2013年6月30日に、静岡県御前崎市で行われた
第6回静岡県ドラゴンボート大会・御前崎市長杯の模様より、
今回は記事2回目(全4回を予定)
御前崎大会は、例年参加チームが50前後になる大規模大会、
レース数も多く、今日の場合も4~5艘建てで26レースが
予定されている。 朝9時からスタートで、10分間隔で廻した
としても4時間以上かかる。実際にはスタートがなかなか揃わな
かったり、艇をうまく回航できなかったり、艇の破損の修理とか、
さまざまな小トラブルで、時間はさらに押すことが予想される。
昼休みも1時間程度取るので、正味6時間半以上、早くても
午後3時半から4時あたりが全レース終了の時刻になるであろう。
長い大会の間、選手達や観客は、御前崎港中央埠頭の
様々な場所から観戦することになる。
この港は岸壁と防波堤で囲まれたほぼ四角のスペース。
その一辺はおよそ300m、海(防波堤)側がスタートで
岸壁側がゴールの200mの短距離レースだ。
四角形といっても1辺は遠く、実際には”コ”の字型の
エリアで、うちスタートの防波堤側(コの字の上)は発艇の
スタッフが詰めているため、観戦場所やチームのテントは
コの字の右と下の部分がメインとなっている。
また、コの字の右側には乗艇場や大会本部テントがある。
多数のレースを順次進行させるため、今回の大会では
9艘のドラゴンボートが準備されている、うち5艇は
一般に「旧艇」と呼ばれている木製の従来からある艇で
残りの4艇は、ここ静岡で「イタリア艇」と呼ばれている
恐らくはカーボン素材などを使った軽量の新型艇だ。
3カテゴリーのうち、参加チームの多い「チャレンジカップ」
(ビギナー主体)では、5艘の「旧艇」をフル回転させ、
5艘建てレースを順次こなす。残りの「(男女)混合」
および「チャンピオンカップ」(ドランゴン専業チーム主体)
では、新型の「イタリア艇」を用いた4艘建てレースだ。
↑写真は「イタリア艇」に乗船するJA(農協)チーム。
今回、JAからは2チームが参加している。
「JA遠州夢咲」と「JAハイナン」で、どちらも御前崎市
から参加、JAチームも若い男女が多く、元気が良い。
ちなみに、200mレースの予想タイムであるが、
まず今回の大会では、風や潮流の影響は少なそうで、
フラットなコンディションだ。
この状況では、ドラゴン専業チームの200mのタイムは
すべて50秒台(50秒~1分未満)に収まることであろう。
50秒台で、できるだけ速いタイムをたたき出せば決勝進出の
チャンスがある。
ただし、ビギナーチームの場合は、ここに数秒~数十秒
上乗せとなる。(57秒~1分20秒程度)
それと、軽量な新型の「イタリア艇」は、安定度が低く
乗りこなしに技量が必要であるのだが、慣れたチームで
あれば、200mの間に3~5秒程度、旧艇よりタイムを
縮めることが可能だ。
↑写真の「NPP法人、海猿火組」チームは、静岡最強の
チームで、国内最高峰の「日本選手権(天神)大会」でも
一昨年3位、昨年2位と、国内トップクラスの実力チーム。
このような強豪チームに新型艇を与えると、予想タイムは、
49秒~50秒程度となる。
よって、今日の大会の各カテゴリーの決勝進出タイムの
予想としては、以下のようになる
「チャンピオン」(新艇)(50秒~54秒)
「(男女)混合」(新艇)(56秒~1分)
「チャレンジ」 (旧艇)(56秒~1分)
今回の大会のレースフローでは、チャレンジカップでは、
予選の各レースの1着および2着中の上位が準決勝進出、
残りのチームで敗者復活戦を行い、こちらも上位が準決勝、
を行い、準決勝上位が決勝進出となる。
混合は1着抜けで準決勝進出、さらに準決勝ではタイム
上位が決勝進出だ。
そして、チャンピオンカップは、予選2レースの合計タイムで
決勝進出が決まる。
このルールだと、1レースたりとも気を抜くことができない。
他の大会などでは、予選順位のみで、次の準決勝に勝ち抜ける
場合もあり、ドラゴン専業チーム同士の場合は、お互いの実力
から、順位は、ほぼやる前からわかっている。
なので、絶対に勝ち抜けない事がわかっている場合など、
あえて予選を捨てて体力を温存し、敗者復活から上がってくる
