
各年代に雌雄を決した国産銀塩一眼レフ機対決の記事を書いていこうと思う。
1960年代、1970年代、1980年代(1/2)、1990年代(1/2)、2000年代、番外編等を
様々な角度から精密な分析を行う。これは不定期の連載記事としておこう。
特に歴史に残る銀塩名機を入手したいというマニア、専門家、上級者は必読である。
なお、この対決においては、単純なスペック比較などのデータは一切書かない、
そんな事は雑誌やインターネットを見ればいくらでも書いてあり、簡単に検索で
調べたら済む事である。実際に使ってもみないでそんな数値を比較しても
情報としての価値は限りなくゼロに近い。
雑誌やネットの記事はそんな無価値なものが99.999%である。
例によって、この記事は10万分の1の存在である稀有な情報であると思って欲しい。
そして、仮にこうした記事を読んで細かい数値が違う、こんなバージョンもあった等の
重箱の隅をつつくような事をしてもまったくの時間の無駄だ。
そんな事は、欲しくても買う気もその度胸も無いカタログマニアやカメラヲタクだけがする
妄想と想像の世界である。全体を見ずして、何がカメラのことが理解できるだろうか?
そして、実際に買って、使って、自分の体験と自らの価値観でのみ物事を語りたまえ。
【対戦機種名】
☆キヤノン New F-1 (1981) (写真左:アイレベル、アポランター90/3.5SL装着)
☆ニコン F3(1980) (写真右:F3白チタン、Ai85/1.4S装着)
【背景】
いきなり東西の横綱対決である。どちらも報道やプロの世界に長きに渡って
愛用された名機中の名機。発売時価格も近く(どちらも当時約14万円~)性能的にも
まったくの互角であると言って良い。
特にF3は、20世紀の終わり頃まで、F4,F5が出た後になっても長きにわたり
生産されたロングセラーであり、その点キヤノンがEOSのEFマウントになり、
FDとの互換性をなくした事実とは大きく異なるが、実質上は、New F-1も
1990年代半ばくらいまでは、十二分にキヤノン党プロの御用達の機種であった。
【撮影機能】
性能的にはまったくの互角。どちらも、MF機にAE機能を搭載した基本性能を持ち、
露出計を搭載する。一眼レフカメラの一種の完成形と言うことができ、現実に
発売から25年を経た現代においても、両者ともバリバリの現役機として使用する
事が可能である。また、フラッグシップはこれ以上古くなる事も無い。
わずか2年で時代遅れになり使い物にならなくなるデジタル一眼普及機のユーザーは、
よくこの事実を噛みしめてもらいたい。
また両者は重量、サイズともに類似であり、ずっしりくる重さは、現代のスカスカな
AF普及機の約2倍もある。とは言えさほど重たいものでもなく、単焦点一本を付けた状態
では1kgを僅かに切るレベルであり、普及機+大型ズームレンズ
(あるいはダブルズームセット)と大差は無く。むしろレンズ・ヘビーになる事がなく、
シャッター位置と押下角度の軸線が総合重心との軸線に近いため、初級者~中級者
ではむしろ手ぶれが少ない、ただし上級者以上になれば、重心位置を把握する技術
と経験により、ボディやレンズの差で特に手ぶれの要素が変わるわけでも無い。
結果:引き分け
【ファインダー】
MF機はファインダーが命である。この頃のカメラは、その点では、現代の
デジタル一眼レフはもとより、銀塩AF一眼レフとは比較にならない程のピントの
の合わせやすさを誇る。視野率、倍率、スクリーンの質、すべての点でこの頃の
MFカメラのファインダーは完成の域に達していたと言って良い。したがって
この時代のカメラでのファインダーの優劣を決めるのは悪くない話であるが、
前出の記事のように、現代のオモチャカメラのファインダーの良し悪しを語って
も意味が無い。α-9でも、*istDsでもなんでも持ってきなさい、一瞬でそれらは
勝負にもならずに、横綱達のパワーにより葬り去られる事であろう。
