梅雨の中休み、6月17日に大阪・浜寺公園の大阪府漕艇センターで
行われた堺泉北港ドラゴンボート大会の模様より。
今回の注目チーム、帰国する外国人メンバーの為に悲願の入賞を
誓う「近畿車輛電龍」は、いったいどうなるのであろうか・・?
敗者復活戦から準決勝にかけては激戦が続いた。
写真は準決勝で、決勝に残る為に熾烈な2位争いを繰り広げる
強豪チームの2艇、手前が「吹田龍舟倶楽部」奥が「チーム未来」
鼓手(ドラマー)が相手チームの様子を見ているのがわかる。
混合カテゴリーの様子だが、優勝候補である東京の「Torrid Storm」 が
予選で同じく優勝候補の「東海龍舟」と当たった為、戦力(体力)を
温存する目的か、あるいは実力を相手に測られないようにする為か、
2位でフィニッシュし、敗者復活戦に臨んだ。
まあ、こうした高度な戦略的な駆け引きは、最近のドラゴンの世界では、
当たり前になってきている。
そのTorrid Stormは敗者復活戦では、2分13秒台(注:500m)と
混合・オープンの両カテゴリーを通じ、本日のベストタイムを
叩き出して楽々と準決勝に進出、実力の片鱗を見せ付ける。
結局混合では「Torrid Storm」 「関西龍舟シンバ」、「東海龍舟」
の3強に加え、↑の写真で激戦を演じた、「チーム未来」と
「吹田龍舟倶楽部」の計5チームが決勝戦に残ることになった。
古豪の「Rowing Team 浪わ」は惜しくも準決勝で敗退、
また、「すいすい丸」や「Team Banana」は敗者復活戦で敗退している。
混合カテゴリーの決勝は、Torrid、関ドラ、東海の3チームの実力が
拮抗していて、どこが勝ってもおかしく無い状態だ、激戦が予想され
非常に楽しみな決勝となる。
次に、オープンカテゴリーの状況だが
予選では、和歌山の熊野水軍、そして滋賀県の琵琶湖ドラゴンボート
クラブと池の里Lakers!、関西龍舟プンヴバの4チームが2分20秒を
切るタイムを出して好調だ。
しかし、それでも池の里と関ドラ(注:関西龍舟のこと)は、予選で
2位だったのでストレートには準決勝に進めず、敗者復活戦を
経由しなければならない。
ちなみに「関西龍舟」は大会では複数のチームを参戦させることが
多く、その際に、ディズニーの「ライオンキング」のキャラクター名を
チーム名につけて区別をしていることがある。
「シンバ」は主力チームの名称で、他には「ムファサ」や今回の
「プンバァ」をつけた例がある。
また、ライオンキングのキャラクター名をつけない場合もあって、
その場合、オープンなどに出場する男性チームを「男山」
女子カテゴリーに出場するチームを「華組」と呼ぶ事もある。
オープンの敗者復活戦1組だが、ここには女子チームの「河童」が
準決勝進出をかけて出場する。
河童は、女子チームながら男子に混じってオープン3位入賞の
実績もあり、今回は海外遠征チームの調整とのことでどんな戦い方
をするのか注目に値する。
結果だが、まず「池の里Lakers!」は順調に1位勝ち抜け、
「Rスポーツマンクラブ」も頑張って2位に喰いこみ準決勝進出。
大阪の消防団チームである「一寸防士」は3位となり、かろうじて
準決勝に進めることとなった。
注目の「河童」は残念ながら4位で敗退。
しかし、漕ぎ方を見ていてて気が付いた点がある。
これまでの「河童」とはまったく異なる、パドル(櫂)を細かく速く
動かすフォームに変わっていた、これは恐らく海外大会に向けての
対策(フォーム改造)であろう、まだ調整中の段階だったのかも
しれないが、「河童」が決勝で男子チームを相手に奮闘する
シーンが見れずに残念であった。
オープン敗復2組、「関西龍舟プンバァ」は順調に勝ち抜け、
関西空港のチームである「関空飛龍」も2位となり準決勝進出、
