本年最後のドラゴンボート記事は、番外編として、毎年恒例の
「ツール・ド・水の回廊」の模様より。
このイベントは、数年前より始まっている「水都大阪」イベントの
一環として行われている。
「水都大阪」イベントは「水辺のまちあそび」をテーマに、今年も
また10月中旬に、中之島地区を中心として行われた。
大阪・中之島公園には、今年は、高さ11mの巨大こけし"花子”が
そびえ立っている、従来より巨大アヒル「ラバーダック」など
人目を引くオブジェを展示しているのがこのイベントの1つの
特徴だ。この周辺には沢山の屋台や、様々なステージイベント等
が行われて、まあ、なんと言うか、お祭りといった感じだ。
大阪府ドラゴンボート協会(ODBA)の主催する
「ツール・ド・水の回廊」は、中之島公園にある「ローズポート」
を出航し、東横堀川、道頓堀川、木津川、土佐堀川からなる
「水の回廊」を順次回遊し、約4時間で大阪市内を1周する
というイベントだ。
大阪のように都市の中に、”ロの字”型に川が流れているという
のは、なかなか珍しいようだ、普段はこれらの川同士は水門で
さえぎられているのだが、船が通過する際には、水門が開けられる。
今回のドラゴンボートも、水門を所定の時間に開けてもらうことで
この水の回廊を一周することができる。
集合時間前、中之島ローズポートに行くと、ODBAのスタッフ達がいた。
匠「あれ? その屋形船で今日は大阪一周ですか?」
O「まさか~、ちょっと乗せてもらって、気分を味わってます。」
水都大阪だけあって、実に様々な種類の船が身近にある。
観光用ひとつとってみても、多種の水上バスや屋形船が多数運行
している。
ドラゴンボートイベントは、通常のようにドラゴンの選手達が
乗るという訳ではなく、一般の参加者さんを募って行われる。
とは言え、完全に一般の方ばかりとなると、長距離を漕ぐのは
しんどいだろうから、数名のドラゴン選手が助っ人として
乗っている。
今日は、和歌山の「もっこりドラゴンボート部」および
滋賀の「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」という各県を代表する
2つの強豪チームの選手達が、助っ人として来てくださっている。
ドラゴンボートへの乗船前、スタッフであるドラゴン選手達により、
漕ぎ方や、乗船中の合図、安全に関する指導が行われる。
安全面に対する指導は特に重要事項だ、
ライフジャケット全員着用は勿論、ボートの上で立ち上がっては
いけないとか、乗船・下船時にボートの隙間から落ちたり、
2つのボートに挟まれないようにするとか、靴は履かないとか、
発艇、着岸の際にも同様に、ボートと岸壁や桟橋との間に
手や体を挟まれないようにするとか、飲酒後に乗船しては
ならないとか、注意しなくてはならない基本的事項は山ほどある。
ドラゴンの選手達にとっては、それらはあたりまえの事なのだが、
今日は一般の参加者が乗っているので特に注意しなくてはならない。
今年の御前崎大会での転覆事故は、ビギナーチームが優勝の喜びで
ボート上で立ち上がってしまった事が原因であった。
その時は、たまたま海上保安庁のメンバーの乗っているチーム
(海猿火組)が速やかな救助活動を行って事なきを得たのだが、
もし、何か事故があってからでは遅いので、一般の方が乗る場合は
勿論、通常のドラゴン大会でも安全面に関する配慮はくどいほど
意識して徹底しておくのが良いと思う。
さあ、準備もOK、午前10時半、いよいよ中之島をスタートだ。
今日の撮影は、まず水上班は、ODBAの保有するレスキュー艇の、
「さくら」より。
そして、私は陸上班という事で、大阪市内の各所を電車とバスで
移動しながらドラゴンボートの通過を待ち受けて撮影する段取りだ。
陸上班での撮影は、今年で3回目だが、実はなかなか大変だ、
移動手段だが、まず車やバイクでは、駐車駐輪の問題があって
各ポイントで撮りにくい。 自転車は、なかなかよさそうだが、
少々移動範囲が広い事が難点で、使用していない。
電車(地下鉄)とバスの手段は、大阪市交通局の土日1dayチケット
(600円)を購入しておけば、乗り放題なので、例年これを使って
移動する事にしている。
ただ、この方法は各路線や乗り換え、あるいはその所要時間などに
精通していなければならない、まあ、そのあたりは私は地元なので
問題は無いと思うが・・
ドラゴンボートは、中之島ローズポートを出航後、まず、名物の
「ラバーダック」見物をするということで、私も200mほど移動する。
このラバーダックは、特に大阪・中之島だけの名物という訳では
なく、日本や世界の様々な場所を巡って展示されていると聞く、
大きさは約10m、ドラゴンボートと並べて撮っても大きさの
差がありすぎて画(え)にならない。
これは水上から近くのドラゴンと遠くのラバーダックと遠近感を
利用して撮るのがベターで、以前はそうして撮ったのだが、今日の
ツアーではもうこの1回しかラバーダックの近くには来ないと
いうことで、ノーチャンスだ。
それにしても、巨大こけし"花子”と言い、”ラバーダック”と言い、
大阪人はこうした大きいものが好きなのだろうか?