そして、この頃のファインダーは目的に合わせて様々なタイプに交換ができる。
例えば、眼鏡をかけながらでも見やすいハイアイポイントや、上からのぞく
ウエストレベル等である。New F-1では特に、通常のアイレベルファインダーを
装着すると、マニュアル露出のみ、AEファインダーを装着すると、絞り優先が
使用できるという、プロ好みの仕様である。アイレベルでもAEが使用できるとの
裏ワザの話があるが、表示が出ないので、現実的には実用価値がまったく無い。
ニコンは、Fヒトケタにおいては、F,F2,F3,F4,F5においては交換式ファインダー
を採用していたがた、F6においてはついに固定式ファインダーになってしまった、
現代の感覚からすると、固定ファインダーで十分であるが、一つの歴史や伝統が
終わった事はさびしい。(キヤノンEOSはとうの昔からファインダー交換は不可)
そして、ファインダーのピントの山のつかみやすさ、これについては、New F-1は
歴代全一眼レフの中で最上級の性能を誇る、玄人専科による厳密体感チェックでは
並みいるMF最高級一眼レフ群の中で、僅差の第一位ランキングとなっている。
そして、F3、残念ながらこの機種のファインダーは駄作である。名機と言われ続け
ながら、20年にもわたってこの事実を我慢しつづけたプロや専門家は寛大である。
結果:New F-1の圧勝
【露出関連】
露出モードは、New F-1は、素の状態ではマニュアル露出、モータードライブを
付けるとシャッター優先が使用できる。ファインダー交換をすれば絞り優先、
両方付ければ、プログラム以外が使用できる。
F3は、絞り優先で使う事が前提である、しかし露出補正の操作系が悪く、
マニュアル露出のみで使うプロも多い、とは言え液晶表示が+/-のみと実用的
レベルではなく、劣っている。絞り優先で露出補正無しで使うしか方法は無い。
しかしながら、F3の中央重点測光は、恐ろしく範囲が狭く、AEロックをして使う
撮影方法を強いられる、実用上は、かなり使いにくいと言えよう。
New F-1は、測光モードを、全面平均、中央部分、スポットと、なんとスクリーン
を交換する事で切り替えることができる仕様であった。これは稀有な仕様であり、
知っている限り唯一の機種である。ただ、フィールド(現場)でスクリーン交換等
現実にはできるわけもなく、単なる仕様上のお遊び、現代のスイッチひとつで切り
替え可能な測光モードにはおよびもつかない原始的なものである。
しかし、現代流に言えば「カスタマイズ」できる仕様は、マニアックな観点からは
大変魅力的でもある。また、New F-1では、追針式アナログメーターを搭載しており、
露出値の差異が瞬時にアナログ的に確認できるので、マニュアル露出モードならば、
露出補正がやりやすい。
結果:New F-1の圧勝
【操作系・操作性】
両者とも絞り優先露出モードでしか撮らないならば、絞りやシャッター速度を
ダイレクトにダイヤルやリングで操作できるので便利である、というかこれが
基本であり、現代のカメラのようにダイヤルをぐりぐり、というのとは考え方が異なる、
特にAF普及機のワンダイヤルのカメラでは両者を同時に動かすのは無理である。
ただし、そこは昔のカメラ、プログラムシフトやハイパー系操作、ワンダイヤル露出補正
などはできる筈もなく、シャッター速度を変えるたびに右手をシャッターボタン
から離さなければならない操作系は、優れているとは言いがたく未成熟ではある。
この時代のカメラには、(私の言うところの)操作系という概念は皆無であり、
ボタンやダイヤルの押しやすさ、回しやすさといった原始的な操作性の比較を
していたにすぎない。
ただし、操作性という観点からしても、F3はちょっとおかしい、小さいボタン
を押しながらの露出補正をはじめ、露出モードやフィルム感度、裏ふた空け
操作という操作は、過剰な安全策そのものであり、設計者の頑固なエゴである。
結果:どちらもお話にもならないが、New F-1やや有利
【シャッター関連】
