【玄人選科】名機対決、2000年代編(1) CANON EOS-7 vs. CONTAX N1
~京セラCONTAX 30年の歴史に敬意を表し~

CANON New F-1 vs. NIKON F3/T の対決に続くシリーズ第二弾、
今回は銀塩名機では比較的新しい EOS-7 と N1 の対決である。
「ん?何故α-7がこの時代の対決に入らないのか?」ってか?
正直α-7を入れてしまうと圧勝するのは見えている、勝負にならないのである、
それほどα-7の銀塩カメラとしての完成度は高い。
そこで、実際にはこの勝負は2位、3位を決定するものであるのだが、いずれも
負けず劣らずの名機であり、いい勝負をすると思う。
例によって、このシリーズの対決においては、単純なスペック比較などのデータは
一切書かない。あくまで実ユーザーの体験と価値観に基づく実践的な比較である。
【対戦機種名】
☆コンタックス N1(2000) (写真左:NP50/1.4装着)
☆キヤノン EOS-7 (2000) (写真右:EF50/1.4装着)
【背景】
この時代、コンタックスはNデジタル、キヤノンはEOS-D30 というデジタル一眼レフが
そろそろ出てくる頃であり、カメラ市場はデジタル時代の幕開けを予感させていた。
両機はそうした時代に出た銀塩では最も完成度が高い機種、その後CANONは
EOS-7s や EOS-Kiss7等を発売しているが、まあ、実質的な最新機種と言って
良いだろう。 また、京セラCONTAXが 2005年4月に銀塩撤退を表明し、30年の歴史
を閉じたのは記憶に新しい。
両者の価格差は大きい、N1は EOS-7の約2倍の価格である。
また、ボディサイズもN1は一回り大きく対照的である。
普通に考えれば格が違う。さて、はたして勝負になるのであろうか・・・?
【撮影機能】
基本性能との比較はなんともいえない。シャッター速度は1/8000秒とN1が
有利ではあるが、たとえばEOS-7はストロボや視線入力を内蔵していて、
トータルは比較のしようが無いからである。
「じゃ、なんでそんな2機種を比較するんだ?」
まあまあ・・・この2機種は市場では殆どまともな評価を受けていないのが
残念であるが、どちらも、かなり良くできた「操作系」を持つ。
うん、例によって「操作性」では無い。操作性から言えばデカいダイヤルが
ついているからEOS-7の勝ち、などと言う素人さんが出てくるかもしれない。
「操作系」とは、撮影するという目的において、いかに合理的な手順で
必要な設定操作を行うことができるか、という事である。
この2機種は操作系が優れる。とは言えやはり同時期のα-7にはかなわない、
しかしながら、EOS-7はキヤノン一眼のナンバーワン機種であり、
またN1は、コンタックス一眼のナンバーワンである事は間違い無い。
結果:引き分け
【ファインダー】
MF機ほどではないにしろ、現代のAFカメラでもMF時におけるピントの
合わせ易さは重要な性能である。
またこの2台は、たとえばキヤノンではUSMレンズを装着すれば、
フルタイムのマニュアルフォーカスが可能であり、あまり知られて無いがN1
も同様にNシステムのAFレンズでは、フルタイムMFが可能となっている。
例によって、視野率や倍率のみならず、スクリーンの質が勝負を決める。
この2機種、やはり中級機であって、横綱級のMF機はもとより、トップクラスの
AF機に比べても、ファインダーはだいぶ見劣りする。
50/1.4レンズを両機につけて厳密な体感比較をする。
ファインダーの見易さはレンズの焦点距離と開放f値によっても大きく異なる。
だから適当なレンズをつけて、こっちの方が良いとか悪いとか言うのはおかしい。
また、絞り込んだ時の合わせ易さでも違う。しかし、そこまで比較していくと
キリが無いので、私の場合には、各カメラには基本的に、実用的な大口径レンズ、
すなわち50/1.4か85/1.4同士を装着して比較する事にしている。
50/1.4を装着した結果では、N1の方がかなり合わせやすかった。
MF時代はキヤノンのたとえばNF-1には、CONTAXのMF一眼が束になっても
かなう相手ではなかった、ファインダーに関しては、NF-1以来キヤノンは
どんどん退行している、いったいどうしたことか・・・
結果:N1が有利
【露出関連】
露出モードは、さすがに現代のAFカメラであり、どちらもフルスペックである。