という戦略もある。
だが、今大会の場合は、タイムの良いチームが上に上がれる
ことが確定しているので、ともかく各レース全力で漕ぐしかない。
こうしたレースフローは静岡県独自のもので、なかなか複雑
な故か、他の大会では殆ど採用していないのだが、本大会では
大会パンフレット(なんとA4版16ページ(8つ折)の豪華版)にも、
レースフローの詳細が記載されているので、各チームは、
これを見ながら戦略を練ることとなる。
まあ、このシステムも、なかなか潔い(ともかく全レース全力で
漕がなければならない)ので、これはこれで良い方法だと思う。
さて、大会には1000人以上の選手と関係者および観客が
訪れているため、移動式屋台もいくつも出ている。
クレープや綿菓子は午前中の人気商品で、暑くなる正午
前後ではカキ氷が良く売れる、昼食は弁当がわりにと
カレーや、やきそば、餃子あたりが好評で、さらに、
お弁当だけでは足りないスポーツマンには、たこやきや
たいやきといった軽食も売れている様子だ。
また、以前、北港大会の記事で説明した「エルゴメーター」
(体力測定機)のメーカーの出張体験コーナーもあった。
ただ、地元ビギナーチームの多いこの大会では、ちょっと
この手の機械は時期尚早かもしれない。
「関西の専業チームなどは最近いくつか導入している」と、
来ていたメーカーの営業マンに情報を伝えたのだが、
「それでは今度は関西に出張しようかな」とのこと。
今回の大会の出場チームは、実に様々な職種の方々が
参加している。例をあげれば、地元企業、電力会社、消防署、
航空自衛隊、スポーツクラブ、商工会、町内会、観光協会、
農協、漁業、学習塾、大学生、ETC・・
地域は、御前崎市のみならず、周辺の牧之原市や吉田町、
静岡市。東は、横浜、東京より数チーム、西は愛知県から
も参加している、
ただ、愛知の強豪チームである「闘龍者(とうりゅうもん)」は、
今回は残念ながら仕事の都合で不参加とのこと。
例年の決勝常連チームであるので、チャンピオンリーグを
盛り上げてくれることを期待していたのだが、まあやむをえない。
また他地区の大会や来年の本大会で見かけることもあると思う。
あと、ユニークなロシアのチーム「ゴリニチ」も今回は不参加だ、
東京周辺で働くロシア人を中心とした外国人のチームで、
今まで何度か静岡や大阪の大会にも参加している。
日本贔屓で、明るい雰囲気のチーム。今回も是非お会い
したかったのだが、残念ながらこちらも仕事の都合とのこと、
複数の企業の混成チームなので、なかなか調整が難しいの
かもしれない。
さて、予選レースは次々と進行している。
混合カテゴリーで1位勝ち抜けのチームは、
まず「濱龍」、こちらは主に横浜ドラゴンボート協会の
運営を行う横浜の代表的チームであり、まあ実力から
言えば勝ち抜けは妥当なところ。
さらに、地元チーム「池新田一之組」、大会1回目から参加の
ベテランチームだ。
同じく地元の「プリキュア」、可愛らしい名前やアニメのような
意匠デザインなど、一見にぎやかしのように見えて、実はかなりの
実力派チーム。一昨年の本大会で3位、昨年は2位と、
今回の大会でも当然の決勝進出が期待できる。
そして「御前崎市スポーツ推進委員会」こちらは、シニアの
チームなのだが、野球部OBを中心とした集まりで、昔とった
杵柄、高齢とは思えない鮮やかな漕ぎと抜群のチームワークで
予選を突破した。
昨年混合優勝の「御前崎市消防団女性隊とその愉快な仲間」は
予選タイムは残念ながら振るわず。昨年の本大会で優勝直後に
喜びのあまり全員で立ち上がってしまい、そのはずみでボートが
転覆、女性選手達が、皆、海に投げ出されてしまった。
その時、海難救助を本職とする「海猿」チームのメンバー達が
事故現場に急行、非常に鮮やかな手並みで短時間で無事全員
救出という、まるでドラマのような出来事があったのだが、
そのトラウマもあったのだろうか?不振の原因はちょっと不明だ。
また、選手宣誓を行った美人保育士チーム「スピカ・ダーリング」
は、予選タイムでは1分3秒と、少し出遅れている。
とはいえ、このあたりの予選タイムを見ていると、混合の決勝進出
