「コシナ・フォクトレンダー20周年記念記事」
コシナ社は1999年に「フォクトレンダー」のブランドを
取得し、同ブランド銘で多数の名カメラ、名レンズを発売
している。20年が経過した現在では、押しも押されぬ
高級レンズメーカーとなり、無名であったコシナ時代とは
全く様相が変っている。
さて、本記事は、コシナ・フォクトレンダー・ブランド
における「マクロ アポランター」(MACRO APO-LANTHAR)
銘のレンズを紹介する「上級マニア向け」の内容だ。
(注1:一部、近接撮影可能なアポランターを含む)
(注2:コシナから発売の、マクロでは無いアポランター
は、かつて、レンジ機用VMマウント版製品と、
最新鋭の2019年12月発売のEマウント版50mm/F2が
存在するが、それらは未所有である。
本記事では「マクロのアポランター」を主に紹介する)

「グランドスラム」とは、本ブログにおいては「希少な
4種類のレンズを全て所有する」という意味なのだが・・
(本シリーズ第0回「アポダイゼーション・グランドスラム」
記事参照)
厳密に言うとマクロアポランター銘の(一眼レフ/ミラーレス
用)レンズは、2019年の現時点で3機種しか存在しない。
ただし「Close Focus」と呼ばれている「準マクロ仕様」の
アポランターが2機種存在している。その2本は「半分だけ
マクロアポランターだ(笑)」として、2本で1本分の
立場としておこう。これで計4本、グランドスラムである。
なお、マニアには常識であるが、これらのアポランターは
全てMFレンズである。
なお、本来の「グランドスラム」の意味は、トランプの
コントラクトブリッジからの発祥用語で、「全ゲームで
勝利する」という意味だが、これはあまり知られておらず、
世間一般的には、「スポーツの年間の(4つの)主要大会の
全てに優勝(完勝)する」というのが元々の定義である。
ここで4つの、という数の要素は必須では無いのだが、でも、
テニスもゴルフも四大大会である為、慣習的に「4つの」と
いう意味が強くなり、テニスの世界では明確に「四大大会
制覇の事」と定められている。
重要な事は、主要(四大)大会そのものが「グランドスラム
大会」なのではなく、「その全てを制する」という”結果”が
グランドスラムである。
その点を誤解している報道やTV CMがとても多い事が残念だ。
しかし、テニス等では、大会のカテゴリー分類において、
四大大会を「グランドスラム」と呼ぶ事があり、最近では
柔道大会でも「グランドスラム」という大会名がある模様で、
その点でも「混乱しやすい状態となっている」様子だ。
この状況を鑑み、ごく近年においては、
「グランドスラムに勝利する」(=四大大会の1つで勝つ)
「グランドスラムを達成する」(=四大大会を全て制覇する)
という新たな定義が出来ている模様だが、いずれにしても、
ややこしい状態であり、今後も混乱は続く事であろう。
なお、カメラ初級中級層の間で広まっている「大三元」という
俗称も、個々の大口径ズームそのものが「大三元レンズ」
では無く、3本全てを揃える事が本来の「大三元」であろう。
だが、ここも3本を揃えるのは容易では無いので、先日も
専門中古店で、若い初級マニアが「この大三元、欲しいなあ」
と言っていた会話を聞いている。(→当然、誤りである)
このように、言葉が本来の意味から、どんどんと曲解されて
いく状態は、個人的にはあまり賛同できない。
それが、語源を知らない一般層からの発信であれば、まあ
やむを得ないとは思うが、報道とか、主催者とか、そういう
公的な立場にある人達までもが、言葉の意味を曲解して使う
傾向があるから、好ましく無い、と思う訳だ。
「グランドスラム」も、ほんのここ数年間で、定義が急速に
曖昧になっているし・・
別の例では「プレミアム」も、本来の意味では「割り増し価格」
(=不条理に高価)といった、ネガティブな要素が大きかった
筈なのだが、ここ数年間はそうでは無い。
まあ、「プレミアム商品券」とかでは、「おまけ」「景品」と
いった語源の意味も一応あるので、ぎりぎりセーフだと思うが、
「プレミアムな”商品”」では、「高級な」という意味を
与えているので、それは、ちょっと的外れではなかろうか?
ちなみに、本ブログでは、「プレミアム相場」などの記載を
する場合は、必ず「不条理に高価」という、ネガティブな
(否定的な)意味で、それを用いている。
言葉の意味は時代とともに変わっていく、とはいえ、元々の
語源や経緯を知らずに使っていては、やはり勉強不足だ。
余談が長くなったが・・
では、実質5本の(マクロ)アポランターを順次紹介する。

レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
(読み:フォクトレンダー マクロ アポランター
注:スペル上の変母音の記載は便宜上省略している)
(新品購入価格 79,000円)(以下、MAP125/2.5)
カメラは、CANON EOS 6D(フルサイズ機)
ミラーレス・マニアックス第23回記事、同補足編第6回、
レンズ・マニアックス第12回記事、また過去に特集記事等で
数回紹介済みの、2001年頃に発売されたフルサイズ対応
MF望遠等倍マクロレンズ。(注:以下紹介のレンズも全て
フルサイズ対応である)

2000年代前半当時のフォクトレンダーSLレンズ群(一眼レフ用)
は、各種MFマウント用で発売されていたのだが、本レンズのみ
EOS(EF)マウントやミノルタα(SONY A)マウント版が存在した。
本レンズもEFマウント版であり、絞り環が存在していない。
後から考えると、どうせMFレンズなのでNIKON F(Ai)マウント
あたりで買っておけば、マウントアダプターで多くの一眼レフや
ミラーレス機で使用できたのであるが、まあ当時はミラーレス機
は勿論登場前であるし、マウントアダプターすらも殆ど存在して
いなかったので、本レンズは単純にEOS機での中望遠マクロの
ラインナップの穴を埋める為(他に優秀なマクロが無かった)
であった事が購入理由である。
発売時定価は95,000円、本レンズは発売直後での新品購入で
あるが、フォクトレンダーブランドを取得したばかりのコシナは
値引率が低く、1割ちょっとしかまけてもらえなかった。
なお、2000年代後半には神戸の中古店で、本レンズの逆輸入
新品が定価の約半額、48,000円程度で複数台販売されていた。
異マウントで「ナンピン買い」(安くなった製品を買い足す事)
を行えば、平均取得価格が6万円強となる為、一瞬買おうか?
とも思ったのだが、後述の理由で、本レンズは使いこなしが
非常に困難な為、それは見送った。つまり優秀なレンズであれば
異マウントで2本揃えておくのも悪くは無いのだが、本レンズの
場合は「その条件には値しない」という判断であったのだ。
また、使いこなしの面から考えて、たとえ48,000円と半額で
あっても、他の知人友人のマニア等にも推奨しなかった。
つまり、私が思う本レンズの絶対価値は、もっと低いレベルで
「まあ3~4万円が良い所であろう」という感じだったからだ。

