2011年11月、滋賀県の
NPO法人瀬田漕艇倶楽部主催による
「HEAD OF THE SETA」というボートレースイベントが行われた。
瀬田漕艇倶楽部はドラゴンボートでもおなじみの常連チームであるが、
元々、ドラゴンボートに限らずこの滋賀県の瀬田で極めて多種の
ボート競技を運営したり、練習環境を提供している。
2日間行われるこの大会で、様々なボート競技のトップを決めよう
という楽しい趣旨である。ドラゴンボートも勿論出るということで、
撮影に出かけることにした。
大会の場所は瀬田川である、日本一の湖、琵琶湖には大小
数百の河川が流れ込んでいるのだが、流れ出す川は、瀬田川の
ただ一本である。(瀬田川は、下流で宇治川と名前を変え、さらに
他の川と合流して淀川となり大阪湾に注ぐ関西屈指の大河である)
このため、9月に行われた琵琶湖ドラゴンボート大会では、
台風による増水で琵琶湖から瀬田川への流れがかなり急となり、
琵琶湖にある瀬田漕艇場にもその影響が出て大変な状況であった。
ある強豪チームは水流に翻弄され満足いくタイムを出すことができず、
またあるチームは、それまでのコースレコードを30秒も上回るタイム
(追い潮参考)でゴールインするなどの特殊な状態、事態に
みまわれたが、まあ、それらはそれで、自然の力であるから、
人間の意志では、どうすることもできない。
今回の異種ボート競技大会は、参加チームも極めて多数(100を
軽く超える)となるから、漕艇場という限られたエリアではなく、
瀬田川そのもので競われる。
瀬田川を下って、折り返して、川を上って合計7kmの戦いだ。
ただし、ドラゴンボートやナックル艇などの速度が比較的遅い舟に
関しては、半分の距離で折り返し、合計3.5kmで戦う。
撮影場所として選んだのは、冒頭の写真、瀬田の唐橋である。
この場所には、古事として有名な逸話がある。
戦国時代、かの武田信玄が戦備を整え、甲州から大軍を率いて
上洛(京都に向かう事)を目指し進軍する。
途中、浜松の三方ヶ原で強敵の徳川家康軍を軽く破り、武田軍の
勢いは、もう誰にも止められないと思った時、総大将の武田信玄は
病に倒れてしまうのだ・・・
そこで遺命として武田信玄が家臣団に語ったのが
「勢田(今の瀬田)の唐橋に武田の軍旗を立てよ」であったと言う。
この場所に旗を立てる(占領する)ならば、京都はもう目と鼻の先、
つまり武田家が天下統一を達成していた、という事になるのであろう。
信玄はそうして亡くなってしまった、武田軍は体制を立て直すために
甲斐の国へ引き上げざるをえなくなった。
ほどなくして、信玄の最強のライバルだった上杉謙信も病で還らぬ
人となる。
また、信玄亡きあとの武田家の家督を引き継いだ武田勝頼は
勇猛だったが、後に織田信長・徳川家康の連合軍と戦い、
新兵器の鉄砲の集団使用戦術で壊滅的な打撃を受け、
武田家もまた滅亡してしまう。
瀬田の唐橋を前にすると、信玄が生きていてここに武田の旗が
立っていたら、その後の歴史はどんな風に変化したのだろう・・
という想像が頭をよぎる。
(こういう気分を「歴史ロマン」と呼ぶのであろうか?)
ところで、関西のユニークな橋というと、京都府八幡市に「流れ橋」
というものがある。
こちらは時代劇のロケで大変おなじみの橋で、誰もがこの橋を武士や
町人が渡る映像をTVや映画で見たことがあると思う。
けど、流れ橋はその名前の通り、増水で自然に流れ、大きな被害を防ぐ、
という構造なのだが、この流れ橋は、先日関西を襲った台風12号と
15号で綺麗に流されてしまい、今は、また架け直し工事の段階だ。

流れ橋は、何度も何度もこういう事態になるのだが、そのたびに
結構な復旧費用がかかると言う。
流れないしっかりした橋を作った方が安上がりのようにも思える
のだが、まあ、流れ橋の、この景観が失われるのも淋しいので、
そのままでも良いかとも思う。
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さて、レース開始は9時だ、スタート地点の様子は見えないが、
ここ唐橋までは1kmほどであろう、ならばほんの数分で速いボートは
来るかもしれない。

来た! 全長の長いカヌー これは「エイト」だな。
細い舟に8人漕ぎ、おそらくこれが最速のボートだろう、
カヤック(左右両面のパドルを左右交互に廻して漕ぐ)も
なかなか速そうだが、今回はカヤックは2~4人漕ぎなので、
エイトの8馬力(?)には追いつかないかも知れない。
人数が多い方が速いのなら、ドラゴンは20人漕ぎなのでもっと
速くても良さそうなのだが、カヌーとはボートの仕組みが全然異なり、
大型で重いドラゴン艇は、多人数で漕いでも、なかなか速く進ませる
ことはできない。

