2013年6月16日、ODBA(大阪府ドラゴンボート協会)主催による、
ドラゴンボートローカル大会「北港スプリント2013春」が
大阪市此花区の「北港ヨットハーバー」で開催された。
北港は、大阪市の西端にあり、広くは「大阪港」とか「ベイエリア」
としてくくられる地域の一部だ。 ただ、あまり知名度は高くなく、
関西人にとってみれば、ATCやWTCを有する「南港」や、
海遊館や天保山のある「大阪港」の方がはるかに馴染みがある。
あえて言うなら「USJ」は北港エリアにあるのだが、USJと
北港ヨットハーバ間は、大きな川に阻まれ直接i行き来する
ことができない。
なので、北港ヨットハーバーには、実際にヨットやドラゴンボートに
乗らない限り、まず訪れる事は無いだろう場所だ。
北港付近には、電車は通っていないのだが、北港ヨットハーバーへの
アクセスは意外に簡単で、JR大阪駅(又は野田阪神駅、西九条駅も可)
より、大阪市営バスに乗れば、45分前後で終点の北港ヨットハーバー
停留所に到着する、ちなみにバス料金は200円(大阪市内均一)だ。
それと、北港ヨットハーバーの先の埋立地(人工島)の舞州(まいしま)
には多数のスポーツ施設があるのだが、こちらに向かうバスは路線が
まったく異なる。
あと、北港ヨットハーバー行きは利用者が少ないからか?、30分に
1本程度しかバスは運行されていないので注意が必要だ。
また、従来はヨットハーバーの近くにバス停があったのだが、
今年(2013年)から、少し離れた場所にバス停の場所も
変更になり、若干不便になってしまった。
まあ、行き難いのか行き易いのかよくわからない場所だが、
ここの大会会場としての環境はなかなか良い。
開会式。大阪ローカル大会なので、チーム数はあまり多くない、
都合8チーム、22人乗りの大会なので、スタッフや補欠選手等を
含め、合計200人くらいの参加者という感じか・・
それにしても今日は、天気が良くさわやかだ。
数日前から大阪は6月というのに猛暑日が続いていて、
今日も予報では、最高気温は34℃とのことで、さぞ暑いだろう
と思っていのたが、北港の環境は、大阪湾からさえぎるものもなく
風が吹き込み、風速は5m前後とやや強めなものの、なかなか
快適な状態だ。
ちなみに、常に風が強いというのはこの場所の弱点で、以前の
大会でも、大会規定の「風速10m以上で中止」に近い状態で、
本部テントが飛びそうになったり、ドタバタの中で大会を続けた
記憶がある。
それから、この港のメインである「ヨット」は、たいがい向かい風で
出航していくことになる。動力つきの「クルーザー」はまだしも、
風のみを動力とする「ディンギー」(小型ヨット)などは、出航時に
ジグザグに「タック」(=タッキング=船首を風上に回す)していく
ので、なかなか大変そうだ。
大変というのは、ヨットのクルーの操船技術の問題もさることながら、
ドラゴンボート大会のコースと、出航ヨットのタッキングの進路が
交差する可能性が高いということで、接触事故やニアミス・トラブル等が
起こってしまう心配もある。
競技委員長より、大会のルールなどの説明がある。
とは言え、今日の参加チームは、すべて様々な大会に出場している
常連チームばかりであり、また、この場所は「ODBA」のホーム・
グラウントであるから、大会の運営も手馴れたもので、何も心配する
必要もない。
いつも思うことだが、ドラゴンボートの大会の運営は、他の一般の
又はスポーツイベントの運営に比べ極めて手際がよく、見ていて
気持ちが良い。
開会式が終わると、さっそく大阪の古豪「チーム未来」および、一部
「チームいっとこ」のメンバーが加わった混成チームが第一レースに
向けてスタートしていく。
今日の大会は、予選が2艇建ての2回戦制で、どちらかのベストタイムの
上位2チームが決勝進出というシンプルなルールだ、予選と決勝および
フレンドシップ(チーム無関係の希望者による練習試合)を含めても
10レースしかない、20分間隔の出艇では、スケジュール通りであれば
3時間ちょっとということで、午後1時過ぎには大会は終わってしまう。