「近畿車輛電龍」は、かろうじて3位で、ぎりぎりで準決勝に残れる
こととなった。
「風とぶ」は残念ながらここで敗退。
オープン準決勝、ここでは8チームが5チームに絞られる。
まず準決勝1組、注目の近畿車輛電龍が出場する。
「電龍」は、がんばってここを2位(または好タイムの3位)で
通過しなければ念願の表彰台は無い。
立ち向かうは、強豪の、琵琶ドラ、そして、関西龍舟プンバァだ。
さらに、実力派のRスポーツマンクラブも入っていて、
電龍とっては非常に厳しい正念場だ。
しかし、ここで番狂わせが起こる。
琵琶ドラの1位勝ち抜けは順当としても、近畿車輛電龍が
執念で2位を勝ち取った、これで決勝進出決定である。
関西龍舟プンバァは3位、関ドラとしては非常に珍しく
準決勝でミスを出してしまった。3位の成績はタイム次第では
決勝に残れるが、他力本願となる。
関ドラのミスの原因は見た目ではわからなかった。
その昔、5年ほど前だったか、関ドラがパドリングのタイミングの
ミスで片弦のパドル同士が接触、左右のバランスを一瞬で崩して
大きく蛇行したシーンを見たことがあるが、およそ近年では
決勝に残れない関ドラというのは考えられない。
関ドラがいくら強いチームであると言えど、その大勢力と
戦績を維持していくのは難しい事であろう。
常に新人を補強して育てながら、チームのレベルを一定に
保っていくことに注力しているのだと思う。
事実、今回の大会でもそのように「プンバァ」のチームは
新人を中心としたメンバー編成であったと聞く。
恐らくは日本最強チームの「磯風」がオープンを欠場したという
事から、関ドラは混合カテゴリーの方に重点を置いたのかも
知れない。
しかし、昨年は若干低迷した琵琶湖ドラゴンボートクラブが
今回は思いの他、好調であり、また近畿車輛電龍の悲願の
意気込みを(関西龍舟は大阪ではなく兵庫県のチームであるため)
知らなかったのかもしれない。
それから、午後からは潮流が変化し、極端な向い潮になっていて
各チームは平均10秒程度タイムを落としている状態だ、
そうした厳しい条件ではベテランのクルーのテクニックが必要だ。
さらには、今回の大会で使用した艇が新型の「イタリア艇」で
あった事もマイナスの要因としてはある。
それらの微妙な、心理的、あるいは戦略的や技術的な要素が
いくつか組み合わさって、こうした結果になったのかもしれない。
しかし、なんと言っても関ドラだ、このままで終わってしまう
わけは無いであろう・・
さて、オープン準決勝2組の模様。
スタート直後、和歌山最強の「熊野水軍」が頭1つ抜け出す、
滋賀の強豪「池の里Lakers!」(写真左)が追うが届かない。
結局両者は決勝に進出、大阪の消防団「一寸防士」は残念ながら
準決勝で敗退となった。
問題は3位となった「関空飛龍」(写真右)だ、
先の「関西龍舟プンバァ」といずれかタイムが速かったチームが
決勝進出となる。
関空飛龍のタイム=2分33秒
関西龍舟のタイム=2分28秒
この結果「関西龍舟プンバァ」はかろうじて決勝進出となった。
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さて、いよいよ次は、混合カテゴリーの決勝戦となる。
実力拮抗したTorrid Strom 、関ドラ(主力のシンバチーム)、
および東海龍舟の3チームによる熾烈な優勝争いが予想される。
会場がシンと静まる緊迫した状況の中、アナウンスが響き渡る。
「スタート1分前・・・ アテンション、GO!」
いよいよ始まった・・
今日のレースは500mの長丁場だ、
ドンドンドンと、遠くからドラゴンの太鼓の音が聞こえる、
私は、この勝負はギリギリまでもつれると踏んでいるため、
ゴール地点に近いところで観戦する。
2分後に目の前を1位で通過するのは、果たしてどのチームか?