多くの種類のボートは後ろ向きに進むことになるので、舵手がつく競技も
色々と存在する、舵手がいない場合は、漕ぎ手がたまに後ろを振り返って
様子を見ないと、橋の欄干や他のボートに衝突するなどの危険がある。
目の前を「エイト」が何漕も通過していく、しかしスピードが速い・・・
いつもドラゴンのレースばかり見ているので、その感覚で見ていると、
エイトは、すごいスピードであっというまに通り過ぎてしまうように見える。
けど、ドラゴンボートでも初めて見るならば、その見た目の大きい図体
からは想像しにくいほど速く感じるであろう・・
その最高速度は、時速16kmほどで、これは徒歩の3~4倍の速さ、
つまり、自転車並み、あるいは、マラソンの速度並みなので、
ドラゴンを追っかけながら撮影するのはなかなか困難だ。
でも、目の前を通り過ぎるエイトは、だいぶそれより速い、
「これくらいだろう」と予想していた時速20kmは軽く超えているだろう。
以前、ドラゴンの琵琶湖大会で、エキシビジョンで、カヤックのシングル
(1人乗り)のオリンピック選手と、ドラゴンボートの対決があったのだが、
カヤックはものすごい速さで・・勝負にもならず、ドラゴンの約2倍近くもの
速度が出ていたように見えた、すると小型ボートでの最速クラスならば
時速30km弱というところか・・原付バイクで追わないとついていけない(笑)
速いボートがいくつか通り過ぎると、瀬田川は、もはや各種ボートの
異種競技場と化している。

で、ボート競技の種別の区別は結構複雑で、何がどの種目なのか良く
わからない(汗)
スイープが1本漕ぎで、スカルが2本漕ぎ、さらに左右交互に漕ぐ場合、
人数では、シングル、ペア、クアド(4人)、エイトまたはオクト(8人)、
船体の形状で、カヌーとカヤックの区別、さらに舵手のありなし・・・
こんな風に沢山の競技種目があるので、ボート選手でないと簡単には
覚えきれないであろう。

それでも、次々に異なるボートが来るので、見ている側としては
極めて楽しい。
いったいスタート地点はどうなっているのかな?
まさか全部同時にスタートするわけにはいかないだろうから、
種目毎に時間差でスタートしているのだろうが、途中で抜いたり
抜かれたりでごちゃごちゃしないように、きっと高速のボートの
種目から順次スタートしていくのであろう・・
今回は途中地点の瀬田の唐橋から見ているのだが、次の機会には
スタートやターンの地点も見てみたいと思った。

しかし、見ていると様々なスタイルがあって、本当に興味深い。
立ち漕ぎ(膝をついている)これはなんという種目なんだろうか?
カナディアン・ペア・カヌーということなのかな?
スピードはあまり速くなさそうだが、一見不安定で、バランスの撮り方や
ペアの呼吸が揃っていることが大事なのであろう・・
色々なボートの種類を見ながら楽しんでいると、遠くからドンドンドン・・
という聞きなれた太鼓の音が聞こえてくる。
ようやく来たか! あれはドラゴンボートだろう。

ひときわ目立つ大型の舟に、他のボートと比較すると、あふれんばかりに
20人の漕ぎ手と、鼓手(ドラマー)と舵手(舵取りの)合計22人乗り、
そして遠くからでも聞こえる太鼓の音。 まぎれもなくドラゴンだよね。

ほう、トップは「池の里Lakers!」か。
長年ドラゴンを撮っているので、チーム名は遠目でもだいたいわかる。
近くを通りすぎていくが・・・ しかし遅い・・・(汗)

まあ、それはそう見えてもしかたない、「エイト」が、すいすいと
漕ぐ速度は時速20km以上、ドラゴンは最高速こそ約16kmであるが、
今回は3500mの長丁場だ、しかも川の下りから上りへのターン、
後の体力を残しながらの、この距離となると、平均速度は
恐らく時速12km程度まで落ちてしまう事であろう。
すると3.5kmを漕ぐ時間は、約20分弱程度ということになるだろうか?
「エイト」が恐らく7kmのコースを20分程度で帰ってくるだろうから、
ドラゴンは平均してエイトの半分の速度しか出ていないことになる。
次いでのドラゴンチームは「小寺製作所」だ。

