”清水エスパルス”と”ちびまる子ちゃん”の街、
そして、歴史に名を残す、”清水の次郎長”や、
戦国時代の江尻湊(清水港)の水軍の将”向井正綱”、
それらを輩出した静岡市清水区の”清水港”で行われた、
第二回ドラゴンボート大会「ツナカップ」の模様より。
写真は、御前崎の電力会社チーム「中電龍舟」
オープンAトーナメント(強豪チームの集まるカテゴリー)に
参加する静岡県の中堅チームだ。
「まだ県外の大会に遠征するレベルでは無い」と、
謙遜気味のコメントであるが、静岡で数回の大会の様子を
見ている感じでは、そんな事はなく、他の地区の大会に出たと
しても、そこそこ戦えるとは思う。
先般の台風17号は、静岡の御前崎地区を襲い、中部電力では、
本業の電力の安定供給においては、停電などの対策・対応に加え、
ドラゴンの中電龍舟チームでは、係留しているボートが流されない
ようにロープで固定するなど、なかなか大変だったようだ。
女子チーム「スピカ・ダーリング」
県内の保育士のチームで、皆さん20代と若い。
”スピカ”と言ったら、星座”おとめ座”の主星(α星)の
名前なので、そのあたりからのネーミングだと思われるが、
詳しい由来は聞きそびれてしまった。
昨年のツナカップ大会にも保育士の女子チームが参加していたが、
やはり女子チームは大会の華であり、会場の雰囲気も良くなる
ので、今後も、どんどん参加していただきたいと思う。
ぐっと年齢層が上がって、こちらは埼玉より参戦の「村田Black」
チーム。
・・とは言え、単なるオジサン軍団というわけではなく、
チームのベースは、あの有名な「INO-G」である。
「INO-G」は、元々様々なボート競技をやっていたベテラン選手達
により結成されたチームであり、7月に大阪で行われた日本選手権
大会においては、混合の部にエントリー、その予選第一レースで、
いきなり全予選最速タイムの53秒台(注:250mレース)を叩き出し、
周囲に強烈な印象を与えた。
勿論、決勝まで進むも、関東・関西の代表的超強豪「Torrid Storm」
と「関西龍舟」との、3つ巴の混戦となり、3艇が54秒台の1秒差
以内の団子状態のままゴール、コンマ何秒かの差で「INO-G」は
惜しくも3位となった、という伝説的な経緯がある。
(ちなみに混合の250m戦は、従来の大会では1分前後が優勝の
タイムなのだが、この日本選手権では、軽量の新型艇を初導入、
その新艇をうまく乗りこなせたチームは、タイムを5~6秒程度
縮めることが可能であったようだ)
そのINO-G改め「村田Black」は、今回のツナカップ大会では、
地元の優勝候補である「海猿火組」(今年の日本選手権オープン
準優勝)と激烈な決勝を戦うことが十分に予想される。
・・いや、ちょっと待った。
昨夜の監督会議での組み合わせ抽選会の模様を思い出すと、
確か「村田Black」と「海猿火組」が勝ち続けた場合、両者は
トーナメントの準決勝で当たってしまう組み合わせになって
いなかっただろうか? ・・うん、確かにそうだ。
これは準決勝が熾烈な戦いとなる事は勿論、他のトーナメント
から決勝に上がってくるチームにも入賞の可能性があるという
事になる、これは何かドラマが期待できそうだ、なかなか面白く
なってきた。
レースは予選が淡々と進んでいるところ、
この大会はまだ艇の数が十分ではなく、2艇を使いまわして
大会を進めている。他のメジャー(大規模)大会のように
10艇とかの十分な艇数を準備して5杯(艇)レースを順次交互に
行うといった風にはいかない。
大会の予定時間は押し気味であるが、まあ、昼食休憩の時間を
設けてあるので、そこで若干の調整は可能であろう。
朝は天候が悪く、小雨模様だったのが、昼前の今はもう雨も
あがり、ときたま青空ものぞく天気となってきた。
雨が降っている時とかは、水中は陸上よりも暖かく、選手達は、
漕いでいる最中は動いているし、どうせ濡れるしで、雨はまったく
気にならないが、陸に上がると、濡れたユニフォームなどで、
