ドラゴンボート記事の連載途中だが、こちらの記事も待って
いる読者さんが多いので、適宜交代で掲載していくとしよう。
毎年恒例の
劇団舞台処女(げきだんまちかどおとめ)の公演
の観劇記事、今回の劇のタイトルは「看板BOY」となっている。
「不思議の国のアリス」をテーマとしてアレンジした舞台だと
聞いているが、例によって台本は読んでいない(観劇の楽しみ
が無くなるから)、まあ、脚本の「断寝(だんね)」さんの事
だから、例によって奇想天外な劇となっているのであろう、
舞台が楽しみだ。
なお、今回の観劇記事は数回の連載を予定しているが、
舞台の内容等の紹介に加え、舞台撮影のポイントについても
併せて述べて行くことにする。
2014年7月5日、15時からの舞台本番に備え、11時より
ゲネプロ(最終リハーサル)が始まる。
場所は、大阪「船場サザンシアター」、30席ほどのミニシアター
だが、今時のご時世、演劇の舞台で数百とかの観客を集めるのは
至難の業だ、大阪で最大級の劇場でも1000席程度となっている。
「まちかど」の公演は、土日で計4回行われるので、百数十程度の
観客動員を予定しているのであろう。
午前10時45分、ゲネプロ開始時刻の15分前、舞台上では、
団長の安田明日香嬢(写真)をはじめとする役者さんたちが、
思い思いに発声練習をしている。
役者1「アエイオエオアオ、カケキクケコカコ・・」
役者2「あめんぼあかいなアイウエオ・・」
「あめんぼあかいな・・」は、北原白秋の「五十音」という詩を
ベースにした発声練習法で、この後は、
「うきもにこえびもおよいでる」 (浮藻に小蝦も泳いでる)
「かきのきくりのきかきくけこ」 (柿の木栗の木かきくけこ)
と続くのだが、基本的にこの発声練習は古くから演劇で用いられ、
現在ではベテランクラスの劇団員さんが良く使っている様子だ。
ちなみに、およそ40年前から連載している演劇漫画「ガラスの仮面」
でも、劇団員の発声練習はこの「あめんぼあかいな」方式だ。
「アエイオエオアオ・・」は、近年の若手の劇団員さんが良く使う
発声練習、連続する2音同士の発音における口の形状が近いため
それらを上手く区別して発音できるようにする為の方式だそうだ。
照「匠さん、舞台のあかり(照明)見ておきますか?」
毎度の撮影ですっかり顔なじみの、照明担当の高橋さん、
近年のプログラマブル照明機器(DMX)により、事前に設定した
照明効果が次々にボタン1発の操作で呼び出せる。
照「まず最初はこれね、次にこうなる、いちばん明るいので
次くらいかな? こんな感じ・・」
匠「ふうむ、今日はずいぶんと暗いですね」
照「そうなんですよ、もちろんこれに加えて役者にはスポットが
あたるけどね、全体にかなり暗めです」
匠「まあ、そんな事もあろうかと、高感度のカメラを何台か
もってきています」
11時ジャスト、発生練習をしていた役者さんたちが舞台袖にはけ
いよいよゲネプロのスタートだ、照明が落ちる、、タイムキーパーに
時間をはかる指示が出る、ビデオ班も撮影開始、静かな緊張感が走る。
出てきたのは、舞台開始前の挨拶、諸注意などを行うMCの役者さん、
(こんにゃくファクトリー)だ、約2分のMCを行い、舞台暗転、
今度こそ完全な真っ暗闇だ。
真っ暗な舞台上に、何人かの役者さんが上がってくる気配がする、
舞台上には蛍光(蓄光)塗料を縫ったテープが貼られていて、
役者さん達は、それを頼りにポジションにスタンバイ。
じょじょに照明が明るくなってくる。
匠「う、やはり暗いな」
NEX-3 + E16/2.8 絞りは勿論開放、ISO感度3200、露出補正-0.3
これでシャッター速度は15分の1秒か、それ以下か、だ。
舞台が進めばこの設定で良いだろうが、ちょっと厳しかった、
このカメラとF2.8レンズでは、ISO6400にしておけば良かった。
手すきの時に、残りの2台のカメラの感度を確認、
PENTAX K5 + FA☆85/1.4 こちらはISO3200。
SONY α-700 + MINOLTA AF35/1.4 こちらはやや広角なので、
(より速いシャッター速度によるブレ防止効果が画角の広さで
相対的に緩和されるから)ISOは2500にとどめておく。
どちらもF1.4の大口径なので、感度3200以下でなんとかなるであろう。
この2台はいずれも昨年中古で3万円前後で入手したものだが、比較的
高感度が使えるので重宝する。
K5は特に最大ISOが51200まであるので余裕はあるが、6400より
ISOを上げると急速にノイジーになるので、高感度はあくまで非常用
としておく。
絞りは基本的に開放のままいじくらない、手ブレ補正は
どちらでも良いが役者撮影用の85mm,35mmではとりあえずOFFに
しておく。
ONにして自分がブレなくても、動く役者では被写体ブレは
止められない、被写体ブレの起こるシャッター速度限界が
手持ちの手ブレ限界より高いので、手ブレ補正の意味がないのだ、
おおむね1/125~.1/200程度のシャッター速度が最低限出ている
