【玄人専科】名機対決、1990年代編(1) MINOLTA α-9 vs. NIKON F5
え~と、シリーズ何回目だ?(笑)
マニアックなシリーズなので、もういちいちシリーズの過去記事にリンクを張ったりしない、
熱狂的なファンは、【玄人専科】カテゴリーあたりから掘りこしてもらいたし。

左がミノルタα-9(with STF135/2.8) 右がニコンF5(with AiAF20/2.8)である。
今でもおそらく愛用者が多い銀塩フラッグシップ対決である。
この頃(1990年代後半)は、各社とも、巻き上げ数が秒何コマだとか、
AFの測距点数が何点あるとか、およそ非日常的なスペック競争に血道をあげる
時代であった。
まあ、言ってみれば、その昔ソビエトとアメリカが大きな宇宙ロケットを打ち上げて、
暗に「ミサイルなんか簡単に作れるんだぞ!」と牽制しあっていた時代のような話であり、
スペック競争の結果的にカメラもどんどん、この世の物とは思えないほど肥大化、
重厚長大になっていった時代である。
まあ、ユーザーもかなわない話であり、1.2kg 近くもあるようなカメラにさらにレンズを
つけ、総重量は2kg 、そう、2リットルのペットボトルとか、巨大ビヤジョッキ、
軽めのボーリングのボール、鉄アレイ、などを持って写しているのと同じくらいの苦行を
しいられていたのである。 よく文句が出なかったものである。
さすがに、EOS-1シリーズ、ニコンF4,F5 、α-9 、コンタックスRTS Ⅲ、この手のカメラ
は、よほどの事が無い限り持ち出して写そうという気力にはならない。
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さあ、例によって、カタログ等に書いてあるようなスペック比較は一切しない、
そんなのは、ネットで引けばいくらでも出てくる。本にも出ている。
【玄人専科】は、このブログでしか得られない独自の情報を常に目指しているのである。
さて、いきなりだが、両者には限定バージョンがある。
★F5 50周年記念モデル:中古相場23~28万円
★α-9Ti(チタン) :中古相場25万円前後
私はノーマル品しか持っていない・・(汗)
限定バージョン、いずれも欲しいのであるが、とにかく高い!
α-9は2000年頃新品で16万で購入したのであるが、現在の中古相場は10万円くらい。
F5 は2001年頃中古で10万で購入したが、現在の中古相場は10~14万円くらいである。
さすがに、いくら貴重な限定バージョンだからと言って通常品の中古相場の2.5倍を出して
購入するほど裕福ではない。
おまけに同一モデルを2台以上所有することは私の「マニアの美学」に反する。
同一品を実用目的で複数台購入する必要はなく、それをやってしまうと「コレクター」と
なる。 コレクターは一つの趣味分野として否定はしないが、「スーパーマニア」は
全部使って試してみないと納得がいかないのである。
そして、特にα-9Ti はかなりレアであり、大阪では2回くらいしか見たことが無い。
これはノーマルの9より100g以上軽いとのことで、他のチタンボディとは意味が違う、
たとえばFM2と FM2/T ,F3 とF3/T, OM-3/4 とOM-3Ti/4Tiでは、チタン判でも殆ど
10gか20gくらいしか重さが変わらない。
けど、チタンボディは憧れである。 何台かは持っているが、ヒンヤリとした質感は
最近のプラスチックカメラとは根本的な差を感じ、所有感が全然違う。
チタンは頑丈だと思われているようだが、実際にはそこまで強くは無い。
チタンのカメラを鉄製のストーブの上に落したら、ボディは大丈夫だがストーブに
傷がついた・・・なんて話がまことしとやかに流れているが、まあ、嘘であろう。
カメラに使うくらいのチタンの量ではそこまでの強度を得ることはできない。
軽いキズくらいはつきにくいというメリットがあるが、深いキズはお手上げである。
旧ソ連、幻の秘密潜水艦アルファー級は、船体構造の殆どをチタンにしたと言われる
超贅沢な兵器であり、通常の潜水艦の2倍程度、そう1000mくらい潜れると言われたが
実際のところは見たわけでは無いので、さだかでは無い。チタンは非常に高価な素材で
加工も難しい、そんな高価な兵器をいくつも作れるわけ無いしな・・・
カメラだってそんなに贅沢にチタンを使うのはコスト的に無理である、
ましてや国内にもチタンを加工する工場はとても少なく、しかも確か数年前に新聞で
読んだが、2つくらいしか無い工場の1つが、火災で大きなダメージを受けたと言う。
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さあ、今日はチタンの話では無い(汗)、ノーマルのα-9とF5 の対決である。
