毎年8月の第一日曜日に、滋賀県大津市・浜大津駅近くの
琵琶湖畔で行われる、小学生を中心としたドラゴンボート大会、
「ドラゴンキッズ」も、早いもので今年で8回目を迎える事となった。
京阪電鉄京津線の浜大津駅を降りると、ドラゴンキッズ大会
のポスター看板があった。
例年この大会は「浜大津サマー・フェスタ」と併設して行われて
いる。イベント内容としては「B級グルメバトル」やJAZZ演奏、
打ち上げ花火などが行われ、夏休み真っ盛りの中、多数の
来場者で賑わう。
「ドラゴンキッズ」大会は、8回目と書いたのであるが、
実は昨年の大会は、強風の為、大会途中で中止となってしまった。
強風で何故中止になるか?というと、白波が立つとボートに浸水し、
限度を超えると沈没などの事態に至ってしまうからである。
実際、昨年の大会でも、数レースを行った時点で、沈没艇が
出てしまった、大人の大会では、まれにそうした事もあり、
私も、数年前の大阪・関空大会では3艇が沈没、昨年の静岡・
御前崎大会で1艇が沈没した現場を見てきている。
大人の場合では、すぐ沈没ボートを復元させるなどして特に
問題にはならないのだが、さすがに小学生の大会では自力で
ボートを復帰させるのは困難なので、救助ということになる。
風がやんでくれればレース再開という可能性もあったのだが、
あいにく昨年はいっこうに風が弱まる気配がなく、残念ながら
の中止となってしまったのだ。
ちなみに琵琶湖のドラゴン艇(通称ペーロン艇)は、重量が重く、
喫水が深くて安定性も非常に高い、以前より、「まず沈没する
事は無い」と言われていたのであるが、前年の初沈没には、
運営側としても、ちょっと驚いた状況でもあった。
そして、昨年の沈没チームは、わりと強いチームであったので、
会場に向かう前には、今年も参加しているかどうか、ちょっと
心配であった、来てくれたら大会が盛り上がるのだが、子供達が
「もう怖いから乗らない」等と言いかねないと思ったわけだ・・
さて、開会式が始まる。
美人司会者によるスムースなMCと司会進行、恐らくは琵琶湖
放送のアナウンサーの方なのだろうか・・
そして、例の昨年の沈没チームも元気よく参加しているようだ、
後でチームの人に聞いてみると・・
「いや、子供達は、その時は、怖がって泣いている子もいたけど、
すぐにケロっとしてましたよ、昨年ちゃんと漕げなかったので
今年も出たいと。それにチームは以前3位になったこともあるし、
あれくらいの事ではやめられませんよ」とのことである。
うん、よかった、よかった。
多分、大都市圏とかで、ボート沈没などというと、親御さんから
「そんな危ないこと、すぐやめなさい」とクレームが来るのかも
知れないが、そういうスタンスで本当に子供の教育に良いの
だろうか? 琵琶湖でのびのびと育つ子供達を見ていると、
つくづくそう思う。
代表の子供達による「選手宣誓」、いつもながら子供達は
元気が良い。
思えば、いつもの大人の大会に出ている選手達は、毎年、
若干の新陳代謝はあるものの、ほぼ同じメンバーで推移して
いる、しかし小学生の成長は速い、この「ドラゴンキッズ」の
第一回に出た選手の子供達は、今や誰も残っていない、
それどころか、当時の6年生は、いまや成人式を迎える年頃に
なっている事であろう。
「キッズ」大会でも、強豪と呼ばれるチームも、いくつかあるのだが、
そのメンバーも毎年少しづつ入れ替わっていく。
そうした中、「大津スキースポーツ少年団」は、小学生の部で
連覇を続けている超強豪チームだ、このチームはその名の通り
多方面で活動するスポーツクラブなのだが、ドラゴンボートに関しては、
滋賀の強豪ドラゴンチーム「龍人(どらんちゅ)」が技術的な
バックアップを行っている。
滋賀県は国内では有数の、ボート競技に対する裾野の
広い土地である。
今年の7月にハンガリーで(大人の)ドラゴンボート世界大会が
行われ、日本からも、「東京龍舟」「Torrid Storm」の2強豪チーム