EOS-7にはキヤノンお得意のDEP(被写界深度優先モード)がついている。
また、EOS-7には前出の記事でも書いたが、子供だましの「絵文字モード」が
ついている。これがついているカメラはNIKON D70を除き、初級者のユーザーを
騙すメーカー思想が見え隠れして好まない。だからそんなカメラは全部捨てて
やろうとも思ったが、さすがにそこまで裕福では無いので(笑)、我慢して
持っている。
もちろんそんなインチキ機能は使うはずもなく、比較の対象外である。
余計な機能に金を払っている分、返金訴訟を起こしてもおかしくない(汗)
N1の露出関連機能は素晴らしい、露出モードは左手のレバーで切り替えるという
CONTAX伝統のUI(ユーザーインターフェース)レバーは、小さいが滅多に切り替え
無いので問題ない。α-9のように右上部の大きなダイヤルがそれに割り当てられる
とはえらい違いである、あれはせっかくのスペースを無駄に使っている。
(α-7においては登録モードの切り替えも兼ねており、まだ許せる)
EOS-7は、背面ダイヤルで露出補正ができる、キヤノン伝統の方式であり、
これは慣れると大変使いやすく好感が持てる、この機種では、おまけに
AF測距点の変更のシーソースイッチをも兼ねており、キヤノン一眼としては
完成の域に近い操作性である。
N1は右上部のツマミで露出補正をする。α-7と同様の180度反転1/2、1/3段
切り替え方式で実に合理的である、だだしN1は背面ダイヤルを持たないので
露出補正はここでする場合と、絞りリングが依然残っているので、絞り
リングやシャッターダイヤルを回した値に対して前面ダイヤルで回す事を
選択する、したがって、α-7と異なるのは、緑色の指標があり(いわゆる
グリーンポジション=他のダイヤルなどに操作系を受け渡す)操作系の選択
を行うことができる点である。これは、α-7の3ダイヤル方式とどちらが
良いとも言えず、MF機の操作になれている人ならば N1が使いやすく、
AF機の操作になれていれば、α-7の方式が使いやすい。
いずれにしても、EOS-7は健闘しているものの、あくまで古い操作系の
改良にすぎず、N1の完成度と自由度が高い露出補正の操作系にはかなわない。
ただし、N1。評価測光モードではファインダー内に露出補正値が表示されず
上面液晶でしか確認できない点、これは設計上の欠陥であると断言できる。
また、N1の露出補正ダイヤルは真ん中にロックボタンがついている。
これは、無い方が良いと思う、何故なら、シャッターボタンに指を置いた
状態のままでグリーンポジションからダイヤル露出補正モードに変更できない
からである(いったん持ち替えなければならない)
(ちなみに、その点はα-7も同じであるが、ロック解除と補正の同時動作は
左手のみでできるので、ホールディングが甘くなるがシャッターボタンから
指を外す必要は無い。)
結果:N1やや有利であるが、細部の詰めについては褒められたものでは無い。
【操作系・操作性】
絞り、シャッター、露出補正に関しては、前後ダイヤルを駆使する操作系を
持つEOS-7は、そこそこまとまっている。また、AFの測距点選択も後ろダイヤル
と併用して、それまでのEOSに比べるとかなり使いやすい。
視線入力に関しては使わないので、そのスイッチがもったいない。
何故視線入力を使わないのか? いちおう初級者向けに解説しておくが、
中級以上の人は、ファインダーで被写体以外のものを確認する事が普通である。
すなわち、背景に写っているもの、そして、背景のボケ量、ボケ味・・・
そっちに目を向けた際、いちいち背景にAFでピントが合ってしまうのは
うっとうしい。 勿論シングルAF(ONE SHOT)では、シャッターを半押し
しなおさないかぎりは背景に合う事は無いが、コンティニュアスAF
(AI SERVO)では、どんどん勝手に色々なところにピントを合わせてしまう。
よって、視線入力は初級者の為のものと断言できる上に、下手をすると
むしろ上達を妨げる弊害である。 キヤノンの最上位機種には視線入力は
ついていない、また、普及機はコストの関係と使用の難しさからついていない。
結局またしても中級者クラスの人を素人あつかいするメーカーの間違った
思想がここに見え隠れしている。絵文字モードと同様、返金訴訟ものである。
EOS-7のその他機能の呼び出しは最悪である、それまでのEOS中級機と同様に
