速いので、スタートの瞬間を除き、「磯風」の写真は
いつでも単独で撮らざるを得ない。
私は選手村の木陰に隠れて(笑)撮っていたので、「磯風」に
気づかれないと思っていたが、ドラマーの選手が、しっかりカメラ
目線となっている(!?)まあ、こちらの選手、左側を確認する癖
(あるいは岸との距離を測っているのか?)があるようなので、
カメラ目線であるとは限らないのだが・・
私は、今年5月に「磯風」の招待で、「相生ペーロン競漕」を
観戦・撮影してきた、そこで感じたことは、当該記事には
あまり書いていないが、
「強豪チームには、強豪チームなりの悩みがある」という事であった。
強ければ、強いなりに、様々な問題を抱えることとなる、
それを何も知らなければ「磯風」は特別なチームであるようにも
思えてしまう事であろう。
あまり多くのドラゴン大会に出ないのも、毎回優勝して孤立して
しまう事を避けているようにも思える、ただ、その結果として、他の
ドラゴンチームの選手達との交流は、さほど多くないように見える。
他チームから見れば、あまりに強すぎて、畏れ多いと思うのであろうか?
「池の里ジュニア」の小学生選手が「磯風」と仲が良いと聞いている、
子供は大人の事情は関係ないから、純粋に、強いチームに憧れて
接触したのであろうと思う。
「磯風」は、実のところ、勝つことで己の存在意義を求める非常に
ストイックなチームではあるが、それはある意味「横綱」としての
「立場」や「態度」でそうしているに過ぎない、いったんOFFの
モードにスイッチが入れば、他のチームの選手達とまったく変わりが無い。
そう、彼らを特別視する必要はまったくないのだ。
日本選手権に出場する彼らは、私の姿を見ると、たいてい、
磯「匠さん、今日はカレー何杯食べました?」と聞いてくる、
匠「今日はまだ3杯ですよ」
磯「3杯も食べれば十分ですよ、ちゃんとお金払ってますか?」
匠「いいえ・・配給所に余っているのを恵んでもらうので(笑)」
このように、ごく普通のくだけた会話を行っているのだ・・・
むしろ、私としては、「磯風」にドラゴンの世界における「居場所」
を作ってあげたいようにも思える。だって「強すぎるから、色々な
大会に出られない」というのも、変な話ではないかと思うのだ。
強くなることを存在意義として、そのために練習にあけくれ、
ますます強くなり、どんどん孤高の存在になっていく・・
数年前、その門戸を開くため、「磯風」が交流練習会を企画した
ことがあった、その練習会にどれほどのチームが参加したのかは
知らないのだが、普通に考えれば、超強豪チームが、自分たちが
必死に練習して会得した様々な技術やノウハウをライバル達に公開
するという事はありえないであろう、じゃあ、どうして「磯風」が
そんな企画を立ち上げたのか? そのあたりの気持ちを汲むことが
ドラゴン界全体を見たときに、とても重要なポイントであると
思えてならない。
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さて、「磯風」は、オープンの部の予選、準決勝において順当に
1位で勝ち抜け、続く「bp」との差は2秒という感じだ。
他のチームとは、7~8秒差がある状況だが、ともかく決勝での
「bp」との一騎打ちを見守ることにしよう。
さて、話は変わって、こちらは、これも近年恒例となりつつある
「レッドブル」の移動試飲。宣伝車に大量の飲料を積んでスポーツ
イベント会場を巡り、美人のお姉さまが選手達に「レッドブル」を
無料で振舞うという、なかなか大胆な宣伝手法だ。
エナジードリンクとしての効果よりも、男性選手は宣伝員のお姉さま
に商品を振舞われることでの癒し効果が強い気もするが(笑)
まあ、それでも女子選手も沢山群がるので効果はあるという事かな?
