国内最大級のドラゴンボート天神大会。(大阪・天満橋)
正式名称「日本国際ドラゴンボート選手権大会」の熱戦の模様も
もう最終回だ(
前編、
中編より続く)
「お、陸(くが)ペーロンが出るな。」
陸ペーロンは、ドラゴンボートのメッカ、兵庫県の相生地区から
来ている超強豪である、数年前まではこの最大の大会である
「天神」でも常勝チームであった。 ただ、最近は同じ相生の
「磯風漕友会」が続けて覇者となっていて、このあたりで
陸(くが)も盛り返しておきたいところであろう。
これは決勝戦の模様、手前よりサーフベイザース、陸ペーロン
そして磯風漕友会、いずれもここ天神大会での優勝経験を持つ
横綱級チームである、さすがに大迫力であり、かつ高いレベル
での記録が期待できる。(優勝チームには賞品、賞金の他、
国際大会への出場権が与えられる)
しかし、陸ペーロン、予選ではちょっともたついてしまった。
それというのも、予選でいきなり決勝レベルの強豪チームである
九州の「不知火海龍」と、カヌー選抜「ぼらC.C」と当たって
しまった。 事実上の決勝戦ではなかろうか?という見ごたえの
あるハイレベルな戦いの中、陸(くが)は僅差の3位に甘んじて
しまい、敗者復活のレースから盛り返しを計る・・
「陸さん、大丈夫かなあ・・?」
といった他チーム選手の表情。
陸ペーロンは、ストイックな感じのチームの雰囲気であり、
まあ、ドラゴンボート競技に対して極めて真摯(しんし)に
取り組んでいるように見受けられる。
予選での敗退後、まるで修行僧が坐禅を組むように精神統一・・
陸ペーロンはその後、順当に敗者復活と準決勝を勝ち抜け、
決勝に進出したが、今年は残念ながら表彰台を逃してしまった。
対して、こちらは九州より参加の「不知火海龍」
赤銅色に日焼けした、いかにも海の男達という感じである。
昨年、大阪のこの大会に初めて遠征して来たとき、その周囲に
与える独特の威圧感は、常連チーム達は皆脅威に思ったそうだ、
カヌーのハイレベルな選手も混じっている様子で、ドラゴンの
世界でも覇者を目指す。
しかし、昨年、まさかのコースアウト失格という事態に涙を飲む、
相当気合が入っていただけに、失意の中帰路に付く彼等を
見送るのは、撮っているこちらもシャッターを切るのをためらう
点があった。
今年も事前に若干話しを聞いている、
懸念された事項は「海と川の相違」なのだが、それはどうやら
違っているみたいだった。
不「あはは・・ 海も川も一緒ですよ。 それよりボートですね」
匠「え?ボートですか・・」
不「九州のボートとだいぶ違う作りでして・・ 大阪で試乗無しで
いきなり乗るので、ちょっと勝手が違うというか・・」
匠「なるほど・・ でも、まあ、実は関西のドラゴンボートも会場
によってかなり作りが違ってまして、一番重いのと軽いのでは
2倍近く差があるみたいですよ。
喫水が違うので、やりずらいかもしれませんが、まあ、どの
チームも条件は似たり寄ったりなので、不知火さんほどの実力
でしたら、そのあたりはなんとでもなるのでは?」
不「まあ、そうですね。 今年は磯風をかわしますよ・・」
匠「ふふ・・決勝では良いレースを期待しています」
話を聞いたのは予選の段階であったが、その不知火、今年は実力を
いかんなく発揮し、無事オープンの部で決勝進出を果たした。
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そうはさせじと、現在実力ナンバーワンの声が高い「磯風漕友会」
しかし、磯風というと、何故か、このアングルの写真となってしまう(笑)
「ふふふ・・どこからでもかかってこい」というような不敵な雰囲気が
各クルー(選手)から漂ってくる。
勿論チームからは事前に入念に話しを聞いている。
匠「まあ、ぼちぼち磯風さん、殿堂入りしたらどうですか?」
(これが入念なインタビューか? ・・笑)
磯「アハハ・・ そういうわけにもいきませんよ」
匠「だって、さっきの予選、53秒なんてインチキですよ(笑)
他の強いチームだって、1分を切れるか切れないか、
でヒイヒイ言っているのに・・」
磯「予選とは言っても、手は抜きませんよ」
(う~ん、強すぎるというのも面白みに欠けるよなあ・・じゃあ・・)
匠「ところで、ほら、アレはどうなってますか?
