前編、
中編より続く、
波乱の第6回関空ドラゴンボート大会の模様・・
さて、強風と荒波により午前中の混合予選では強豪チーム
が次々に敗退、またダークホースや紅一点女子チームの
活躍、そして強豪達の敗者復活からの必死の追い上げで
波乱の本大会も終盤、準決勝あたりからは予想通りの
展開となってきた。
だが、本当の波乱はこの後、最後の最後に待ち受けていた
のであった・・
結局、混合の決勝戦に残ったのは、まず「関西龍舟」の2チーム、
今年の7月の天神大会でも同様に関西龍舟は2チームを決勝に
残したわけだから、最近の好調さがうかがえる。
そして冒頭の写真のHANDARS、昨年本大会準優勝の雪辱なるか?
さらに、予選でHANDARSに1/100秒差で勝った「もっこりドラゴン
ボート部」 こちらもここのところ好調だ。
さらに昨年の和歌山大会優勝の「吹田龍舟倶楽部」も残っている。
で、噂の「森本愛美」・・何故かこのチーム名を聞くたびに
おかしさが込み上げてくるのだが、実力はどうやらホンモノだ、
この混合カテゴリーの激戦区を勝ち抜いて決勝に進めたのは
立派なもので、その証拠に昨年の覇者「琵琶ドラ」、ベテランの
「未来」「浪わ」、四国の強豪「府中湖龍会」などの著名な
チームが準決勝で破れ去っている。
そして混合決勝・・「関西龍舟シンバ」が、頭1つ抜け出して
トップでゴールインしたのだが、その後に続く5チームは
完全な「ダンゴ」状態で、何処が勝ったのか、見ている観客
や関係者はさっぱりわからない、という大激戦となった。
1秒半の差に5チームがひしめきあう、という混戦の中、
写真判定で2位となったのは「関西龍舟バーバリアンズ」
なんと同一チーム、同一カテゴリーでのワンツーフィニッシュ
という快挙、かつ非常に珍しい結果となった。
ウィニングランを2チームでこなす姿が水面に映える、
これからしばらくは、関西龍舟の黄金時代が続くのであろうか?
いや、激戦区の混合カテゴリーであるから、またいつなんどき、
新たな刺客となるチームが現れてもおかしくない。
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さて、レースは、あとオープンの決勝1つを残すのみ。
だが、実はオープンの準決勝でもドラマが繰り広げられていた。
オープンの準決勝は、6艇x2レースで行われ、各々の上位3チーム
が決勝に進出できる。
しかし、その第一試合・・ 男子強豪、磯風、NEKOO、琵琶ドラと、
女子チーム「スーパードルフィン」が当たってしまうという運命の
いたずら、このまま決勝戦と言ってもおかしくない組み合わせなのに
4強のどれか1チームは敗退してしまう。
観客は皆「判官びいき」でスーパードルフィンの味方、
やりにくいのは、今回のメンバーではほぼ同等の実力である
琵琶ドラ。 前述のように本来の琵琶ドラであれば、もう数秒ほど
タイムを縮める実力を持つはずなのだが、今回は、磯風や
NEKOOといった強豪が出るオープンのカテゴリーのチームには
新人を多く配置しての参戦。
本命は混合カテゴリーのチームで、大会2連覇を狙ったのだが、
これも前述のように、大波乱の混合カテゴリーで、琵琶ドラ主力
チームはまさかの準決勝敗退。 タイム的には十分よかった
(1分11秒)のに王者「関西龍舟」と、伏兵「森本愛美」に
かわされるという不運だった。
目前で主力チームが敗れるのを見た琵琶ドラのオープンチーム、
これはもうスーパードルフィンがどうのこうの、とか、かまっては
いられなくなった、磯風やNEKOO、さらにもう1つの強豪「Yo-痛」
を脅かして、できるだけ上位に入り入賞しないと・・という強豪
チームのメンツがある。
準決勝では、兄貴分の磯風がドルフィンの隣のレーン、
匠「ん? これはドルフィンにとってはありがたいのでは?」
すなわち・・磯風はこの準決勝では別に1位になる必要は無い、
妹分チームをひっぱるように、わずかにペースを落としてスタート
し、ドルフィンが波に乗ってきたら、ラストでスパートをかけて、
琵琶ドラかNEKKOのいずれかのチームをかわせばドルフィンも
引っ張られて3位までの決勝に進出できる。という筋書きが考えられる。
「アテンション・・ GO!」
さて、オープン準決勝がスタートした。
磯風猛ダッシュ! みるみる他のチームを突き放す。
・・「ガクッ」 これではまずいんだよなあ(汗)
まあ、「どんな時でも手を抜かない」といつも言っている「磯風」
であるから、そうだろうと思ったけど・・
あまり差がついてしまうと、ペースメーカーにもならないし、
「どうせ追いつかないや」とモチベーションも低下してしまう、