とても寒く感じると言う。
まあ天候の回復により、そういった問題も無くなってくる訳だが。
10人乗りのミニドラゴンとは言え、スタート直後は水しぶきも
あがり、見ていてなかなか迫力がある。
スタート地点は清水港の市場の目の前であり、今日は、
イベント「清水港マグロまつり」が行われていることもあって、
多数の観光客や地元の人たちで賑わっている。
その多くは、買い物や食べ歩きのイベント見物をしながら、
ドラゴンのレースの模様にも足を止め、
「なに? 手漕ぎのボートのレース? お、なかなか速いな~!」
とか口々に感想を話している。
確かに、22人乗りの規定通りの大型のドラゴンボートレースを
見慣れた目には、最初に10人艇を見たときは、ずいぶんと頼りなく
見えたものだが、見慣れてくると、これはこれで十分見ごたえが
あると思えるようになってきた。
琵琶湖ペーロン大会等で使用する10人漕ぎ艇は、重量があって
明らかに通常の22人艇より遅いのであるが、それは重量の他にも
10人レースに参加するチームが地元ビギナーチームが多いという
理由もあるかもしれない。
この「ツナカップ」では、上写真の東京の「BON OYAGE」のような
ベテラン強豪チームでも、どのチームでも、10人乗り艇での出場で
あるので、速いチームは明らかに速く見え、そしてそのタイムも
軽量艇の恩恵か、200mのレースで他地区の大会での22人通常艇
でのタイムとほとんど差が無い。まあ、すなわち、分速200m以上、
つまり時速12km以上、さらに速いチームでは時速15km程度と、
ボート競技に馴染みの無い一般の観戦者が初めて見ても、
十分に速いと感じられる速度レンジにはなっている。
まあ、それに、22人乗りのようにチームのメンバーを沢山集めて
くる必要も無いので(なかなか今の時代、これが難しい・・)
このレギュレーション(規定)を一般化していくのも意味がある事
なんだろうと思う。
この「ツナカップ」での参加選手達は、今のところ、企業やスポーツ
クラブに属するファミリー層が中心で、ジュニアや学生、シニアと
いった年齢層にまでは、まだ広がってきていないので、選手達やその
家族は子供さん連れが結構多い、こうした環境の中で育った子供達が
数年後あるいは十数年後には、琵琶湖での大会のように、小学生大会
や中学生大会を開催し、そこに参加して漕ぐようになってくるかも
しれない。
全国のドラゴンボートやペーロン大会の中には歴史の長い大会も
あるのだが、各地で大会が次々で行われるなってきたのは、
実際には、ここ10年程だ、なのでまあ、今漕いでいる現役選手達
は、ずっとこの間漕いで来たのだと思われるが、いつか世代交代の
時期が訪れる、その際に子供達がドラゴンに親しみながら育って
来ることが重要なポイントなってくるのであろう・・
それから、静岡県の大会の特徴としては”安全面”の配慮がある。
これは静岡県ドラゴンボート協会の主力メンバーの多くに、
海上保安庁、看護士、消防、などの人命を守る仕事についている
方が多いことが、まず主な理由としてあげられると思われるが、
事例を見ても、ドラゴンとは直接関係無いが、静岡県においては
昨年の天竜川川下り船の転覆事故があり、あるいはドラゴンでは
本年の御前崎大会での優勝チーム艇転覆アクシデントがある。
このように、ドラゴンボートも水上スポーツである以上、沈没・転覆・
水没などの一般的な日常では経験の少ない事態が発生するリスクは
存在し、そうならないようにするための安全周知や安全講習、そして
万が一、アクシデントが発生した際の速やかで確実な対応という事は
どのドラゴン大会においても十分に配慮する必要があると思う。
勿論どの大会でも専門の救護・救急スタッフなどは詰めてはいるが、
前述のように10年もドラゴンを漕いでいる常連・ベテランチームや
選手達がほとんどになってきている各大会では、いちいち緊急時の
対応などの周知徹底の為の講習などは行わず「全員ライフジャケット