「ワーッ」「行け~」という歓声とともに、ボートが近づいてきた。
手前、関西龍舟シンバ、奥が Torrid Storm
この写真では見えないが約1艇身遅れて東海龍舟が続く、
他の2チームは大きく出遅れている。
「関ドラとTorrid の一騎打ちだな、Torridやや有利か?」
ドラゴンボートは450m地点を一瞬で通り過ぎる、あと十数秒で
結果が出ることであろう・・
大きな歓声の中、Torridがゴールに先行して入ったように見えたが
本部発表を待つことにしよう。
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興奮もさめやらぬ数分後・・公式結果がアナウンスされた。
「1着、Torrid Storm!」
「ワーッ」という大歓声、Torrid は東京から参戦しているのに
そんなに沢山応援団が居るのか?と思うのだが、実際のところ
もう、こうなったら、敵も味方も無いということか。
ともかく結果が出たことが選手達の心を動かしているのだ。
すぐさまチャンピオン・フラッグ(龍舟旗)が入賞した3艘の
ドラゴンボートに手渡される。
非常に力強い「Torrid Storm」 のウィニングラン。
ちなみに、太鼓はいわゆる「勝利のリズム」を刻んでいる時もある、
このリズムは実のところ、東京のチームはあまりやらず、相生地区を
中心とした伝統のようなので、もしかするとTorrid Stromの一部の
メンバーはドラゴンボート(ペーロン)のメッカである相生地区からも
参加しているのかもしれない、あるいは、チームとしては欠場した
「磯風」の一部のメンバーもTorrid の舟に乗っていたのかもしれない、
まあ、詳しい事情はわからないが、いずれにしてもTorrid Stromが
強かった事は間違い無いという所だ。
こちらは3位に入賞した「東海龍舟」
Torrid とは約6秒の差をつけられてしまったが、それでも
東海龍舟は今年も好調な様子だ。
近年の東海龍舟は、一見しては、派手な活躍は無いのだが、
年間を通じてみると、出場した大会ではほとんど2位3位といった
上位の成績を確実におさめている。
安定した実力を持つ強豪チームに成長したという感じである。
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さて引き続きオープンの決勝だ。
オープンの決勝進出チームは、「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」
「池の里Lakers!」「熊野水軍」「近畿車輛電龍」そして
「関西龍舟プンバァ」の5チームだ。
こちらも実力拮抗の強豪チーム揃い。
これまでの実績からすれば、「近畿車輛電龍」は若干分が悪い、
ただ、何度となく述べているように、近畿車輛電龍は優勝こそ
難しいとしても、、悲願の「表彰台」(3位まで)という目標がある。
和歌山の「熊野水軍」は、過去の「椅子に座ったネコ」という
チーム名であった時には何度も優勝の実績があり、新しい名前に
なっても当然また優勝を狙ってきている。
琵琶ドラと池の里の滋賀県の2チームも優勝を見据えている
ことは間違いない。
関西龍舟は主力の「シンバ」が混合で2位となってしまったので、
オープンでは是非とも優勝したいところであろう、
準決勝でのミスの汚名を挽回する上でも決勝は恐らくメンバーを
調整して必勝の体制で臨んで来るかも知れない。
そんな事を考えていると。
「アテンション GO!」 ドンドンドン・・
さあ、本日最後のレース、オープン決勝が始まった。
スタート直後から「熊野水軍」がリードしている、
やはり今日の「熊野水軍」は強い、恐らくこのまま逃げ切りで
優勝するのは間違い無いところだ。
ただ、他のチームも百戦錬磨の強豪だ、
このままみすみすとやられるとは思えない。
400m地点の様子、全体像の写真でとらえてみよう。
一番右の赤いチームが「熊野水軍」、先頭を走っている。
一番手前の黒い舟は「関西龍舟プンバァ」
最初は出遅れていた様子だが、ものすごい追い上げだ。
2位争いは一番奥の青い「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」とだ。
一番左の4位5位は「池の里Lakers!」と、「近畿車輛電龍」
残念ながら池の里の初優勝も、近畿車輛電龍の初表彰台も
今回は見られそうもない。
レースの興味は、琵琶ドラと関ドラ、どちらが2位となるかに
集約された。
・・そのまま「熊野水軍」がゴール、
約2艇身離れて琵琶ドラと関ドラが白熱の2位争い、
実況アナウンスの絶叫、観客の悲鳴にも似た歓声、
会場の熱気はここにピークを迎えた。
私も思わずゴール地点に向かって走り出す。