後年、2010年代後半になって本レンズが中古市場でプレミアム
相場となり、15万円やら20万円の価格で取引されていると聞く。
しかし、それは希少なレンズであるが故の投機的相場であろう、
実用的視点からは、とてもそこまでの価値は無いので念の為。
(市場において、「数が少なければ良いレンズだ」と考える
事は、勿論、とんでも無い誤解だ)
ちなみに、コシナ・フォクトレンダー製品は、マニア向けで
あるから生産数が少ない。1ロット(生産単位)の数値は
当然非公開で不明であるが、この当時2000年代前半のSLシリーズ
等では、マウント毎のロット(生産)数は1000本程度であると
推測している(例:復刻トプコール58mm/f1.4が、2マウントで
各800本の公称数)
その当時の上級マニア数は国内でおよそ8000人と推察される、
このうちの約1割が購入すると見た企画台数(予定生産数)
なのだろう、とも個人的には分析している。
前述のように海外輸出もあったかも知れないが、それが戻って
来て、国内で売られたケースもあるので、海外上級マニアの
数は考慮していない。(注:現代においては、特にアジア圏
での上級マニアが多くなっている事は感じる。ドラゴンボート
の国際大会等で、外国人選手(マニア層)が持っている撮影
機材は、国内マニア層を上回る、拘りの装備の場合が良くある)
フォクトレンダーの一眼用レンズは再生産は通常は行わない。
稀に人気があるレンズ(アポランターSLやノクトンSL等)は、
Ⅱ型や外観変更型などが継続生産されたケースもあるが、
それらも旧製品とは、ずいぶんとイメージが異なったりして、
純然たる継続生産品というのは殆ど無い。
これを逆に言えば、フォクトレンダーのレンズは、気になる
製品であれば、なんとしても生産期間内に入手しておくしか
無い訳だ。私は15本のフォクトレンダー製レンズを購入して
いるが(内、2本は譲渡につき現在未所有)、その全てが
発売期間内での新品購入だ、すなわち後日に中古で入手しよう
としても、まずそれは困難である、という事だ。
こういう状況なので、後年になって、プレミアム相場になって
しまうのも、まあわからないでは無いが、そこに投機的な要素が
あるならば「高くても買う」と言うユーザー側に、ほぼ責任が
ある問題だ。すなわち「何故発売期間内に買っておかない?」
という単純な話だ。中級マニアくらいであれば、10年以上は
こうしたレンズ収集は続けている事であろう、2000年代後半で
その頃からマニアであったのならば、その当時で新品で半額で
売っていた本MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SLを
見逃す方が悪い、という事になる。
(知人のマニア氏は、収集開始が2000年代後半頃と、少々
出遅れたが、2010年代初頭位までに、彼が必要と思った
フォクトレンダーSLレンズ群は、全て入手を完了していた。
だからまあ、その頃であれば、なんとか間に合った訳だ)
まあでも「投機的」要素には「後で、より高く売ってやろう」
という心理もあるので、実用派の視点とは全く異なる部分も
ある。だが、そこはもう「写真用機材は、全て実用品である」
という論理で、本ブログでは統一している。
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本レンズ、あるいは関連レンズの読みは、コシナのWEBでは
「フォクトレンダー マクロ アポランター」となっている。
しかし、元々ドイツ語であるし、スペルには「ウムラウト」
(変母音)も入っていて、日本語とした時、どのように発音
するのかは、以前は不明であった。
第二次大戦前、日本に最初にフォクトレンダー製のカメラが
輸入された時には「ホクトレンデル」などの読み方も普通で
あった模様だ。1999年にコシナが商標を取得した後でも、
一般層での読み方は、まだまちまちで、マニア間においては
レンズ名は「アポランサー」と呼ばれる事も良くあったし、
ブランド名も長くて言い慣れないので、「北斗」のように
勝手に省略される事も良くあった。
一般層、マニア層はもとより、中古専門店等の店員でも
ブランド名を言い間違える事は日常茶飯事であった。
しかし、それから20年もが経過すれば、マニア層などでも
ずいぶんと呼びなれた名前になってきたと思う。

さて、このあたりで、本レンズの問題点を色々とあげておこう、
まず、本レンズは極めて使いこなしが困難なレンズである事が
非常に大きな課題だ。
「使いこなし」と一言で言っても、色々な要素がある。
具体的には重量級のレンズである事、被写界深度が紙のように
薄い事(開放F2.5で最短38cmで等倍撮影時、被写界深度は
なんと1.3mmしか無い!)
そして、ヘリコイドの回転角が極めて大きい事である。
レンズのピント距離指標は、何と1周では足らず、2周に
渡って撮影距離が書かれている。
無限遠から最短までの指の持ち替え回数は、私の場合で
平均14回! 左手の疲労のみならず、一瞬だけカメラシステム
全体を支える右手グリップにも負担がかかり、非常に疲れる。
(ここは重欠点と言える)
手ブレ補正も勿論入っていないし、仮にボディ側に入って
いても無駄だ、まずこのレンズでのブレは防げない。
(近接撮影では、距離ブレ=前後ブレ、が発生する事も、
その理由の1つである。これはブレと言うより、ピンボケだ)
先般、その当時に所有しているレンズ約320本の中から
「使いこなしが困難なレンズのワーストランキング」という
記事を掲載したが(レンズ・マニアックス第11回、第12回)
その記事でのワーストワンが、本レンズMACRO APO-LANTHAR
125mm/f2.5となっている。
今回は、一応システムの親和度を考慮し、フルサイズ機の
EOS 6Dで、しかもスクリーンをMF用のものに交換して
最善をつくしているが、それでも苦しい事は変わらない。
私は、本レンズを「修行レンズ」と呼んでいる。
フィールド(屋外)撮影に持ち出しても全然楽しめないどころか、
難しい撮影状況を繰り返すだけであり、しかもかなり疲れる。
何も好き好んで修行(苦行)を行う事は無いと思うので、
本レンズの「エンジョイ度」評価は、かなり低く、当然ながら
出動機会は少ない。
最後に、レンズ記事で良く行う評価を載せておく。
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 125mm/f2.5 SL
・描写表現力:★★★★☆
・マニアック:★★★★★
・コスパ :★★☆
・エンジョイ:★☆
・必要度 :★★★★
・評価平均値:3.5
(★=1点、☆=0.5点)
なお、これらの評価点は私個人のレンズ評価データベース
(DB)からの引用であるが、評価項目の設定や、その評価は
本来、個々のユーザー毎に行うべきだ。用法や視点が利用者
毎に異なるからである。だから、これらの数値はあくまで
参考であるし、これをあてにしてもならない、数字が一人
歩きする事は好ましくなく、最終的には評価は必ず個々に
自分自身で行う必要がある。(ここは大原則だ)
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さて、次のアポランターはマクロではなく、Close Focus型だ。