事を目安にする。
約2時間弱の撮影とはいえ、トータル1500枚程度(平均4秒に1枚)
の撮影枚数にはなるだろうから、各カメラに500枚を割り振ったと
して、バッテリーの持ちを考えると、あまり余裕はない。舞台中に
バッテリー交換している暇は無いので、手ブレ補正も、AF補助光も
できれば撮影後の自動再生も、すべてOFFにしておくのが望ましい、
AFも切ってMFにすれば、余裕でバッテリーは持つが、今日はまあ、
AFとMFと半々くらいで撮ってみよう。
それから、撮影後の再生ボタンによる画像確認も液晶を使うので
できる限りやらない。
今回はリハの撮影なので問題ないが、もしお客さんが入っている
本番では、マナー面で様々な制限事項がある、例えば再生時の液晶の
光は観劇の邪魔になるので、絶対にやらない事、勿論フラッシュは厳禁、
それと、まささかとは思うが、ピントが合ったときに、「ピピッ」などと
合焦音を出すのもNG,こういうのは不要な機能であり、普段の撮影の
時も必ずOFFにしておくものだ、一定の音程で一定の音量の電子音は
それが不規則に発せられる際、音楽等に慣れ親しんでいる人にとっては
「非常に不快な音」になる、私もこの類の音が非常に苦手であり、
合焦音に限らず、たとえば電車の中でシニアが携帯メールを打つ際、
ピ、ピ、ピピ・・などと、やられたら不快になる人も多いであろう、
あの時の不快さの極端なものだと想像してもらったらよ、音程、音色、
音量がかわらないのに、リズムだけ不規則、これは厳しい・・
たとえば、古代の拷問で、「水滴をずっとポタン、ポタン、と落とし
つづける」というのがあったらしい、長時間続けられると気分が悪く
なってきて、中には発狂してしまう人もいたそうだ。
音のマナーについては、舞台とか電車の中にかぎらず、どこにおいても
注意してもらいたい。
まあ、ちなみに舞台撮影のカメラも本番はもとより、リハにおいても、
K5のようにシャッター音が極めて静かなカメラが望ましいが、
できれば、LUMIX G5/G6 のように電子シャッター搭載で完全に無音の
ミラーレス、あるいはコンパクトデジカメを用いるのが良いと思う。
(もっとも、コンパクトのセンサーサイズは舞台の照明の輝度差が
大きいため、必然的に大きいことが必須だが)
舞台の方だが、まず冒頭の影の人達が持っているのはマンホールの
蓋だ、お面をかぶっているのは、メイドカフェなどで働くメイドさん達、
「ウサギ」の衣装の男性は、それらのメイドさんたちを言葉巧みに誘って、
マンホールの中に落としてしまう様子だ。
匠「ふうむ、確か”不思議の国のアリス”では、少女アリスは
しゃべるウサギを追いかけて、不思議の国に続く穴に落ちるん
だったな、まあ、そういう流れか・・
しかし、後ろにいる箱に入った男性はなんなんだ?」
この「看板BOY」では、3人のメイドさんたち(アリス?)が
マンホールの穴に落ちていってしまったようだ。
「ここはどこなの~?」と叫ぶのは、メイド喫茶「メイドーナッツ」
の「アリスちゃん」
安田団長演じる、この「アリス」が、劇の主役なのであろう。
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私が、劇団舞台処女を撮り始めたのは今から7年程前のこと、
撮影した写真を、劇団を主宰する「断寝(だんね)」氏に渡した、
しばらくしで「断寝」氏から、酒を飲みに行こう、とお誘いがあった。
その酒の場で「断寝」氏は、意外な話を始める・・
断「匠さん、撮られた写真を全部拝見しました、
数時間くらい、「う~ん」と考えこんでしまいましたよ」
匠「あれ?何かまずかったでしたか?」
断「いや、ちゃんと撮れてますよ、でも、表情とかが不思議です、
今まで劇団サイドで撮っていた写真というのは、舞台の合間とかで
カメラを意識したて、いわゆる「ニコパチ」(にっこり、パチリ)の
写真とか、集合写真とか、舞台でも全景とか、でしたが、匠さんの
写真は違う、そういうのは1枚も無いし、恐らく沢山撮っている
でしょうから、わざと、そういう記念撮影みたいのを避けて選んで
いるのでしょうか?」
匠「・・・」(まあ、元々ニコパチは撮ってないけど)
断「何で匠さんがこういう写真ばかりを選んでくるのか、しばらく
考えこんでしまいました、で、得られた答えなのですが、
”ああ、匠さんは、写真で舞台を再現しようとしているんだ”
ということなのです、違いますか?」
匠「え~と、話が見えないのですが(汗)
だって、舞台の撮影でしょう? 記録撮影というのは記念撮影じゃあ
ないんだから、舞台のそれぞれのシーンを代表する写真でなくては
なりませんよね?再現とか意識していなくて、ごく普通に撮っている
だけなのですが」
断「私も、脚本とかずっとやっているし、舞台はアートだと思ってます、
当然、役者もそれぞれの役を表現をしているので、それもアートです、
匠さんも、そういった事を狙っているんじゃあないですか?」
匠「いや、まあ、そういえばそうですが、それは当たり前の話では?
