2014年5月25日(日)に、兵庫県相生市で行われた
第52回(!)相生ペーロン祭の「ペーロン競漕」の模様より、中編。
会場となっている相生湾の「ポート公園」(注:ボート公園ではない)
は内海であり、さらに小高い山々に囲まれていることから、凪いだ
静かな環境だ。 まさしくボート競技には最適の場所だ。
気温は5月にしては、やや暑め、最高気温は恐らく30℃近くに
なる事であろう。
観客数は非常に多い、これは、相生市が年1回の「ペーロン祭」
として観光客誘致に力を入れているイベントであるからで、
大会前夜祭の「海上花火大会」には、新聞報道によると8万人の
観客が来場した模様だ。本日の「ペーロン競漕」はそこまでの
観客数では無いものの、通常の「ドラゴンボート大会」とは
比較にならない多さだ。
冒頭の写真は、本大会連覇中の地元強豪「磯風漕友会」、そして、
その背景は「相生白龍(ペーロン)城」、いわゆる「道の駅」だが、
「海の駅」とも呼ばれており、相生地区の観光拠点となっている。
こちらは「磯風漕友会」の兄妹チームである「スーパードルフィン」
女子カテゴリーでの過去の優勝回数12回、平成15年からは、
11連覇中と、まさしく最強の女子チームである。
さて、「ペーロン競漕」とはどのような競技なのか、そして、
「ドラゴンボート」とは何処が違うか?とかは、前編にて詳しく
紹介した、この中編では、強豪チームについてや、チームの様子
などを紹介していくことにしよう。
まずは強豪チームだが、男子では、前述の「磯風漕友会」の他、
地元相生の強豪として「南風(なんぷう)」、「堀和希倶楽部」
が居る。いずれも過去の本大会で優勝経験を持つチームだが、
ただし、優勝は10年以上も前のことであり、チームのメンバー
が入れ替わっているなどで、現在の実力値は予選を見るまでは
未知数だ。
さらに「長崎ペーロン」からは、「牧島ペーロン保存会」が参加、
こちらは恐らく長崎の強豪チームからの選抜メンバーで構成されて
いる相生遠征用特別チームだと思われる。
相生最強の「磯風」が長崎ペーロン遠征の際に長崎チームに負けた
事が何度もあると聞いており、逆に長崎の彼らにとってアウェイの
相生でどこまで実力を発揮できるのかがとても興味深い。
それから、その昔、長崎から、このペーロン競技を相生に伝えた
立役者となり、主催側にも近い立場である造船業の雄「IHI」も
当然ながら複数のチームでエントリー。あるいはIHI関連会社の
「アムテック」をもまきこんで、各カテゴリーに分散して参戦させて
おり、虎視眈々と各カテゴリーでの優勝を狙っている。
まあ、もっとも、15年以上前までは、IHI関連チームが1部の
優勝の常連だった模様だが、現在は、「磯風」など、この大会の
歴史からみたら新進のチームが1部の優勝常連となっているので、
「本家」として、巻き返しを狙っている事あろう。
(ちなみに、IHIチームは、ドラゴンボート大会にもよく
出場している)
また、1部出場の、「陸(くが)ペーロン」も古豪チームである。
本大会では、過去4回以上優勝しているし、ドラゴンボートの
日本選手権(天神)大会でも、3連覇を含む多数の優勝実績がある。
ただし、さすがの「陸ペーロン」も、メンバーの代替わりの
時期を迎えていた。ここ6~7年は、ペーロン大会の優勝が無く
おまけに「2部」(Jリーグで言うJ2のようなもの)に降格
するという屈辱を味わっていた。しかし、今年、「陸ペーロン」は
「1部」に復帰している。
「陸ペーロン」のメンバーに、ちょっと話を聞いてみよう。
匠「こちら、陸(くが)ペーロンさんですよね?」
陸「はい・・(?) ああ、確か、写真の・・」
匠「はい、匠です。 調子はどうですか? 昔とはユニフォームも
変わったし、それと、ずいぶんメンバーも変わってきたようですね。」
陸「そうですね、今年は、若い中高生のメンバーも5~6人
入っています、以前とはだいぶ変わりましたね。」
匠「なるほど、若返っている様子で、これからが楽しみですね、
1部に復帰されたと聞いておりますし、また是非、強い
”陸(くが)”さんを見たいものですね、”陸の黄金期”を
再び、と期待しています、がんばってください!」
陸「きっとそうなりますよ! ありがとうございます!」
ちなみに、当初「陸」の名前をドラゴンで見たとき、当然「くが」
と読む事はわからず、”陸(りく)の上でペーロンをやるのかな?”