こちらは、オープンの部「B決勝」(下位決勝)優勝の「関空飛龍」
ちなみに、「関空飛龍」のホームグラウンドの「関空大会」は
例年の8月末より、本年は10月5日に変更になっている、
ただ、この日は、滋賀での1000m大会や。名古屋の大会もあるので、
観戦側・参加側としては日程の被りが痛いところ。
さらに言えば、本日7月20日も、全国で3つかそれ以上のドラゴンボート
大会が同時に開催されていると聞く、各地にはそれぞれのイベント開催事情
があるとは思うが、チームの数は無限にある訳ではないので、やはり被りは
好ましくない。そう簡単な話ではないとは思うが、各地間の情報の連携を
密にして、できるかぎり日程被りを避ける方向にしていくのが良いと思う。
混合の部の「B決勝」2位の「すいすい丸」
ドラゴンでは珍しい京都南部のチームで、昨年から始まった宇治大会の
運営にもかかわっている、宇治大会はブログ記事でも紹介したように
観光客が多いことから、仮装ありとか、宇治スイーツ券の配布とか、
集客イベントとしての要素を持っている、先日の御前崎大会の記事でも
述べたように、今後のドラゴン大会の方向性の1つを暗示しているように
思える。
女子の部の決勝は、超強豪「スーパードルフィン」が、コースアウトの
トラブルがあって、これがレース成立点の100m以前であった為に、
再レースとなった。ただ、この時に、審判艇が、「赤旗」を
上げていたにもかかわらず、レースが最後まで続行されてしまったので
こうした際に、速やかにレースを中断するように、漕いでいる選手達に
情報を伝える為の何らかの手段が必要になってくるだろう、そのあたり
日本選手権のような大規模大会での、今後の課題と思われる。
さらに言えば、この日の夕方の大川は、水流の影響が大きく、なかなか
スタートラインへ艇が揃わない。細かい指示を繰り返して艇を揃えよう
としても、いたずらに時間を消費してしまうだけとなる、選手はもとより
周辺でレース見物をしていた観客からも不満の声が続出しているので、
スタート指示の方法については改善が必須だ。
結局、再戦となった女子決勝は、「スーパードルフィン」が
1分00秒40の好タイムで本大会の連覇を継続、ちなみに
このタイムは、シニアの決勝に出場しても優勝できるタイムだ。
女子の準優勝は、本年好調の「TEAM 河童」。
「ドルフィン」との差は2秒以下に縮まってきているので、
以前のライバル関係での接戦がそろそろ復活するのであろうか?
注目の女子3位争い、そう東京の「KACHIDOKI CHEERS」が
大阪の「どやさっ!」に挑戦状を叩き付けたという例の事件(笑)
だが、今回の大会では、予選から「KACHIDOKI CHEERS」が
「どやさっ!」をわずかづつ上回るタイムで、決勝でも結果的に
東京に軍配が上がることとなった。
さて、最大注目の混合決勝だが、スタート直後から、中央3レーンの
「INO-G」が僅かにリード、しかし、それを猛追する「Torrid Storm」
「関西龍舟シンバ」「東京龍舟」そして、「東海龍舟」
予想通り、5艇の差は中盤まで、半艇身程度と、ほとんど差がつかない、
このまま全艇が半艇身以内でゴールしてしまうことが考えられる。
まるで昨年の本大会のレースをそのまま見ているようだ、
ちなみに、昨年も混合決勝はまったく同じ顔ぶれであり、
「INO-G」が優勝している、さらに言えば、一昨年(2012年)は
「東京龍舟」の代わりに「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」
であったのだが、他のチームは全て同じだ。
そしてその年の覇者は「Torrid Storm」であった。
さて、今年の注目のトップ争いは、1年交代で優勝している
「Torrid Storm」と「INO-G」の2チームがやや有利か?
と思っていたが、あいかわらずの混戦で、ゴールする瞬間まで
順位はわからない。
いよいよ審判席に新たに導入された「毎秒100コマ以上」の
高速ビデオカメラの威力が発揮されるか?
さあ・・ゴールまであと数十m、時刻は午後5時過ぎ、
私が居たスタート地点からゴール方向は、夕陽による超逆光状態で、
写真は撮る気がしない。肉眼でレースの模様を見守る事にする。
う~ん「INO-G」やや有利かな? さきほど選手村で「INO-G」に
聞いたところによると、「今年も勝つ」と強気な発言だったのだけど
「INO-G」あるいは派生チームの「村田Black」は、どの大会でも、
ほぼ同様の強気コメントなので、実際のところの微妙な調子の良し悪しは
良くわからない。また、意外に(?)「INO-G」は戦略家の要素も
あるように感じていて、予選等のタイムは、他チームの様子に合わせて
適宜ギリギリで1位抜けできるようなタイムに調整している節も
見受けられる。だが、とは言うものの、混合決勝は最大の激戦区、
ここでは戦略もなにもなく、ひたすら漕ぐだけだ。
全力の「INOーG」にほぼ並走する「Torrid Storm」と「関西龍舟シンバ」
そして「東京龍舟」も遅れていない、名古屋の名門「東海龍舟」は
やや遅れているが、それでも1艇身の差はついていない。
そのまま5艇がなだれ込むようにゴール、肉眼でも「INO-G」が
わずかにリードしていたように思える。 その結果は・・
優勝:「INOーG」 56秒88
準優勝:「関西龍舟シンバ」 57秒93
3位:「Torrid Storm」 58秒50
そして4位の「東京龍舟」は、3位と僅差の58秒66
5位の「東海龍舟」でも 1分00秒30 と、やはり今年も1位から
5位まで3秒強の差しかない大接戦となった。
さあ、「スタート1分前」のドラが鳴り、いよいよ本日の最終戦
「オープンの部」決勝戦が始まる。
一瞬の静寂、そして審判の合図。
審「Are you ready? Attention Go!!」
静寂が破られ、5艇の太鼓の音と大歓声が、ビルに囲まれた会場を
こだまする・・ この一瞬こそがドラゴン大会観戦の醍醐味だ。
なんと「bp」が好スタートで「磯風」をほんの僅かリード!