女子の強豪チーム、同じ相生の「スーパードルフィン」との
「恋のバドリング」(笑)」
磯「うっ・・(そう来たか) 匠さん、知ってるんですか?」
匠「見てればわかりますよ、去年の関空大会のときも、
木陰での密会シーン、GETしましたよ・・(笑)
まあ、ドラゴンボート協会には提出しませんでしたけど・・」
磯「うう・・(汗) まあ(チームの)外では色々あるみたいですね、
あ、そこの彼なんかも・・」
(へ・・オレの話しですか?とその男子選手)
匠「やはりね、まあ、ドルフィンさんからも話しは聞いておきましょう」
磯「(ヤバイので話をそらす) ・・で、匠さん、オレ達は、
決勝ではまたやりますよ、見ててください、今回はとんでもない
事が起きますよ」
匠「ん? まさか空でも飛ぼうと言うのでは・・?(笑)」
磯「ともかく見ててくださいよ! メンバーも入れ替えて万全で臨みます」
まあ、つまり、他のどのチームも追いつかない記録を出してくる
ということなのであろう、すると50秒を切るあたりか・・
けど、海外の試合もいくつか経験している磯風である、海外であれば
250mを50秒を切るタイムなどはごく当たり前なのであろう、
(たとえば世界大会で200mの優勝タイムは40秒台前半となっている)
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さて、その足で、恋のお相手の「スーパードルフィン」へ・・
と、ドラゴン芸能レポーターでは無いから(笑)、さすがにそういう
わけにもいかず、ちょうどドルフィンのライバル女子チーム「河童」の
前を通りかかったので様子を見ておこう。
「お、ちょうど集っているな・・」
そこにチーム河童の監督登場、
「匠さん、いつも撮影ご苦労様。 おい皆、写真撮ってもらえよ~」
河「わ~、なにかやりましょうか?」
匠「え~と、いつもの河童円陣がいいな・・河童、キェ~!ってやつ」
河童円陣は、奇声をはりあげながらの大迫力であり、周囲のチームへの
威圧効果がバツグンだ。 以前、和歌山大会だったかで、あいにく女子
のレースのカテゴリーがなかった時、河童は、オープンのカテゴリーで
出場、他の参加チームは筋肉隆々の男ばかりのレースの中、なんと決勝
まで勝ち上がって堂々の3位入賞を果たした。
その時にも予選からレース前に河童円陣を組んで「河童~、キェ~!」と
やるものだから、周囲の初出場の男子選手などは、マジでビビッてしまう、
「こりゃあ、相当手ごわいぞ・・」と。
で、実際に女性ばかりのチームが速いものだから、ますます周囲は
焦ってしまい、無事決勝まで勝ち上がった、という次第だ。
河「どうせだから、匠さん、円陣の中に入りません?」
匠「え? いいの・・?」
男子顔負けのチームとは言え、うら若き女性数十人の輪に囲まれる
わけだから、そりゃあ嬉しい・・いや、楽しい(笑)
しかし・・ 実際にその状態ではなかなか写真が撮れない(汗)
匠「手ばかり写ってしまうよ~ 広く写せないし、顔が見えないなあ」
河「そしたら、たとえばカメラだけ下に置いておくとか?」
(そりゃあまずい、せっかく円陣の中に入るプラチナチケットを
入手したのに・・笑)
匠「え~と、じゃ、こうしようか、普通の円陣ではなく、半分だけ」