FUNCボタンを何度も押して、ISO、赤目、多重露光やブラケット等を設定する。
滅多に使わないから良いという考えなのかもしれないが、全ての設定を目で
見て確認する事ができないから、ブラケットならまだしも、ストロボの調光補正
等をいじくってしまった場合、下手をすると撮影を続けても変更されている事が
なかなか気がつかない。
操作系・操作性は比較的良くできているEOS-7ではあるが、あくまでキヤノンの
中で、という範囲にとどまるであろう、他社の優秀な操作系を持つ機体と比べた
場合での不利は否めない。
対してN1であるが、ボタン、ダイヤル、スイッチ類がずいぶん少ない。
「だからわかりやすい」などと言うなかれ、ボタンが少なければそれだけ
切り替えて使う必要があったり、あるいはカメラ全体の設定が一目でわからない
という問題をかかえる、だから、ボタン、ダイヤルはむしろ沢山あった方が
使いやすく、わかりやすい。
N1は、シグマSAシリーズとPENTAX MZシリーズに並びシャッターダイヤルを持つ
今時に珍しい貴重なAF一眼レフである。絞りダイヤルと併用した操作系は
必ずしもそれが良いと言うわけでは無いが経験と慣れにより使いやすい。
ちなみに、EOSやα、最近ではニコンやペンタックスまでも絞りリングが無く
なったのは、ある意味ズームレンズの弊害でもある。単焦点と違って開放f値が
焦点距離により変化するズームでは絞りリングの数値の指標はあまり意味を
もたない、だからダイヤルで焦点距離に影響されない絶対的な絞り値を電気的に
レンズ側に伝えてあげるのである。一見矛盾は無いが、たとえば開放のまま
広角から暗い望遠に一気にズーミングすると開放f値が暗くなる、そして
その状態でもう一度広角に戻すと、f値は開放にならず暗いままである。
これで失敗する初級者・中級者は数知れない、だから絞りリングがなくなる事
は一長一短である。さらに言えば、単焦点およびf値固定型ズームならば
こうした問題はおこらない、加えて前出のストロボGNの問題等もあるから、
上級レベル以上では開放f値が変動するズームレンズは好まない。
基本的にズームはf2.8とまでは言わないまでも、せめてf4くらいの固定型
を使う事を中級者に対しては強く勧めておく。
寄り道が長くなった・・
N1ではボタン類がとても小さく、お話にならないという欠点を持つ、
せっかくの対角線5点測距も、操作性は良いが小さく遠く、親指で使いにくい。
MF/AF切り替えボタンは、シームレスAFの発想からは非常に強力な機能で
あるが、AFが速いα上級機シリーズならまだしも、AFが死ぬほど遅いN1で、
そんなボタンがついていてもあまり嬉しくない。
結局コンタックスユーザーならば全部MFでピント合わせをするであろう。
その場合のスカスカのリングはお話にもならず、キヤノンUSMとあわせて
どちらもMF時の使用感は最低レベルである。
さて、操作系の結論であるが・・・
結果:どちらもお話にもならないが、引き分け。
【シャッター】
N1ではグリーンポジションを備えたシャッターダイヤルがついている。
おまけに 1/8000秒でシンクロ1/250秒である。
対してEOS-7は 1/4000秒でシンクロ1/125秒である。
性能的には N1の勝利である。
シャッタータイムラグもN1が短い、ミラー消失時間もN1が短い、
ただしN1はシャッター音および震動が大きい、これはかなりのマイナスポイント
である。またEOS-7は連写の途中で何か考えて(笑)リズムが狂う事もある。
結果:N1がやや有利
【その他感触性能】
EOS-7よりも後続機 EOS-7sで比べてやるべきであろう。
EOS-7sの仕上げは高級感があってなかなか素晴らしい。
EOS-7もN1も、所詮は中級機であり、最高級AF一眼レフやMF機と比べて
特に優秀な感触性能は持たない、言うなら少し高いオモチャのレベルである。
シャッター音やレリーズ感触、巻きあげの機敏さ、ボタン類の操作感、
いずれもあまり褒められたレベルでは無い。
結果:どちらもお話にもならないが、引き分け。
【交換レンズ】
比較をするだけばかばかしい。
十分なレンズ開発ができなかった事がNシステム、およびひいては
京セラコンタックスの寿命そのものを縮める原因となった。
「カメラはレンズで決まる」その事を我々に最初に教えてくれたのは、
カールツアイスを擁するコンタックスではなかったのか?