さらに、「龍舟」(どらんちゅ)が続く。
ここまでは、いずれも琵琶湖を拠点とする地元強豪チーム、
実力差はあまり無い。
それと、ちらっと見たところ、トップの「池の里」(今年の琵琶湖ペーロン
大会優勝の強豪チーム)は、クルーの人数が20人よりだいぶ少なそうだ、
人数が少ないドラゴンは勝てた事例が無いので、後半厳しいであろう。

さらに、「GPO」チームとおぼしきドラゴンが通過していく。
おぼしき、というのは、多分全員がGPOメンバーではなく、何人かは
別のチームの参加のように見えたからだ、大阪の選手達が中心で、
GPOやチーム未来、関空飛龍(?)などの合同チームかもしれない。
ドラゴンの一部の選手達は、私が撮影していることに気がついて、
こっちを見ている様子がわかった、選手達にはここで撮るとは伝えて
なかったのだが、なかなか目が良い様子だ。
今日のレンズは、標準ズームと、300mm(換算600mm)の望遠
ズームだ、
この60~300mm望遠ズームは、またしてもジャンク品(見切り品・
難あり品)の掘り出しもので、価格は驚きの2800円。
この他、AFのアポ(高性能)300mm望遠ズームのジャンクも
2980円で同じ店にあったのだが、このレンズは過去2度ほど購入し、
それぞれ人に譲った経緯があるし、ここのところ家がジャンクレンズ
だらけになってきているので(汗)、購入を見送った。
なにせここ数年は、3000円程度までで実用十分なジャンクレンズが
中古屋に多数出回っているので、高額な新品レンズを買うのが
ばかばかしく思えてくるわけだ。(ちなみに大手中古店のネット販売
では3000円以下のレンズはWEBに掲載していない場合が多い)
ジャンクは勿論ほとんどがMFレンズであるが、どうせアダプターで
ミラーレス一眼に装着するので問題は無い。
マイクロフォーサーズ系ボディで換算画角が500~600mm程度と
なれば、ドラゴンなど、水上スポーツ撮影にはちょうど使いやすいわけだ。
過日、70-210/F4等のジャンクMFズームを数本、1000~2000円で
購入したのだが、一部を除き、あまり描写性能が好みではなかったのと、
やはり望遠息が換算420mmでは、水上撮影には足りなかったので、
300mmのジャンクが欲しくなったわけだ。
(ちなみに使わなくなったジャンクレンズは、雨天撮影や旅行などラフな
環境で使いつぶしても良いし、オールドレンズが使えるカメラを持つ
友人がいれば、譲ってもさほど惜しくない)
で、このTOKINA の60~300mm(F4-5.6)を見つけた訳だ。
ほぼ同等のスペックのレンズがTAMRON SP(SPは高性能を意味する)
でもあり、こちらも興味があったのだが、6000円ほどした(それで高いと
思ってしまうところが、すでに価格感覚が変化していて、自分ながら怖い)
こちらの2800円のTOKINAも、なかなか良く写りそうな雰囲気であったので、
今日はそのテストも兼ねている。結果、順光では十分使えそうだ。
(後日になるが、TAMRON SP 60-300mm/F3.8-5.4 も別の店で
2800円で無事GETした)
その望遠のファインダーからは、個々の選手の様子が見える。
遠方から、こちらをチラリと見ているカメラ目線の選手もいるのだが、
いやあ、その余裕はいいけど、ちゃんと漕がないと負けちゃうよ(笑)
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さて、ドラゴンの参加チームはこれだけのようだ、実力と状況から言えば
「池の里Lakers!」が勝ちそうだが、いったい何人少ないのだろうか?
ドラゴンでは、18人で戦力1割減、16人で2割減、14人ならば3割減だ、
16人以下で優勝した状況は過去見たことが無い、全国のマイナーレース
まで含めれば、皆無ではないだろうが、実力の伯仲するチーム同士の
場合ならば、まずそのハンディを覆すことは難しいであろう。
しばらくして、ドンドンドン、という太鼓の音が、また遠くから聞こえてくる。
折り返し地点からドラゴンが帰ってきている、目の前の川を下ってから
およそ8分というところか? 意外に早いと思ったのだが、全行程で
20分以内ならば、まあそんなものだろう。

「池の里」は依然トップであるが、横をスカル(2本パドル漕ぎボート)が
悠々と抜いていく、やっぱドラゴンは遅い・・(汗)
・・というか、池の里チーム、良く見たら、クルーがスカスカではないか!
え~と、1、2、3・・ 14人!
14人で戦っているのか? それでは少なすぎる、これまでよくトップを
維持していたものだ、いや、もしかすると、各艇のスタートが同時でないの
ならば、トップではないかもしれない、まあ、いずれにしても、この人数で
勝てたら奇跡的だ。
案の定、後ろからヒタヒタと忍び寄る赤い軍団の姿が・・

