(後編Part1より続く・・)
通称「天神大会」と呼ばれる、国内屈指の日本選手権大会も
いよいよ大詰め、残りのレースも後2つのみとなった。
まずは混合カテゴリーの決勝、その出場チームは、
「東京龍舟」「関西龍舟シンバ」「Torrid Storm」
「INO-G」「東海龍舟」の計5チームだ。
ここで関西勢は元気が無く、「関西龍舟(関ドラ)」のみ、
他は東京が2つ(東ドラ、トリッド)、埼玉(INO-G)
そして名古屋(東海)という地域分布となっている。
ちなみに、この構成は昨年の本大会の混合決勝とほぼ同じ
チームとなっていて、昨年は「東ドラ」の代わりに「琵琶ドラ」が
入っていた。
注目は、本大会での連覇を狙う「Torrid Storm」であるが、
今日の調子からすれば「INO-G]がなかなか好調なので
これら2チームの接戦となることであろう。
残りの3チームの実力は伯仲、昨年までであれば「関ドラ」
も優勝争いに絡んできそうであったが「関ドラ」は現在
メンバーの再編成中なので、少々不利かもしれない。
しかし、とはいえ、この5チームの実力差は、非常に
微妙であり、恐らくは1位~5位までが3秒以内の大接戦
になることが予想される。
さて、楽しみな混合決勝であるが、ここで天気予報通りに
夕立となってしまう・・・
何もこんな時に予報が当たらなくても良いのであるが、
まあ、それだけ最近の気象解析の精度は高いということか・・
どうせ濡れるスポーツであるから、多少の雨ならばレース続行
というのがドラゴンボート大会なのだが、あいにくと、つい先日に
落雷による事故が大阪のニュースをにぎわせた所だ。
雨は良いけど、雷はまずい、ということで、ゴロゴロと遠雷が
鳴っている間はレースは中断だ。
あまり遅くなると地方からの来阪組は帰るのが大変になってしまう、
あと2レース、無理しても続行するべきなのかもしれないが、
本部の判断は慎重、落雷で事故になったりしたら大変だからだ。
こちらも夕立に備えて雨合羽を準備しているのであるが、
レースが中断していたら撮るものも無いので、前の記事で書いた
ように、4杯目の天神カレーをいただいて、ちょっと休憩。
40分ほどで、少し雨が止んできて、雷も収まった様子だ、
さあ、今しか無い、ということで混合決勝のスタート、
時刻は予定よりほぼ1時間遅れの午後6時前だ。
地方来阪組は帰路の時刻のタイムリミットが迫っている。
レース中断など、様々な状態が選手の心理状態にどんな影響を
与えるのだろうか? 多分そのあたりは、各チーム、あるいは
各選手によっても異なるのであろう。実力はほぼ互角、あとは
小さな小さな条件が積み重なって、それが最終的にコンマ何秒
かの差につながる・・
混合決勝のスタート準備中・・
本「1号艇前へ・・ ストップ」
本「スタート1分前、 Are you ready?」
いつもながらの決勝前、緊張の一瞬である。
会場には雨にもかかわらず、多くの選手達が、この大接戦が
予想される混合決勝を見守っている。
選手の、そして観客の鼓動が伝わってくるような一瞬の静寂・・
本「Attention・・ GO!」
ドンドンドンという太鼓の音、ワーッという大歓声、
この一瞬にドラゴン観戦の妙があると言っても過言ではない。
レースは予想通り序盤から中盤までは5艇にまったく差は無い、
で、このレースが接戦になる事を予想して、雨での中断の間に
撮影ポイントをゴール寄りの本部席に移動している。
スタートから約50秒後には、私の目の前を5艇が並んで
ラストスパートでゴールを目指している事であろう。
30秒、110m・・ 40秒、150m・・・
ここまででのレース画角は斜めになるので、順位がわかりにくく、
撮っても目的通りの絵にはならない。
ひたすらシャッターを押したい気持ちを我慢する。
時計は見ないでも、レースの模様を見れば時間がわかる、
45秒、6、7、8・・180m さあ、来た、ここだ!
