JR清水駅前の「清水マグロまつり」に併設して行われた
ドラゴンボート大会「ツナカップ」の模様より。
何度も書くのだが、このツナカップ大会は、様々な条件に
恵まれた、人気が高く、参加者の満足度も高い大会である。
そのあたりの、ポイントを書き出してみよう。
①交通アクセスの良さ
JR清水駅前すぐの清水港で行われる大会であり、
新幹線静岡駅からも在来線で12分で清水駅に到着できる、
静岡は、関東からも関西からも遠くなく、JR東海/JTBの
「ぷらっとこだま」チケットで安価に移動できる。
宿泊ホテルも5000円以下で泊まれ、大会会場からも
近いところを静岡協会に手配してもらえるので楽だ。
②グルメの楽しみ
すぐ横で「マグロまつり」が開催されている、また漁業市場も
会場に隣接されているので、新鮮な魚介類から、静岡B級グルメ
までよりどりみどり。また、協会手配の弁当も新鮮な海鮮丼だ。
③賞品が良い
入賞は冷凍マグロ、さらには、今回の大会では、各スポンサー
のご好意により、全チームに賞品が出ている。おまけに参加賞
やちょとした景品まであり、30000円の参加費で元がとれて
いるのだろうか?と心配してしまうくらいだ。
④スモール10人艇(8人漕ぎ)によるレース
最低8名の選手のみで出場できるため、メンバーが揃い難い
チームや遠方からのチームでも参加が容易。
⑤実力に応じた詳細なカテゴリー分け
チャンピオン、チャレンジ、混合、女子の4カテゴリーと
なっていて、チーム実力や編成に応じたカテゴリーで参加
できる。レースはレベルの揃ったチームとあたるので、どの
カテゴリーも熱戦となる。また、レースフローもシンプルで
わかりやすい。
⑥地元と連携した良い雰囲気
大会社から中小企業、自治体、各種施設など、地域の様々な
要素と連携していて、全体に一体感がある。参加者の立場で
言えば「マグロまつり」に訪れる膨大な数の観光客が大会を
観戦して応援してくれるので、気分が良いし、ドラゴンボートの
認知や普及活動にもつながっている。
・・とまあ、好条件が揃っている大会なためか、参加チームの
過半数が静岡県外からの遠征参加チームとなっていて、
しかも抽選によるエントリーと、非常に人気が高い。
そして、チャンピオンリーグでは、「INO-G」、「東ドラ」
「TITAM-X」、「海猿火組」と、メジャー大会の決勝レベルの
超強豪チームも揃うので見所満載だ。
さて、レースの方は準決勝~決勝の段階に進んでいる。
まず、女子カテゴリーの戦いを見ていこう。
女子の部は、4チームが参加、レースフローは、予選1回戦
および2回戦の合計タイムの上位2チームが決勝進出し
決勝レースで優勝を決める、3位決定戦は無く、予選タイム
で3位4位は決定される。
注目は地元強豪、昨年のチャンピオンの「スピカ・ダーリング」
だ、保育士のチームであるが、一昨年のこの大会で初めて
ドラゴンを漕いだのだが、才能に恵まれていたのか、初めてに
してはかなり良い感じで、周囲からの注目を浴びた。
それ以降、御前崎大会にも毎回参戦、昨年のこのツナカップでは
ついに女子の部で優勝した。大会運営にも積極的に参加し、静岡の
女子チームの中心的な存在となってきている。
しかし、今回の大会では、女子の部に強力な刺客が2チーム参戦、
まず、地元の「海猿火組」や静岡協会を中心とした女子混成チーム
の「どんぶらこっこ」だ。
↑写真が「どんぶらこっこ」
さらには、東京の複数チームの女子選抜「KACHIDOKI CHEERS」
こちらも新しく結成されたチームであるが、選抜ということでも
テンポラリー(一時的)なものではなく、最近はこのメンバーで
全国各地の大会を転戦、日本選手権女子の部にも出場して
入賞している。
予選1回戦でのタイム順は、「どんぶらこっこ」がトップ、
「KACHIDOKI CHEERS」は1秒遅れ、予選2回戦では、
逆に「KACHIDOKI CHEERS」が1秒上回った。
実力伯仲の2チームだ。
注目の「スピカ・ダーリング」は、これら2チームに良くついて
行ったのだが、わずかに及ばず、決勝進出と連覇の夢は
潰えてしまった。
さて、女子決勝戦
「KACHIDOKI CHEERS」は、おそろいのユニフォームに、
応援用のうちわ、これはすなわち一時的な選抜チームではなく、
恒久的に活動する様相を呈している。
実力伯仲の女子2チーム、静岡(「どんぶらこっこ」)か、
東京(「KACHIDOKI CHEERS」)か・・?
