2014年6月29日に静岡県御前崎市・御前崎港で行われた
「第7回静岡県ドラゴンボート大会御前崎市長杯」の
模様より、中編。
今回の記事では、あまりレースの結果などを詳細に記載する
のではなく、大会やチームの雰囲気を中心にレポートしている。
さて、御前崎市というのは何処にあるかと言えば、静岡県中部
の最南端、地図の上で「三角になっている部分」、と言えば
イメージしやすいだろうか?
温暖な気候だが、遠州灘からの風は強く、大型の風車(風力発電)
設備も沢山ある、今日のドラゴンボート大会会場は御前崎港の
防波堤の中なので、波は弱いものの、風が非常に強く、艇に
浸水するレベル迄には至らないが、スタートラインに艇が
なかなか揃わず、午前中だけで約1時間の遅れが出ている。
冒頭の写真は、スタートラインの審判。
フライングが無かったか?などをチェックしている。
今回の大会の3カテゴリーのうち、「混合」と「チャレンジ」
の予選は、順位戦だ、すなわちタイムは関係なく、各レースで
1位(あるいは上位)になったチームが準決勝、決勝と進出
することができるルールだ。
よって、予選の間は、強風の状況では、艇をきっちりスタート
ラインにそろえる必要はあまりない、フライングさえなければ
あとはだいたい横一列に揃っているだけで、順位戦は公平に
行うことができる、これを無理に、あるいは神経質に、各艇が
ピッタリとスタートラインに揃うまで調整の指示を繰り返したり
すると、レースのスケジュールがどんどん遅れてくるので、
好ましくない。
艇が揃わないというのは具体的には、以下の写真のような状況だ。
静岡県のドラゴンボート大会では、わりとそのあたりの
現場サイドでの判断はフレキシブルだ、別の言い方をすれば
あまり厳密にスタートラインを捉えることはしていない。
たとえば、スケジュールが遅れる確率が高い大会は、遠方から
参加の際に、当日帰らなければならないケースなどで、たった
それだけの理由で参加をためらってしまう可能性も無きにしも
あらずだ。すなわち顧客満足度を下げてしまう事になるので、
あまり厳密にスタートをそろえようとするのは良くない。
こうした指示は、冒頭写真のスタート審判ではなく、スタート
位置にスタッフから、PA(音響設備)を用いて行われる。
ちなみに、他の大会だが、やはり水流の安定しない状態で
スタート位置を厳密にそろえようとするあまり、25分たっても
スタートできない状態が続いたことがある。
その大会は、大都市での大会で、通りすがりの一般観客も多い大会だ、
「ん?何かレースをやっているのか?」と、せっかくドラゴンに興味を
持ちはじめた一般観客達が、いつまでたってもスタートしないので
「いったい、これ、何をやりたいの?」と、足早に去っていった。
これは非常に良くない傾向だ、こういう事態にならないまでも、
そのあたりの判断は現場で臨機応変に対処するべきである。
そして、実際のところ、各地のほとんどのドラゴンボート大会
では、少数エントリーカテゴリーの場合での2回戦タイム合計制で
ないかぎり、ほとんどのケースが順位戦である。
なので、コンマ差の接戦が予想されるメジャー大会の決勝戦とかの
厳密なレースでない限りは、だいたい各艇が横に揃ってさえいれば、
特に問題はないと思う。(そのあたり、発艇スタッフも各チームの
実力値などを完全に把握しておく必要がある)
特に風や波が強い場合は厳密に艇を揃えるには、前述の実例の
ように数十分もかかってしまうリスクがあるので、ランニングスタート
(各艇がゆっくり足並みをそろえてスタートラインに侵入し、
タイミングを見計らってスタートをかけるということ)でも
良いと思う。
ただ、ランニングスタートをかけるには、スタートラインにゆっくり
侵入できるだけの距離が必要だ、そして、あいにくと御前崎港の
スタート側は防波堤であり、防波堤から撮った写真は以下のような
感じだ。
藻が集中しているのは、この防波堤のところに波が渦巻いている
事を示している。これは大阪でATC大会があったATC港など
でも同様で、風や波が強くなると、防波堤の隅に藻や漂着物が
溜まってしまう。なお、こんな状態では、スタート地点で待機中の
ドラゴンボートは、常にパドルを入れ、加えて常に舵をコントロール
していないと、ボートを一箇所に留めることができない。
酷い場合は、風や波に流され、ドラゴン艇が流されて防波堤に横付け
されてしまった事があった(↑写真に対し左または右に90度曲がった
