大阪で行われた、国内最大級のドラゴンボート天神大会。
正式名称は「日本国際ドラゴンボート選手権大会」であるが、
天神大会の方がドラゴン関係者には通りが良い。(
前編より続く)
この大会、昨年より、大川(旧淀川)の桜ノ宮会場より、
ここ天満橋の会場に変更された。
大阪市では現在「水都大阪」というコンセプトにより、大阪の
水運、水上観光、水辺の景観などを見直す活動が盛んであるが
ここ天満橋(八軒屋浜)も、その中心区域となっている。
そして、ドラゴン観戦側の楽しみとすれば、天満橋の上から
スタートする直前のドラゴンボートの様子を見ることができる。
選手の緊張感が10mほどの高さの橋の上まで伝わってくるようだ。
そしてスタートの号令とともに、クルーは一丸となって漕ぎ出す。
今回、ドラゴンを撮っていると、強豪チーム「東京龍舟」の
ユニフォームを着た1人の選手が写真を撮っているのを
色々な場所で見かけた。
見覚えのある方なので、気軽に声をかけてみる。
匠「おっと、東京龍舟の・・
今日はカメラマンですか? いいカメラですね!」
東「あ、匠さん、お疲れ様です。
カメラですか・・? いや~、学生時代からカメラ好きでねえ
残念ながらカメラマンになる夢は絶たれましたが、昔は
A-1やF-1などを使っていましたよ。」
匠「おお、CANON A-1と (New)F-1ですか! どちらも名機では
ないですか! それは凄い。」
A-1は、1978年に発売されたCPU制御のカメラで、初めて
PやAv(絞り優先)Tv(シャッター優先)といったマルチ(複数)
の露出モードを備えたカメラだ。
当時の通称が「カメラロボット」 やや高価であったが、
多機能なのでハイアマチュアには結構人気のカメラであった。
弱点は、1/1000秒までしか無いシャッター速度、しかしこれは
当時のマニュアルフォーカス銀塩カメラでは標準的な性能である。
それと、たまに操作を間違えるとCPUがエラーを発して真っ赤な
LEDでEEEEEEと表示されて故障かと慌てる・・
これを解除する方法はあるのだが、何かの儀式かと思われるほど
(笑)ややこしくて覚えられないので、下手をすると一時は
中古屋でも、この表示が出たA-1を故障品としてジャンク価格で
売っていた事もある。
また、電池の消耗も他の一般的な当時のマニュアル機に比べると
かなり早い方であったか・・(当時のカメラには他に無かった
CPUやLED表示器を搭載しているので当然と言えば当然だ・・)
あとはシャッター廻りが、そろそろこの時期のカメラはヘタって
来ているので、中古で買う場合は、「鳴き」(音で聞き分ける)
や巻き上げ感触、そして裏ブタを開けてのシャッターの開いて
いる時間を光で見る高速シャッターチェック等が欠かせない。
弱点ばかり書いているが(汗) 基本的には多機能かつ
オーソドックスなカメラで、優秀なFDレンズの母艦としては
不満は無いであろう。
私も一時期A-1を使っていたのだが、友人の美女が欲しいと
言ったので、数年前に、かなり安価で譲ってしまった・・
美女に頼まれたのなら、もうしかたがない・・(笑)
それと、おそらく東京龍舟の彼が、A-1の後に買ったF-1は
1981年発売の New F-1ではなかろうか? まあ、1970年代の
旧F-1でも変わりないが、どちらも名機中の名機である。
私もその両者を現在も所有しているが、特にNew F-1は過去の
名機シリーズにも何度か登場している極めて優れたカメラである。
当時はだいぶ高価であったと思うが・・よほどのカメラ・写真
好きでないと買えない高級・高品質のカメラである。
さて、東京龍舟の選手との話しは続く・・
東「で、A-1,F-1やFDレンズは、全部処分してEOSに乗り換えたん
ですよ・・ それからもずっとEOSで、今はこれ(40D)」
匠「あ・・ FDレンズは処分されましたか。」
東「(EOSと)互換性無かったですからね。」
匠「互換性無いのは、当時だいぶキヤノン党からも不評を買った
みたいですね、で、今、実は、アダプターがごく少数ですが
発売されていてEOSにも付けられるんですよ、もっとも補正
レンズが入ってちょっと画質が落ちてしまうのが難点ですが」
(注:最近、マイクロフォーサーズにFDレンズをつけるマウントアダプター
が発売されている、フランジバックの短いマイクロフォーサーズでは
補正レンズなしで、FDレンズやライカM/Lマウントのレンズを装着
する事ができるので、面白そうだ・・)