のメンバーを中心とした混成チームが遠征したのだが、各国の
チームに手も足も出なかった事や、他国のチームの裾野が
広い事(たとえばドイツチームは260名の選手団を編成して大会に
参加した等)に、一種のカルチャーショックを受けて帰国したようだ。
そうした世界の様子を見てくると、日本国内においても、もっと
ドラゴンボート(や他のボート競技)をメジャーなスポーツとして
普及発展させ、裾野を広くしていくことの重要性がわかってくるという。
滋賀県(および滋賀県ドラゴンボート協会)には、そうした自覚が
十分にあり、たとえば滋賀で行われる大会は、この小学生大会
「ドラゴンキッズ」や、長距離レース主体の海外大会を意識した
「1000m」大会、さらには、高齢者による「グランドシニア」大会、
そして、今年から始まる「スモールドラゴン選手権」と、
いずれも国内の他の地域には無いユニークかつ、ドラゴン人口を
増やしたり、世界を視野に入れた趣旨を持つ大会を運営している。
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「キッズ大会」は、現在は3強の時代となっている。
その筆頭は前述の「大津スキースポーツ少年団」(以下、大津SS)
であるのだが、加えて、滋賀の大人の強豪チーム「池の里Lakers!」の
子供達による「池の里Junior Lakers!」も現在、親子の部で連覇中の
本格的チームであり、さらには、強豪「小寺製作所」の小寺団長率いる
「平野スポーツ少年団」の多数のチームもまた、毎年入賞する実力を
もち、虎視眈々と優勝を狙っている状況だ。
また、それらのドラゴンチームのバックアップがあるチームばかりに
優勝をさらわれてなるものか、とばかり、3位~5位入賞あたりの
実力を持つ「立命館チーム」や大阪の「Big Coner East」等が続く。
こちらは、今年初参加の「滋賀スポーツ少年団 野球部」
野球部によるチームは、毎年色々な地区からの参加があるが、
どのチームもボートとは馴染みが無いようでも、意外と強い。
普段からの練習などで体力のベースがあることが最大の理由と
思われるのだが、それとともに、滋賀(琵琶湖)という土地が、
マリンスポーツのメッカとしての土壌ができていることも理由の
1つであろう、レジャーなどでボートを漕いだ経験のある子供は
かなり多く、中学に進めば、ボート部のある学校すらも存在する。
ミシガン(観光客船)が、その優雅な姿を湖面に浮かべる恵まれた
マリンスポーツ環境の琵琶湖に、子供達の漕ぐドラゴンボートが
力強く進む・・ こうした光景は他地区では皆無に近いのかも
知れないのだが、海外においては普通のシーンであるとも聞く、
日本の都市部の子供達は、野球かサッカーくらいしかやらない
のであるが、将来、ドラゴンを含むボート競技が、国内において
もメジャーなスポーツとなり、オリンピックや世界大会などで
外国のチームとも対等に戦えるようになる為には、この琵琶湖
の恵まれた環境が出発点になるのかも知れない。
事実、開会式においても、滋賀県ドラゴンボート協会役員の
話において「将来ドラゴンボートがオリンピック競技になった
とき、その選手となるのは、今の君たち小学生かも知れない」
という話があった、これはあながち冗談や妄想などではなく、
世界という環境におけるボート競技の普及度から考えると
オリンピック競技となることも可能性が低いわけではなく、
その将来の選手達が、主に琵琶湖の環境で育っていくことも、
考えられない事でもない、いや、むしろ当然そうなっていく
ようにも思える。
(大人の)ドラゴン選手達は、「自分たちがやっている
ドラゴンボートはマイナーな競技だから」と自らを卑下して
言うこともあるのだが、まあ、日本という環境の中で見れば、
確かにドラゴンはマイナーなのかもしれないが、世界という
視点の中では、決してそうではなく、海外遠征した選手達の
帰国後の報告書などで、そうした状況の話に触れてみるのも
良いかもしれない・・