状態)こうなると、パドルワークでも舵でもボートを写真のような
スタートに向く方向に戻すことができない。防波堤の壁にへばりついて
どうにもならず苦戦しているチームを見かねて、ジェットスキーに乗った
スタッフが助けに(ボートを引いて向きを変えに)行ったくらいである。
そしてこちらは、100m地点の中間審判のスタッフ。
ドラゴンボートの規定では、この地点を過ぎるとレース成立だ、
すなわち、前編の接触未遂事故とか、フライングとか、進路妨害とか
様々なルール違反があった場合、この100m地点より前でそれが
起こったら再レース、この中間地点を過ぎていれば、レースは成立で
なんらかのルール違反チームは失格あるいはタイム増などのペナルティ
を受ける事になる。
ちなみに、200mレースだからその半分の100mというわけではなく、
200mより長距離のレースでも、一般的にドラゴンでのレース成立点は
100m地点となっている。
前編で、チャンピオンの部でコースアウトがあって、レッドフラッグ
(赤旗)があがった際、審判艇はすぐにレースを止める措置を
行ったのであるが、他のメジャー大会で、コースアウトで赤旗が
あがっているのにもかかわらず、そのままレースを最後まで続行
させてしまったケースがあった、大規模大会では、審判艇や中間審判の
アピールをすぐさま会場全体のスタッフに伝える運営システムが必要に
なるのであろう。
さて、御前崎大会では、毎年「御前崎市キャンペーンレディー」と
呼ばれている美人のお姉さま達が応援に来てくださっている、
聞くところによると、市民からの応募より審査で選ばれ、その
任期は2年ということだ。
ドラゴンボートに興味を持っていただいているのならば長時間の
観戦もまあ、良いのだろうが、もしまったく興味が無ければ・・(汗)
(ちょっと、そのあたりは微妙な様子だったが)
で、ドラゴンボートに強い興味を持っているMC(アナウンサー)が、
こちらの「スナオ」さん。
ちなみに、MCらしからぬアクションポーズでの写真だが、
これは、前編で紹介した、静岡県大会名物のエアロビクス準備体操
を行っている時の写真だ。
「スナオ」さんは、名解説者と言っても良いと思われるが、
今のところ、静岡在住なので、静岡の2大会だけでの解説だ。
各地の大会でも、解説者が必要な場合は、静岡県協会を通じて
オファーしてみるのも良いと思う。
ちなみに、スナオさんには1つだけ弱点(?)がある、それは
本日、大会当日の6月29日が結婚記念日ということで、
奥様にプレゼントやサービスをしなければならないという点だ。
昨年の御前崎大会は6月30日で、29日は、ちょうど前日の
懇親会で盛り上がっていた日なのだが、その時、スナオさんは
「今日は、早く帰らないと・・」と、しきりに時間を気にされていた。
ただ、その弱点(笑)も今年限り、来年2015年は、恐らくは、御前崎
大会は、6月28日の開催なので、29日は完全に無関係となる。
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さて、ここまで御前崎大会に関わるスタッフの皆様を中心に紹介を
してきた。大会運営を行う「静岡県協会」は、「海猿火組」、
「鈴与龍舟」、「中電龍舟」、「株式会社サカエ」などの、
静岡県の清水や御前崎を中心としたチームのメンバーが主力だ、
このうち「海猿火組」のチームは、これまで御前崎大会で連覇を
続けていたのだが、どちらかといえば主催者側に近いチームが
勝ってばかりいたら、それを好ましく思わない参加チームも出て
くるかもしれない(主催者という点では、そうかもしれないが、
ある地区では、強いチームに対する誹謗中傷も多々あると聞く、
実際、それこそ、まったくもって好ましくない話だ)
今年は「海猿火組」は思い切って、チームとしてのエントリーを止め、
運営に注力することになった、これは大英断だと思うが、まあ、
例えばドラゴン大会をイベントと考え、その参加者(チーム)は、
お客さんだと考えれば、顧客満足度の向上を考えれば1つの選択だ。
ただ、「顧客」という点に関して言えば、私自身は、ドラゴン大会
において、最近、別の考えを持ちつつある。
今年のATC大会の記事でも色々書いたのだが「顧客とは誰なのか?」
というのがポイントだ。
少し話は変わるが、私は、以前「ギター教室」に通っていたことが
ある、で、そこでは、ギターの発表会に参加するには、演奏者で
