静岡県静岡市清水区の清水港で2012年10月7日に行われた、
ドラゴンボート大会「ツナカップ」の模様より。
昨年より始まったこの大会も、無事2回目を迎えることになった。
静岡県のドラゴンボート大会では、他に「御前崎大会(市長杯)」も
行われていて、こちらは50チーム前後という多数のチームが
参加する大規模な大会となっている。
昨年の第1回「ツナカップ」では、初回の為参加チーム数が10と
少なく、手作り感あふれるミニ大会、という様相であったのが、
今年の参加数は19チームと、ほぼ倍増、いよいよ本格的な大会に
成長しそうな気配がある。
なお「御前崎大会」は、地元の参加チームが多く、どちらかと言えば
お祭り的な要素を含む大会であるのだが、今年のツナカップの様子
を見ていると、地元ビギナーチームのみならず、全国のドラゴン
専業チームも集まってきていて、初心者からベテランまで楽しめる
大会となってきて、御前崎大会との色分けがちゃんと出来ている。
ちなみに「ツナカップ」の行われる清水港と御前崎港は、同じ静岡県
で、一見近いようなのだが、直線距離で50km以上も離れている。
これは大阪からで言えば京都よりもまだ遠く、例えば大阪市~
和歌山市間の距離であったり、関東で言えば東京都区内から千葉の
成田空港までの距離に匹敵する。
まあ、そんな距離感であるので、地元ビギナーチームと言っても
御前崎と清水では、若干参加するチームも異なってくる様子だ。
この「ツナカップ」大会の特徴としては、まず、交通アクセスの
良さがある。JR清水駅から清水港へは、徒歩数分であり、
おまけに、この大会の開催日は「清水港マグロまつり」という
一般・観光客向けのイベントと同じ日になっている。
大会前日、「マグロまつり」や「ツナカップ」のイベント準備が
終わった頃、ドラゴンボート大会関係者や参加チームの監督に
召集がかかった。関西から参加の私も前泊なので、ちょっと
その会議に顔を出してみよう。
ここは「エスパルス・ドリームプラザ」
清水を拠点とするサッカーチームの名を冠した総合アミューズメント
&ショッピング施設だ。JR清水駅(または静鉄・新清水駅)からは
無料送迎シャトルバスが出ている。
清水駅からこの無料バスに乗り、約10分程で「ドリームプラザ」
に到着した。
ここで今から、「監督会議」が行われる段取りになっている。
「監督会議」とは、基本的にはドラゴン大会の注意点等の説明や、
走行順やレーンの組み合わせ抽選等を行う会議だ。
大会当日に行われる事の多いこの監督会議であるが、
前日に行われるという事は、もちろん懇親会も兼ねている。
会場は「はとばキッチン」、今年オープンしたばかりの新しい
店舗だが、飲食はバイキング形式で、なかなか賑わっている。
「監督会議」はわずか30分ほどで終了し、後はひたすら
飲み食いするだけ・・
昨日の敵は・・ならぬ、明日の敵は今日の友た。
かくして清水港の夜は更けて行き、明日はいよいよツナカップ本番だ。
大会当日、清水港、8:30am、天候はあいにくの小雨模様でやや肌寒い。
勿論、水上スポーツであるドラゴンボートは多少の雨などでは
中止になるはずもなく、集まって来た選手達は、早速大会の
ハンフレット(チーム紹介が載っている)や組み合わせ表を見て、
あれやこれやと、テンションを上げてきている。
私自身の活動拠点は関西であり、静岡はアウエィなのだが、
静岡の大会の観戦も、早3回目となり、だいぶ顔見知りの
チームも増えてきた。まあ、それでも、初出場のチーム等も
増えてきているので、まずはそのあたりのチームを中心に
廻ってみることにする。
今回参加の19チームの内訳だが、オープン16チーム、
そして女子が3チームだ。