東「そうなんですか? ちょっと勿体無かったかなあ?」
匠「FDレンズ、私も沢山持ってますが、現役でバリバリ使って
いますよ~、ではでは、また後ほど」
その後も、会場のいたるところで彼の撮影姿を見かけた、
炎天下の丸一日の撮影は重労働を通り越して、苦行のような
ものなので、よほどカメラや写真やドラゴンボート自体が
好きでないと出来ない。
この点は例えプロだって同様だ、イヤイヤ撮っているようでは
ドラゴンの撮影は絶対と言っていい程無理だと思う。
まあ、でもさすがに東京龍舟の選手、体力は十分の様子・・
---
さて、選手村巡りを続けよう・・
近畿車輛・電龍のテントにやってきた。
このチームは、おそらく工場で働いているのであろう、
(海外の工場からの研修生と思われる)外国人の少年が
多いチームである。
日本語はある程度大丈夫な様子なので、声をかけてみる。
「ギター誰の? 弾いてみて?」
コード弾きだが、なかなか達者な様子、
(ライブ撮影では無いので、難しいコードを弾いているシーンとは
撮っていない・・演奏感が無くて失礼・・汗)
日本に来て買ったのだろうか? 楽器店で売っている
一番安価なクラスの量産ギターだが・・・
「ちょっと貸してもらってもいい?」
「ウン、弾ケルノ?」
弦は新しい様子だ、チューニングもしっかり合っている
電子チューナーなど使っていない様子だが、ここまで
きちんとしていると、なんだか嬉しくなってくる。
彼の年代では知らないか?、と思いつつ、イーグルスの
ホテルカリフォルニアのイントロをさらりと弾いてみた、
テントにいた数人が目を丸くしてびっくりしている様子。
「いいギターだね、音楽好きなんだね!」
何人かの外国人少年が集ってきて、私のデジカメを見て、
「これはイクラするの?」「ドコで安く売ってるの?」とか
果ては、横に止まっていたバイクの値段まで聞いてくる(笑)
モノが溢れかえる日本。 故郷の、恐らくは東南アジアとは
生活スタイルがだいぶ違うのだろう、彼等の興味は、やはり
どうしてもそうした電気モノ、ハードウェアにあるようだ。
日本語があまり堪能では無い少年も居るので、途中からこちらが
英語に切り替えて話しを続ける、英語と言ってもカメラやギター
やバイクやドラゴンといった(私も好きな)趣味の話しばかり
なので、何でも来いだ(笑)
ついつい長居をしてしまい、異国の少年達のレースでの健闘を
祈ってまた次のテントに・・
(近畿車輛 電龍は、惜しくも混合準決勝で敗退、でも周囲が
決勝常連の超強豪揃いだったので良い経験になった事であろう)
おっと、ここはチームのテントではなく、天神大会で昔から
続く伝統の「炊き出しカレー」の配給所だ。
「東京龍舟ですけど、カレーを75個お願いします!」
え~? 75個かよ~(汗)
神戸の関西龍舟と並んで、一大勢力である東ドラ(東京龍舟や
その派生チーム、関連チームを指す)
今回も3チームを参戦、ちなみに、冒頭の2枚の写真の東海龍舟
は東京龍舟から分離したチームなので、皆含めて東ドラグループ
(笑)と言えるかもしれない。
で、この「天神ドラゴンカレー」は非常に美味しい、
まあ、暑い中、水分も塩分も枯渇した状態で屋外で食べるから
かも知れないが、それにしても毎年いつも同じ炊き出し班の
ベテランのオジチャン、オバチャン達が丁寧に作ってくれるので、
元々やはり美味しいのだと思う。
普通、このカレーは有料で、選手(チーム)は昼食券を購入し
個々に、またはチームでまとめて取りにくる。
スタッフにも同様に昼食券が支給されるので、好きなタイミング
で食べる。まあ、実際には朝からの撮影なので11時ごろには、
おなかがすいてどうしようもなくなって食べる事になるのだが・・
一昨年のこの天神大会では、直前に大きな台風が大阪を直撃して
当日の朝まで開催が決まらなかった、それでもスタートを遅らせ
なんとか開催できたのだが、遠方のチームがいくつか参加キャンセル
となった、結果、このカレーが少し余ったので、その時は、
2杯目を、ご好意でタダでいただくことができた(喜)
昨年の大会では、またその甘い汁、いや辛い汁(笑)を吸おうとし
調理スタッフのオジチャンのところに昼過ぎに行って聞いた
「いつも美味しいカレーをありがとうございます。
大好きなんですよ!」
「おお、そうかい、それはよかった、一所懸命作る甲斐があるな」
「で、今年は余りませんかねえ? 余ったらいただきたいのですが?」