「ゴーーール!」と会場に鳴り響く放送。
しかし、アナウンスはされども、本部放送席からでも
2位がどうなったのかはわからない様子だった、
ほぼ同着、私にはそう見えた。
1分、2分・・ なかなか公式発表が出てこない。
どうやらビデオ判定に、もつれこんでいる様子だ。
そうこうしている間に、私も発着の桟橋のところにまで来ていた、
チャンピオン・フラッグを手渡すモーターボートのスタッフも
まだ結果はわかっていない、とりあえずフラッグの色と順位は
関係無い事になっているので、熊野水軍、琵琶ドラ、関ドラの
3チームにフラッグを渡しにモーターボートが走り去っていく。
数分後、モーター(ボート)が帰ってくるころ、やっとビデオ
判定による公式結果が出た様子だ、プリントされた用紙が
放送席に運ばれていく。
「1位、熊野水軍!」
最強の「磯風:が不在の中での優勝。 熊野水軍チームの心境は
やや複雑なのかもしれないが、それでもきっと熊野水軍は
今回の新チーム名での優勝は素直に嬉しいに違いない。
「2位、琵琶湖ドラゴンボートクラブ!」
「おお・・」「ワーッツ」という歓声があがる。
写真は琵琶湖ドラゴンボートクラブ。
「関西プンバァ」は必死の追い上げだったが3位にとどまった。
差は僅か10分の1秒程度だったということだ。
4位は近畿車輛電龍、結果だけ見れば、表彰台にあと一歩という
着順ではあるが、トップとは12秒差、3位とも6秒差であるので
惜しかった、という気持ちも彼らには余り無いかもしれない。
こうして電龍の悲願の表彰台は他の大会に持ち越される事に
なったのだが、この堺泉北港大会は、彼らにとってチャンスとも
言える大会であったので、今回を逃がしたのは大きいかも知れない。
ただまあ、ドラゴンボートの世界は何が起こるかわからない、
また別の大会で、ひょいと電龍の夢がかなってしまうかも知れない。
池の里は残念ながら最下位、まあ、とは言え、決勝進出は果たして
いるので、今年の初戦としては、まずまずの結果かもしれない。
今後各地の大会で、また池の里は上位に食い込んでくるのは
間違い無いし、池の里の悲願のメジャー大会初優勝もどこかで
見られるかも知れない。
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観客の興奮も冷め遣らぬ状態で、続いて表彰式。
このあたり、例によって大会運営がとてもスムーズだ。
スムーズすぎて選手達は勝利の余韻に浸る閑も無いくらいだ(笑)
まあ、でも、ダラダラするよりは、よっぽど良いので、引き続き
スムーズな運営を期待しよう。
関西龍舟は結局、混合2位、オープン3位の結果となった。
両カテゴリー同時制覇という過去の実績もあるだけに、この結果は
彼らにはちょっと不満なのかも知れないが、まあ、とりあえず
初戦だし、今後の大会で勝つチャンスはいくらでもあるだろうし、
おまけに右側の女性選手は新婚さんということだし(おめでとう!)
今回はこれで良かったのかもしれない。
熊野水軍、和歌山田辺市より遠路からの参戦、お疲れ様でした。
ちなみに彼らの一部は消防士ということで、昨年の台風12号の
被害復旧や、この大会の2日後に紀伊半島に上陸した台風4号の
被害からの保全や復旧作業にきっと忙しく働いていたことであろう、
戦士たちの休息の日はあまり無いのかもしれないが、きっと今回の
優勝は彼らの日常生活や仕事での自信にもつながっていくのかも
知れない・・
こちらは Torrid Stormの優勝記念撮影の様子。
7~8年前、銀塩カメラ時代のドラゴン大会の様子と比較して、
ほんと、最近は選手達のデジカメ保有率が増えている、
中にはレース前後にもボート上からコンパクトデジカメで撮影を
していたり、コースのところどころにはビデオカメラやデジカメの
動画撮影でレースの模様を撮影し、たちどころにパソコンで再生
しながらレースの反省や戦略を練っているチームの様子もごく
普通になってきている。
さて、こちらは脱力感あふれた(笑)近畿車輛電龍の様子、
激戦を戦い、あと一歩及ばず、敗れて力尽きてしまったようだ。
表彰式もこちらから遠巻きに見守っていたのだが、幸いにして、
悔しがっていたり、悲しんでいる様子では無い。
まあ、まだまだ他の大会で入賞するチャンスはあるし、
若い外国人が主体のチームであるから、たとえ今回は負けたとしても、
日本での思い出のページを1枚1枚積み上げていって欲しいと思う。
こうして関西の初戦「堺泉北港ドラゴンボート大会」は終了した、
まだまだシーズンは始まったばかり。
今年の「熱い季節」はどんなドラマがあるのだろう・・?
1つ1つの大会がとても楽しみだ。
【DRAGON NEWS】JDBA(日本ドラゴンボート協会)が
ドラゴンガールズを現在募集中(6/29~7/8)