レンズは、Voigtlander APO-LANTHAR 90mm/f3.5 SL
Close Focus(新品購入価格 47,000円)
カメラは、FUJIFILM X-T1(APS-C機)
ミラーレス・マニアックス名玉編第4回記事等で紹介のレンズ。
本レンズには後継機のⅡ型が存在し、それは少し小型化されて
いるのだが、こちらは2000年代初頭に発売の初期型である。
マウントはCANON FD、これもまた、当時は銀塩時代であり、
CANON FDマウント機は現役で使っていたからであって、
FDレンズには優秀な中望遠マクロの選択肢が無かった為、
ラインナップの穴を埋める為の措置で購入したものだ。
まあ、本レンズはマクロでは無く、最大撮影倍率1/3.5倍の
近接レンズ「Close Focus」である。
(今回のようにAPS-C機で使用時には、約0.42倍マクロだ)

実は、銀塩時代の1980年代くらいまでは「マクロ」の定義が
まだはっきりしておらず、メーカーによっては最大撮影倍率が
1/3倍や1/4倍のレンズを堂々とマクロと言って販売していた。
いわゆるマクロレンズであっても、最大が1/2倍程度の時代だ。
しかし1990年代後半に、等倍(1倍、1対1)マクロが色々と
登場すると、業界での暗黙の了解として「マクロと呼べるのは
1/2倍以上の場合だけ」といった風潮が出てきた。
コシナもこれに従い、1/3.5倍ではマクロと呼び難かった為、
「Close Focus」(近接撮影)という名称を新たに(独自に)
作ったのだと思われる。
が、これも意味がわかり難い名称なので、私が記憶している
限りでは、本90/3.5と、後で紹介の180/4の2本のみに、
この「Close Focus」と付けられていて、他のフォクトレンダー
製(コシナ製)レンズには、この名称を冠したものは無い。
(注:ヘリコイド付きマウントアダプターでは使われた)
しかし「マクロと呼べるのは1/2倍以上の場合だけ」には
業界内では、あまり強制力は無かったかも知れない。
例えば2001年発売のSIGMA AF24mm/f1.8 EX DG ASPHERICAL
MACRO(ハイコスパ第10回記事等)は、最大撮影倍率
1/2.7倍ながら、堂々とマクロと書いてある。

さて、本レンズAPO-LANTHAR 90mm/f3.5であるが、
いわゆる「無収差レンズ」に近い、完璧な性能であると言われて
いる。これは2000年代前半の写真専門誌での性能評価の数値が
そんな感じであったし、コシナ社の設計者自ら「最高傑作である」
と語った対談記事を読んだ事がある。
私は、基本的に他人の話は頭から信用する事は無いが、確かに
本レンズでは描写性能上の不満を感じた事は無く、過去記事の
「ミラーレス・マニアックス名玉編」では、多数の所有レンズ
の中から、最終的に第5位にランクインした名玉だ。
開放F値が3.5と暗いのでスペック的に地味な印象を受けるかも
知れないが、いつも言うように口径比(開放F値)が明るいレンズ
は、たいてい設計に無理が出て描写力を落としてしまうので、
そいう点では、F3.5に抑えて完璧な性能を狙ったコンセプトは
硬派で潔く思える。
なお、レンズ設計(光学)の用語では「アナスチグマート」
というものがあり、ザイデルの5収差中、球面収差、コマ収差、
像面湾曲、非点収差の4つを解消しているハイレベルなレンズを
指す。本APO-LANTHAR 90mm/f3.5は、残りの「歪曲収差」や
ザイデル収差以外の「色収差」も、よく補正されているだろう
から、ほとんど「無収差レンズ」であると思う。
一般的な数値スペックには出てこない「ボケ質」も良く、
ボケ質破綻も殆ど出ない。そしてF3.5では不足すると思われる
ボケ量に関しては、本レンズは最短撮影距離が50cmと、非常に
優秀であり、近接撮影に持ち込めば、ボケ量が稼げないと言う
不満は殆ど無い。
勿論逆光耐性も強く、付属の角型フードは(格好良いが)殆ど
使った事が無い、「フードを使わないと苦しい」といった
軟弱なレンズでは無いのだ。