この2台は、フラッグシップとは言え、全然開発コンセプトが異なる。
F5 はともかく史上最強の性能を目指して作られ、連写速度は勿論、
シャッターを押してから実際に切れるまでのリリース・タイムラグもAF機やデジカメ
の中では最少レベルである。
(もっとも、写るんです、や、同じニコンの古いF2 には負ける、機械式は強し!笑)
AFも速く正確であり、フィルム装填時の巻上げ、巻き戻しも非常に速い。
現行のフラッグシップのF6 は使いやすさや感触性能をもとめて、カタログスペック的には
後退している節があるが、さもありなん、F5は、ある意味「やりすぎ」であり、ニコンですら
すぐにF100を出して反省したくらいであるから、F5のカメラとしての歴史的な価値は少ない。
しかし、F5は、言葉を変えれば、未だにEOS-1Vと並んで銀塩最強のカメラである。
その「意味の無い程の高速連写」は36枚フィルムを5秒以内でカラにしてしまう。
フィルムが終わったら、ニコン伝統のわけのわからない操作系、すなわち1、2レバーと
呼ばれる巻き戻しのプロセスを踏む、左手でカメラをささえ、右端にある1のレバーの
フタを右手で開ける、そのままではボタンが押せないので左手の親指をいっぱいまで
伸ばし、重たいレンズとボディを落下しないようにプルプルと支えて右手の親指で
1のボタンを押す、すぐさま右手でカメラを押さえ、左手の親指でカメラの左上にある
2のロックレバーを解除し、右手の親指を左側いっぱいまで伸ばして2のボタンを押す。
・・・この、ふざけた操作性を考えたニコンの開発者、出てきなさい!(怒)
そんな手間のかかる操作をしているうちに、ボディ本体で毎秒5コマ以上の高速連写
が可能なα-9は、意外なほどに速いフィルム巻き戻しをスムースに終え、次のフィルム
を装填して、もう半分くらい撮り終わっている頃であろう。 下手すると2倍以上αが
速く沢山撮れると思う。
それとも、F5を使う人は、アシスタントを少なくとも2人は抱え、それぞれにF5を持たせ、
「織田信長の三段鉄砲」のように、次々とフィルムをチェンジさせるのであろうか?(汗)
しかし、そんな話も今や昔。ニコンD2Hなどの高速連写デジカメを使えば、秒8コマで
40枚以上連続撮影し、少し待てばさらにまた40枚の連写ができる。
先日はD2Hで1日にカウンターが1500枚以上進んだ、フィルムでやったらそもそも
そんなに沢山フィルムを持って歩けやしない(笑)
F5に他の特徴は無いのか? ・・・そうだな、何も無い(汗)
操作系(注:操作性とは異なる)に対する考え方は最悪であるし、ファインダーも平凡、
ファインダー全体が交換できるニコン最後のフラッグシップとは言え、ファインダーを
標準以外のものに換装したら、まあ、その次にF5の長所といえる 3D-RGB 1005分割測光
すなわち、被写体の色まで感知するから、露出補正が実質的に限りなく不要になると
言う機能も使えなくなってしまう。 ちょっとそれはがっかりである。
てなわけで、F5は今や実用価値の少ないカメラとなってしまった。
それでも定価は30万円をはるかに超えるカメラであるから、10万円くらい出ていたら
銀塩ニコンの最強カメラとして買う意味は十分あるであろう。
なにせ、10万円といったら、作りが悪く鈍重な玩具デジタル一眼レフの価格と同じである、
それに比べれば、少なくともF5は玩具では無い、しっかりとした「カメラ」である
ことは間違いない、発売10年を経過しようとしても、F5は決して腐ってはいない、
れっきとしたカメラとしての誇りを持っている、それは触ればすぐ分かるであろう。
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対してα-9、これは実に「たのしい」カメラである。
ミノルタの前フラッグシップ α-9xi 、歴史上の駄作と言われたカメラであるが、
このころのミノルタの開発コンセプトそのものが、極端な自動化を進めていたので、
カメラが悪いというより、会社の方向性そのものが間違っていたのである。
市場は正直だから、xi シリーズは誰も評価しなかった。 栄光のαの系譜もここで
途切れるのでは?と思ったが、隠れた名機α-507si が登場する。
先日、安価なαの中古機を、ある女性に頼まれたので、このα-507siを買ってきた、
中級機としての性能があり、かつ操作系がシンプルで使いやすい、それで13000円であった。
このα-507si の操作系をさらに使いやすく改良してフラッグシップとして育てた結果が
α-9である。 実にシンプルなカメラであるが、ダイヤル中心でとても使いやすい。