タイムは予想よりやや遅めの1分ジャストくらいだ。
しかし、ドラゴン専業チームの大会であれば3秒差は致命的な
ハンデだが、タイムのばらつきの大きいビギナーチーム主体の
大会では、3秒差は無いに等しい。
混合での他の注目チームは?というと、まず東京から参加の
「KACHIDOKI SHARES」、こちらは、TITAM X,BON OYAGE,
ジャングルマニア、CIC RISING STARなどのドラゴン専業
チームの混成チームでその実力値は高い。
だが、予選第1戦では、艇をわずかに曲げてしまい、
そのタイムロスにより1秒差の2位。
レースフローでは混合カテゴリーの予選は1位抜けなので、
タイムが良くても敗者復活に進むこととなる。
それから「国立清水海上技術短期大学校Bチーム」がある、
こちらは若くパワーのあるチームだ。確か昨年も予選最速の
タイムを出しながらも、蛇行による進路妨害で失格になって
しまったという苦い経験がある。
本大会、同大学からは2チームがエントリーし「Aチーム」は
「チャンピオンカップ」の方に挑戦している。
同大学でボートの指導をしている監督の方に話を聞くと、
「大学なので、毎年メンバーが変わっていくので、年によって
実力のバラツキがある」とのことだ。
見ていると、レースによってもタイムのばらつきがあり、
今回の予選でも、なかなか快調だったが、例の「プリキュア」に
0.08秒差という、ほんの僅かな差で2着となってしまっている。
若干荒削りな印象だが、ハマるとかなりの良いタイムが期待
できそうだ。
「チャレンジカップ」(ビギナー中心のカテゴリー)の予選は、
まず、「男の中の男塾」が、圧巻の58秒台で1位抜け。
このチームは、以前は「アルカポネ」という名前で参戦、
2年前の大会ではBカテゴリー(現在のチャレンジカップ)で
優勝経験もある実力派チームだ。
圧巻と言ったが、同じ58秒台に、もうひとつ「ぷるるドラゴン
ボートチーム」が居る。こちらは御前崎市民プールのメンバー
なのだが、こちらのチームのキャプテンは、なんと、東京の
超強豪チーム「Torrid Srorm」の女性ドラマーの方だ。
どうやら、静岡で就職したとのことで、今後、こちらの地元チーム
を鍛えて、全国区レベルに持っていこうとのことか・・
「ぷるる」の「旧アルカポネ」と同じ58秒台のタイムは立派なもので、
タイム上位で準決勝進出は確定的であろう。
さらに「KIMURA サイクロン」チームも好調で59秒台を叩き出した、
「KIMURA サイクロン」は地元企業チームであり、一昨年の大会で
Bカテゴリーで「アルカポネ」に次ぐ2位の好成績を上げている。
ちなみに、何故私が観戦していない昔の大会でも克明に順位が
わかるのか?と言えば、例の全16ページからなる、豪華な
大会パンフレットに過去の大会成績の一覧が載っているからだ。
こうした情報は、大会中でも、参加チームからしたら、かなり役に
立つと思われる。静岡県ドラゴンボート協会、こうした細かい配慮が
なかなか素晴らしい。
そして「愛知旭組」、電気関連の企業チームと聞くが、
以前は「ASAHI」という単一チームで、一昨年のオープン3位の
実力チームだ、今回、メンバーを増強し、かつ、地域に分けて
「静岡旭組」と「愛知旭組」の2チームで参戦、
早速チャレンジの部で予選で好タイムをマークしている。
さらには「漕げるルンです」も58秒台で予選1位抜けだ。
名前から想像できると思うが、フジフィルムのチームだ。
私のカメラ(今日はオリンパス中心だ)を見て、
漕「フジのカメラを使ってくださいよ」とのコメント。
匠「銀塩時代から、勿論デジタルでも、フジのカメラは数台づつ
使っているんですけど、最近のXシリーズは、どれも良さそう
ですよね、中古の値段が下がったらいくつか買おうと思って
いるのですが・・
あ、新品買わないとフジさんは儲かりませんかね(汗)
とりあえずフジさんのサプリメントでも買おうかな(笑)」
そして「中部プラントサービス龍艇園」も予選1位抜け、
こちらも初回大会から出場のベテランチームで、3年前にB優勝の
実績を持つ。しかしながら予選タイムは1分7秒台なので、今日の