オープンというのは男女性別無関係の、いわゆる一般の部
という扱いだが、そのカテゴリーばかりだと、強豪チームと
ビギナーチームの差が歴然としてしまう。
なので、今回の大会では、オープンはAカテゴリーと
Bカテゴリーに2分し、それぞれ8チームの参加となっている。
Aカテゴリーは、ドラゴン専業チームなどが戦う、いわゆる
「マスターズ(強豪)リーグ」であり、Bカテゴリーは経験の浅い
ビギナーチームでも気軽に参加できる「フレッシュ(初級)リーグ」
といった感じである。
オープンAカテゴリーでは、3位までが入賞、
Bカテゴリーは、2位までが入賞だ。
ただし、Aカテゴリーでの敗者はBカテゴリーの準決勝に
進むことができることになっている。
女子は3チームしかないので、総当り2回戦制で順位を決める。
さて、早くも開会式の時間だ、チーム数がさほど多く無いとは
言え、今回の大会では、レースは2杯(艇)で行われるので、
朝の9時から15時過ぎまで、ほぼ10分間隔で発走して
いかないと大会が終わらない。 この過密スケジュールだと
時間が”押す”事が予想されるので、ともかく早めにスタート
したいという考えだ。
選手宣誓は、「ゴリニチ」チームの女性。
ロシア、ウクライナ、ウズベキスタン、カザフスタン、フランス等
からなる国際混合チームで、関東の東京や神奈川等に在住との
事だが、静岡の大会ではもう常連だ。さらに、大阪の吹田大会にも
一部のメンバーが参加した事があるとのことで、ここのところ
全国レベルでアクティブに活動している注目のチームだ。
チーム内の公用語はロシア語で、練習中や試合中は何を言って
いるのか聞いていてもわからないのだが、ほとんどのメンバーが
英語を解し、また多くのメンバーは日本語でも大丈夫だ。
私は、ロシア語は、挨拶くらいしかわからないのであるが、
とりあえず、”ドーブロエ・ウートラ”(おはようございます)と、
話しかけて、あとは、英語と日本語をミックスして適当に話しをして、
(英語は、こちらも簡単な日常会話なら問題ない)で、最後に
”スパシーボ”(ありがとう)と声をかけてから去っていけば、
まあ、彼らとのコミュニケーションは十分に取れる。
前回の静岡の御前崎大会(本年6月)でも、「ゴリニチ」は
選手宣誓を長いロシア語で行った。
今回の「ツナカップ」の選手宣誓も、やはりロシア語であるが、
開会式直前に、急に”やって下さい”と頼まれたらしく、今回は
本文はとても短く、後は”ウラー・ウラー・ウラー”(万歳三唱)
と言っていたのが十分聞き取れた。まあ、簡潔でよかったと思う(笑)
選手宣誓の次は、静岡県の大会恒例の「エアロビクス準備体操」
これはなかなかハードな模様だ。
というのも、エアロビの先生が前に立って見本を見せながら
やるという本格的な体操であり、年配の選手達は、これだけで
息が上がってしまう様子だ(汗)
開会式のラストは、静岡県ドラゴンボート協会理事長の山田氏に
よる、「ドラゴンの入魂式」(目入れの儀式)だ。
入魂式は、各地の、いくつかのドラゴンボート大会でも行われて
いて、特に珍しい儀式では無い。
目を入れる(墨で描く)のは片方だけなのだが、今回は、ちょっと
控えめに描かれた様子で、なんだかアンバランス・・?(汗)
さて、開会式も終われば、いよいよレースの開始だ。
小雨もいつのまにか上がり、気温も暑くも無く寒くもなく、
絶好のドラゴン日和になってきた。
重要なポイントを書き忘れていたが、この「ツナカップ」大会で
使用するドラゴン艇は、10人乗りタイプのミニドラゴンだ。
通常、各地のドラゴンボート大会では、22人乗り(漕ぎ手20人
+太鼓+舵)が使われ、それがドラゴンボート大会での正式な
形式となっている。