・・で、その後だが、恒例のBBQ懇親会が控えている。
昼食抜きで、選手達やスタッフは当然おなかがすく、焼肉やビール
目当てで(注:ドラゴン大会では、試合中の飲酒は厳禁だ)後になれば
なるほど、いつもに増してスムーズな大会運営が期待できる(笑)
ドラゴンを追いかけるように、ゴムモーターボートが発進。
このボートは、審判および非常時のレスキューを兼ねている。
背景に見える不思議なデザインの建物は、通称「フンデルトヴァッサー」
これは、大阪市環境局舞洲工場というゴミ処理場なのだが、
オーストリアの建築家”フンデルトヴァッサー”(Hundertwasser:故人)
の設計によるもの。
色々と賛否両論はあったのが、建てられてすでに10年以上にもなり、
観光(公共施設の見学)名所としても今や定着したという感じだ。
ちなみに、北港を母港とするODBAのメンバーの方々も、初めてこの
施設を目の当たりにして「USJと勘違いした」という人も多い。
(なお、本物のUSJは、北港ヨットハーバーから見ると、ちょうど反対の
方角で、その施設をこの場所から直接見ることはできない)
さて、レースの方は、予選初戦で「チーム未来&いっとこ」に
対戦するのは、こちら・・
ご存知、各大会皆勤賞の「bp」だ。
関西の某強豪チームから昨年末に独立、今年の大会は、
宇治、東京、泉北、そしてこの北港と4連戦。
これまでの戦績は東京大会以外では、いずれも優勝している。
今回の大会も勿論ながら優勝候補。
匠「さて、bpさん、今回も当然優勝狙いですよね、
今日は200mの短距離(スプリント)、風は追い風5m、
潮流は僅かに引き潮、ボートは旧艇でやや重め。
これらに”bp”さんの実力を加味すると、決勝タイムは
50秒ちょうどくらいでいけますかね?」
b「う~ん、今日は、新人メンバーを何人か乗せているんですよ、
50秒ですか? ちょっと微妙かなあ・・・」
なるほど、国内最速を目指す「bp」としては、メンバー育成も十分に
配慮しなければならないのであろう・・ まあ、ぶっちゃけ言えば、
大阪ローカルの大会では、優勝はまず間違いないと思う。
しかし、彼等にしてみれば、今回は勝つ事よりも、どのように勝つか、
という事がむしろ重要なのであろう。
来月(7月)は、国内最高峰の天神大会(日本選手権)も控えている、
この大会は全国から超強豪が集まるので、激戦が予想されている。
さすがの「bp」でも、正直、初出場で初優勝という奇跡は
まず起こせない、実力が100%のドラゴンボートの世界では、
ミスによる「番狂わせ」はあっても、運や偶然による「勝ち」は無い。
ならば、今回の大会は、今月(6月)から来月(7月)にかけての
調整の意味よりも、もっと長期的視点、すなわち、次世代のメンバー
を育成しつつ、チーム全体のレベルアップを狙うのが本筋なのだろう・・
そうでなければ、国内最速という目標は、そう簡単には達成できる
ものではないと思われる。
予選第一戦での「bp」のタイムは52秒台。
私が予想していた50秒にはおよばない、ベストタイム制の大会なので、
わざわざ手を抜く必要は無いので、このタイムは実力値なのであろう。
あるいは環境(風、潮流、艇の重さ)が予想より厳しいのか・・?
「チーム未来&いっとこ」のタイムは55秒台、「bp」との実力差を
考えると妥当な線か、もしくは健闘しているくらいだ。
「チーム未来」は、ODBAのチーム内では平均的な実力のチームだ、
なので、この55秒というのが今後の各予選の基準タイムとなるだろうと
思われる。優勝ラインは恐らく51~52秒程度、各チームは55秒から
どれだけの秒数を下回れるかで、決勝進出の枠を争う事となるだろう。
「bp」の優勝に待ったをかけに来ているチームがこちら。
ご存知、琵琶湖の雄「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」(通称:琵琶ドラ)だ。
匠「あれ? 琵琶ドラさん、今日はODBA(大阪)の大会なのに
わざわざ雄琴(注:滋賀県大津市、琵琶ドラの本拠地)から?」
琵「いやあ、ほら、6月は大会が無いでしょう?