決勝レースは、「どんぶらこっこ」が地元の意地を見せ、
東京を突き放して優勝という結果となった。
「スピカ・ダーリング」は今回は3位、また、シンガポール駐在経験
をルーツとする「ニライカナイ・レディース」は4位に甘んじた。
では、次に「チャレンジリーグ」の様子を見ていこう。
準決勝進出チームは
「ドラボンズ」「東海大学 瑞艇部」「濱龍」「鈴与龍舟」
の4チームとなった。
そのタイムは、200m を平均1分2秒~1分6秒だ。
チャンピオンリーグの準決勝進出タイムが52秒~57秒であるため
チャレンジとチャンピオンのタイム差はちょうど10秒程度となる。
200mで10秒差というと、距離にして35m前後の差になると思う、
これだけの差が出てしまうというのは、やはり今回の大会での
実力別カテゴリー分けは大正解だ。
地元の「VIVACE」と東京の「奏龍」は、残念ながらの予選敗退、
しかし、本大会では、敗退チームでも途中撤収してしまうことは
ない、というのも、本大会は全チームに賞品が出るとのことで、
各チームは閉会式まで残ることになっているからだ。
他の大会では、敗退チームが次々に撤退してしまう事が殆どだ、
それを責めるわけにはいかないのだが、閉会式をやる頃には
入賞チームだけしか残っていない光景は、ちょっと寂しいもの
がある。賞品で釣るというわけでは無いと思うのだが、やはり
残ったチームの熱戦の模様を最後まで見届けてあげるのも、
スポーツマンシップであるようにも思う。
チャレンジの準決勝は、予選タイム通りの順位となり、
「ドラボンズ」と「東海大学 瑞艇部」が決勝で争うことと
なった、ここでも女子カテゴリーに続いて、東京 対 静岡の
戦いとなった。
「ドラボンズ」は東京のベテラン強豪チーム「BON OYAGE」の
サブチームだ。本体の「BON OYAGE」は、チャンピオンカテゴリー
に参戦している。チャンピオンは日本選手権並みの超強豪チーム
が揃っているので「BON OYAGE」はそう簡単に勝たせてはもらえ
そうにない、ならば、ともかくは、このチャレンジリーグを
抑えていきたいところだ。
「東海大学 瑞艇部」は、カッター漕ぎの専門のチームだ、
カッターのとても長いパドルを、短いパドルに持ち替えての
参戦であるが、彼らには若さがあり、また、ほぼ毎日と思われる
漕ぎの練習量の優位点もあるだろう・・・
決勝戦は超接戦、2艇はほぼ同時にゴールインしたように見えたが
結果的に「ドラボンズ」が「東海大学 瑞艇部」を 0.08秒上回り
本大会初優勝ということになった。
ちなみに、3位には、準決勝のタイム順で「鈴与龍舟」が入賞した。
そして、混合リーグの準決勝進出チームは、
「KACHIDOKI SHARES」「IHI」「静岡県ドラゴンボート協会」
「CIC RISING START」の4チーム。
準決勝第一レース、「KACHIDOKI SHARES」vs「静岡県協会」は、
接戦であったが、僅差で「静岡県協会」チームの勝利。
「静岡県協会」のタイムは1分1秒台と、本日の混合カテゴリー
での最速タイム。
ちょうどこのころ、「静岡県協会」の若手リーダーの鼓手の
彼女さんが到着したところなので、気合が入ったのかも知れない。
準決勝第二レースは、「IHI」が「CIC RISING START」をかわし
決勝進出を決めた。
結果、混合決勝戦は「IHI」vs「静岡県ドラゴンボート協会」
「静岡県ドラゴンボート協会」(通称:県協会)チームは、
「海火」「鈴与」「中電」「東海大学」などの若手選手を
中心とする選抜チームであるが、まあ、いちおうホスト側
のチームなので、どちらかといえば遠方から参加の「IHI」に
花を持たせてあげたいところだ。
しかし、準決勝のタイムは「県協会」が「IHI」を上回って
いる、果たして結果はいかに・・?