おまけに、4レーンの磯風のボートの航跡の波を受け、3レーンの
ドルフィンはペースを崩している。
匠「先に行かれてしまうと、この問題もあるんだよね・・」
2レーンの「椅子に座ったNEKOO」も磯風を猛追、女子ばかりで
軽いドルフィンのボートは、反対側からもNEKOOのボートの航跡
の水流も受け、さらに翻弄される。
磯風から約10秒、NEKOOからも約5秒遅れて、3位の決勝
進出をかけて、琵琶ドラとドルフィンの一騎打ちとなった。
しかし・・
必死の追撃で0.5秒差までは詰めたものの、ドルフィンは1歩
およばず琵琶ドラに敗れ去る、この瞬間、女子チームで
オープンの部での入賞の伝説は幻と消えた。
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さあ、そんないきさつがあってのオープン決勝線、本日の最終
レースだ。 参加チームは、磯風、NEKOO、琵琶ドラ、
そして準決勝Bブロックを勝ち上がってきた「Yo-痛」、さらに
ベテランで表彰台経験もある「Rスポーツマンクラブ」最後は
地元ホームグラウンドの「関空飛龍」だ、関空飛龍も先日の
和歌山大会で初の表彰台(3位)、続けて地元でも錦を飾りたい
との事だ。
6チームがスタート地点に向かう、午前中は波風の影響で
試合進行が遅くなった、その遅れはラストまで回復できず、
予定時刻をオーバーして陽も暮れかかっている。
ところが、ここで、なにやら天気が急にあやしくなってきた。
風が非常に強い・・
これはまた午前中と同じか? でも、もうあと1レースだけだし
なんとか最後まで持って欲しいものだ。
あ・・しかし、今決勝に出た6チームは、ボートにはフルメンバー
の22人が乗っている、あまり波風が強くなると危険では?(汗)
決勝ゴールの撮影に備え、乗艇位置の浮き桟橋にまで降りていく、
波が少し出てきたので、決勝がなかなかスタートできない、
3分・・4分、ずっと選手達は約300m先のスタート位置で待機だ、
2レーンのRスポーツマンクラブの艇が、波にあおられて体勢を
崩す、一度大きくバックして方向を整えて再度スタート位置に戻る。
さて、ちょっと時間かかりそうなので、浮き桟橋にいる乗艇
スタッフの皆さんの記念撮影でもしようか・・ パチリ。
その時、本部放送席から各艇へ指示が出る、
本「パドル(オール)を左右に張り出し、ステイブル(安定)の姿勢
を保ってください、繰り返します、波に注意してください」
このようなアナウンスがあるのは、かなり稀な事で、スタート地点
あたりは、相当波が強いのだろう・・そう思っているうちに、
このゴール地点の浮き桟橋も、大きな波にあおられ、激しく上下する
匠「ひょえ~、こりゃあ危ないなあ、それにこれだけ揺れたら
写真も撮りづらいし、どうしよう、退避しようかなあ?」
・・と、そこにまた、グワーンと大波が来て大きく揺れる。
陸上から様子を見守っていた審判スタッフが拡声器を持ち
審「上手(スタートに近い桟橋)にいる乗艇スタッフは陸上に
退避しなさい」と指示が出る、この指示も非常に稀なことだ。
ライフジャケットをつけたスタッフまで退避という事は、私も
早急に避難しないと・・海に落ちたら、カメラが全滅どころか
遭難してしまいかねない・・(汗)
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さらに数分、スタート位置で待機していた決勝進出6チームも
ぼちぼち限界だ、体勢を保つとか言う以前に、恐らくは波を
かぶりボートの中に浸水している事であろう、これ以上
待たせても危険が増えるばかりだ・・
こんな風な特殊ケースの場合、ドラゴンボート本部の判断は
いつもかなり適切だ。他のスポーツイベントを良く見ている
知人のカメラマンがドラゴン大会を初めて見に来て、
「運営がスムーズで慣れているなあ」と感心していた事があった。
確かに何事も起こらない大会も多いが、何かのトラブルや
ハプニングが起こった場合でも、冷静かつ適切に対処して
いるのは、何度か見て、経験してきているので、まさにそう思う。
本部からアナウンスが入る
本「さて、本日最後のレースです」
(お・・決行するのか・・ そうそう、これ以上待ってもリスクが
増えるだけだからね・・)
本「スタート1分前・・ オールクルー、アテンション、GO!」
なんだか慌しいスタートとなったが、ともかく早く終らせないと
本当に危ない。
ドンドンドン・・ ドラゴンの太鼓の音が近づいてくる。
磯風とNEKOOが他のチームを少し引き離してきたが、なんだか様子が
おかしい、磯風はペースダウンしているのか? それとも・・・?