さて、前置きが長くなってきたのだが。
この「ドラゴンキッズ」大会は、2つのカテゴリーで
行われている。
1つは「小学生」の部で、こちらは、3年生以上の小学生
16名+大人4名の漕ぎ手で行われる。
もう1つは、「親子の部」であり、こちらは、小学生10名と
大人10名の漕ぎ手の構成となっている。
滋賀県以外の他地区においては「小学生の部」は実施が難しい
かも知れないが「親子の部」であれば、他地区でも十分に
実現可能だ。
通常のドラゴン大会とは主旨が異なるかも知れないが、
裾野を広げるという意味では、こうした大会もとても重要
なのではないかと思う、また、各地の協会やチームにも
こうした案を打診してみようかと考えている。
さて、今回の大会の方式だが、2艇または3艇によるレース
で、2回戦制だ、2レースの合計のタイムで順位を決定する。
近年の琵琶湖は、(琵琶湖には限らないが・・)ゲリラ豪雨に
見舞われることが多い、昨年のびわこペーロン大会でも、
ゲリラ豪雨で試合が短縮となり、それまでの予選タイムで
順位を決定した事があった。
その際に、実力値よりも予選タイムが少々悪かったために
結果を出せなかったチームに例えば「小寺製作所」があるが、
その小寺製作所がバックアップするキッズチームの
「平野スポーツ少年団・バドミントン部」は、今回はかなり
調子が良さそうである。
ちなみに、バドミントン部は、3チームをエントリーさせて
いて、小学生の部に1つ、親子の部に、A、Bの2チームと
なっている、そのうち親子の部Aチームは小学校高学年を
中心としたチームでかなり仕上がりは良いと言う。
小寺”団長”は、試合前にこう語っていた。
小「今までのこと(注:ペーロン大会などでの予選タイムの悪さ)
もあるからな・・ 今日は、どこで中止になっても悔いが
残らないように、1本目から全力で漕ぐ!」
その言葉通り、スタート地点に向かう「平野バドミントンA]は
まるで大人のドラゴン専業チームと見まごうばかりの、見事に
揃った漕ぎを見せる。
”う~ん、こりゃあ、今年の小寺さんのところは気合がかなり
入っているな、とてつもないタイムが出るかも知れないぞ”
「平野バドミントンA]、予選1本目。
平「それ~ がんばれ~ 行け~」
陸上からの大きな声援は、「平野バドミントンA]の
家族応援団。 というものの、ユニフォームは「小寺製作所」
のトレードマークのピンク色で統一されている。
小寺団長いわく・・
小「あはは・・今年はユニフォームをピンクで揃えたよ!」
匠「それって、モロに”小寺製作所”じゃあないですか(笑)
しかし、強豪”池の里”も、もう半分くらいは小学校を卒業だし、
子供達、卒業したら小寺さんの所のクラブに入るのでしょう?
そしたら、”小寺帝国”がますます強くなっていくんじゃあ
ないんですか?」
小「ガハハ・・ うちばかり強くなるわけでもないよ、
”池の里”の監督の奥さんも、”平野”で2チーム率いているぞ」
匠「あ、あの”平野バレーボール部”ですよね?
なるほど、”池の里帝国”も勢力を広げているのか・・(笑)」
小「そういうこと! まあ、ワシは、皆が楽しくドラゴンをやって
くれれば、それでいいと思っているし」
匠「まったくその通りですよね・・ やっぱ、琵琶湖で次世代の
選手を育てていかないとね。で、小寺さんのところは、滋賀県の
各大会のスポンサーにもなっていただいているし、まったく
ありがたい話です。」
小「まあ、ワシ自身も楽しんでいるんだけどな、ハハハ・・(笑)」
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平「それ~ がんばれ~」
レース前の会話を思い出していたのが、ふと気がつくと、
「平野バドミントンA]がとんでも無いことになっている。
いや、とんでもないと言っても、トラブルではなく、その逆だ。
3艇レースだが、「平野A」は、他艇を大きく引き離す独走状態で
ゴール。 いったい、どれくらい速かったんだ?