決勝戦、「県協会」と「IHI」は前半はかなりの接戦、
このあたりカテゴリーの細分化がうまく効果を出している、
なかなか良い勝負で推移したのだが、後半「IHI」の伸び
が素晴らしく、59秒でゴール、これは混合カテゴリーと
しては、このタイムは立派なものだ。
結果としての順位は、「IHI」「県協会」、そして3位には
準決勝のタイム順で「KACHIDOKI SHARES」が入賞した。
本日のラストは、メインイベントの「チャンピオン」
カテゴリーだ、準決勝に残ったチームは、
「村田-Black」(INO-G)、「東京ドラゴンワイルド」
(東京龍舟)、「海猿火組」、「TITAM-X」と、
まるでメジャー大会の決勝のような、超強豪チーム同士
の組み合わせ。
そして、超接戦の準決勝を制したのは「村田-Black」
と「海猿火組」となった。
この2組は因縁の対決、各地の様々な大会の決勝で顔を
合わせているが、今のところ「村田-Black」(INO-G)に
やや分がある様子。
この決勝にあわせ、海上保安庁の巡視艇が応援にかけつけて
いる。まあ、といっても、「海猿」からみなのだが、あまり
公私混同も良くないということで「救命胴衣を着用しましょう」
という文字をLEDに表示し、あくまで、マリンスポーツの
安全を啓蒙する立場で来ているということだ。
「村田-Black」(INO-G)には、女子選手も含まれていて、
オープンでも混合でもいけるという超強豪チーム。
昨年の本大会(ツナカップ)優勝の他、今年7月に大阪で
行われた日本選手権(天神)大会では、混合の分で優勝
している、すなわちこれは今年の日本最強チームという事だ。
村「決勝では47秒台を狙う」
と言っていたのだが、はたしてそれは可能なのだろうか?
「村田-Black」の本大会での最速タイムは昨年の準決勝
での49秒台だ、そして今日の「村田-Black」のタイムは
52秒、53秒、50秒という推移となっている。
200mを50秒ジャストで漕ぎきれば、1秒あたりは4mとなる
昼ごろ、潮流の影響が出ているのか、タイムが3秒ほど
落ちているが午後になって、またタイムを伸ばしている。
潮流のタイムに与える影響は大きい、たとえば、ほんの
毎秒20cmの追い潮があるだけで、200mを50秒のチームの
タイムは、200÷(4+0.2)=47,6秒となり、47秒台に突入
させることができる。
ただし、川とか海、あるいは琵琶湖の瀬田漕艇場のように
潮流や水流が一定方向に流れる場所であれば、そういう
計算になるが、ここ清水の大会会場は、湾内である。
なので、そのように一定方向の潮流ができるとは限らず、
引き潮や満ち潮の際にも、湾内の潮流は複雑となり、
予想がしにくい。 うまく、潮の流れのタイミングや
方向に乗せることができれば、50秒を切るタイムを
「村田-Black」が出すことは不可能ではないであろう・・
Are You Ready? Attention Go!