「龍人」(どらんちゅ)チームだ。
地元琵琶湖の強豪チームだが、例年は「万年4位」と自嘲するように、
あと一歩のところで表彰台を逃し続けていた。
しかしながら、今年はいくつかの大会で3位入賞の好成績をおさめ、
大変好調な様子だ、いや、好調というより、壁を1つ乗り越えたように
感じる。(なので、今年から私も龍人チームを「強豪」と紹介している)
このレースでも、前半は、強豪の小寺製作所に続く3位のポジションで
来たのだが、折り返し後は、小寺をかわし、龍人は2番手になっている、
同時スタートかどうかはわからないのだが、そうだったとして、現状2位、
先行の池の里の後半のバテ具合からすると、トップも狙えるかもしれない。
この場所(唐橋)からでは最終結果はわからないのだが、後で最終順位を
調べてみるとしよう。

さて、小寺製作所とGPOが通過して、ドラゴンはこれで終わりだ、
ほんのちょっとだけだったが、今年恐らく最後となるドラゴンの勇姿を
見かけることができた。
後は様々な種類のボートが次々にゴールを目指して進んでいく。

瀬田の唐橋の上から見ていると、なかなかの壮観だ。

この時点で時刻は9時40分くらい、もうほとんどの種類のボートが
ゴール近くまで戻ってきている。
あっと言うまに終わってしまうので、少々物足りなくも感じるのだが、
いたずらにコースの距離を伸ばしても意味が無いので、このあたりが
妥当なところなのであろう。

あと、見学のポイントとしては、多数あるボート種別のそれぞれの
特徴がわかってくると面白いと思う、速さの差も勿論だが、漕ぎ方も
それぞれの種目で全然違うので、それを見比べるのも楽しい。

それから、舵手がペースメーカーとなっているので、その漕がない
メンバーの存在というか、役割も、見ていると興味深い。
ドラゴンボートではペースはドラマーの太鼓によって作られるのだが、
その他のボートでは、あくまで声だ。、
ファイト、ファイトと声をかけつづけながらペースを維持するのが普通だが、
中にはちょっとかわった掛け声をかけたり、漕ぎ手に色々と細かい指示を
出す場合もある。
それから、各チームのカラフルで個性的なユニフォームもまた見所。

ドラゴンでもユニフォームは個々のームで個性があって面白いのだが、
大学のボート部やカヌー部というチームでは、ドラゴンの場合よりも
さらにユニークなユニフォームも多々ある様子だ。
さて、HEAD OF THE SETA の結果であるが、最速のボートは
やはり「エイト」で、最速タイムは7kmを21分16秒。
平均時速は約20kmというところか。
他の種目でもほとんどが20分台で見た目ほどの速度差はないようだ、
今年から新設のナックル競技は最速14分台であったのだが、これは
ドラゴンと同じで、半分の距離の3.5km とのこと。
ドラゴンの順位は、1位が龍人(どらんちゅ)となった、タイムは
15分6秒とのこと。これは4倍したら時速14kmとなるので、
長距離ドラゴンの限界に近い数値だ、なかなか、がんばって漕いだと
思われる。
池の里はやぱり人数が3割減であったのが響いたのか2位、
(後日、聞くところによると、後半で相当バテていたとのこと、
また、実際にはメンバーが14人より、さらに少なかったので
急遽補充したビギナーも乗っていたとのことだ)
そこから僅差の3位で小寺製作所、さらにGPOが続いた。
まあ、正式なドラゴンの大会というわけではないのだが、今年最後の
ドラゴンが見れてよかったと思う。
全種目のトップというのは、どうやら決めない様子だ、まあ、それは、
ここまで性格の違うボートが集まっていて、どれが一番とは決める
ことはできないであろう。
この、HEAD OF THE SETAは毎年行われている様子だ。
今年の大会は第20回とのこと、時間は朝のうちだけで短いが
多種多様のボートが混じってのレースは一見の価値がある。
瀬田の唐橋には、ちょっとぶっきらぼうだが、開催の時にはポスターが
貼られている。

このポスターを見かけたら、ちょっと寄り道して足を止めて、
この大変ユニークなボートレースを見物するのが楽しいと思う。
今のところ見学者の大半は、ボートの関係者の様子であるが、
ボートと無関係な人でも、見ていて十分に楽しむことができると思う。
これは、なかなかオススメのイベント(大会)である。
さすがに11月ともなると水上競技はもう寒い、幸いにこの日は
陸から見ている分には暖かかったのだが、水上ではどうであったの
だろう?
冬場でも来年のシーズンに向け、まだまだ練習は続くと思うのだが、
選手の皆様も、風邪などひかないように・・また元気な姿を来年の
シーズンで見せてもらえれば幸いだ。