いや、他地区にも巨大ガンダムや巨大鉄人28号などもあるし、
大阪人だけの嗜好ではないのであろう・・
さて、ドラゴンはここから東横堀川に入り、そのまま道頓堀まで
南下する、撮影ポイントは特に定められていないが、移動時間や
見栄えなどから判断し、次のポイントを道頓堀グリコ看板前に
決めた。
道頓堀グリコ前の最寄駅は地下鉄難波駅だ、ここは中之島、
ここからはまず北浜駅まで歩き、地下鉄1日券を購入し、
そこから地下鉄堺筋線に乗る。
堺筋線は日本橋駅までしか行かない、そこから道頓堀へは、
徒歩とするか、あるいは日本橋駅から地下鉄千日前線に乗り換え
1駅難波まで乗ってそこから歩くか、の2者択一だ。
ドラゴンボートの道頓堀までの所要時間は約50分、
地下鉄+徒歩での移動時間は、いずれのルートでも30分ほどと
見ていた、ただ、徒歩の行程は、ルートによっては、土日は
観光客や買い物客でとても混雑する道もある、すでに最初の
北浜駅に行くにしても、水都大阪イベントで混雑する中之島は
”ばらぞの橋”などで通行整理が行われていて時間を喰い、
10分ほどかかって、ようやく地下鉄の北浜駅に到着していた。
「さてルートはどうするか・・?」
堺筋線の途中駅で、レスキュー艇のスタッフよりメールが到着
”ただいま久宝寺橋通過”
「え~? 久宝寺橋って何処だよ?(汗)」
大阪市内には800を超える数の橋がある。
淀屋橋や渡辺橋など、電車の駅の名前になっている橋であれば
どこにあるかすぐわかる、あるいは濃人橋とか、地名(交差点名)
になっている場所も比較的わかりやすいであろう。
しかし、そうした以外の橋は、名前を聞いても、すぐ何処に
あるかは思い浮かべにくい。
実は船で大阪の橋の下を通過すると、橋にはたいてい船から見える
位置に名前が書いてある、けど、陸上を車で通過又は歩いていても
橋の名前は、欄干くらいにしか書いていないので、地名と無関係な
名前の場合は、なかなかそれを見て覚える事は無い。
「そういえば大阪市内に久宝寺という地名もあったな、内久宝寺とか
南久宝寺とか・・ 堺筋本町のちょっと南側あたりかな・・?」
まあ、大体だが、ドラゴンの現在地のあたりがついた、そこからだと
5分~10分くらいで道頓堀川に入り、そこからさらに10分ほどで
グリコ看板前だ。
時間的に若干余裕があるので、日本橋駅で千日前線に乗り換え、
1駅だけ乗って難波で下車する、難波駅からグリコ看板前は
距離的には数百m程度だが、ただ、この難波駅はとても大きな
ターミナル駅で、地下鉄が3本、近鉄、阪神、難解、JRといった
路線が集中し、地上への出口も何十箇所とある。
ここで違う出口から出てしまうと、遠回りになるだけではなく、
観光客等で非常に混雑する道を通る羽目になったりして、大幅に
時間をロスしてしまう危険性がある。
ここは知っている地元だから大丈夫、と格好つけず、あくまで慎重に、
駅構内の地図で目的地に最も近い出口の番号を調べてから地上に
上がるとしよう。
案の定、道路は観光客で非常に込み合ってたが、その行程を最小限
にして、無事道頓堀グリコ看板前に到着、時刻は11時5分。
”11:05グリコ前到着”と、レスキュー艇にメール。
ドラゴンの予想通過時刻は11時20分だ、まだ若干時間に余裕がある。
観光客が次々にグリコの看板前で記念写真を撮っている。
11時15分、遠くからドラゴンの太鼓の音が聞こえてきた、
「お、いよいよ来たな」
しかし、太鼓の音はやみ、そこからしばらく音沙汰が無い。
”ドンキ(ホーテ)前にて観光船通過待ち”と、
レスキュー艇よりメール。
そういえば、ここは大阪の名物観光スポットだ、
沢山の観光客を乗せて大阪見物をする観光船がひっきりなしに通る上、
道頓堀川は川幅が狭い。動きが遅く、しかもドラゴンの選手では
なく一般の方が乗っているドラゴンが観光船とすれ違うのは危険だ、
待機しつつ、タイミングを見計らって通過するのであろう。
しかし、有名なグリコ看板である。観光船は必ずここで止まり
乗客が記念撮影をする、そんなわけでドラゴンはなかなか通過できず
やっと通れるタイミングが来たのは当初の予定時刻を10分以上すぎた
11時34分をまわったあたり。
「やっと来たな・・ ちょっとここで一休みか?」
だが、観光船通過待ちでもう十分に休んだからか?