だが、リードは数十センチにしかすぎない。
新鋭強豪「bp」が絶対王者「磯風」にどこまで迫れるか?が
このオープン決勝の見所なのだが、予選、準決勝のタイムを見る
限りは、「bp」は、まだ2秒ほど「磯風」にビハインドだ、
2秒差は、半艇身、すなわち、仮に「bp」がレース前半の時点
で「磯風」を半艇身リードしているのであれば、ほぼ同着という
レース展開が期待できるのだが、横に並んでいるだけの状態では
まだ「磯風」が有利なのだ。
「磯風」の監督は、以前は「横に並ばれない限りは焦る事は無い」と
言っていたのだが、最近はちょっと言う事が変わってきていて
「直線には絶対の自信がある」とのコメント。
「磯風」の前回レース「相生ペーロン競漕」を見ていた感じでも、
ターンを失敗し、ライバルチームに前に出られた「磯風」だが
最後の300m直線で見事にひっくり返した。
強豪「磯風」を相手に、珍しく熱い表情の「bp」の美少女ドラマー、
普段はクールなのだが、昨年の”琵琶湖ペーロン”でもそうだったが、
ここぞという時には気合が入る。大声を出し、選手達の士気を鼓舞する
事もあるが、今日は距離が遠いからか、その声は聞こえてこない。
手前から先行する両チームに忍び寄るのは古豪の「坊勢酔龍会」
こちらは、おそらく「bp」ジュニアとの3位争いになるだろう。
東京から参加のベテランチーム「BON OYAGE」は、やや出遅れた。
「BON OYAGE」は、関西の大会にはあまり参加していないのだが、
東京から静岡あたりの大会では、ベテラン強豪として知られている。
中盤から終盤、「bp」は、「磯風」を追っても追っても
追い切れない、残念ながら「bp」はまだ、「磯風」を焦らす
段階ではなかった様子だ。 しかし、それでも2秒差というのは
立派なもので、ほんの数年前までは、どのチームも「磯風の尻尾」
を捉えようとするだけで必死だったのだ。これは3~4秒差程度に
相当するのだが、その状況に比べたら「bp」は「磯風の龍の頭」
を目前にしている唯一のチームと言えるであろう。
結果として、今回も、とても良いレースを堪能できた。
これは、仮にお金を払って見ても惜しくないレースだ、
「見せる(魅せる)レース」、いよいよ、ここのところ私が提唱して
いる新時代のドラゴン運営に近くなってきたようで、期待が持てる。
ウィニングランの「磯風漕友会」、時刻は午後6時前、逆光に加え
夕方の光で写真のWB(ホワイトバランス)も滅茶苦茶になってきた、
肉眼で見ればまだ明るい状況だが、カメラのISO感度をそろそろ
いっぱいに上げていかなくてはならないだろう。
さて、こちらは、シニアの部優勝の「FUJIYAMA ALL STARS」
あれ?と思うかもしれないが見たことのある選手が多い。
そう、「海猿火組」「TITAM X」「BON OYAGE」のメンバー有志が
中心となった、新規編成の地域混成(東京・静岡)チームだ。
シニアの部も激戦で、1回戦では、「関西龍舟KALBO」が1位で
「FUJIYAMA」は2位だったのが、決勝戦で「関西龍舟KALBO」が
3位となり「FUJIYAMA」が1位となった事で、2回戦制のレース
では非常に珍しく、順位がひっくり返り、逆転優勝となったのだ。
夕陽の中、優勝の喜びを表す「FUJIYAMA ALL STARS」
こうして、今年の最も熱い日「日本選手権大会」も幕を閉じる事
となった、好レースがいくつも展開されたのは良かった点だが、
反面、大規模大会となってきたことで、運営上の課題もいくつか
散見される大会であった。まあ、いつも書くように、JDBAや
ODBAの大会運営の見事さは他の一般的スポーツイベント等と
比較して、特筆すべき長所なのだが、それでも、大規模な大会と
なると末端のテンポラリーなスタッフまでには指示が行き届かない
点が見られるのだ。様々な要因から大会終了時間が遅くなるのも
課題の1つであろう。
まあ、そのあたりは追々解決すべき課題として・・ ともかく、
国内では最も熱いレースが期待される「日本選手権」であるから、
その特徴をしっかりキープしていくのも、ポイントだと思う。
時刻は午後7時前、すっかり暗くなってきた会場を後にすると
しようか・・ああ、そういえば今日は”天神カレー”を3杯しか
食べてなかったな、せめてもう1杯食べたかったが・・(笑)
(次の大会記事に続く)