お、いよいよ望遠レンズの射程圏内に入ったな、カシャ。
・・うわっ(汗)これはひどい。喫水がギリギリまで下がっているよ、
だいぶ浸水しているんじゃあないのか? これはヤバイよ。
それでもここまできたらレースは何がなんでも続行、
沈まないうちにゴールしないとならない。
磯風とNEKOO、ほぼ同時にゴールイン、でもこの際どっちが
勝ってももういいんじゃあないか? ウィニングランも中止して、
早く桟橋に戻さないと、まずいよ。
ベテランの決勝審判員から、桟橋近くに居た全スタッフに
大声で指示が飛ぶ。
審「磯風がチン(=沈没)するぞ、早く呼び寄せて、それと
万が一の為ロープを用意しろ、モーター(ボート)は周辺で待機、
スタッフは海に落ちないように気をつけて、スリッパは全部脱ぐ、
選手のスリッパや私物は全て桟橋から陸に上げて・・」
全部適切な指示だ、後は6チームが無事に戻ってくれば良い。
「Yo-痛」と「Rスポーツマン」が無事帰還、しかしその様子を見て、
上(流)側のサイドにボートを着けるのは波の影響が大きいので、
「凹」の字型になっている桟橋中央にボートを入れろと指示が飛ぶ、
しかし、風により強い水流と波が下流(右)の方に向かって流れて
いるので、ボートも適切な角度で斜めに入ってきて接岸しないと
ならない。
よく川の濁流などに巻き込まれた場合での救出では、岸と直角に
泳がず、斜めに進むとちょうど良い、と言われているが、実際には
どれくらいの角度で進むかの判断がかなり難しい。
「琵琶ドラ」が戻ってきた、強豪チームだが、今日は新人さんも
多数入っていると聞く、大丈夫か? 斜めに進んで・・
あ、危ない・・ ああ・・ う~ん・・
色々なところにぶつかりそうになり、ハラハラしたのだが、
その間にかなりの量が浸水してしまった、いちおう接岸できたが
もうダメだ(汗)、ズブズブとボートが沈みだしている。
「早くボートから離れて」 スタッフから指示が飛ぶ。
あ~逆サイドに倒れてしまったよ、2つのボートの隙間に挟まれる
とヤバイよ・・マジで大丈夫か?
誰かが助けに行ってあげるのかと思いきや、この状態だと
さすがに何もしないで自力脱出するのを待って救ったほうが
よさそうだ、ボートはいずれ転覆するがしかたない、後で
ゆっくり直せば良い。
「ボートから離れながら泳いで上がってきて」 スタッフの声。
ロープが準備してあるので必要なら投げる、でも大丈夫そうだ。
審「スリッパは陸に上げてあるので、そのまま上がってきて、
陸で集合してすぐに人員点呼!」
行方不明者など出たら一大事だ、だが幸いにして琵琶ドラは
大事には至らず。
だが、まだ3チーム残っている、大丈夫か?