まあ、ほとんど完璧なレンズであると言える。
私が各レンズにつけている性能評価の一覧表(DB)を見ても、
本レンズは「描写・表現力」が5点満点であり、そのレベルの
レンズは数百本の所有レンズ中、10数本しか存在しない。
また、総合評価点4.5点も、同点トップが数本あるだけで
これ以上の評価得点を得た所有レンズは存在しない。
こちらこそ、絶対に「買い」のレンズであろう、
マクロアポランター125/2.5の実用性とは雲泥の差だ。
Voigtlander APO-LANTHAR 90mm/f3.5 SL Close Focus
・描写表現力:★★★★★
・マニアック:★★★★★
・コスパ :★★★☆
・エンジョイ:★★★★
・必要度 :★★★★★
・評価平均値:4.5
(★=1点、☆=0.5点)
参考:本レンズは、他のアポランターよりも長期に販売
されていたので、中古市場でも何度か見かけた事がある。
それらの中古相場は、私の新品購入価格を超えないレベル
(4万円台まで)であったと記憶している。
ただ、これも「どうしても欲しい」という好事家が増えると、
容易に投機対象となり、プレミアム相場化してしまうだろう。
今後の相場の変動には要注意のレンズだ。
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さて、次のアポランターもマクロではなく、Close Focus型だ。

レンズは、Voigtlander APO-LANTHAR 180mm/f4 SL
Close Focus(新品購入価格 54,000円)
カメラは、OLYMPUS OM-D E-M5 MarkⅡ Limited(μ4/3機)
ミラーレス・マニアックス第29回記事で紹介の、
2000年代初頭に発売のMF単焦点小口径望遠レンズ(近接可)
購入時にはマウントは選べたが、OMを選択した。その理由は、
これも当時は銀塩時代であり、OLYMPUS OM機はバリバリの
現役機であったので、小型のOM機にマッチする、軽量で優秀な
200mm級望遠レンズを探していたからである。
(OM Zuikoの200mm/F4は、やや大柄で、OM200mm/F5
は小型軽量だが、若干レアもので入手困難だった)

本レンズを現代において、銀塩OM機より、さらに小型化した
ミラーレスのOM-Dに装着すると、システム全体が極めて小型
軽量であり、おまけにこれで360mm相当の超望遠画角だ。
さらにはデジタルテレコンを使用すると720mmの超々望遠
画角が手ブレ補正つきで得られるので、例えば野鳥撮影等に
おいても、極めて利便性の高いシステムとなる。
本ブログの初期(約15年前)の記事で本APO-LANTHAR 180/4
を4/3機のOLYMPUS E-300に装着し「最軽量望遠システム」と
称した事があったが、現代のμ4/3機では、軽くそれを上回る
軽快で実用的なシステムが成立している。
さて、本レンズもマクロでは無いが「Close Focus」である、
最短撮影距離1.2mは、マクロを除く180mm望遠としては
トップ(クラス)であり、最大撮影倍率は1/4倍だ。
μ4/3機で使っている為、フルサイズ換算の撮影倍率は1/2倍
となり、もうこれは「望遠マクロ」の領域であるので、
野鳥などの遠距離被写体に限らず、草花や昆虫、小動物等、
フィールド(野外)での自然撮影全般に向くシステムとなる。

描写力は他のアポランターと比べて、やや劣る印象も受けるが
それでも、明らかに悪いという要素は無く、ただ単に「感動的
と言えるようなスペシャルな描写力は無い」という程度だ。
購入価格が性能に比べてやや高価な印象があり、すなわち
「コスパがやや低い」という厳しい評価となっている。よって
これまでの「ハイコスパ系」のシリーズ記事では登場する事が
無かったレンズではあるが、こう見えても近代レンズである
が故に、例えば、オールドの有名ブランドレンズ等とは
比較にもならない高性能・高コスパである事は間違い無い。
本レンズはレア物であるから、また変に褒めると中古相場が
高騰してしまうかも知れない。この手のレンズの所有者は
とても少なく、評価などの情報源も本ブログ又は、本レンズを
所有している知人のマニア達が書いている記事くらいしか無い
であろう。であれば、あまりここであれこれ書くのも市場への
悪影響が強くなる。まあ、このあたりまでにしておこう。
(追記:最近、本レンズの中古品を市場で1本見つけたが、
10万円以上もしていた。投機的かつ意図的に高付加価値を
演出する為の超高値相場だと思われる。近年の本ブログ
では各レンズの私の購入価格を記載しているが、それは
珍しいレンズを見つけた時の価値感覚(中古相場)の
参考にして貰いたいからだ。本ブログでの記載購入価格
よりもプレミアム化しているレンズは要注意である)
Voigtlander APO-LANTHAR 180mm/f4 SL Close Focus
・描写表現力:★★★☆
・マニアック:★★★★★
・コスパ :★★☆
・エンジョイ:★★★
・必要度 :★★★
・評価平均値:3.4
(★=1点、☆=0.5点)
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さて、次のマクロアポランター

レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/f2
(新品購入価格 122,000円)
カメラは、SONY NEX-7(APS-C機)
2017年に発売された、フルサイズ対応大口径MF準中望遠
1/2倍マクロレンズ(以下、MAP65/2)
レンズ・マニアックス第10回記事で紹介済みだ。

今回、APS-C機のNEX-7で使用しているのは、本記事の
ラストでフルサイズ機α7を使用するので、それと機種が
被らないようにする為である。
(レンズ・マニアックス第10回記事では、フルサイズ機で
撮影している)
何故、母艦機種を揃えないのか?は、本ブログでのポリシーで
あるからだ。細かい説明は省略するが、レンズには、それぞれ
パフォーマンスを引き出すための固有の適正な母艦が存在
するからであり、その大原則を、細かい話においては記事の
単位にまで適用している。
本レンズは購入後、ずっとフルサイズ機で使用していたが、
今回、珍しくAPS-C機で使ってみると、意外なまでに
使いやすいマクロとなる事が判明した。
すなわち、フルサイズ機では、本MAP65/2は1/2倍まで
の撮影倍率であり「あまり寄れない」という不満があったの
だが、APS-C機では約97mm/F2の0.75倍マクロとなるのだ。
勿論デジタルズーム機能を使えば、どちらのシステムでも
見かけ上の撮影倍率をいくらでも上げられるのだが、
素(す)のままの焦点距離で使う際、APS-C機での画角と
仕様の方が個人的には好みだ。(マニア層であれば、同様に
90~100mmの中望遠マクロは使い慣れているであろう)
なお、本レンズはフルサイズ対応であり、希少な開放F2
マクロではあるが、その代償として「大きく重く高価である」
という「三重苦」レンズとなってしまった。
フルサイズ機最軽量のα7との組み合わせは重量配分が
アンバランスであり、MFレンズである事とあいまって
少々使い難い。・・いや、α7の場合は、ピントリングは
丁度指の位置に来て良いのだが、絞り環がレンズ先端部で、
持ち替えが発生して操作性が良くなかったのだ。
ところが、NEX-7との組み合わせでは、さらに重量バランス
は悪くなる?と思いきや、本体側が軽すぎる為、ほとんど
レンズそのものをホールドしているだけの状態となる。
で、ここでは上手い具合に、重心位置を支えるとピントリング
も絞り環も指が届く位置になるのだ(=持ち替え不要)
これは嬉しい! このメリットがあるならば、フルサイズ機に
拘る必要は無い。今後はNEX-7(またはα6000)を
本レンズの母艦として活用する事にしよう。
なお、本レンズは現在ではSONY FEマウント品しか発売
されていないので、他機で使う事はアダプターを使っても
困難だ、EマウントレンズはEマウントでしか使用できない。
そこはやや不満があるのだが、まあ、やむを得ない。
(注:NIKON ZへEマウントレンズを装着できるアダプターが
発売されている模様だ。だがその場合Z機をあえて購入する
必要性は少なく、SONY E機を用いた方が効率的であろう)
さて、「三重苦」レンズではあるが、描写力はどうか?
当然コスパ評価が悪くなる事が予想されるのだが、
それでも、唯一無二の優秀な描写力を持つのであれば、
全般的にコスパの減点は相殺される。

描写力については、やや解像感が過剰な印象も受けるが
これは使用するカメラ(センサー)との組み合わせにも
影響される事なので、そこは不問としよう。
解像感よりも、むしろコントラスト特性の良さが魅力の
レンズであって、深みのある描写傾向となる。
描写力は全体的に不満は無い、しかし本レンズの描写・
表現力は私の評価では5点満点中4.5点であって、
これは勿論悪い点数では無いが、「感動的と言えるまでの
描写力は持たない」という評価傾向である。
なお、手ブレ補正機能は内蔵していないが、その点は
どうせマクロ撮影では、手ブレ補正があってもあまり
効果は無いので、むしろ潔いと思う。なお、α7Ⅱ系
以降の機種のボデイ内手ブレ補正には勿論対応している。
ただし、電子接点付きのMFレンズであるが故に、カメラ側の
MFアシストが常時効いてしまう(=常に画面自動拡大される)
等の課題があるので、その機能はOFFとして使うのが良い。