というか、いままでどんな写真を撮られていたんでしょうか?」
断「ううむ・・・たぶん、我々の今までの写真に対する認識が甘かった
ですね。写真は「止まっているビデオ」だと、だから撮り手側の
意思とか意図が伝わってこなくてもよい、むしろ撮り手の意思は
排除して、そこにあるものを、あるがままに記録すれば良いのだと、
そんな風に思ってましたよ。」
匠「はあ・・・」
断「ところが、匠さんの写真は、あきらかに何らかの意図を持って
それを伝えようとしている、変な表情を選んでいるんではなくて、
それらは、そのシーン、シーンでの役者の感情表現の演技の
結果であって、それを捉えて自分なりに解釈した上で、代表的と
思われる表情を選んできているわけですね?」
匠「はあ、まあ、そうおっしゃるのなら、その通りですけど・・」
断「ふうむ、よくわかりました! さあ、飲みましょう!」
いつのまにか「断寝」氏の疑問は自己完結してしまったようだ。
まあ、今時でこそ、写真とは単なる記録ではなく、表現あるいは
コミュニケーションの手段であることは当たり前の常識だが、
世間一般の写真に慣れ親しんでいない方達は、以前は、まだ写真とは
何か?、がつかめていなかったのだと思う。
なんだか、高そうな機械を仰々しくセットして、ハレの日(冠婚葬祭や
特別なイベント)綺麗な風景などを儀式でも行うように撮影するもの
だと思っていたようだ、まあ、今でもそう思っている人は居るだろう
写真を習うということは、先生・先輩や有名な写真家が撮った写真の
構図などを参考にしながら、それと同じ写真を撮れるようになる事だと・・
あるいは、人物写真とは、肖像画のように、その人物がいちばん美しく
見えたり、または、その特徴を捉えて見えるように撮るとか・・
でも、それでは、まるで「習字」だ、「習字」は、いわば練習であり
文字そのもので何かを表現をする「書道」ではない、ただ「習字」から
「書道」へ進むには、飛び越えなければいけない大きな壁があり、
ほとんどの学習者(ビギナー)は、その壁を越えることができない。
(他の例では楽器の練習(演奏)と作曲との間の壁のようなものだ)
写真の世界ではデジタルカメラの急速な普及が、その壁を取り除く
ことに成功した、なにげない日常の生活が、撮り手の個性や表現と
掛けあわされて映像コミュニケーションの1つの手段となっている。
それはまあ、舞台のポスターなどで、美男美女の役者さんを
より綺麗に撮る「商業人物写真」のようなものは必要であるのだが、
舞台の記録においては、そういう写真は必要ない。むしろ、できるだけ
多彩な演技表現が行われているように撮る方が役者さん達は喜ぶ。
誰に見せる写真なのか? まず役者さん、あるいはその役者さんの
ファン、加えて、劇団に感心のある人(入団希望とか、他劇団から
の情報収集とか)、そういうターゲットに見せる写真であるならば
綺麗な肖像画的写真や、ピースサインのニコパチ写真は一切不要だ、
できるだけ個性的かつ、シーンの表現力を最大限に引き出す演技の
表情を撮るのが良い、劇団舞台処女のHPにある劇団員紹介のページ
には、今は私の考えを完全に理解した主催の「断寝」氏が、わざと
劇団員の特徴的な表情の写真ばかりを選んで掲載している、
それは他劇団からも好評な様子だ、この劇団は表現力が優れている、
と写真から感じてもらえれば、客演などの交渉もやりやすくなので
あろう。
寄り道が長くなったが、観劇記事に戻る・・
不思議の国(?)らしきところに迷い込んだ「アリス」の元に
張本人の「ウサギ」(役名:「白ウサギの白兎」)が現れる、
「アリス」は、「(メイド喫茶の)店長に無断で出てきたらから、
早く戻らないと怒られる」とか色々現実的なクレームをつけるのだが、
当然、「白兎」は、そんな話を真面目に聞くそぶりは無い。
このままでは埒が明かないと思った「アリス」は強行手段に出る、
「白兎」を追い詰め、力づくでも、元の世界に戻してもらうように
懇願(脅迫?)するのだが・・
ただ、まあ、現実世界に戻ったら劇が成り立たないわけであり(笑)
ここから、この不思議の国でアリスがどんな冒険をするのか・・?