だから、調整の為にね・・」
匠「なるほど、やはり来月の天神(日本選手権)をターゲットに
しているのですね、そうそう、大会ですが、6月末には、静岡の
御前崎大会もありますよ」
琵「あはは(遠いなあ・・) まあ、近場で調整ということで」
匠「了解、今日も”bp”さんが速いですが、53秒くらいが決勝進出
タイムになると思いますので、調整がてら頑張ってくださいね」
「琵琶ドラ」は、予選第二戦で「打艇(だちょう)龍舟倶楽部」と対戦、
タイムは「琵琶ドラ」が55秒「打艇」は1分ジャストだ。
「琵琶ドラ」としては、もう1~2秒伸ばしたかったのだろうが、
自ら「調整」と言っているので、まだフルパワーでは無い可能性もある。
「打艇」は新キャプテンとなり、「チームの団結力は、ピカイチ」と
自負しているが、どうもまだ結果がともなってない様子だ、今年から
新ユニフォームとなり、心機一転で、まずは、これから基礎を固めて
いく段階だろうか・・
大阪以外から参加のチームはまだある。
和歌山の強豪「もっこりドラゴンボート部」
とは言え全員が和歌山からの参加ではなく、大阪の「風」および
「近畿車輛電龍」のメンバーを加えた混成チームだ。
「風」、「電龍」、いずれも瞬発力を持つ強豪チームであるから、
トータルの戦力は問題なさそうだ。ただ、「もっこり」の部長に
聞くところによると、こちらも今回は新メンバーの体験・調整の
意味合いが強いそうで、タイムは度外視とのこと。
「もっこり・風・電龍混成チーム」は強豪の「関空飛龍」と対戦。
「関空飛龍」の最近の戦績は、昨年末の静岡大会「ツナカップ」で
B優勝(本来の決勝に残れなかったチーム内で勝敗を決める)している、
ちなみに「ツナカップ」は10人艇だ。だからこそ大阪から静岡までの
遠征も車2台でやりやすかったとのこと。20人全員が遠征となると
やはりさすがに大変だ。今年からいくつかの10人艇大会が始まるので
今後は、ドラゴンも本格的な22人艇とライトな10人艇の2本立て
ラインノスタイルが普及していくことが予想される。
匠「昨年のツナカップに出た人来てます? あ、皆さんですね、
今年も静岡に遠征するんですか?」
飛「それがですね・・ ツナカップは環境もよくグルメもあり、
賞品も良いのでとても行きたかったのですが、ちょうどその日が
和歌山大会とかぶってしまって、残念ながら行けないんですよ、
どうして同じ日にやるんでしょうねえ?」
匠「ああ、なるほど、関空飛龍さんは、和歌山とも関係が深いんでしたね、
それは、和歌山の方にに出ざるを得ないでしょうね。
う~ん、なんで同じ日なんでしょうねえ?それぞれ事情があるのでは?」
・・ということで、この戦い、「もっこり」は調整中とのことで1分1秒。
「関空飛龍」は55秒台。
う~ん、「bp」を除いて、みんな55秒で横並びだなあ、
55秒の壁から抜け出すのは、どのチームになるのだろうか?
学生チーム「常翔喜龍」(じょうしょうきりゅう)のメンバーを中心に、
「ぶっとばせまいど」「パイレーツ」を加えたこちらも混成チーム。
若く、ともかく元気が良い「常翔喜龍」だが、まだ結成から日も浅く、
55秒を下回るのはやや難しい状況か・・?
対するは、ベテランの「Rスポーツマンクラブ」
匠「Rさんは、持久力があるので、長距離が強いですね、
200mだとちょっと厳しいですか?」
R「そやねん、今日も500mだったいいんだけどなあ」
とは言え、乗艇場では
R「おや、今回のお相手は学生さんですか?よろしくお願いします」
と、ベテランの余裕の発言。まあ、というか、相手にプレッシャーを
与える作戦であろう。
そう、最近、22人乗りのレギュラードラゴンのメンバーを集めることが
できなくなっているチームが増えつつある、まあ、そりゃそうだ、
ドラゴンが日本に広まり始めた30年ほど前の世の中であれば
「休日に全員集まれ」というのは、公的にも私的にも(仕事でも趣味でも)
まあ、許されたのだと思うが、今どき21世紀、「個人の意思」や
「個々のライフスタイル」を、尊重したり、あるいは主張したりできる
時代になっている、だから趣味のスポーツにおいても、チームだとは
言え、全員に参加を強制することはできなくなっている。
さらなる厳しい条件としては、試合(大会)数が増えていること。
毎年、夏の間、平均して月2回ペースで各地でドラゴンの大会がある、
練習無しで大会に臨むわけにはいかないので、たとえば大会の前に
平均2回の練習を行うものとすれば、月のうち6回の休日をドラゴンの
為に費やすこととなる。平均的な勤め人の休みが月7回(週休2日より
ちょっと少ない位)とすれば、そのほとんどがドラゴンという事だ。
さすがにこれでは、よほどドラゴンに思い入れがなければ続かないし、
さらには、家族、恋人、友人などからも「いつも休みはドラゴンばかり」と
文句の1つや2つ出てもおかしくない状況だ(汗)
だからメンバーが集まらない場合、他のチームから助っ人を呼んだり
する、ODBAは歴史も古く、懇親会や交流会も多いので、チーム間は
仲が良く、こうしたメンバーの貸し借りよく行われている。
しかし、言ってみれば、ドラゴンもスポーツである以上、勝敗というのは
重要だ。 勝つことが目的であり、モチベーションでもあるからだ、
混成チームで勝ったとしても、本来の勝ちとは言いがたく「チームの意味」
が薄れてしまう。 なので、そのあたりにこだわるチームは絶対と言って
良いほど助っ人は呼ばない。メンバーが欠ければ、潔く、大会は欠場だ。
「Rスポーツマンクラブ」もどちらかといえば、「純血」にこだわるチームに
見える。平均年齢も高めで普段から色々なスポーツをやっているメンバー
が中心、元々は同じジムの出身から結成されたとも聴いている。
なので、スポーツを「趣味」として、人と人との交流を図るというより、
スポーツの本質である「勝敗」にこだわる意識が強いのであろう。
それぞれのチームあるいは個人のスタンスに善し悪しという区別は無い、
それは、それぞれの考え方だからだ。
まあ、しかし、こうした様々状況から、20人というメンバーが揃いにくく
なってきている事は事実なので、今後の10人艇導入という方向性は
時代の必然性なのだろうとも思う。
さて、レースの方だが・・
「常翔喜龍・ぶっとばせ・パイレーツ」混成チームと、「R]の予選は
なかなかの接戦、
序盤、スタートでは「R]は大きく出遅れたのだが、中盤から地力で
持ち直した、100mを超えたあたりでは両者互角。
さて、今回の大会では順位は関係なく、タイムがどこまで出るかだ、
「R」は、ラストで「常翔喜龍」をかわし、ゴールするのだが、
出遅れた分のタイムロスがどれくらいなのか?