まあ、総合的にコスパは若干厳しい。
この価格帯(新品12万円)であれば、中古で4万円級の高性能
レンズを3本買った方が良かったかも知れない・・
だが、マニアック度だけは5点満点のレンズである、
後年になって生産中止となった際、「買っておけば良かった」
と後悔しない意味でも、少しでも「その気」があるならば
無理しても買っておくべきレンズであると言えるだろう。
三重苦でコスパが悪い事以外は、問題点は何も無いレンズだ。
(参考:中古玉数は比較的多いレンズである)
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm/f2
・描写表現力:★★★★☆
・マニアック:★★★★★
・コスパ :★★
・エンジョイ:★★★★
・必要度 :★★★★
・評価平均値:3.9
(★=1点、☆=0.5点)
なお、例によって、こういう個人評価点は、ユーザー
各々が重視する項目を設定して行うべきであろう。
私はあまり好まない手法だが、「絞り開放での解像感」
「周辺減光」「歪曲収差」等の、目で見ればすぐにわかる
ような項目を挙げるのでも、それはユーザーの好き好きだ。
または、(今回登場のレンズは全てMFレンズであるが)
AFの速度や精度、あるいは手ブレ補正機能の効能を評価
するのも有りだろう。
ただ、それらはいずれも撮影者の技能により回避できる
項目ばかりだ。だから私があげる評価項目には、それらは
一切登場しない、なんとでも撮りようはあるからだ。
あるいは、「周囲に自慢できる度」「所有満足度」
「後年での値上がり期待度」などの、コレクター的や
投機層的な評価項目も有り得るだろう、でも、それらは
私の趣向や主旨とは合致しないので、それらも個人的には
やりたく無い評価である。
まあ、このように、ユーザーには各々、レンズ(やカメラ)
を評価する為の重点項目が個々に存在している。
だから、評価はユーザー毎でするべきであり、これは大原則だ。
では何故、本記事では、珍しく個人評価点を公開しているのか?
であるが、それは、「こういう手法で評価を行う」という
参考例を開示している、という意味である。
「ここで3.9点の好評価だから、これは買うべき」などの
意味で公開している訳では決して無いので、念の為。
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さて、次はラストのマクロアポランターだ。

レンズは、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
(新品購入価格 138,000円)(以下、MAP110/2.5)
カメラは、SONY α7(フルサイズ機)
2018年末に発売された最新の等倍マクロアポランターだ。
冒頭に紹介した125mm/f2.5のスペックに極めて近いが
本レンズは、2001年当時には存在しなかった、ミラーレス機
用の(SONY FE)マウントとなっている。

上のMAP65/2が「三重苦レンズ」である事には少々閉口して
使っていたのだが、描写力的には殆ど不満は無く、およそ
16年ぶりのマクロアポランターには総合的には満足であった。
その「勢い」で、本MAP110/2.5も発売直後に新品購入して
しまったのだが、「生産の都合」やらの理由で、当初の
予定日よりも4ヶ月も遅れての発売となっていた。
本MAP110/2.5が「三重苦レンズ」である事は覚悟の上の購入
である。世に存在するマクロ(系)アポランターを全て所有
する事は、マニアの特性の「コンプリート願望」が出てきて
しまった訳だ(汗)私のルールではレンズ購入価格の上限は
13万円迄であるが、今回それを少し上回ってしまった事は
特例として認める事とした。まあ「およそ中古がすぐに出て
くるようなレンズでは無い」と判断したからである。
(注:その後の消費税増税や、新鋭レンズの値上げにより、
個人的ルールを「最大15万円迄」に引き上げる事とした)
手にしたMAP110/2.5は、やはり大柄で重いレンズだった。
冒頭のMAP125/2.5とフィルター径はφ58mmで同一だが全体に
太く、重さも本レンズの方が80gほど重い771gとなっている。
気になるヘリコイド回転(持ち替え)回数は、最短から∞
までの間で8~9回である。
ここは、MAP125/2.5の平均14回よりも少なく、まあ等倍の
MFマクロとして、ピント合わせの精密性と、操作性とが良く
バランスされている仕様だと思う。(ただし、やはり若干の
疲労を伴う)
デザインは上記MAP65/2と同様であり、高級感があるが、
鏡筒中央部が太く、先細りの印象は好き嫌いがあるか・・?
ただし、太いピントリングは、MF操作性の向上には
役立っていると思われる。
付属フード装着時は、専用の径の異なるレンズキャップが
必要となり、これは良いのか悪いのか?・・という感じだ。
(MAP125/2.5ではバヨネット式角型フードが付属していた)
なお、MAP65/2の絞り環はレンズ最前部で使い難い要素が
あったが、本MAP110/2.5の絞り環はレンズの根元だ。
(注:これが使い易い母艦と、そうで無い機体が出てくる)