(美女に囲まれる楽しみはなくなったが、まあ、絵(写真)を
撮らなければならないので、しかたない・・)
匠「うん、これでOKだよ、ありがとう、決勝も頑張ってね~」
河「は~い、頑張ります!」
・・とは言え、今の河童ではドルフィンにはなかなか苦戦するだろうなあ、
という事もわかっていた、数年前までは河童とドルフィンはいつも激闘を
演じていたのが、ドラゴンのメッカ、相生の地の利を生かしてか、
ここ数年は「スーパードルフィン」の成長が著しい。
河童の監督も「なんとか追いつかないと」とのコメントも以前あったが
その差は中々縮まらず、どうしても(250mで)数秒の差が出来てしまう。
まさか、スーパードルフィン、恋のパドリング効果ではあるいましね・・(笑)
でも、まあ、恋愛成就チームとして知られ多数のカップルを生み出した
大阪の「チーム未来」は、いくつかの恋愛があった時点で急速にチームの
実力が伸びた、今時のスポーツ界「恋愛はご法度」と言うわけでもなく、
意外に、相方に良いところを見せようと、頑張れるのかも知れない。
・・と、ここで例の天神カレーがまだ余っていると、協会本部より
アナウンスがあった。 そうだよね、なんかおかしいと思っていたんだ、
今年は例年の約60チームに対して、約50チームの出場と10チーム
ほど少ない、それでも例年と同じように調理班はいつもの大釜で
作っていたみたいだし・・
すると、22人x10チームとしても200杯は余っているな。
でも、11時ごろ大盛りを1杯食べ、さっき(1時ごろ)も1杯食べた、
いまは2時半過ぎ・・ う~ん、3杯目、いっちゃいますか!(笑)
見ると、出走や配艇などの学生アルバイトスタッフも、無理やりにと
いう雰囲気で、続けて2杯、都合3杯ほどカレーを流し込んでいる、
食べ盛りの大学生に対抗する気は無いが、ともかく撮影というのは
体力を消耗するのである。 水分も、協賛がダイドードリンコさんで
あることを良いことに、それこそひっきりなしに何リットルも飲んで
いるが、トイレには朝から晩まで一度も行く事が無い、すべて汗に
なって蒸発してしまうわけだ。
今、素早く食べればオープン準決勝に間に合うな・・・ よし・・
カレー配給所に走りこむ、「カレー余ってますか?」
「ありますよ~ はい」と出されたのは、またしても大盛り(汗)
「うっぷ・・」流石に好きな天神ドラゴンカレーでも、数時間のうちに
大盛り2杯と普通盛り1杯では、天神大会ならぬ大食い大会だ(汗)
もしかしたら、今回の大会で一番カレーを食べたのは私かもしれない(笑)
混合の準決勝が横で発走している
「ヤバイヤバイ・・早く食べなくては」
立ち食いでかきこんでいたカレーの器を一度下に置いて、
400mm(銀塩換算600mm)の超望遠を構え、遠距離からレースの
様子を1枚、2枚、しかし、これは流石に遠すぎて使えない。
「今は食べることが先決だ(笑)いやあ、こりゃあ晩御飯抜きは確実だな」
さて、磯風漕友会(4レーン)は順当にオープン準決勝も順当にトップ
勝ち抜け。奥の2番、3番レーンは「ぼらc.c」と「不知火」だから
これも実質的な決勝戦のようなレースであった。
そしてオープン決勝、何かやってくれると言っていた磯風の様子はどうか?