ある私が(会場費などの)「お金を払って」演奏を行ったのだ。
私自身、ギターはある程度弾ける、それでもあえてギター教室に
通っていたのは、1つは基礎をもう一度固めたかったことと、
もう1つは「教えるという事を学ぶ」という理由があったからだ。
その頃、様々な場所で私はギターを演奏していた、フォーク酒場、
バー、カフェ、市民フェスティバルなどだ、平均して月に1度は、
見知らぬお客さんの前でギターを弾いていた。で、それらの演奏に
おいては、わずかばかりのギャラを貰うことすらあれ、自分でお金を
払ってまで演奏するという事は皆無であった。
それらの演奏は、聞いていただけるお客さんを集客し、お客さんに
満足していただくための演奏であって、単なる自己満足の発表会とは
全く視点が異なる。曲目も当然お客さんの客層に合わせてあるし、
カフェの客で眠そうにしているお子さんがいれば、子供でも知って
いる曲を選んで演奏する、そういうのは当然の事であると思う。
別の言葉で言えば、お客さんを楽しませることを第一に考えるのが
プロであり、自分(達)が楽しむことがアマチュアであるともいえる。
その区別に、報酬(ギャラ)の有無はあまり関係ない、あくまで、
顧客満足度やイベント運営側の利益やビジネス性の有無を視点に置くか
どうかが、プロ(的視点)であるかどうかの区別なのだろうと思う。
さて、ドラゴンボートに話を戻してみよう、ドラゴン専業チームは
プロか否か?これは、お金を貰うと貰わないとか、そういうビジネス
的な意味ではない。
一般にドラゴンボート大会は、参加チームがお金を払って参加する、
その金額は、最低で(チームあたり)5000円程度の地方大会から
3~7万円程度の中規模大会、上限は14万円程度の大会もある。
お金を払って参加する以上、現状では、ドラゴンボートチームは
お客さんである、主催者(大会運営者)は、顧客満足を考える際に、
まずは参加チームを第一に考えなければならない。
・・で、しかし、それで、良いのだろうか?
ドラゴンボート大会が、集客が出来るイベントになれば、
つまり、観客がお金を払って見に来るようなスポーツになるならば、
方向性はガラりと変わる。今年のATC大会はあいにく雨となり
当日の観客は少なかったが、しかし、晴天で、ドラゴン大会が
ATC来場者の興味を引くイベントとなりうるならば、見学料を
いただくという段階にまではすぐはならないものの、数千人という
観客が、ドラゴン大会を観戦するという状況が実現する。ATCの
ような商業施設であれば、それは十分な集客効果(経済効果)に
なりえるだろうと思う。
もし、ここ御前崎に数千人のドラゴンボート観戦の観客を集める
ことができれば、それは立派な町おこしだ、けど、不可能な話では
ない、以前、御前崎で行われた、ウィンドサーフィンの世界大会
では、1万人近くの観客が集まったと聞く。
また、相生ペーロン祭では、花火、陸上パレード、ペーロン競漕
の3つのコンテンツだけで、2日間で10万を超える集客を実現
している、ここまでいけば申し分ない。(まあ、花火大会の場合、
比較的簡単に数万人の観客を集められるのだが、コストがかかる
のが難点だ、また、警備体制もいろいろ問題になっている)
そういう風にドラゴン大会が、観客に見せるものに変化していけば
選手達の考え方もずいぶんと変わるであろう、自分たちがお客さん
なのではなく、観客を楽しませるレースを行う必要が出てくるからだ、
それはまさしくプロスポーツの感覚に近いと思う。
「あの強豪チームに勝ちたい」という、自分たちの都合ではなく、
どのように、見せ場のある、良いレースを展開できるか?
それが第一で、副次的に勝敗が伴うという形だ。
見せる(魅せる)スポーツになるのであれば、宇治大会のように
仮装とかも面白いかもしれない、悪役チームとか、覆面ドラゴンとか、
色々出てくるとなお面白い(笑)
サッカーくじ、のような、ドラゴンくじ、とかまで出来るように
なれば、立派なビジネスだし、立派なプロスポーツとなりうる。
ライブ演奏を行うミュージシャンは、演奏が上手ければプロなのか?
というと、そうではない、観客を楽しませることができ、観客が
来てよかったというライブを実現し、結果的に人気が出て、沢山の
集客ができるようになる、そうしてビジネスとして成り立つように
なれば、それがプロという事になる。
ドラゴンボートも速ければそれで良い、というものではないと思う、
大切なのは、観客に対し、いかに印象に残るレースを提供できるか?