予想通りの光景がまるでデジャヴュのように目の前に広がる、
連写はせず、ほんの1枚2枚・・連写によりファインダーが
ミラーアップでブラックアウトする時間がレース観戦の邪魔に
なるのだ。
手前より「東ドラ」「関ドラ」「トリッド」「INO-G]「東海」
ファインダーの中の自動再生の画像が残像として残る、
4レーンの「INO-G」がトップだった。
しかし、3レーン「トリッド」との差は非常に僅か。
52秒、53秒・・ もうゴールだ。
直後、5艇がなだれこむように、ほぼ同時にゴールした。
ふと我に返ると、大きなワーッという歓声が聞こえる。
何処が勝ったのだ? いや、もうそれはどうでも良いか・・
結果はあくまで結果だ、この接戦のレースを行ったことが事実
なのだし、きっとこれがドラゴンの歴史に残り、伝説のレースと
なっていくのであろう・・
「審議」は、非常に長い時間行われた。
少し時間がかかりそうだったので、ゴール地点の審判席まで
行き、ゴールの瞬間のビデオ映像をチラリと覗き見てみる。
「う~ん、これで順位を決めるのは難しそうだなあ・・」
ビデオの規格はデジタルでもアナログでも一般的には秒30コマだ
つまり1コマあたりは30分の1秒、約0.033秒だ。
もし、0.03秒以下の接戦でゴールしたとしたら、ビデオで
見ても判定が極めて難しくなる。事実私が見たビデオではそんな
感じであった、これでは前後のコマからゴールの瞬間を推察する
しかない、さらには手動計測でのストップウォッチの情報も
参考とする。人間の反射速度からすれば、0.1秒以下の精密な
測定は厳しいとは思うが、なんにせよ、ドラゴンには引き分けは
無いので、いずれかの方法で順位は決めなければならない。
本部発表が行われた
本「1位、INO-G 55秒48
2位、Torrid Storm 55秒50」
ワーッという大歓声が会場に響き渡る。
僅かに0.02秒差、ビデオの計測にストップウォッチを加味
したそうだ、恐らくは記憶している限りでは0.03秒以下の
差の勝敗はかつて無かったように思える。
以下、3位、関西龍舟、55秒70、ここもわずかな差でしかない。
4位、東京龍舟、55秒90、5位、東海龍舟、56秒93
事前の予想以上に大混戦で、1位から5位までは1秒半しか
離れていない、しかも1位から4位は、わずかに0.5秒以内だ。
また、タイムもなかなか良い。混合決勝で55秒が出ていれば、
現在の様々なコンディションからしても、かなり良い結果だった
のではなかろうか? さすがに日本選手権の決勝だ、非常に
見ごたえのある、記憶に残るレースとなった。
優勝した「INOーG]
埼玉のチームであり、大阪への遠征は少ないが、静岡の大会では
よく顔を合わせる事がある。
静岡の強豪の「海猿火組」がライバルとして目していて、混合の他、
オープンにも出場する、いわば両刀使い(?)のチームだ。
現に、このタイムであれば、今日の大会で、仮にこのままオープンに
出ても、磯風に次ぐ準優勝の成績であった。
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さて、本日の大会のラストを飾るのは、オープン決勝だ。
熊本の強豪「津奈木海龍」の応援団、遠距離からの参戦で、
しかも雨の中の応援、大変ですね、と言おうとしたら、ふと
気がついた。左の男性、津奈木ではなく、確か滋賀の・・
匠「え~、なんでお二人は?、お知り合い?」
津「なんとなくね・・」
匠「ううむ、あやしい(笑)」
で、こちらが本物の(笑)「津奈木海龍」だ。
オープン参加チームは、1レーンより、
「NPO法人海猿火組」「bp」「磯風漕友会」
「津奈木海龍」「bpジュニア」だ。
「bpジュニア」は、協会派遣舵。超強豪の揃う「日本選手権」
のそのまた決勝戦で派遣舵となるケースは極めて珍しい。
「bp」によると、「bpジュニア」は、bpの主力メンバー
である体育教師の方の教え子などを集めて、現在鍛えている
新鋭メンバーだとのこと、「天神の決勝に2チームで残れて
極めて光栄だ」とのコメントをレース後にいただいている。
レースの予想だが、磯風1位は確定、2位争いは激烈で
「津奈木」「海火」「bp」が団子状態でゴールすると思われる。
「bp」のような兄弟チームがどちらも決勝に出場する場合は、
チーム間の戦力調整をして、どちらかをベストメンバーに
する事は、戦略的なセオリーであるから、「bpジュニア」は、
やや離されるか・・?