おまけに感触性能が抜群である、特にスクリーンを、サービスセンターに行ってM型に
交換し、さらに、もう一度サービスセンターに行って注意を受けながらM2型に換装する。
(何故注意を受けるかというと、M2型はf2.8より暗いレンズではつかいものにならない
からである、大口径レンズの専用スクリーンであることを買う前に説明される)
このM2型がかなり良い・・ 暗いがボケ量とピントの山が見やすい。
さすがにMF時代の名機、キヤノンNew F-1 やペンタックスLXにかなう術も無いが、
まあAF機の中では間違いなくトップである。
しかし、さすがのM2も暗いレンズ、たとえばSTFをつけるとボロボロになる。
(だから、STFは、ノーマルスクリーンのα-7につける)
そしてストロボ。フラッグシップにストロボが搭載されているのは珍しい。
ちなみに、フラッグシップとは旗艦である、旗艦とは、船隊を代表する艦の事である、
こんな言葉は常識の範囲で当たり前であり、言葉を見ただけで理解できるはずであるが、
最近は何でも人に聞くのが普通らしく、自分で考えたり調べてみたりする人が減って
きているそうであり、非常に情け無い話である。
ボディも頑丈で質感が高く、シャッターフィールもなかなか良い。
すなわち、写真を撮ってて「楽しい」カメラである。
今どきのAFカメラでは、こういうのもめずらしく、後は、そうだなあ、ニコンF6くらいしか、
このカテゴリーに分類できるカメラは無いのではないか?
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しかし、α-9の不幸は、実弟のα-7が、あまりにも優秀なカメラであった点であった、
α-9をさらに進化させたα-7は、「操作系」という概念では群を抜いたカメラであり、
2000年の発売以来、未だに全カメラの中で、この点ではトップを独走している。
ちなみに、α-7D 、あれはいけない・・ 他のデジタル一眼よりは多少はマシと言えど、
銀塩に完全にチューニングされたユーザーインターフェースデザインを、そのまま
デジタルにしたからと言って、良いものができるはずがない。 デジタルにはデジタルの
操作系があるはず、まだそれは未発達の分野であるが、とは言え、あまりに手抜きな
α-7D は、たまにα-7を持ち出して比較すると、天と地ほどの差に愕然としてしまう。
見かけが同じようなだけに、片方だけ出来の悪い双子の兄弟のような状況は見ていて
辛さをも感じてしまう。
α-9が7より優れたところはあるのか?
ある、9は、「頑丈なところ」がとりえである。
多少の悪天候だろうが、ラフな扱いをしようが、まったく平気のへっちゃらである、
それでも9は7の定価の2倍、そして中古相場は7の2.5倍である。
そこまでして9を欲しがる人はいるのか? 少なくとも私も周りではいなかった。
私の勧めで7を買った私の友人は、13人を数える。 しかし9はゼロである。
7を細い三脚に載せ不注意で倒し壊した友人もいた、9だったら壊れなかったのに、と
思ってももう遅い、普段から重いカメラを持ち歩くのはそれだけでもしんどい。
特に若い女性は7を好み、9は不評である、持っただけで「重~い」と文句を言う、
しかし、女性と男性と体力的にそんなに違うのか? そんな事はあるまい。
現に、友人のSさん(女性)は9を愛用している。彼女は私の勧めで9を買ったのでは
なく、知り合った時にはすでに9を使っていたが、彼女の口から重たいなんてセリフは
ただの一度も聞いたことが無い、別にマッチョな女性ではなく、ごく普通の方である。
あくまで気の持ちようである。
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「7の方が9よりAFが速くなった」と、開発メーカーが言った。
だから、雑誌の記事にはすべてそう書いてあった、どのカメラ屋に行ってもそうだと言った。
しかし、7のAFは、9より僅かに速いけど確実性が無かった
中央のクロスセンサーで厳密な比較をしてみた。
悪条件でも、9は1発でビシッと決まって微動だにしなかったが、7は僅かに迷いつづけた。
7の中央以外の8点のAFセンサーはさらに性能が落ちていた。
しかも9はMFで使っても、優秀な、7とは比較にならない程の高性能なスクリーンで
確実にピントあわせができた。
「AFの性能って何なの?」素朴な疑問であったが、同時に開発競争やカタログ
スペックのバカバカしさを知ったのもこの頃であった。
だいたい、ピントあわせの速さなんて、同じレンズをつけて同じ条件、あるいは様々な
実用的な条件で比較すれば、誰にでも簡単に差がわかる基本的なことでは無いのか?