どちらも1/2000の最高速、現代ではEOS-KissやニコンUシリーズの普及機と同等
の最低レベルのスペックであるが、ISO100以下のフィルムならば、たとえ大口径
レンズを使用したとしても、なんとかまあ実用範囲。
当時の単焦点レンズは大口径のものが多く、本来なら1/4000秒は最低欲しい
ところであるが、まあ、こればかりはいかんともしかたが無い。
シャッターの精度、耐久性、シャッター音、いずれも両者問題無し。
ただし、New F-1は、シンクロ速度1/90秒以下は、電子シャッターで、それより
高速なシャッターは機械式と言うハイブリッド(厳密にはこの用語は FM3aにのみ
あてはまり、ここで使うのは正しくは無いが・・)方式なので、電池切れや電子回路故障に
対する緊急対応性が高い。対してF3の機械式緊急シャッターは 1/80秒のみ単速なので、
電池切れ等の緊急時には、実質的には使い物にはならない。
また、シャッター(レリーズ)タイムラグは互角である。現代のデジカメはもとより、
中級程度のAF一眼レフに比べても、感覚的にも絶対数値的にも十分に速い。
結果:New F-1が僅かに有利
【巻き上げ・感触性能】
巻き上げ感触は、F3は一眼レフの中でも最高である、滑らかな巻き上げと
一定のトルク感、これに勝てる機種は存在しない。
シャッター音、これもどちらも快適な音質でマニュアル最高機種を実感できる、
ただし、New F-1の方がくぐもった音色であり、さらにミラーの動きの余韻の
震動がほんの僅かに大きい、その点はF3の方が少し良い。
また、ボディの質感、これは好みがあるのだが、F3最高峰の白チタンをもって
きてもNew F-1の仕上げ感の方が高級感がある、F3の仕上げは他の一眼レフでも
体感する事ができるが、New F-1の仕上げ感触は唯一である。
重量感や重量バランスはほぼ互角。
結果:巻き上げはF3の圧勝、トータルではF3やや有利か両者互角
【交換レンズ】
一口に交換レンズと言っても多岐に渡り、おまけに同一焦点距離においても、
このころのMFレンズは開放F値、ひいては描写特性の違いにより何本も
ラインナップされていた。 さらに発売期間が長いため、バージョン違いが
多く存在し、ますますレンズという大きなカテゴリーでの比較が難しい。
しかしながら、多くのレンズを使った経験から、一般的な答えを言うのであれば、
①広角、標準、大口径、超望遠に関してはキヤノンの性能が有利。
②超広角、中望遠、望遠、マクロに関してはニコンの性能が有利。
であると言えよう。
なお、中古の相場的観点で言えば、キヤノンFDがニコンAiよりも安価である。
これは、現在でもMFレンズを生産し、さらに、カメラマウントに歴史的互換性が
あるニコンのMFレンズは中古でも(需要が多く)高価であるからだ。
しかし、ニコンのレンズは、設計ポリシーが解像度優先であり、カラー再現性や
交換レンズ間のカラーバランス、ボケ味と言った部分への配慮が少ない、
よって、現代における一般的撮影であれば、キヤノンMF(FD)レンズが
汎用的に使いやすく、描写性能の上でもやや優れていると思われる。
結果:画質と入手性ではNew F-1やや有利、互換性ではニコンの圧勝
【ストロボ】
どちらの機種もストロボは内蔵していない、もちろん外付けストロボを
巨大なものから小型なものまで利用する事はできる、しかしながら、
ストロボの露出計算は現代のようにカメラが計算するTTL測光ではなくて、
あくまでガイドナンバーと距離・絞りの関係による手動(マニュアル)計算。
おまけに、ストロボ同調(シンクロ)速度は、New F-1が1/90秒、F3が1/80秒と
非常に遅く、当時のストロボ一発報道用ならまだしも、現代の様々なストロボ
技法においては、使える余地も無い。
これらの機種の専用ストロボを購入する必要もなく、ストロボ無しが基本、それか、
せいぜい汎用のマニュアル小型ストロボで使うべきである。
これらの専用ストロボを購入する人達は、主にカメラを購入しても使うことが無い