いや、それでは原作のままだな・・デフォルメされたこの劇では、
いったいどういう背景やストリーの根幹が潜んでいるのか?
まだこの段階では何もわからない。唯一のヒントとなるのは、
冒頭のシーンで出てきた箱の中の男性(役名:「看板男の板男」)
だろう、「板男(いたお)」が閉じ込められている箱(看板?)
には、スマホ、携帯ゲーム、漫画、ジャンクフード、萌え系
キャラクターなどが書かれている、それらは、まあ、現代的な
ヲタクの代名詞だ、つまり、ヲタク?あるいは、引きこもりか?
まあ、そんなところであろう?
だとして、それが、アリスが迷い込んだ不思議の国のと、どう
関係してくるのか? 台本を事前に読んでいない効果で、舞台上の
物語の展開に興味が出てきた。
シーンは変わり、もう1人のメイド、冒頭のシーンで一緒に
マンホールに落ちたメイドさんだろうか?
メイド喫茶のメイドさんは、本物のメイドさんのように、
ご主人様に「あら、もうこんな時間、今からお茶の時間です」と
告げる。
役名「山ネズミ山根」が、妙な雄たけびをあげる、「山ネズミ」
は、さきほどまで舞台中央で寝ていた、その後も、定期的に起き上
がってきては、妙な声を出す、しつこいほどに、それを繰り返して
いる。
メイド’(メイド喫茶イ「メイドラエモン」の「パリス」ちゃん)
は、おもむろに紅茶を入れて、ご主人様のカップにそれを注ぐ。
ご主人様は、女性だ。役名は「帽子屋ハッター」
劇団「いっぱ」から客演の黒田嬢、以前にも、劇団「まちかど」の
「パラサイティック・プラント」と、「ボクサァ」という2作品で
客演している、どちらの劇の写真も私は撮っていたので、よく覚えて
いる。数年ぶりにお会いしたときも・・
匠「こんにちは、たしか”パラサイティック・プラント”に
出られていた・・」
黒「劇団いっぽ、黒田です、よく覚えていられますね?」
匠「あはは、写真を撮っていますからね」
そう、写真を撮らないで演劇を見たことも「まちかだ」以外の劇団などで
何度もあるのだが、残念ながら、誰が出ていたとか、どんな劇だったとか
ほとんど覚えていない(汗)、別に寝ているわけではないのだが(笑)
お客さんとして席に座っているだけでは舞台には集中できないのだ。
さて、帽子屋、も出てきたところで、元になった「不思議の国のアリス」
の登場人物が揃いつつある、あと、何が出るのだったっけかな?
なにせ、小説を読んだのはそうとう昔のことだ、完全にうろおぼえであり
「トランプの兵隊」「女王様」「チェシャー猫」・・あとは思い出せない、
まあでも、原作は、この劇ではあまり意味が無いのであろう。
まだ舞台は始まったばかりで、舞台の展開は見えてこない、
観劇記事はこのあと数回にわたって連載予定だ、回を追うごとに、
だんだんこの劇の全貌が見えてくる事であろう。
観劇記事は、肝心なところの結末と書いてしまっても差し支えない
のだろうか?ということで、初期の「劇団舞台処女」の観劇記事では、
ラストシーンをあえて伏せておいたりしたのだが、聞くところでは
「劇団舞台処女」は同一の作品で再演を行うことは、まずない、という
ことなので、舞台(公演)記録も兼ねて、すべての結末まで書いてしまう
こととしている、劇団公認なので、どんどん書いていこう(笑)
(その2につづく)