他チームの様子からすれば、あと10秒近くはタイムを縮めて
いかないと決勝進出は厳しそうだ。
その他のチャレンジの注目チームとしては、まず「龍木」がある、
こちらは予選2位で1分6秒台のタイムなのだが、このチームは、
つい先日、静岡県協会の仲介で自前のドラゴンボートを購入した
ということだ。
兵庫県の「Team Banana」がボートを購入してからいきなり強く
なったのは他の記事にも書いた通り。「龍木」のキャプテンとも
話をしていたのだが、ボートを購入すると、やはり「こりゃあ、
真面目にやらなきゃ」という気持ちになるとのこと。
今回の大会で、いきなりボート効果が出るかどうかはまだ
わからないが、今後の様子が楽しみだ。
また、「チーム ユウユウ」は、中部電力の新入社員からなる
チームで、兄貴分の「中電龍舟」(チャンピオンカップに参戦)
に続けとばかり気合が入っていて、1分5秒のまずまずのタイム
だが惜しくも2位。
さらには、横浜から参加の「コンチネンタルワン」が予選2位
ながら、1分4秒台の好タイムをマーク。
匠「あれ、コンチネンタルさんって、もしかしてタイヤの?」
コ「はい、そうです、でもよくご存知ですね
そんなにメジャーなブランドじゃあないし・・」
匠「以前、大型バイクに乗っていて、3回ほどコンチネンタル
のタイヤを入れましたよ。ツーリングタイプだったかな?
グリップが良く、長持ちして、しかも安い。バランスのとれた
なかなか良いタイヤでしたね」
コ「あは、ありがとうございます!」
さて、場所を変えて、こちらは、発走審判席。
匠「ほほう、これで見るのですね。
今日はビギナーチームが多いのでなかなか揃わないのでは?」
審「はい、でも、きっちり揃えるのは時間もかかるし、
スタートラインより前に出なければ良いと思ってやってます」
匠「そうですよね、それが良いと思いますよ」
まあ、フライングはダメだけど、スタートラインにぴったり
付けられずに(意外に技術が必要)結果としてタイムが落ちるのは、
それは自業自得なので、やむを得ないと思う。全艇が揃うのを
待っていたらとても時間がかかるので、今回の大会のように10分
間隔で出走しないと全レースが消化できない状況ではこれが正解。
他の大会で、厳密なまでに艇の調整をしている事も見かけるが、
スタート1分前のドラが鳴った後では、選手達は心理的にも漕ぐ
準備に入っているので、よほどの事が無い限り再度の位置調整は
不要だと思う。
それから、御前崎の艇の前部には、艇の区別を明確にする為、
色のついた旗を設けている。これはちょっとした工夫だと思うが、
関西の艇には、数字が書かれているプレートが前部にあるのみで
色分けが無い。
かなり前の話だが、大阪の写真教室の生徒達約30名が、
”撮影実習”として、ドラゴンボート大会を観戦しに来た事がある、
そのときに多く出た意見は、「チームのユニフォームは色わけして
あって写真的に綺麗だけど、ボートも色分けしてあったら、さらに
見栄えが良いのに」という事であった。
まあ、ずっとドラゴンを見ていると、それが当たり前になってきて、
そういうプリミティブな疑問点などに気がつかなくなってしまう。
言われて見ればもっともな話。ドラゴンに詳しくない観客がレースを
見ていても、色分けしてある方がわかりやすいであろう。
現状の御前崎の艇の旗の位置だと、鼓手の動作の邪魔になる
リスクも無くは無いが、それはまあどうにでもなるし、静岡県協会は
こうした、ちょっとした工夫を色々積み重ねてくる所が評価できる。
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さて、長くなってきたので、今回の記事では「チャンピオン」
カテゴリーについては書けなくなってきた。
チャンピオンカップのカテゴリーには、航空自衛隊チーム
「遠州舸会」(えんしゅうはやぶねかい)をはじめ、
中部電力チーム「中電龍舟」、消防士チーム「火の用心」など、
かなりの強豪揃いであり、現在、静岡県での最強チームの
「NPO法人海猿火組」の大会3連覇をはばもうと、
虎視眈々と狙っているので、見ごたえのあるレース展開が
予想される。
次回、第3回記事につづく。