ただ、趣味や生活スタイルが多様化している現代においては、
レースの度に22人の選手達を集めるというのはなかなか
困難な面もある。
まあ、そんな場合に、最近、一部のドラゴンやペーロン大会で
増えてきているのが、10人乗りタイプ(8人漕ぎ+太鼓+舵)
というレギュレーション(規定)だ。これならば、人を集めるのも
さほど難しく無い為、人数が集まらないで参加を断念してしまう
チームが減ると思う。
ちなみに、22人集めるのがなかなか難しい正規のドラゴン大会では、
近年では、2チームの合同チームによるエントリーや、チーム間の
メンバー貸し借り等が行われている事が多い。
前者はともかく、後者は善し悪しの両面があると思われるので、
なんとも微妙な傾向だ。
そこで、例えば、”びわこペーロン大会”のように、22人乗りによる
「本格的」カテゴリーと、10人乗りの(ビギナー向け)カテゴリーを
1つの大会中に並存させるのも良い解決法かもしれない。
事実、びわこペーロン大会は参加70チーム以上と、国内のドラゴン
大会では最大級の規模を誇っている。
本ツナカップ大会の場合、10人乗りというレギュレーションも
理由の1つで、遠方からでも集まりやすいのか、今回の大会は、
静岡県以外でも、東京、埼玉、神奈川、愛知、そして大阪からも
チームが出場している。
写真は、関西地区ではおはじみ「関空飛龍」だ。
記憶によれば、大阪の関空大会がスタートした9年前に結成された
チームなので、もうベテランの域だ。 関西地区では、そこそこの
強豪であり、地元の関空大会ではメジャー(大規模)大会であるにも
かかわらず、決勝進出も珍しい事では無く、入賞経験も持つ。
その「関空飛龍」は、今回、オープンBカテゴリーに参加、
ビギナーチームの多いこのカテゴリーでは「関空飛龍」の実力だと、
圧勝してしまう可能性がある、それではA,Bを分けた意味が
無くなるので、なぜBに参加しているのかな?と疑問に思った、
もしかすると「ツナカップ」には関西からは初参加のチームなので、
要領がわからなかったのかな?とか考えていると、どうやら、実際は
「関空飛龍」は、締め切りぎりぎりの申し込みで、補欠になって
いた様子で、Bカテゴリーにキャンセルチームが1チーム出たので、
そこに代わりに入り、出場できるようになったとの事だ。
Bカテゴリーの中には、まさに今日初めてパドル(櫂)を持つという
選出建も若干混じっているようだ。
ちなみに今日の「ツナカップ」のレース距離は直線200mだ。
10人艇による概算タイムだが、これが不思議な事に22人艇と
殆ど変わらないタイムとなっている。
すなわち、
50秒~53秒:オープン強豪チームによる優勝タイム
54秒~1分:強豪チームによる決勝レベルタイム
1分以上:中堅・ビギナーチームの標準的タイム
といった感じになる。
22人艇に比べ、漕ぎ手が少なくなる分、艇も軽くなるので、
上手いこと相殺されるのであろう、いつものドラゴンレースの
タイム感覚がそのまま適用されるので、見ていてわかりやすい。
また、ここは海であるので、潮の満ち干や潮流の変化で、
全体的にタイムは2~3秒前後変化する場合もある。
レースは200m直線で行われるのだが、コの字型に東に広がる
清水港で、ボートは西側中央よりスタートして東南角の防波堤に
向かう、つまり、感覚的には斜めに進むコースだ。
その発艇審判はこちら。
さらに、100m地点(コースの半分)において、レース成立を
判定する、それをチェックする審判員がこちら。
これは、たとえば、艇同士の接触・進路妨害などがあった際に
それが100m以前であれば再レースの赤旗。
何も無ければ勿論白旗、100m以後にアクシデントがあれば、
特別な状況でない限りはレース成立、などの判断をここで行う。