と不思議に思った。まさかそんなはずは無いので、恐らく地名とか
企業の名前だろうかと思ってずっとそのままだったのだが、今回
相生に来てみて、JR相生駅の南側一帯に、「陸(くが)自治会館」
とか、「陸(くが)橋」とか、「陸(くが)本町」とかの地名を発見、
なるほど、このあたりの昔の地名であったのか、とあらためて納得した。
さて、予選は順調に進んでいると思いきや、ここで思わぬアクシデント
が発生。
相生ペーロンでは、ターンを行うため、4本(x2)のポールを海に
立てている、比較的浅い海とは言え、ポールは結構の長さがある。
ペーロン艇のスタートは、ブイロープと呼ばれているロープを、その
ポールから張って、ペーロン艇の後部漕手がそれを持ち、艇を固定
してからスタート準備に入る。そして女子のレースでは、ブイロープは
使わず、ポールを直接持って艇を止め、スタートするようになっている。
予選の数レースを終え、ブイロープや直接のポール持ちで、2番の
ポールが少し傾いてきていた、それを修正する為に作業艇が出たのだが、
作業をしていたその時、ポールが倒れてきて、作業員の頭部を直撃!
作業員は衝撃で倒れ込んで、動けない模様。
すぐ近くにいたのが、レースの出番を待っていた「磯風漕友会」
作業艇に向け、速やかにボートを移動していく。
そうだった、「磯風漕友会」のメンバーの殆どは「相生看護専門学校」
の出身であった、つまり看護士である。医療の専門家が沢山乗って
いる船が事故現場に近づいていくということで、少し安心した。
確か、2年前の静岡の「御前崎ドラゴンボート大会」だったか?
ビギナーのカテゴリーで優勝したチームが、嬉しさのあまりボート上で
皆立ち上がってしまい、結果としてドラゴン艇がくるりと回転して
クルー全員が海に投げ出されたというアクシデントがあった。
まあ、ドラゴンボート大会は全員ライフジャケット着用が義務なので
大事には至らないだろうとは思ったのだが、それでも心配は心配だ。
その時、すぐさま事故現場に近づいていったのは、「海上保安庁」の
メンバーを中心とする「海猿火組」のドラゴン艇であった。
その様子を見ていて「ああ、海猿(海保)が行くから大丈夫だ」と
確信したが、すぐさま潜水士数名が海に飛び込み、それから後の
救助活動や安否確認作業は、さすがに「海保」の仕事だ、と思わせる
くらいにスムーズで見事なものであった。
今回、その様子が頭の中でフラッシュバックした。
事故現場に近づいていった「磯風」の見立てでは、「すぐ動かさず、
ゆっくり桟橋に向かってから降ろしてください」とのことで、その後
作業員は(会場に待機している)救急車に乗り病院に向かった模様だ。
これで一安心、と思いきや、しかし、ちょっと待てよ・・・
救急車は何処の病院に向かうのだろう? 救急車というものは、
受け入れ先の病院が無いと行き先が無い。で、相生の半田中央病院も
IHI播磨病院も、もしかすると結構な人数の職員がこのペーロン競漕に
参加しているかもしれない、まあ、相生の病院は勿論それらだけでは
無いが、とは言え、非常に沢山の観光客が集まる「ペーロン祭」では
あるし、多くの病人とか怪我人が同時に出たら、ちょっと心配ではある。
そして、今日は暑いので、ペーロンの選手はもとより、観客なども
熱中症の危険性が高い、特に三脚族のシニアカメラマンなどは、
暑い中、全く動かないので、ますます危ない。
そもそも、真夏のドラゴンボート大会では、カメラマンは殆ど居ない、
その理由は、体力が持たないからだ。よくシニアカメラマンが
「イベント・ドリブン」でドラゴン大会を撮影に来ることがあるが、
暑さで1時間と持たないで、すぐいなくなってしまうことが殆どだ。
(注:イベント・ドリブンとは、元々コンピューター用語で、自発的に
動かず、他が実行した操作や結果に応じて受動的に動く処理動作の事。
転じて、自ら行き先を決めることをせず、行事(イベント)があると、
それに応じて、見物や写真を撮りに行く観光客やカメラマンを指す)
まあ、炎天下のボート大会の見物や撮影に慣れていない観客やカメラマン
は非常に危険な状況にあると思ってよいであろう。
さて、上記、ポール修繕作業時のアクシデントにより、ペーロン大会は
1時間以上にわたって中断、最終的には1時間30分程度の遅れと
なった。まあ、しかし、元々昼食休憩の時間30分がバッファ(余裕)
としてあるので、これを省略すれば、1時間程度の遅れで済む事になる。
ペーロン艇は2レース分の艇数があるので、交代をスムースに行えば
最短10分弱の間隔でレースを行うことが可能なので、若干だが、
遅れを取り戻せる事もできるかもしれない。
年間10数回の大会をとりしきる、大会運営の上手い大阪のドラゴン