「う~ん、今年は無理かもなぁ、まあ2時過ぎにまた来てみんしゃい」
・・で、2時半ころ行くと、カレーは完売、残念無念・・
お金を払っても買えないところが、なんとも希少価値だ(笑)
「よし、今年(2009)は絶対なんとしても2杯食べるぞ~」
と、策略を練る・・(笑) 東京龍舟に行ったらもしかすると
休みの選手がいて、75個の中から1つくらい余るかもしれない(笑)
・・でもまあ、屈強な筋肉ムキムキのドラゴン選手の事だ、
食べきれずに余るということは絶対にあるまい(笑)
午前11時すぎ、スタッフ用の1杯目のカレーを食べる、
もし2杯目が食べられないと、おなかがすいた場合、貴重な
撮影時間を削り、駅前のファーストフードとかに買い食いに行く
必要が出てくるかもしれない、でもそれは避けたいので、
最悪1杯しか食べれない場合の対策としては・・
「おっちゃん、大盛りでね!」(笑)
大盛りカレーと、美味しい蒲鉾をいただき、さて、撮影再開だ。
おっと、金龍隊だな、いつもながら気合が入っているな。
実は朝から何度も金龍隊のメンバーとはすれ違っていて、その都度
話しをしている、私が、金龍隊の元鼓手(ドラマー)の美人選手
通称「
アネゴ」のファンなので「匠さん、今日はアネゴは居ないよ」
とからかわれるのであるが、まあ、産休の様子なのでしかたない。
アネさん、お母さんになっても、またいつか復活してくださいな。
しかし暑いねえ・・ この分だとカレーの元気も短時間でしぼんで
しまいそうだよ。
まあ、こんなときは、和歌山の愉快な仲間達・・ではなく、強豪
「椅子に座ったNEKOO」や元気な「もっこりドラゴンボート部」を
訪れてみるか・・
「もっこりさん(・・しかしいつもながら変な名前・笑)まいど!」
も「あぢ~ (暑い)」
匠「ずいぶんとまたリラックスしてますなあ・・(笑)
もっこりさん、今回(初めて)女子チームも編成してますね、
いつもより美女の方々が多いのでびっくりしましたよ。」
も「またまた~(笑) まあ、今回和歌山のメンバーかき集めましたからね。」
匠「あ、そういえばフォレスターズ(同じ和歌山のチーム)とかの方も
いらっしゃいますね。もう和歌山軍団もかなりの大勢力ですよね、
そういえば、さっき、東ドラの方、カレーを75個注文していきましたよ、
凄いですよね~ あとは関ドラ、琵琶湖軍団、和歌山軍団もそれくらい
の勢力になってきましたね~」
「匠さん・・」別の美女が近づいてくる。
匠「おっと、まいどです。」
も「こないだ、和歌山で匠さん見かけましたよ・・」
匠「あ・・いつ? どこで? ・・ああ、あの時かあ、
そうですよ、確かに私、趣味の撮影で行ってましたよ。
声かけてくれたらよかったのに」
も「いや、車で通りかかったから・・」
匠「なるほど、じゃあ、今度行くときは連絡します(笑)」カシャ。
も「あ、撮るの? じゃ、ここも撮る?」
匠「う~ん、さすがにもっこりだ・・(笑)」
テントに居た他のメンバーも「なにやっているんだ?」とばかりに笑う。
つづけて兄弟チームの強豪「椅子に座ったNEKOO(ネコ)」を訪れる、
さすがにこちらは強豪で優勝候補の一角、決勝戦をどう戦うか?という
部分が主眼と見え、私に他のチームの情報をそれとなく探ってくる。
匠 「そりゃあもちろんIは強いでしょ、それとSもYもね、
あと今回Kはどうなんだろう? ちょっと元気ないみたいだけど。
しかし、ネコさんの場合は、まあ決勝までは行けるとして
その後の激戦をどう、かわすかですよね、Iにぴったり着いて
いければ表彰台というのはいけると思いますが・・」
ネコ「Bはどうなんですか?」
匠 「不気味な存在ですねえ・・初出場なのでまだ良くわからないですが
予選の数字はまずまずみたいでしたね。」
ネコ「さすがに毎回撮ってるだけあって、匠さん、良く見てますねえ。」
匠 「けど、ネコさん、今回はもう少し気合入れていかないと・・
他のチームも良く調整してきている様子ですよ。
さっき予選でネコさん、ライバルの黒いユニフォームのチームを
僅差でやっとかわしたでしょう?」
ネコ「ぐっ・・あれは・・(汗) うん、そう、それが今回課題なんです。」
匠 「まあ、私としては、決勝で撮りたい「絵」ってのはいつも事前に
イメージしていまして、和歌山の大会では、赤いチーム(ネコ)と
黒いチームが、こう競いながらゴールに飛び込んできて・・」
ネコ「あはは・・さすがに地元和歌山では、我々は負けれませんわ」
匠 「で、ここ天神では、黄色いチームと白いチームと、その次くらいに