さあ、いよいよ決勝が始まった。
手前、「村田-Black」、奥が「海猿火組」
どちらも非常に力強い漕ぎ。
「マグロまつり」を見にきていた多数の一般観光客も
この緊迫したレースの見学をはじめた
観「スゲェー、速~い!」
観「青が速いか? いや、黄色か?」
観光客が、口々に感想をもらす。
中には、興味を引いたのか、私に聞いてくる観光客も・・
観「これ、どちらのチームなんですか?」
匠「手前が埼玉の最強チーム、奥の黄色が地元静岡の
最強チームです、名勝負ですよ」
観「なるほど、確かにすごい迫力ですね~
あ、青が少しリードしてますね、それ、頑張れ~!」
・・結果は、後半の「村田-Black」の伸びがものすごく、
50秒台でのゴールとなった、47秒にはさすがに届かなかった
が、このコンディションでは最善であったのであろう。
「海猿火組」は、やや遅れて52秒台でのゴール。
まあ、ホストチームなので、2位というのは、大会を
シナリオとみれば、理想的な結末なのかもしれない、
しかし、そのような「出来レース」としてやっている訳では
なく、両者全力をつくしての結果なのだから、ますます
もって、「ドラマ」を感じる結末となった。
さて、大会も終わり、閉会式&表彰式が始まった。
写真は、今日のメインMCをしていただいたアナウンサーの
「スナオ」さん、ドラゴンの大会もかなりの数をこなして
きているベテランなので、チーム名の読みや、解説の
しどころもツボを抑えていて安心して聞いていられる。
今日のMCでは「今でしょ!」「倍返し」などの流行語も
随所にうまく取り入れていて、たまたま解説を聞いていた
一般の観光客の方も
観「あのアナウンサー、なかなか上手いなあ」
という感想を、家族の方と話していた。
入賞チームの表彰が次々に行われる。
入賞チームの表彰状には、チームの記念写真も添えられて
いるのも、本大会の特徴、これは「県協会」のスタッフが
レースの後に全チームの集合写真を撮っていることで可能に
なる。小さな工夫なのだが、これがまたチームにはすこぶる
評判が良い、このあたりも何度も述べている「満足度」の
高い大会である事の理由の1つだ。
また、今日の大会では、下位チームにも賞品が出る、
地元スポンサーのご好意であるが、このあたりも、本大会は
さまざまな点で、非常に運営が上手いという印象を受ける。
さらには「清水エスパルス」の観戦チケットとかも希望者に
配られる、数の少ない優待券は、最初はジャンケンでの
争いになったのだが、その後で、「ツナカップ」にちなんで
「ツナ缶」を配るということになって、そちらは先着順と
いうことで、選手たちが殺到、まるで昔の漫画とかに
出てくるデパートのバーゲンの状態になってきた(汗)
そして、あまりの加熱ぶりに、目的の「ツナ缶」をゲットできず
その場に倒れてこんでしまう選手も。
まあ、といっても、事故というわけではなく、これはこれで
パフォーマンスの一種なのだ、きっと、やっている本人も、
バーゲンのように賞品にむらがる様子が照れくさかったの
かもしれない。
ちなみに、こちらのツナ缶は、大会の実行委員長のI氏が
地元の協力者の方々への挨拶回りに使う予定だったものらしい。
それを大判振る舞いで選手たちに配ってしまったので、
後が大変だったとか(笑)
・・ということで、完成度の高いツナカップ大会は無事終了、
しかし、参加者の満足度と引き換えに、運営スタッフは
かなり疲れたと思う・・
時刻はすでに夕方、運営スタッフはそのまま打ち上げ・・
となりそうだが、実際にはそうはいかない。
会場の撤収作業などがたっぷり残っているので、むしろ
これからが大変なのだ。
モーターボートに曳航されるドラゴンボート。
ボートを保管するのも大変だ、その費用はもとより、
台風とか波浪警報が出るたびに、ボートの心配をしたり
場合により陸に上げるなどの措置をとらなければならない。
ほんと、スタッフの方々の苦労を思うと、頭が下がる思いだが、
ある意味、それができる「静岡県協会」の環境もまた、
うらやましく思う。
沢山の選手や参加者の方々が笑顔で帰途につく・・
そして、その笑顔を見れば、運営スタッフの方々も「やりきった」
という思いが強まるに違いない。
また来年、大変だとは思いますが、今年よりもさらに満足度の
高い、日本で最も「熱い」大会を目指して、スタッフの方々も
頑張ってみてください・・