ボート協会のスタッフ達だったら、このあたりの調整は得意なの
だろうなあ・・と思いつつも、まあ、当初の予定終了時間が4時半と
早めなので、1時間遅れても5時半か、とあまり心配はしていない。
1時間半の遅れで大会は再開、で、いきなりここで「磯風」の予選だ、
「磯風」の予選タイムは、2分52秒、これは、予想していた3分
ジャスト、というタイムよりかなり速い。
「磯風」、なかなか調子がよさそうだし、コースの状況(環境)も、
現時点(12時頃)では、申し分ない様子だ。
そして、同じ予選レースに出ていた、地元強豪「堀和希倶楽部」も
2分56秒と、3分を切ってきている。結局、予選を通じ、この
2チームしか、600mで3分を切るタイムを出していない。
最強の「1部」リーグでの、他のチームのタイムは3分3秒~14秒
次点の「2部」リーグでは、3分16秒~3分30秒台
注目の長崎ペーロンより1部参加の「牧島ペーロン保存愛好会」
(上写真手前)は、予選で磯風に10秒程度の差をつけられている、
しかし、昨年は長崎の決勝で磯風と接戦の上勝利したチームの
メンバーも入っているらしいので、実力は十分、恐らくは今年も残る
であろう相生の決勝戦でのパフォーマンスに期待したい。
こちらは、長崎の「牧島」と、相生の「磯風」が有効の証しとして、
共同で作ったチームTシャツということ。
良く見ると、長崎で「牧島」の優勝7回、相生で「磯風」の優勝4回
と書かれている、数年前の時点での優勝回数であろうが、ともかく
「牧島」と名前がつけば強豪チームであることは間違いない様子だ。
また、「女子」リーグでは、連覇中の「スーパードルフィン」のみ
3分20秒台、他チームは4分近くと、かなり水をあけられている。
「女子」に関しては、恐らく、今年も「スーパドルフィン」の連覇は
確実であろう。ただ、「キュリアス魚橋」チームも「ドルフィン」に
及ばないまでも、まずまずのタイムを出してきているので、今後伸びて
くるかもしれない。
県外やビギナーチームからなる「オープン」のカテゴリーでは、
3分30秒あたりが最速で、殆どのチームは4分オーバーだ。
(写真は、3分36秒で、レーストップだった「みんなで舟漕がん会」
県外参加チームであり、大阪の日本選手権大会にも良く出ている)
予選のこの感じだと、見所は、男子1部決勝では「磯風」に対し
「堀和希倶楽部」がどこまで迫れるか、というのが1点。
そして、男子2部は、実力差が小さいので、ゴールの瞬間まで
もつれる可能性が高いことと、順位によっては、1部と2部の入れ
替わりがあること、そのあたりの2点だろうか・・
さて、予選は2回戦まで、一通り終了。
「オープン」カテゴリーは、1レースが4艘建てで、1回勝負だ、
すなわち、各レースのトップになったチームは、簡単な賞品を
受け取り、それで終了。
ドラゴンボート大会にも出場しているベテランチームとなると、
前述の「みんなで舟漕がん会」、大阪の「浪わ」、さらには、
地元「HANDARS」、「坊勢」あたりもそうであろうか。
他にも参加しているかもしれないが、チーム名を大会毎に微妙に
変えていたりするし、合同参加チームもあるし、あるいは相生の
ペーロンでは、一発参加の「オープン」のチームは、選手村に
テントを広げていない場合が殆どなので、順番にテント巡りを
するわけにはいかず、参加者の全貌は、はっきりとはわからない。
それでも選手村を歩いていると、「チーム未来」や「こいさんず」
のメンバーから声をかけられたりするので、ドラゴン関連の選手達
も結構来ているのだろうと思う。
そして、「オープン」以外のカテゴリーでは決勝戦がある。
以下が、その出場チームだ(レーン番号順)
<一般男子1部>
牧島ペーロン保存愛好会
南風(なんぷう)
堀和希(ほりわき)倶楽部
磯風漕友会
<一般男子2部>
ヤンググリーン
奴RUN海
連合自治会矢野川
西播通運
<女子>
キュリアス魚橋
クイーンズ矢野川
SUPER DOLPIN
バイオレット
<ボートレース>
ひのうらユナイッテッドA
JMUアムテックA
JMUアムテックB
まず1部決勝では、「磯風」が7連覇を達成するかどうかと、
本日好調の「堀和希」が、どこまで「磯風」に迫れるのかが、
見ものとなる、さらに「牧島」も「南風」も超強豪であるので
結果の順位も注目したいところだ。
ちなみに、上写真(予選2回戦)での、奥の1レーンが「堀和希」
奥から2番目の2レーンが「牧島」だ。
また、上写真は、1部の強豪「南風」の2次予選の様子だ。
チームTシャツは、普通は同じ色で統一するのものだが、
この時の「南風」のように、順次変化するレインボーカラー
としたのは、他では見たことが無いナイス・アイデアだ。
ただ、クルーのポジション変更があったときどうするのだろうか?