大会本部からのアナウンスを待つ・・
本「ただいまのレース、
1着、”平野ポーツ少年団バドミントン部Aチーム”
タイムは、1分8秒xx」
匠「ゲッ! 1分8秒かよ!」
ちなみに、200mのレースで1分8秒というのは、
大人の大会での男女混合レースでのドラゴン専業チームの
タイムに匹敵する。
これを見て、火がついたのは、滋賀の(大人の)強豪チーム達、
まずは、小寺製作所の盟友「池の里(ジュニア)Lakers!」
さらには、「龍人(どらんちゅ)」率いる「大津SS]
写真の「大津SS」は、小学生の部の連覇中の王者だ、
まあ、今回は、「平野バドミントA」も「池の里」も
親子の部でエントリーしている、そちらのカテゴリーにも勿論
「大津SS」はエントリーしているのだが、「大津SS」は
両カテゴリーに3チームのエントリー。その主力は小学生の部で
あり、親子の部で1分8秒というとほうもないタイムが出た以上、
さらに小学生の部の連覇に向けパワーを集中してくるかもしれない。
対してシングルエントリーの「池の里」は、逃げ道が無い。
速い「平野バドA」のタイムを上回ることが絶対的条件なのだ。
「小寺」と「池の里」は、思い起こせば、7~8年程前の琵琶湖
スプリント大会で、初顔あわせをしたのだが、その時、隣同士の
レーンで両チームの予選レースがスタートした。
「小寺」はドラゴン大会初参加。舵のメンバーがまだおらず、
協会派遣舵の制度も知らず、結果的に大蛇行、池の里チームに
衝突してしまう。 「池の里」もそのころはまだチーム力が乏しく、
決勝に進める実力も持っていない。だから、大会の成績とかの
結果面から言えば、どうでも良いことだったのかも知れないの
だが、それでも衝突は、やはり精神的に気まずい・・
見た目がゴツイ(大きい・怖い)、「小寺製作所」のメンバーが
ゾロゾロと「池の里」チームのテントに向かう・・
匠「うわ~! こりゃあ、なにかするぞ、血ィ見るぞ!」
と、期待(もとい・・)心配したのであるが、その後の光景は
驚くべき状況であった。
小「池の里さん、すみませんでした!」
イカツい小寺チームが池の里に平謝り・・
その瞬間から、両チームは、かけがえのない盟友となった。
私にとっても、とても印象的な出来事であり、何年たっても
話題にすることがある。
匠「あのときの小寺さんと、池の里さんが、今や琵琶湖の
ドラゴン界を背負う主力の2チームなんですからねえ・・」
小「ガハハ・・・ どっぷりハマってしまったな」
「池の里」としても、「小寺」には負けたくない、
まあ、盟友だからこそ、正々堂々と勝負したいという気持ちも
あるのであろう。それに「池の里」は、ご存知、町内会チームで
あって、いわゆる「純血」を守っている。他のチームでは、
スポーツクラブの子供達+ドラゴン選手という構図もあるが
「池の里」は、100%親子関係なのである。
「池の里」の子供達にとっては、お父さん達は、琵琶湖ペーロン
大会で優勝するなどの”ヒーロー”なのだ、子供達の前では
格好悪いところは見せることはできない。
池「小寺さん、1分8秒かぁ・・・ 絶対負けられないな!」
「池の里」の1回戦がスタートした。
「池の里」、マジの追撃! お父さんの髪の毛が逆立っている(汗)
これはもはや子供、というより、お父さん達の意地の張り合いか?
いや、しかし、それでも良いのかも知れない、お父さん達の
頑張っている姿を見て、子供達も成長していくのであろう。
「池の里」独走でゴール、問題はタイムだ。
本「ただいまのレース、1着"池の里Junior Lakers!」
タイムは・・ 1分7秒xx」
ドドーッツと会場がどよめく、ついに1分7秒台に突入した。
小寺製作所の応援団
小「ううむ、池の里さん、やるなあ・・」
面白くなってきたが、ここで池の里チームは2回戦でさらに
小寺製作所がタイムを伸ばしてくると踏んでいる。
そこで早めの昼食をとり、次のレースに備えて休息することに
した模様だ。
琵琶湖名物「池の里カレー」(笑)
といっても販売しているわけではなく、チームの昼食なので
あるが、特にこのキッズ大会の時にのみ前日から大量に
作られているようだ。
私が物欲しげに見ていると
池「匠さんも1杯いかがですか?」
匠「わ~! いつもありがとうございます。
いやあ、美味しい、美味しい・・」
まあ、子供向けなので、甘口ではある。私は昔は辛口派だった
のだが、例の「天神カレー」を食べ初めてから、
「甘口カレーも悪くないな」と思う今日このごろなので、
とても美味しく感じる。この上にスタッフ弁当も食べるので
今日もおなかいっぱいで撮影することになるだろう(汗)
さて、長くなってきたので、この続きは「後編」にて。