着用の事」とか、簡単な注意点等の連絡のみで終わってしまう事も多い。
静岡の大会は、大会の前は勿論、日常的にも安全講習会が行われて
いたり、大会の間も、多数のジェットスキーや救命艇がレースに
随走し、万が一の事態に備えている。
ジェットスキーのライダーは「大木組」など、ドラゴンの大会に
選手として参加はしていない専門のスタッフを揃え、また、静岡県
ドラゴンボート協会スタッフもこれに加わって万全な体制を敷く。
レースの合間にも、このように、危険な流木を見つけたら、
それを回収するなど、なかなか忙しそうだ。
さらには、現職のナースの方も救護班として待機。
アクシデントの時などは、肉体的なダメージが無かったとしても、
水中に投げ出された事などでパニックになり、精神的なダメージを
受ける場合もある。あるいは、海水を飲んでしまったり、ずぶ濡れに
なった身体が冷え切ってしまうなど、そうした事後の対応も重要に
なってくるであろう。
仮にビギナーの若い女性選手等がそんな状況になったとして、
「どこも怪我ないですね?はい、OK」で済ませる訳にはいかない
事であろう。写真の方は現職のナースで、かつドラゴン選手の奥様だ、
その豊富な医療的経験および水上スポーツへの造詣から、アクシデント
時の、肉体的・精神的なダメージや事後の対応も十分と思われ、安心だ。
まあ、このような万全の対応の元で、選手達は安心してドラゴンボート
競技を楽しめることとなる。
それから、この「ツナカップ」大会の運営であるが、参加選手達への
細かい配慮があることも特徴の1つであると言える。
入賞賞品は、清水名産のマグロや、清水エスパルス関連グッズなど
記念となる賞品をとりそろえ、しかも特別賞なども多く用意されて
いて、できるだけ多くの参加チームに行き渡るようになっている。
さらには、入賞チームの賞状には、チーム写真も入っている。
これは、まず、静岡県ドラゴンボート協会の記念撮影スタッフが、
各チームの集合写真を、レース終了後に個別に撮影する。
まあ、こんな感じだ・・
で、その撮った写真を本部のプリンターで大会中に印刷し、
入賞の賞状とともに、アクリル製の枠にはさんで授与するわけだ。
こうした事は細かい気配りなのだが、選手達には「良い記念になった」
と、なかなか評判が良い。
他の地区のドラゴン協会で、静岡ではそうしているという話をすると
「へえ、それはなかなか粋なはからいですね」と誰もが肯定的だ。
まあ、そう言うものの、じゃあ、その細かい事をやろうとしても、
集合写真用の専属のスタッフをずっと待機させるとか、パソコンや
プリンターを本部に持ち込むとか、写真を挟めるタイプの賞状を
準備するとか、ちょっとした工夫や手配の積み重ねが必要なので、
なかなか他では実現がしにくい。
あるいは、オープンの競技がAトーナメント(強豪チーム向け)と
Bトーナメント(ビギナーチーム向け)に分かれているのも、
それぞれの参加チームが、それぞれのレベルで楽しめるという
配慮の一環だ。これも一見簡単なようだが、実際にそれを
実行している各地の大会は少ない。(横浜協会主催の大会でも
そうしていると聞いている)
静岡の大会においては、そうした少しの手間を惜しまず、自分達が
これが良いと考えた事を、どんどん実行に移していくという行動力が、
運営ポリシーに反映されている様子で、だから選手達もまた楽しく
感じられるのであろうと思う。
事実、この大会終了後、参加した全チームから”静岡県協会”に
お礼のメールが来たと聞いている、「楽しかった」「また来年も来たい」
等内容は様々であったようだが、全体を通して選手目線の運営を
手がけている様子がはっきりと参加者にも伝わるので、
そのあたりが好感度、つまり”顧客満足度”をアップさせる事に
つながっているのであろう。
選手達の存在を忘れてしまっては、ドラゴンボートの大会は
成り立たないし
あるいはドラゴンボートの普及にもつながっていなかないので
あろうと思う、各地の大会を見ていると、色々考えさせられる
部分も多い・・