NEKOOが無事帰還、あとは、磯風と関空飛龍、ん? 磯風は
どこにいる、まさか沖合いで沈没していないだろうなあ?(汗)
王者「磯風」が沈没してしまったらちょっとまずい・・
と、帰還直前の関空飛龍のボートを見たら、残念ながらもうダメだ、
しかし、関空飛龍のメンバー、何故か笑いながら沈んで行く・・
もしかして地元チームがこの状況で照れくさいのだろうか?
見守るスタッフも関空関係者が多いのかもしれない。
いやあ、まあ、そんな事よりも安全を優先させなくては・・
関空飛龍のメンバー、水没してもボートを接岸させようと必死の
努力、まあ、そういえばこのボートは関空所有だった(笑)
でも、やっぱり、それよりも安全を優先させなくては。
「もういいから早く上がって・・ で、すぐに点呼を!」
「おい、ロープだ、ロープを投げろ!」
「ボートの間に挟まれるな! スリッパは陸に上げてあるぞ」
スタッフからも次々に慌しく指示が飛ぶ。
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「関空飛龍」のメンバーもなんとか無事全員生還、
あとは「磯風漕友会」だけか・・
磯風、一番浸水が酷いはずなのに、他の全員が上がるまで
沖合いで待ち続けていた・・ さすが王者の責任感か?
でも、さすがの磯風のパドルテクニックを持ってしても、
もうボートは限界まで来ている様子だ・・・
後に行われた琵琶湖大会で、この時に乗っていた磯風の
メンバーの方に聞く・・
磯「いやあ、あの時は大変でした、なんせ、深さ20cmくらい
水が溜まってましたからねえ・・」
しかし、ある意味、この決勝に妹分のスーパードルフィンが
出ていなくてよかった、いくら強い女性とは言え、かわいい
女の子達が海中に放り出されるシーンは見たくない。
磯風、あとはちゃんと無事戻って来いよ。
「4番磯風、斜めに内側に入れて!」スタッフから指示が出る。
いやあ、この磯風の操艇は見事なものだった。
水流を計算し、ピタリと接岸する。 揺れるボートに翻弄され
ながらも、なだめるように、左右のバランスをまるでバイクで
コーナーを曲がる時のように体を傾けて取っていく。
さすが王者の貫禄だなあ。
あとは沈没しないうちに、素早く、しかし全員が一度に集中して
バランスを崩さないようにと、バラバラと順次降りていく。
全チーム無事帰還・・ いやあ、本当によかった、よかった。
遅れと決勝戦での大波乱で、1時間以上予定から遅れての
夕暮れの閉会式(表彰式)
「優勝、磯風漕友会!」
いやあ、もう勝ち負けはどうでもいいですよ、皆さんよくやりました、
そして怪我人が出なかったのも不幸中の幸い。
準優勝のNEKOOの選手の一人が、私に言う
ネ「匠さん、今回は磯風と僅かにコンマ2秒差でしたよ、いよいよ
背中が見えてきました」
匠「ええ・・そうですね・・ でも、磯風さんだいぶ浸水して
たからなあ・・(汗) まあ、また次の大会で公平な条件で勝負!」
大波乱の関空大会であった。
例年のような「美女特集」の記事の材料を集める暇もないくらい、
レース展開そのものが面白く、ハプニングも多々あって、結果的には
後日の笑い話になるのかもしれないが、それでもなんだかドラゴンを
堪能した1日であったし、かつとっても疲れた1日でもあった(汗)
ドラゴンボート協会に写真を提出し帰路につく、すでに陽はどっぷり
と暮れて、あれほどの強風もおさまり、風が涼しくさえ思える。
帰宅後、写真を整理し、とりあえず兵庫教育大学の後藤教授にも
「反省会用に」と言われていた決勝の沈没シーンの顛末の写真を送付、
ついでに森本愛美さんのお見合い(?笑)写真も送っておく。
気が付かないうちに酷く日焼けして、その夜はピリピリと火照った
肌が痛く、なかなか寝付けなかった・・ いや日焼けのせいだけでは
なく、今日の大会の様々なシーンが頭の中によぎっていた・・
ほんと、ドラゴンは面白いなあ・・ ムニャムニャ・・ zzzz..