あるいは観光客が多いので、ドラゴンボートの宣伝の為か?
2艇は、ここで模擬レースを初めてしまった。
「速い速い・・」
こりゃあ、2艇のドラゴン前部に数名づつ乗っている和歌山と
滋賀の強豪チームの選手達が本気で漕いでいるな(笑)
あっというまにグリコ看板前を通過した2艇のドラゴンは、
道頓堀橋をくぐっていく。
グリコ看板前の戎橋や、道頓堀橋は、阪神タイガース優勝の際に
川に飛び込んだファンが多数出たことで有名だ、その後、一時期は
飛び込め無いようにフェンスを張ったり、さらに、道頓堀川の散歩道
「とんぼりリバーウォーク」を新設する工事をしていた時期もあった。
今は写真のように散歩道が整備されているのだが、今年、将来的に
ここに長さ800mないし1kmの巨大プールを建設する、という
案が発表された。もしそれが実現すると船は通れなくなると思うのだが
いったいどうするのであろうか・・?
さて、そんな事を考えている暇は無い、
この後、ドラゴンボートは12時に大阪ドーム前に到着する予定だ、
私も、そのポイントに行く予定なのだが、現在時刻は11時37分、
あと20分少々しかない(汗)
難波道頓堀から、最も速く大阪ドームに行く手段は、第一には、
2009年に開業した”阪神なんば線”で”ドーム前駅”まで乗る事だ、
幸いにして道頓堀から”阪神(近鉄)大阪難波駅”入り口は近い。
しかし、今日購入した”地下鉄・市バス1日券”は阪神電車には
使えないので、ちょっともったいない・・・
そこで、第二の直通の手段は市バスだ、だが、時刻表を調べていない
上に、混雑する難波駅周辺でのバス移動は、予想外に時間を喰って
しまうリスクも多々ある。これは却下だな。
第三の手段は徒歩だ、これは一昨年はそうしている、
ただ、そのときは、道頓堀から歩いたのではなく、もう少し西の
”なんばハッチ”から歩いている、ドームの少し手前の水門が見える
橋までの距離はおよそ1.3kmだ、早足で歩けば15分ほどで到着する。
しかし、今回は道頓堀グリコ前からという点で水門が見える橋まで
1.7kmとなる事と、水門通過だけではなくドームもからめて撮りたい、
そうなると大正橋をぐるっと迂回するので、トータル2.3kmとなり
早足でも27~30分、これは間に合わない・・
なので、第四の手段を選択することとした。
道頓堀から心斎橋駅まで歩く、700m程距離があり、道路は歩行者で
混雑しているだろうが、およそ10分ほどで着くであろう、そこから
地下鉄長堀鶴見緑地線に乗って、3つ目の”ドーム前千代崎”駅で
降りれば良い、その方法ならば、ぎりぎり12時には着くであろう。
さあ急げ・・
10分ほどで心斎橋駅に到着するも、長堀鶴見緑地線のホームが遠い、
いや遠いというより御堂筋線より後に出来たホームなので深いのだ・・
なかなかホームにたどりつかない。
また、暑い中を歩いて(半分走って)きたので、けっこう疲れる、
10月も半ばを過ぎた21日だと言うのに、気温は25℃近くもある様子だ、
比較的薄着で来てはいるが、汗もかいてきた。
長堀鶴見緑地線乗車は11時51分、あと9分しかない。
駅は3駅、1つめの駅でレスキュー艇よりのメールを受信、
”12時に水門通過予定”
現在11時53分、あと7分か・・
水門通過は是非撮影したい、しかし駅に降りてから水門までは
それが見える位置まで行くにも200m程ある、はたして間に合うか?