そんなこんなで、「ツナカップ」は、まだわずかに2回目の大会であり
参加チーム数も少ない小規模大会でありながらも、地方のマイナー
大会に留まらずに、全国から多彩なチーム達が集まり始めている。
写真は愛知県の「闘龍者(とうりゅうもん)」チーム。
なかなかの強豪チームであるが、関西では滋賀県の一部の
大会くらいでしか会えない。
決して出不精というわけでは無いのだろうが(笑)
まあ、大人数のチームを他地方に遠征させるというのはなかなか
大変な話だ、しかし「闘龍者」をはじめ、そうした遠方チームも
静岡県のツナカップや御前崎大会には積極的に参加している。
前述の、埼玉の「村田Black」(INO-G)や、東京の「BON OYAGE」
同じく東京「ゆかいな会」、同じく東京より「ニライカナイ☆奏龍」
上の集合写真での東京より参加の「TITAM X DRAGONS」
横浜より「亀さんパドルスターズ」「横浜ドラゴン」
大阪より「関空飛龍」、さらには、東京の国際チーム「ゴリニチ」
このように、全国から続々と参加チームが集まる状況は、
決して、地方のマイナー大会の一言で片付けられる物ではなく、
静岡の大会に共通する魅力があるのだと思う。
「ツナカップ」も今後さらに”顧客満足度”の高い大会として、
発展していく可能性が大きいように思える。
で、こちらが、前編でも少し紹介したロシア等のメンバーからなる
国際チーム「ゴリニチ」だ。
ちなみに、”ゴリニチ”とは、ロシア語で言うところの”ドラゴン”
であり、彼らに話を聞くと(色々伝承はあるらしいが)ゴリニチは
”多頭の竜”であるそうだ。
これは日本で言うところの古事記.の”ヤマタノオロチ”や怪獣映画の
”キングギドラ”と同じルーツであると思われる。
(・・・と、同じ事を去年の記事でも書いたような記憶が・・汗)
まあ、ドラゴンボートのチーム名としてはまさしくぴったり、
もし、今後、ロシアチームが増えてきた場合など、「ゴリニチ」が
すでに使われてしまっているので、後から名前をつける人が
悔しがるかもしれない(笑)
大会は昼食休憩に入り、ここで選手やスタッフは一息つくと同時に、
押し気味であった大会スケジュールの時間調整にも役立っている。
大会弁当は毎回、新鮮な魚介類からなる海鮮丼で、清水港での大会
の特徴を十分に出している、空腹な私はペロリとたいらげてしまい、
「あ、写真撮るの忘れていていた・・(汗)」
まあ、おなかがいっぱいにならない場合でも、すぐ近くの市場で
いくらでも美味しいものが売っているのも、この大会の特徴だ。
「横浜ドラゴン」のメンバーも、お弁当の買い出しで市場からの
帰りの様子だ。
匠「美味しそうなのありましたか?」
横「ええ、○○屋の海鮮丼とか、XX店の寿司とか・・」
また、徒歩数分の清水駅前会場では、「マグロまつり」開催に合わせ、
静岡各地のグルメ屋台なども出ている。
今回初参加の大阪の「関空飛龍」メンバーにも、私からグルメ情報を
伝える・・
匠「清水の新鮮なマグロを使った炙りツナサンド、富士宮やきそば、
あるいは、浜松餃子もいけるかな・・」
関「おお、どれも美味しそうですねえ!」
”食い倒れ”の文化(=飲食・美食に目が無い)を持つ大阪人は、
そんな情報に弱い。
どこのチームが強いとか、そうした情報よりも、確実かつ速やかに
チーム内に伝播する(笑) 早速買い出しに向かった様子だ。
昼休みを利用した「バイキング・カヤック」の試乗会、
これは、1人~3人乗りのレジャー用ボートだ。
「海猿火組」をはじめ、何人かの選手達が「あれ欲しいなあ・・」
と言っていたのだが、まあ静岡はともかくとして、大阪などの都市圏では
なかなか使う機会が無いかも知れないが、関西で言えば、琵琶湖とかに
持っていって乗るのならば、なかなか楽しそうだ。
さて、長くなって来たので、以降は次回の「後編」に続く。
後編では、地元静岡最強の「海猿火組」の活躍が見られるのか?
それとも、関東や愛知、関西からの各チームによる「海猿包囲網」が
発動されるのか? いよいよ決着の時が迫る・・