問題は「海火」だ、例年、この時間帯になると、この大会会場の
1レーンは川の流れが若干変則的になり、舵をもって行かれやすい、
つまり両端のチームはわずかなタイムロスが出易いのだ。
それはこのコースの常識なのかどうか? 優勝候補のチームの
ポールポジションは真ん中の3レーンであることが常だ。
磯風は今年も3レーン、昨年のこの決勝戦では、2、4レーンに
「海火」と「熊野」が陣取り、端には、「近畿車輛電龍」と
「池の里Lakers!」が居た、「逆V字型になって進みますよ」
と、レースを観戦した人に予想を伝えた記憶がある。
今年もレース展開は、逆V字型になってしまうのであろうか?
それだと昨年準優勝の静岡最強の「海猿火組」は4位か5位、
そういう事態はなかなか考えにくいことであるが、でも実際には、
熊本の「津奈木」や新鋭「bp」は、確かに「海火」に匹敵する
実力を持つ強豪だ・・ それに海火はベストメンバーでは無いと
言っていたな。さらには帰郷の時刻が近づいていて、心理的
にもあせりがありそうだ。でも、それは「津奈木」も同じか?
・・いやあ、考えが堂々めぐりとなって(汗)
まったくレース展開の予想がつかない・・
まあ、いいか、ともかく決勝戦を見るしかないな。
オープン決勝戦スタート。
再び雨が降りしきるなか、予想通り「磯風」が独走。
ああ、やはりこの状態になってしまった。
「磯風」のレースシーンを撮ろうとしたら、スタート直後の
20mから30mまでの間しかないだろうなあ、
そこまでのタイムが約5秒、それから先はいつも独走状態だから
真横からでは「磯風」単独の写真しか撮れないんだよねえ・・
あ、それよりも今回のオープン決勝のポイントは2位争いだった、
え~と2番手チームは? うん「bp」と「津奈木」だな、
「海火」はどうした? やはり端のレーンで苦戦の模様か・・
後で聞いた話になるが、「bp」の今回の決勝の目標は磯風と
3秒差以内でのゴールとのこと。
3秒というと・・ 200mを60秒で走るボートの場合、
10mというところか。ボート自体の長さがそれくらいあるから、
尻尾ぎりぎりか、少し離れているくらいのイメージだなあ。
左の「磯風」の艇はすでにゴールイン(対岸の赤白の印が
ゴールだ)し、速度を落としている。 手前2レーンが「bp」
奥の4レーンが「津奈木」だ。この撮影アングルは180m地点
くらいなので角度がついているので「bp」が少し速く見えるが
実際には同着くらいであろう。 ここも「審議」だなあ・・
ビデオ判定の結果、「津奈木」が、0.03秒差でわずかに
「bp」を抑えて2位となった。 また0.03秒、すなわち
ビデオの1コマ分の差しかない接戦だったということか。
「磯風」の連覇は順当だが、「津奈木」はやはり強かった。
これで数年前の同郷の「不知火海龍」のリベンジを果たした事になる、
繰り返すが、「不知火」は、ここ天神大会で好タイムを出したのに
艇を曲げてしまい、失格になってしまったという不運があった。
今回の「津奈木」は、その「不知火」を地方大会で破って、かつ
「不知火」の一部のメンバーとの合同で、この天神大会に臨んだ
だと言う。
また、「津奈木」は、20数年前に、この天神大会に出場し、
好成績を上げたチームだとのことだ。当時のメンバーの一部は
今も在席している。また、その当時のメンバーの息子さんが
現在「津奈木」のキャプテンをやっているという事だ。
こうして「津奈木」は、新たな「伝説」を天神大会の歴史に刻む
こととなった。
「bp」も初出場ながら、インパクトのある天神デビューだった。
ちなみに「磯風」のタイムは53秒、ただし彼等の実力値は50秒位
なので、雨や水流で、若干レース条件が悪かったということだろう。