11時57分、電車はドーム前千代崎駅到着、急いで地上に向かう、
しかし、この駅も、すぐ横の木津川の下を潜って作った駅だ、
ホームの位置は結構深い・・
12時ジャスト、地上。
道路にODBAスタッフの車が停まっているのが見える、
匠「ドラゴンは、もう(水門を)通過しましたか?」と聞く、
ス「いや、まだです」
匠「じゃあ、ちょっと撮ってきます」
それっ、と急いで水門が見える200m程先の位置に走る、
12時3分、水門前到着。
幸いにして道頓堀川と木津川を結ぶ水門は、「閘門」方式になって
いるようだ、閘門(こうもん)とは、水位(水の高さ)の異なる
河川等の間を複数の水門で区切り、その水門間に注水し、
高低差を無くして船が通過出来るようにする仕組みだ。
この為、12時に水門を開けるといっても、注水に数分かかっている
様子で、両脇のブロックから放水の様子が見えている。
12時7分、やっとドラゴンが出てきた、
狭い道頓堀川から広い木津川に出てきて、ほっと一息という
感じであろうが、実はここからは、向い潮となり、漕ぐには
若干厳しい状況だ、ただ、今日の潮流は干潮のタイミングの
関連で、さほど強くは無い、という風には聞いている。
大阪ドーム千代崎港で昼食、というのが例年のパターンなのだが、
この千代崎港は、トイレの場所が若干遠いという問題がある、
なので、今回、ここは通過してドラゴンで約20~30分程先の
大阪中央卸売市場で昼食休憩を取る事にした、とのことである。
匠「え~、ちょっと先に、ドームを背景にドラゴンを撮ります」
ここから北に約300m先の橋を目指す
ス「ドラゴンはちょっと待ってね、匠さんが橋の上から撮ります」
・・とアナウンスされても、艇を待たせるわけには行かない、
ドラゴンに乗ってから1時間半、トイレに行きたい乗員もいるだろうし、
水門の通過時刻も予定で決まっている。
しかし、こっちはさっきから走りづめだ、結構もうヘロヘロ(汗)
さらに、ODBAのスタッフに声をかける、
匠「あ、それと、ドームから中央卸売市場まではバス便が30分に
1本しか無いんですよ、困ったなあ・・」
ス「それじゃあ、車に同乗してください」
匠「たすかります」
ドームが見える橋まで走る、この橋は歩道橋のように高さがある。
ふうふうと、橋に登って、そこで振り返ると・・
「ガーン!、ドームの前に新しい建物が工事中だよ(汗)」
予定していた構図にはならなかったが、まあしかたない。
呆然と、橋の上からドラゴンを見送る。
時刻は12時13分、ドラゴンは12時半過ぎに中央卸売市場に
到着予定だ。
ODBAの車が待っていてくれたので、同乗して目的地に向かう、
「はあ、疲れた・・」
午前中は、なかなかあわただしかった、市場でお弁当を食べたら、
後は、力つきているだろうなあ・・ 私もレスキュー艇に乗って
中之島に戻ることにしよう。
時刻は12時15分をまわったところ、15分ほどあれば、車なら余裕で
市場に着くと思っていたのだが、あいにくと、交差点毎に赤信号に
ひっかかる。
ス「この調子だと、結構ぎりぎりになるかもね」
せっかくなので中央卸売市場に着岸するドラゴンを撮りたい、
しかし、ここもまたぎりぎりなのか・・(汗)
やっぱ、信号も渋滞も無い水上というのはなかなか速い、
選手ではなく一般の方が漕いでいるとは言え、ドラゴンボートは
遅い自転車並みの速度(8~10km/h)は出ているのであろう、
いやあ、陸上撮影班はなかなか大変だ、来年からボート上の撮影で、
楽をしようか? いや、それはそれで撮れるアングルは限られてくる
ので、やっぱそういう訳にもいかないだろう・・(汗)
さて、この後、午後のクルージングに関しては、後編に続く・・