それを、メーカー、雑誌、プロ、店員にいたるまで、誰もそれを比較していないのである。
そんな風に、カメラの世界では、誰かが言い出した事がそのまま伝言ゲームのように
伝わり、真実がきちんと語られていない事があまりに沢山ある事がわかってきたのである。
感覚の世界だから、レンズの性能なんか、いい加減にしか語られていない。
技術の世界にいたっては、メーカーが発表した値をそのまま広めることしかしない。
比較記事は、非実用的な直感的あるいは数値的レベルでしか語られず、きちんとした
体感評価なんてまず存在していない。
あるメーカーに関連するプロやライターは、そのメーカーにかかわる機材の評価しか
できず、他社との厳密な比較すらできない。
だから、ニコンにしても、キヤノンにしても、自社の前製品の比較としか行わず、
操作系の概念がミノルタよりも10年遅れている事にすら気がついてなかった。
雑誌の比較記事は、あくまでスペックの差の話にとどまり、毎秒コマ数がどうのこうのとか、
測距点数やその配置がどうのこうのとか、実用的に最も重要なファインダーの見易さ
ですら、視野率と倍率でしか比較していなかったのである。
そんなもの、同じ50/1.4でもなんでもくっつけて、クイって回してみたら誰でも
1発でファインダーのピントの山の見えやすさの良し悪しなんか理解できるであろう、
・・・・何で誰もやらないの? おかしいんじゃないの?
連写の時のAFのバラつきとか、ミラーショックによる手ぶれの影響とか、
開放F値がとても暗いレンズをつけた時のスクリーン性能とか、
手持ちギリギリの重い長玉をつけた時の重心位置とか、
ファインダーを少し斜めから見たときの、視野や表示のケラれとか、
操作ダイヤルのトルクとセンターロックとか、AFロック、AEロックの操作性とか、
縦位置グリップをつけたばあいのAF測距点選択の操作のしやすさとか・・・
そもそも、全体を統括する「操作系」についての概念の良し悪しとか・・・
銀塩カメラのそんな重要な項目への評価が丸々抜けているのは何故なのだろう?
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デジタルの性能比較だって一緒である、バッファ・フルからの回復時間、
露出補正の使いやすさ、1コマ消去のしやすさ、再生コマの表示速度、
連続液晶点灯時のバッテリーの持ち、その辺が最重要な性能であろう、
どのカメラも、そのへんに配慮が無いのは大変残念な話である。
おまけに、たとえば10枚撮影して9枚を消去したい場合の操作性(操作系)
こんな、ごく日常的に現れるようなシチュエーションにきちんと配慮しているデジカメは
まだ1台も無い。 1枚1枚消してられるかいな、面倒くさい・・・(怒)
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カメラ対決の記事のつもりが、延々グチになってしまった。
・・・しかたない、結局「名機対決」と言いつつも、F5もα-9も名機ではなかった。
しかし、どちらもその時代を代表する性能のフラッグシップとしては優秀である、
オーナーは誇りに思うと同時に、また、中古相場の価値が下がったと嘆く前に、
同価格の現代の玩具デジタルと、もう一度比較してみるといい。
質感、性能ともに、まさに「銀塩の誇り」を感じるであろう、だからそれで良い。
銀塩が必要なシチュエーションでは、こうした最高性能機を(重いが・・)持ち出して
撮れば良い、写真を撮るという行為の中では、思いがけない楽しみを感じる事が
できるであろう。 もしかしたら、カメラはこれからますます感覚面では退化していき、
これらが銀塩最後の名機、という意味で評価される時代が将来来るのかもしれない。