という部分だと思う、そういう風に視点が変われば、ドラゴンボート
はメジャースポーツになりうる。
ただ、今はまだその段階ではない、御前崎大会を運営する静岡県協会は、
いかに参加チームに満足してもらえる大会にできるだろうか?と
様々な努力を行い、知恵を絞っている、幸いにしてそれは順次成功して
いる様子で、御前崎大会や、清水港ツナカップ大会は、たいへん選手達
の満足度の高い大会となっている。
で、次の段階は・・ 「魅せるドラゴン大会」ここにつきるのでは
ないかと思う、そうなれば、選手達は参加料を払ってお客さん気分で
大会に参加することは恐らくなくなるであろう、すっかりお客さん
気分でいると、大会の運営がまずいと文句を言ったり、強いチームが
居るから自分達が勝てないとか、勝手な言い分ばかりになってしまう
恐れがある。
しかし、仮に「客」というものが自分達選手ではなく、観客であったら
その際、観客に満足してもらえないような、無様なレースをしたら・・
その方が勿論責任が重いのだが、選手達のやりがいは出てくるのでは
なかろうか・・?
寄り道が長くなったが、さて、写真は御前崎市の広報を担当する
美人カメラマンさん、暑い中1日の撮影お疲れ様でした。
良い写真は撮れたでしょうか・・?
御前崎市は美女が多いし、男性は皆ユニークな個性を持っている
と思う、選手村めぐりをして、色々な話を聞いていても、とても
楽しい、こうした楽しさ、あるいは選手達の考えや心理とかが、
観客にも伝わるようになれば、(赤勝て、白勝ての他人事では
なくなってくるため)ドラゴンボートというスポーツはもっと
注目されるようになるのだと思う。
と、突然集まる外人選手達、「御前崎市スマイルプロジェクト」
のメンバーだ、外人さんばかりと言ってもひるむ必要はない、
なにせ彼らは、英会話教室の教師達だ、だから当然日本語も
話せる、しかし、彼らの日本語力と、私の英語力と、どっちが
上かはわからなかったので、あえて英語で話しをしていたのだが、
なんだか英会話の成績を採点されているような気分になってきたので、
不便でも日本語で話せばよかったと後悔(笑)
地元強豪「火の用心」その名称からして勿論消防署のチームだ、
「チャンピオン」予選1本目で、艇を曲げてしまい、再レース
となったのだが、その後は、(200m)を1分ジャスト前後の
タイムを2本ともキープ、順当に決勝進出となっている。
旧来は、御前崎消防署チームということで参加していたのだが、
なにやら今年から、御前崎市消防署と牧之原市相良消防署の
2つの消防署にメンバーが分かれてしまったらしい「そういう訳で
一緒に練習できる機会が減った」とこぼしていた。
こちらは「鈴与・スピカ」の女子選手。
「鈴与」とは、ご存知静岡清水の超大企業「鈴与」のチームであり、
普段は「鈴与龍舟」として活動している、静岡県の大会のみならず
今年は京都の宇治大会にも参戦、また、恐らくは合同メンバーで
日本選手権や関西のいくつかの大会にも出るのであろう。
「スピカ」とは、「スピカダーリン」という保育士さん中心の
チームで、清水港の「ツナカップ」大会の常連かつ、強豪チーム
である、今回はメンバーが集まらなかったのか「鈴予」と「スピカ」
の混成チームとして清水から御前崎に遠征してきている。
「スピカ」の得意技は、子供達に見せる「ペンギン体操」だ、
昨年の「ツナカップ」では、CDを持ち込み、メンバー全員で
踊っていた、「ペンペン・ペン・・」という耳に残るメロディー
と特徴的な振り付けは、ずっと記憶に残っている。
匠「今日は、ペンギン体操やらないんですか? ペンペン・ペン・・」
ス「メンバーが少ないですからね、じゃあ、ちょっとだけ」
と見せていただいたのが↑写真だ。
こちらは、「愛知旭組」チームの選手の方の4輪バギー・オートバイ、
ナンバーもついていて、公道を走れ、名古屋からこれに乗って御前崎
まで来たらしい、排気量が小さいので、なかなか長距離はしんどい
ように見えるが、まあ、そういうのが好きなのだろう、私もバイクは
好きなので、遠くても乗って来たい、という気持ちはわかる。
強豪の「旭組」は、2チームがエントリー、地元の「静岡旭組」は
「チャンピオン」のカテゴリーであり、「愛知旭組」は、
「チャレンジ」に出場している。
強豪の「遠州舸(はやぶね)会」は、再レースとなった「チャンピオン」
の予選1回戦、および2回戦を1位抜けして、決勝進出。タイムも
56秒台まで伸ばしてきているので、メンバー全員機嫌が良い(笑)
さて、レースに直接関係無い話で終始している今回の御前崎大会の
観戦記事だが、今回はそういうコンセプトの記事なので、おそらく
最後までこんな調子で行くと思う。
長くなってきたので、以下「後編」に続く。