さらに、こちらはタイム計測のスタッフだ。
彼女達は、清水看護専門学校の卒業生のナース達であり、
レースタイム計測の仕事の他、いざアクシデント発生の際は、
大会ドクター(県立大学前クリニック)および大会ナースに
彼女達も加わり、万全の体制を取ることとなる。
ちなみに、静岡県ドラゴンボート協会の主要構成メンバーである
「NPO法人・海猿火組」は、海上保安庁、ナース、消防等の
メンバーを主力とする、人助けの専門集団だ。
(後述するが、海保等でなければ入れないというチームでは無い)
その救助の実力は、今年の御前崎大会での、ボート転覆の
アクシデントの際にいかんなく発揮された。
それはまあ、優勝したビギナーチームがボート上で立ち上がって
しまった為に起こった転覆アクシデントであったのだが、たまたま
近くで決勝の発走待ちをしていた「海猿火組」艇からの救助活動は、
それはそれは鮮やかなもので、胸のすくような手際であった。
なにせ、救助艇(モーターボート)が到着するよりも早く現場に
到達、すぐさま現役海猿(海上保安庁)の潜水士が飛び込んで
あっというまに全員救助となった、という顛末であった。
(本ブログ:御前崎大会編記事参照)
本大会においても、さすがに「海猿火組」が大会運営の大部分に
携わっているだけあって、安全確保(周知)に関しては万全だ。
ライフジャケット全員着用は勿論の事、開会式においても、
(前回の御前崎のように)「ボート上で立ち上がらないように」と、
周知徹底するアナウンスを何度か行っている。
まあ、それ以外にも本大会では、安全確保活動に関する部分は
多々あって、そこが他の大会とちょっと違う特徴となっている。
それらは、また追々紹介していくことにしよう。
こちらが、その「NPO法人・海猿火組」チームだ。
今回はオープンA,Bの2つのカテゴリーに各1チームをエントリー、
静岡最強チームとの呼び声も高く、今年の国内最高峰の日本選手権
大会でも準優勝(本ブログ、日本選手権記事参照)、近年の静岡での
各大会での連続優勝(本ブログ:ツナカップ、および御前崎大会の
記事参照)と、名実共に超強豪チームであり、勿論、本大会でも
優勝候補の筆頭となっている。
しかし、毎回毎回「海猿火組」が勝ってしまうのも、他のチームの
優勝チャンスをつぶす事になるので、観戦側の勝手な希望によると、
ちょっとは、ハラハラするレース展開も見たいところである(笑)
それから、本ブログの今年の日本選手権の記事で書いたサプライズ
の「海猿火組若手男子選手、美人選手に公開プロポーズ事件・笑」
の、その後の状況について・・
気になってはいたのだが、今回、男子選手にプロポーズされた
彼女に3ヶ月ぶりに合う事ができた、まあ、彼女の表情を見れば、
その後どうなったのかは、容易に想像できると思うのであるが・・
さて、今回の記事もまた、ツナカップ大会についての全般的な
状況説明に終始する事になってしまい、レースの模様について
全く書けなかった(汗)
ただ、昔から言っていることだが、レースの結果などは、他の
Webの報道記事などでいくらでも知ることができる。
なので、このブログでは、その場に居ないとわからないであろう、
大会の雰囲気とか、選手達の人間ドラマとか、そうした事をメインに
伝えて行きたいと考えている。
なにせ、このツナカップ大会においても、当ブログの昨年のツナカップ
の記事を読んでいただき、「楽しそうな大会だから参加してみよう」
と決めたという、遠方より参加のチームの話も聞く機会があった位だ、
だったら、まあ、そうした方向性で記事を書くのも、それはそれで
意味がある事だと思っている。
さて、ツナカップ大会のレースの模様は、次回”中編”に続く・・