「コレクター」達や、売買による利益を追求する「投資家」達である、
少なくとも、マニアや専門家の世界では無い。もしカメラをそんな目的の道具として
考えている人達がいるならば、まさしく嘆かわしいかぎりである。
それと、F3はホットシューが無いのでアダプターが必要、これ自体は安価ではあるが、
なんと撒き戻しクランクの上に装着するので、フィルム交換のたびにストロボを外す
必要がある、これは実用的とは程遠い。(ガンカプラーAS-7もあるが、やはり不便)
結果:どちらも実用価値無し
【その他特徴】
・レンズ互換性については、前述のようにF3の圧勝。
・レンズマウントのアダプターについては、両者ともベース機にはなりがたい。
・電池に関しては、百円SHOPで買えるLR44型のF3の方が、高価な4LR44(4SR44)型を
使うNew F-1よりも有利だと思う。
・雨天や悪天候への耐久性はほぼ互角、対衝撃性もほぼ互角であろう。
・ファインダースクリーンや、視度補正レンズの現代における入手性、あるいは
さまざまな、オプション・アクセサリーパーツにおいても、そのへんの供給が
しっかりしているニコンF3の方が有利である。
・モードラはNew F-1はシャッター優先が使えるようになるので、あっても良いが、
F3に関しては、例の極上の巻上げ感触を得られなくなるので、まあ使わない方が良い。
・また、修理も両者とも可であるが、生産終了の時期が遅いF3がやや有利。
結果:F3やや有利
【中古相場】
どちらもボディ単体で5万円前後から入手できる、しかしながら、プロが酷使した
程度の低いボディから、ハイアマチュアが大事に使っていた、あるいは保管(汗)
していた程度の良いボディまで幅があり、良い個体は10万円程度と高価である。
また、様々な仕様バリエーションも存在する。New F-1は、オリンピック記念の
限定モデルが数機種、これらは中には数十万円の値段がつくものも。
F3は、ボディ自身、F3アイレベル、F3HP、F3/T、F3白チタン、F3P,F3Limited、
あるいは報道用の特殊はF3Hなどと、いくつものバージョンが存在する、
レアなものほど高価である、例えば冒頭写真のF3白チタンの相場は15万円~23万円
にもおよぶ。
だが、一般にガンガン実用するという目的での購入ならば、両機ともに5~6万円
の程度のもので十分である。
もし、発売2年を過ぎて半分ゴミと化した最低レベルのデジタル一眼レフの中古を
買う気があるのならば、これら最上級の名機達を、同じ価格で購入してみるのも
非常に意味がある。もっとも読者にその度胸があれば・・・ということであるが、
恐らく初級者はたとえお金があっても、こうした名機中の名機を購入する勇気を
持つことができないであろう。それはそれで良い、お金の使い方を良く知らないと
言えばそれまでであるし、もとより、何も知らない初級者がこうした歴史に
残る名機を購入する事自体おこがましい、もっと腕を磨いてから買うべし。
結果:引き分け
【まとめ】
New F-1善戦である。さすがにニコンFヒトケタをライバル視して徹底的に研究し
それにぶつけてきた機種である、この勝負だけに関しては、キヤノンに軍配が
あがると言っても過言では無い、しかしそれも僅差の判定勝ちである。
ただし、その後のAF一眼レフ対決においてはどうだろうか・・・?
あるいはこの年代以外の比較では・・・?
いずれ記事で書くが、もしかしたらニコンでもキャノンでも無いダークホース
のメーカーが完全勝利を治めるかもしれない。
また、その後のデジタル対決ではどうだろうか?オモチャの普及デジタル一眼
はいくつか持ってはいるが記事にする興味はわかない。そんな比較をしたところ
でどうせすぐにゴミになる。そんな記事を書いて、それが後に残るだけ恥ずかしい。
今のところ両社のフラッグシップの代表機を複数入手し、ボロボロになるまで
酷使してみるまでは記事にする気は無いが、今からそれは興味深いものではある。