赤いチームが入るような写真のイメージなんですけどね・・」
ネコ「ハハハ・・非常によくわかります、そうなるように頑張ります」
まあ、つまり、オープンの決勝では、超強豪の磯風漕友会(黄色)の
優勝はまず固いところ、で、次は横浜の強豪サーフベイザーズ(白色)
その次の3位に椅子に座ったNEKOO(赤色)が入れば、という話である。
ただ、それはそんなに甘いものではなく、昨年は実力を見せ付けながら
惜しくもコースアウト失格になった九州の虎「不知火海龍」や、
カヌー全日本の「ぼらCC」さらに磯風と同じ相生の強豪「陸(くが)
ペーロン、さらに境港の金龍隊、関空飛龍など・・・
戦国時代で言えば、まるで信長を包囲する、信玄や謙信クラスの
強力武将のようなチームが群雄割拠するような状態だ。
さすがに和歌山常勝の「椅子に座ったNEKOO」でも苦戦は免れまい・・
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しかし、暑い・・ 天満宮の巫女さんや宮司さんのお祓いが効いた
のか、雷雨の予報はハズレた様子だ(実は帰宅後すぐに酷い雷雨と
なった・・大会中にこれが来たら?、と思うと、まさにほっとした)
大阪のノリの良いチーム「ぶっとばせまいど」の前を通りかかると、
冷却スプレーをTシャツにかけている様子。
匠「それ、涼しいんですか?」
ぶ「あ、匠さんもかけてみます?」
匠「ええ是非・・」 シュワー・・ 「おっと、ひゃこい(冷たい)!」
冬場、携帯カイロなど、パーソナルな暖房器具は存在するのだが
夏場における個人用冷却アイテムというのは、なかなか決め手が無い、
なんでも最近、毛細管現象で水分を蒸散させる「冷えるタオル」が
発売されている様子だが、まだ高価で一般には普及してはいない。
涼しくなったのはいいが、早くもまた、おなかがすいてきた(笑)
どこかでカレーの2杯目を調達しなくては・・(笑)
カレーを・・いやもとい(笑)被写体を探しながら歩いていると
「匠さ~ん、お久しぶり」と声がかかる。
匠「あれ~? チームのユニフォームが違うよ~」
元ドラゴンSUISUIのK嬢、スイスイは最近ドラゴンの(22人という)
メンバーを集めるのに苦労していて、マラソンやスキー、カヌー等
個人戦に近い種目で活動している様子だ。
K 「そう、関ドラ(関西龍舟)に入ったの!」
匠「強豪だね! 練習厳しいでしょう?」
K 「うん、雰囲気違うね、でもまあ、勝てればやっぱ嬉しいし」
匠「根っからの運動好きなんだね」
K 「他のSUISUIのメンバーも、分散していくつかのチームに入って
ますよ、ほら、そこと、そこにも・・」
「お~い、何やっているんだ」と SUISUIメンバー集合。
匠「なんだか吊り上げられているみたいだよ(笑)」
まあ、結果的に今回関西龍舟は混合カテゴリーで見事に優勝、
さすがにいつも厳しい練習をしているチームだけあるという事か・・
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予選から準決勝に上がるには、単純に1位で勝ち抜けるほか、
好タイムを叩き出したチームも準決勝に行けるチャンスがある。
つまり、すでに予選を終えて1位になれずとも、結果がわからず、
タイム次第で残れるかどうかが決まるというわけだ。
・・で、そうなると、もう自チームと他チームの成績の放送を、
耳をダンボのようにして聞いていなくてはならない、他のチームが
落ちて自分達が残るのはあまり本意ではないかもしれないが、
それでも敗退は悔しいし、勝ち上がるのは嬉しい。
ここフォーティズもいま、まさにそんな状況・・
他チームのタイムのアナウンスが流れた瞬間・・
新進のフォーティズ、混合準決勝出場であるが、さすがに強豪の
「東京龍舟」「琵琶湖ドラゴンボートクラブ」「もっこりドラゴン
ボート部」の3チームに阻まれ、準決勝敗退。
レースのレベルはこのあたりから上はどんどんキツくなってくる、
常に準決勝をキープできるレベルに到達するにも、高い壁が存在
するということなのであろう・・
一通り選手村を廻って、本部席のあたりまで帰ってきた・
「暑い中、お疲れ様で~す」
「ああ、お水ください・・」
「カレー余ってますよ、よかったらいかがですか?」
「おっ! いただきま~す。」
ということで、無事本日2杯目のカレーを美味しくいただきました(笑)
きりが良いところで(?笑) 後編に続く・・