決勝進出5艘中、真ん中の3番レーンに居座る磯風漕友会。
3番レーンは、いわゆるポールポジションのようなものなのであろう、
どれだけ有利なのか? 何故有利なのかは、正直良く知らない。
多分、この天神大会のような川でのレースでは、周辺のレーンになるほど
川の流れが(悪く)影響してくるのであろう。 それから、ボート自身の
水流もある、速いチームが中央でブッちぎれば、周辺のレーンはその
航跡の水流をモロに受けることになるので不利になるのであろう。
ただ、後者は、中央の磯風が、いつものように先行逃げ切りになった
場合の話しだ、もしもつれるような事になれば、そのコースメリットは
あまり感じられない。
オープン決勝レーススタートのアナウンスが入る、今日の最終レースだ、
例によって、数千人の会場がシーンとしずまりかえる。
沈黙と静寂の緊張感の後、そのほんのわずか数秒後にこの会場は、
歓声とドラゴンの太鼓の音が響き渡ることになる。
ワーッ! ドンドンドン・・ 決勝レースがスタートした。
ん? 磯風、どうした?
スタートで突き放しにかかったのは、磯風ではなく、不知火のように
見えた、その後も磯風は独走するわけでもなく、序盤では同郷の
陸(くが)ペーロンと並走している様子だ。
磯風、隣接レーンの不知火と陸(くが)に大きな差をつけられないまま
中盤にさしかかる、もうここからは望遠でも届かない、ゴール地点には
アシのU嬢がいるので、撮影はまかせて観戦とするか。
大外の5レーンから横浜のサーフベイザースがかぶせにかかる、
磯風、意外な展開に余裕を失ったように後ろからは見えた、
まあ、それでもリードは保っている、優勝は間違いないのであろうが、
ミラクルは起こせないのではなかろうか・・?
終盤、じりじりと磯風が離しにかかるが、それでも不知火、サーフ、
陸(くが)、ぼら、の4強豪は諦めず食い下がる。
ゴール、磯風逃げ切り、2位との差は約2秒、余裕の優勝に見えて
実のところ磯風の心中は穏やかではなかったのかもしれない。
タイムは予選で見せた53秒を下回る55秒台となった。
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急いで大会本部まで戻る、ここは従来の会場より橋を渡る分距離が長い、
ドラゴンボートはきっとすぐ表彰式の為に本部に戻ってくるだろう、
カレー3杯で体が重い・・(笑)
それでもウイニングランをやっていた磯風に先行して本部の船着場に
到着。
戻ってきた磯風
「匠さん、やったよ~」と言う声を聞きながらも、ファインダーから
見る彼等は笑顔というより、なんだかほっとした、という雰囲気であった。
表彰式・・
空が急に暗くなり、天候があやしくなってきた。
大阪天満宮のお祓いパワーも、ぼちぼち切れかけか?、まあ、それでも
雷雨の予報を跳ね返して、なんとか決勝まで降らずに持ちこたえた、
宮司さん、巫女さん、もしかしたら本日の大会の最大の功労者なのかも
知れませんね、ありがとうございました。
(ちなみに、帰宅後すぐ、酷い雷雨となった)
そして女子の優勝はやっぱりスーパードルフィン、河童は5秒差の
2位に甘んじた。
若手パワーの兵庫教育大も善戦したが3位、ここは大学では珍しく
ドラゴンボート部がある、今後の成長に期待したいところだ。
そして日が暮れる・・
暑かった1日が終わり、選手達はその熱戦の興奮の余韻に浸る。
私も、カレー3杯(うち2杯大盛り)で重くなった体で帰途に着く(笑)
さて、今年の熱い季節、まだまだ続きます。
<2009年国内ドラゴンボート大会予定>
08.02(日)びわ湖ドラゴンキッズ選手権大会 滋賀
08.09(日)和歌浦ドラゴンボート大会&ジュニア選手権 和歌山
08.22(土)びわ湖ペーロン競漕 滋賀
08.30(日)関空ドラゴンボート大会 大阪
09.06(日)相生ドラゴンボート選手権 兵庫
09.12(土)びわ湖ドラゴンボートスプリント選手権 滋賀
09.13(日)びわ湖ドラゴンボート1000m選手権大会 滋賀
09.27(日)東大島ドラゴンボート大会 東京