確かに Nプラナー 85/1.4は優秀である。でもそれ1本では何百本もの
優秀なレンズラインナップを誇るキヤノンに立ち向かえるはずもない。
Nシリーズのレンズは中古もほとんど無い。
N1には645のレンズが使えるとな? 645とてレンズはほとんど無いし
1本でレンズが買える程の高価なアダプターは欲しくもない。
結果:EOS-7の圧勝、あるいはコンタックスNシステムは不戦敗
【ストロボ】
EOS-7にはストロボが内蔵されている。 N1には無い。
結局ストロボ内蔵コンタックス一眼は、N1の下位機種のNXが唯一であった。
EOS-7のストロボも光量的は褒められたものでは無いが、ついているだけ
ましであり、おまけに、これは調光補正の機能をも備えている。これは嬉しい。
結果:EOS-7の圧勝、あるいはN1は不戦敗
【その他特徴】
視線入力を使わなければ EOS-7はオーソドックスな中級AF一眼レフである、
特に新しい機能は持たないが、必要な機能はすべて備えている。
AFも7点であり、数は不満は特に無い。ただしせっかくの後ろダイヤルでの
測距点選択は、AFフレーム選択ボタンを押してからではなく、ダイレクト
に選択できるようにはできなかったのであろうか? そこが惜しまれる。
N1の5点測距は、AFの速度がもっと速ければ実用的だったろうに、
この遅さではいずれにせよAF自体使い物にならず、残念である。
そのかわり、AFのブラケット機能、これは面白い。
被写界深度の1/2ずつ自動的にづらして3枚とる、Nプラナー85/1.4のように
紙のような薄い深度のレンズでファインダーでのピント合わせが不安な時
には有効である、しかし、もっとMFでのピントを合わせやすくするという
方向が正しいような気もするのだが・・
あとはMF/AF切り替えボタン、これはシームレスAFと組みあわせて
特に有効である、しかしこれもAF速度の遅さがネックになり机上の理論。
それから、N1の評価測光に関しては、中央部重点測光との差異を出すという
ユニークな機能を持つが、前述のように露出補正の値が表示されなければ
完全な片手落ち、設計思想は評価測光では露出補正をするな、という事なの
かもしれないが、CONTAXの評価測光は、ARIAについでわずか2機種目。
分割測光では、FAより20年の歴史を持つニコンとは、やはり訳が違った・・・
結果:EOS-7やや有利か、引き分け。
【中古相場】
EOS-7は、後続機7sが出てから随分購入しやすくなり、3万円台中ほどからある。
対してN1はほとんど見ない、おまけにN1単独では新レンズ群が無いために
高価なレンズとセットでの中古購入になるだろう。
CONTAX撤退直後なので、今後の相場はわからないが、まあ、一時期急騰し、
その後暴落すると思われる。
結果:EOS-7の圧勝、あるいはN1は不戦敗
【まとめ】
EOS-7は、長期にわたり銀塩EOSシリーズを育ててきたキヤノンの、まあ、
20世紀の集大成の一眼レフではあると思う、中級機ではあるが、良く練れた
操作系と、全体の性能バランスはさすがである。
とりあえず無難な優等生であり、今銀塩をEOSではじめるならば、
玩具のKISSシリーズよりも、あるいは鈍重なEOS-1シリーズよりもお勧めできる。
対してN1は、非常に良く考えられ、かつMFコンタックス一眼レフの
操作系を継承した銀塩最終モデルである。これでレンズが豊富に使える
ならばN1をお勧めする事もあるが、残念ながら現状ではよほどCONTAXが
好きで、しかもとりあえず Y/Cマウントの一眼やレンズを一通り保有していて
あくまでサブ機あるいは趣味の機体として購入する場合以外では推薦できない。
しかし、そうしたデメリットを理解した上で、たとえばたった1本の
Nプラナー85/1.4を使い倒すためのボディとしたら、それはマニアであれば
持ってて悪くないと思う、というか、むしろその為だけでも使いなさいと勧める、
すでに京セラCONTAXは銀塩をも撤退し、これが最終機種である、その完成度は
まだ完璧では無いものの、やはりCONTAX中では最高の完成度を誇る機体であり、
1本あるいは2本の単焦点レンズしか無くても、上級者レベルであればそれで
十分であろう。特にNプラナー85/1.4 これは、僅か数百本しか生産されなかった
幻のミノルタα用AF85/1.4G(D) Limitedに勝るとも劣らない、全85mm中最強の
ボケ味とシャープネスを誇る高性能レンズである、このレンズの素晴らしさを
知るためにも、あるいはそれを知って、CONTAX道を極めることの締めくくりと
するためにも、N1はマニアなら持ってなくてはならない機体となるだろう。
結果:EOS-7の圧勝、しかしコンタックス党を名乗るならばN1は必須アイテム。