MAP65/2では、使用するカメラの最高シャッター速度が
1/4000秒の場合、ND2減光フィルターを使う事が望ましいが
本レンズでは、まあ、ノーマルの保護フィルターでも多くの
カメラまたは撮影条件において、シャッター速度オーバーの
リスクは少ない。ただしSONY E(FE)マウント版でしか発売
されていないので、装着可能なカメラの種類は限られてしまう。
上記MAP65/2と同様、フルサイズ機α7系よりも、より小型の
NEX-7やα6000との組み合わせの方が、重心バランス的および
絞り環の操作性的にはしっくりくるのだが、APS-C機では換算
焦点距離が自然撮影用途には、やや長すぎる気もしている。
(注:中遠距離での昆虫や野鳥撮影向けには適している)

描写傾向は、MAP65/2と類似している、解像感や輪郭線は強く
感じるが不自然な程では無い。基本的にはコントラスト重視型と
思われ、昔のツァイス等の高級レンズのような雰囲気だ。
これは現代的な、解像感を無理に強調した「カリカリマクロ」
とは対極に位置する設計思想であろう、だがこれは悪くは無い。
ボケ質はかなり優秀であり、ボケ質破綻が出る事も殆ど無い、
逆に言えば絞り値に係わるレンズ特性への影響が少ないので
純粋に絞りを被写界深度のコントロールに用いる事が出来る。
たいていの条件で、あまりにちゃんと写ってしまうので
むしろ「レンズに撮らされている」という贅沢な不満も
出てくるくらいである。
近接撮影では被写界深度が極めて浅くなる。その状態に
おいては、SONYミラーレス機の優秀なピーキング機能でも
検出が厳しくなってくる。(同時に、球面収差等も多少
発生しているのだろうと思われる)
あまりに近接での撮影は、歩留まり(成功率)が急激に悪化
する為、適宜余裕を持った撮影距離で使うのが望ましい。
必要とあらばトリミング等で構図調整を行うのが現代的な
撮影技法だ。(注:本ブログでのレンズ紹介記事では、
過度なトリミングを行わないルールとしているが、一般的
実用撮影では、トリミングをしない事は、有り得ない話だ)
まあ、上手くピントを合わせる事が出来れば、そして、浅い
(浅すぎる)被写界深度を上手くコントロールできるので
あれば、描写力的には何も不満は無い事であろう。

「三重苦」(大きく、重く、高価)レンズ故に、誰にでも
薦められるレンズとは言い難い面が多々あるが、ある意味
「マクロアポランターの真髄」が体感できるレンズであろう。
17年程前のMAP125/2.5とは、全くの別物レンズのように
仕上がっていて、三重苦と、それに係わる操作性バランスの
面(注:母艦の機種による)以外の弱点は殆ど見当たらない。
上級マニア層であれば、持っていても損は無いレンズだ。
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm/f2.5
・描写表現力:★★★★★
・マニアック:★★★★★
・コスパ :★☆
・エンジョイ:★★★☆
・必要度 :★★★★☆
・評価平均値:3.9
(★=1点、☆=0.5点)
上記MAP65/2と評価傾向は異なるが、総合点は同じ3.9点と
なった、これはかなり優秀な評価点ではあるが、残念ながら
4点を超えない限り、各シリーズ記事での「名玉編」には
ノミネートされないであろう。MAP65/2もMAP110/2.5も
新品購入でコスパ点が悪いのが災いしている状態だ。
これが、中古市場で豊富に玉数があり、安価に購入できる
のであれば、コスパ点が上がり、申し分の無いレンズと
なるのだが・・ (参考:発売後1年を経過した状態で、
その間見かけた中古玉数は2~3本であり、相場も高価だ。
やはり新品価格が高価すぎて、不人気なのであろう)
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さて、本記事はこのあたりまでで・・
今年2019年のカメラ・レンズ系の記事は、これにて終了
であり、次く写真機材関連記事群は、2020年1月初旬から
再開する。