そして「bp」は、56秒、彼等の目標通りの3秒以内につけていた。
「bpジュニア」の決勝進出(成績は5位だったが・・)も含め、
「bp」グループとしては、一応結果は出した事になる。
「海火」は、59秒と彼等としては不本意なタイムで4位に終わる、
で、時刻はすでに6時半近い、表彰台に上れないことがわかると、
いそいそと予定の新幹線に乗って帰郷する準備にかかっていた。
先ほど帰路の手段は説明していたので「まあ、間に合うかな・・」と
思った。
レースが降雨などで予定より1時間遅れ、撮影の為の明るさも
ほぼ限界に達していた。 メイン電子ダイヤルが故障で空回りして
絞りが調整できなくなったEOSだが、レンズの絞り値はF7.1のまま。
ISO感度は、まだ生きている背面のサブ電子ダイヤルで変えられる
ので、ISOをめいっぱいのISO3200まで上げての撮影だった、
あと30分大会が遅くなっていたら、望遠はまったく使えなく
なっていたことであろう・・ (ちなみに、Avモードで絞りが故障で
動かない場合でも、EOSのレンズには絞りリングが無いので、
Pモードにすれば、絞り開放f5.6までの1段半分は、さらに
シャッター速度を稼げる、加えて、露出補正をわざとマイナスに
すれば、もう少しだけシャッター速度をかせげる。
そんな風にして、カメラが故障した場合でも、限界まで使える事は
使えるのだが、まあ、今回はそういう事態には至らなかった)
ちなみに、この故障したEOS 30Dだが、帰宅してから、CRC-556の
接点復活剤をダイヤル部に注入、ダイヤルを何度も廻していたら
幸運にも、ひっかかりが復活した、さらにしばらく(数十回)ダイヤル
を廻しつづけると、完全にひっかかりは復活。最後に仕上げとして
シリコンスプレーを軽くかけて、これで一応修理は完了。
これで、まだしばらくは持つであろう。こうやって騙し騙し
使っているから、いつまでたっても古いカメラを使い続ける
事になってしまう。メカ好きの私としては、新製品は勿論興味
はあるが、壊れてもいない機械を、「古い」という理由だけで
捨ててしまったり、新しいものに買い換えたりする人の気持ちが、
どうにも理解できないのだ。
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さあ、閉会式だ。 時刻はすでに7時前、雨は止んだが曇天で暗い、
閉会式会場には松明も灯されている。
閉会式には毎年、アイドルグループとかのゲストが招かれて短い
パフォーマンスを行う。要は表彰等の準備の時間をかせぐ運営上の
工夫なのだが、今回の出し物は?と、選手の人達は結構楽しみに
している様子だ。
ほう、今年は、ベリーダンスですか!
しかし、どこかで見たことのある方々、もしかすると、5年ほど前に
サンスポ主催の「総おどり」のイベントに出演していたダンサーでは
なかっただろうか・・? まあ、それはともかく、選手達にはかなり
好評で、色っぽいベリーダンスに、男子選手達の視線は釘付けに
なっている様子だ。
そして男子選手だけではなく、女子選手までもが・・
これは、いったい、どういう視線なのだろう?
「男って、なんでこういうの好きなんだろう?」いや、あるいは
「この色っぽさを参考にしなくちゃ」なのだろうか・・?
そして、表彰式。
各カテゴリーで3位までの順位が入賞となり、表彰対象となる。
こうして、今年の日本選手権大会は大幅に遅延したが、
ともかく無事終了。
この大会では記憶に残る印象的なレースも沢山あったのだが、
今年の熱い季節は、まだまだ続く・・
果たしてそこにはどんなドラマが待ち受けているのだろうか・・?
以降、ドラゴンキッズ、びわこペーロン・・ と記事は続く予定。