Tシャツを入れ替えればよいのだろうが、他人の着ているTシャツは
あまり着たくないかもしれない(笑)
まあ、そんな理由があるのか否か「南風」がレインボーカラーと
なったのはこの1戦のみだ。
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2部決勝は、注目の高知県「須崎市」のチームは残念ながら
残っていない。また「奴RUN会」は、どこかの大会で見たことが
あるチームだったので、声をかけてみると「琵琶湖スプリント」に
出場したことがあるとの返事。「IHI」をはじめ「奴RUN会」
など相生ペーロン出身でドラゴンボートの大会に出場するチームも
少なくない、という感じだ。
で、2部決勝で上位(恐らくは優勝のみ)になると、1部に昇格
できるということで、2部の順位争いには注目したいところだ。
そういえば、静岡の御前崎大会も、昨年より、「チャンピオンリーグ」
(上級)と、「チャレンジリーグ」(初級)をカテゴリー分けしてあり、
かつ、チャレンジリーグでの優勝チームは、翌年は強制的(?笑)に
「チャンピオンリーグ」に昇格すると言う。
昨年の御前崎大会で、チャレンジの優勝チームと話をしていたのだが、
優「上(チャンピオン)にはあがりたくないなあ、ここ(チャレンジ)で
優勝しつづけた方が、いいよね、楽だし、賞品もらえるし・・」
匠「でも、もう下位優勝は2回目だし、実力あるんだから、そろそろ
上にあがらないとダメでしょう? 他のチームが勝てないですよ」
・・という感じだった。
今年の御前崎大会の出場チーム表を見ていると、案の定、そのチームは
「チャンピオン」の方に入れられていた(汗)
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女子は、前述のように「スーパドルフィン」が磐石。
それと「ボートレース」は、ここまであまり紹介していなかったが、
ナックル・フォア形式の5人乗りのカヌーのレースであり、ペーロンの
レースの合間に行われている。
小型の艇は、もちろんペーロン艇よりはるかに高速で、1分そこそこで
レースが終わってしまう。
小型の舟が、音もなくしゅ~っと走っていくので、観客には、あまり
目立たず、ちょっとかわいそうではある。
ちなみに「ボートレース」の部は、「IHI」の関連会社であり、ここ
相生のIHIに隣接する敷地を持つ「JMUアムテック」のチームAが
優勝という結果になっている。
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そうそう、最後に余談だが、ペーロン競漕会場の「選手村」への
アクセスは、通常であれば、JR相生駅→ペーロン会場までの有料
バス(190円)に乗り、会場からは、無料シャトルバスで、たとえば
「ポート公園」から「選手村」に動する、という2段階方式だが、
今回私は、朝から「選手村」に入るにいたっては、JR相生駅から、
次の「西相生」駅まで、電車を利用(140円)、西相生駅から、
選手村まで徒歩(約1.7km)というコースを選択した。
これは、朝一番から選手村行きのシャトルバスが運行しているか
どうかさだかでなかったので、万が一、「ポート公園」から、
選手村まで歩くとなると、2km以上になる事からの対策だが、
結果的に、西相生ルートの方が、運賃も安く、ガラガラにすいていて、
距離もそんなにたいしたことない、ということを発見。
まあ、地元の人は、たいてい車で移動するか(選手村周辺の駐車場は
朝からいっぱいになるので)正規のバスルートを使うかの選択だろうが、
もし県外などから電車でペーロン観戦に来る場合、相生駅を1つ乗り越し
西相生からのルートも選択肢として存在する事を記載しておく。
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さて、長くなってきたので、中編は、このあたりまでで、
続く、後編では、予想外の激戦となった「1部決勝」の模様を
中心にレポートする事にしよう。