結果、「常翔喜龍」は57秒台、「R」は現状4位となる55秒台、
スタートの遅れがなければ、さらにコンマ数秒は短縮できた事で
あろう、ちょっと惜しい結果だ。
さて、これで、予選第1回戦は終了、ここまでではやはり「bp」が
52秒台でトップのタイムだ。そして残りの上位チームは全て55秒台、
やはりここが壁のようだ、予選第2回戦で、壁をやぶってくるのは何処か?
少しでもチームの漕ぎを改善し、タイムを1秒でも速めるには、
単に肉体を鍛えることや、精神論だけではどうにもならない。
科学的手段による分析といった情報戦もまた重要な要素だ。
最近流行のヘルメットカメラ。
まだ呼び名が定着していなく、「ヘルメットカメラ」、「オンボードカメラ」、
「ウェアラブルカメラ」「アクションカメラ」と、なんと4通りもの呼び名が
市場で混在していてややこしい。 ただ、最近の家電量販店などでの
表記の傾向からは「アクションカメラ」に落ち着きそうな気もしている。
呼び名が安定していないという点では、流行の「ミラーレス一眼レフ」も
同様だった。一眼レフのレフというのは、レフレックス(反射)を意味
しているから、そもそも反射光路の無いカメラを一眼”レフ”と呼ぶのは
おかしいのではないか?という正当な疑問から「ノンレフレックスカメラ」
という呼び名を提唱した誌面もあったのだが、これはすでに「ミラーレス」
あるいは「ミラーレス一眼」が市場に定着しつつあった段階だったので、
「ノンレフレックス」という呼び名が広まることはなかった。
・・で、「ヘルメットカメラ」を装着しているのは、「打艇(だちょう)
龍舟倶楽部」のドラマー(鼓手)の方。
ドラマーは後ろ向きに座るので、クルー全員の漕ぎを記録することが
出来る。よって、ドラマーのカメラによるチームの分析には、極めて
都合が良い。
ただし、ドラマーの本業である艇のペース設定という意味においては、
まっすぐ漕ぎ手の方だけを見て太鼓を叩いていれば良いというものではない、
横に並ぶライバル艇の様子を一瞬見て、自艇のペース配分を考えなければ
ならない、なので、たぶんヘルメットカメラで撮った映像の視点は、
たまに、横を見たりするのであろう・・
それから、反対側からの映像として、舵取りにもヘルメットカメラを装着
するというスタイルも増えつつある。
さらに加えて、陸からも大望遠が効くビデオカメラでの撮影を併用する事に
なる。ちなみに、いつも書いていることだが、ビデオカメラの「何倍ズーム」
というのは、望遠端の焦点距離を広角端の焦点距離で割った「ズーム比」
(どれくらい画角が変化するのか)という意味であるので、望遠鏡や双眼鏡の
ように、被写体の大きさが実際に何倍に見えるのか?というわけではない。
(だから、何倍ズームという表記はユーザーに誤解を与えると思っている)
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さて、時間はそろそろ昼12時近く、選手も関係者もおなかがすいてきた
ところだ、大会の進行はほぼ半分、懇親会に向けペースアップの段階だ、
「チーム未来」の選手は、「ビールが冷えているかちょっと心配だ」と
懇親会場に向かっていく。
大丈夫、ビールは冷えているようだ(笑)
一応ビールは有料(200円)販売されるのだが、プレミアムモルツなど
高級ビールも多く冷えている、今日は、思ったほど暑くは無いが、きっと
売れ行き好調に違いない。
さて、長くなってきたので、前編はこのあたりまでで、次回後編に続く。