女性「匠さん、高倍率ズームってなんですか?」
・・・ん? ズーム比が大きいレンズのことだけど・・
「それって、遠くのものを大きく写せるっていることでしょうか?」
いや・・ そういうわけではないんだ。
じゃあまず高倍率ズームの例だけど。

これはデジタル一眼レフEOS 20Dに装着したタムロンの高倍率ズーム
正式名称はとても長いので、まあ、省略して、XR28-200と呼ぼう。
このレンズは高倍率ズームの走りで、28mm広角から200mm望遠までをこの1本で
カバーすることができる。
この時、望遠(焦点距離)÷広角(焦点距離)がズーム比だ、
なので、このレンズでは、200÷28≒7.1倍だ。
このズーム比が大きいものを、一般に「高倍率ズーム」と呼ぶことがある。
大きいというと、どれくらいか? まあ、この7倍のレンズが高倍率の走りだから、
これを基準にするのが良いだろうな。
この後タムロンやシグマからは、28-300のような、10倍前後の
ズーム比を持つものが出てきて普及しているが、それも当然高倍率ズームだ。
でも気をつけなくてはならないのは「何倍ズーム」という呼び方は、初級者が
混乱をするから本来「言ってはならない」カメラ用語なんだ。
何故か? それはたとえば7倍ズームと言うと、初級者は見ているもが7倍大きく
写ると勘違いしてしまう。 双眼鏡や望遠鏡の仕様では、まさしくそういう表現を
するんだけど、カメラは違う。 元々「何倍ズーム」というのはビデオの世界で
言われていた事で、カメラの場合にはそんな言い方をする事はなかった。
この呼び方でいちばん問題なのは、広角がどこから始まるのか?ということだ、
たとえば標準レンズというのを50mm前後と定義しよう、
28mm前後は広角だ、そして200mmというのは望遠レンズだ。
一般的な被写体の写真を撮るなら、広角は28mmあればまあ十分だし、
望遠は135mmか200mmもあれば十分だ。(すべて35mm銀塩換算)
ところが、同じズーム比10倍のレンズでも、35mm~350mm、あるいは最近の
コンパクト等の 50mm~500mmクラスだったらどうなるか?
望遠は強いけど、広角が全然足りないという事になってしまいかねない。
で、双眼鏡のような見た目の倍率で言えば、ものすごい概算だけど、カメラの世界では
たとえば50mmの標準レンズが見ているものがだいたい同じ大きさに見える1倍の倍率
だったら、冒頭の200mm望遠は、その4倍くらいにしか大きく見えない。
つまり「7倍ズーム!!」なんて書いてあっても、実際の見ためは4倍くらいしか
大きく写らない。
28-300は10倍大きく写るズームではなくて、6倍にしか大きく見えないということだ。
そう考えてみると、望遠側ばかりいくら強くても、実際には風景を広く撮りたい
こともあるだろうし、室内などで多人数を撮るには広角レンズは必須だ。
標準域から始まる「10倍ズーム」を持っていっても、広く写らないから
「あれ?困ったなあ・・」となってしまう。
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で、冒頭のズームは、28-200mmだけど、これは銀塩(フィルム)の時の焦点距離
(画角)だから、デジタルのEOSにつけると、焦点距離(画角)の換算は、1.6倍
つまり、約45mm~約320mmのズームレンズになってしまう。
これでは、広角側がどうしても不足するので、タムロンやシグマ、あるいは各メーカーに
おいては、28-200に対しては、デジタル専用で 18mm-135mm、そして
28-300に対しては、デジタル専用の 18mm-200mmといったレンズを発売している。
これらは、デジタルにおいて、銀塩と同様の「広角から始まる」高倍率ズームとなるが、
残念ながらデジタル専用レンズだから、フィルムカメラとこのレンズを共用はできない。
で、たとえば冒頭の タムロンXR28-200は、銀塩デジタル両用だから、
デジタルのEOS 20Dにつけたら、45-320mm(相当)の望遠に強い高倍率ズーム、
フィルムのEOS 7 につけたら、28-200mmの汎用的に使える高倍率ズームとなる。
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では、ここでズームレンズの典型的効果をあげてみる。

↑は、このズームの広角側で撮影した例。
花壇の花を撮ると仮定しよう。
「わ~、花壇の花が綺麗だなあ。 近寄って写そう。
あ、望遠にしたら入りきれないから広角にズームを回して撮ろう
よし、花壇の花がだいたい全部入ったな。 ・・カシャ」
という感じである。
ところが、この同じ花壇を遠くにいるときに発見して、そのままの場所から
写そうとしたらどうなるか・・

↑これは望遠側で撮った例。
「わ~、あそこに花壇があるよ。 花が綺麗だなあ・・
遠くにあるからズームを望遠に回して撮ろう、
よし、これで花壇の花がだいたい全部撮れるな。 ・・カシャ」
という感じである。
どちらも被写体の花壇の花は同じくらいの大きさに写っている、
しかし、どこか違わないか?
・・そう、写真の背景にある石像の大きさが全然違う。
花壇の花はほぼ同じ大きさに写っているのにもかかわらず、である。
これは別にズームレンズを使った場合のみならず、単焦点レンズを広角と望遠と
交換して使っても同じ効果が出る。
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でも、初級者は、写真を撮るとき、この2枚の写真は被写体が同じ大きさに写るから
同じものだと頭の中では認識して撮ってしまう。
もっと言えば、被写体を画面にいっぱいに大きく写そうとズームレンズをぐりぐりと
回してしまう。 足が止まっているのは言うまでもなく、また、背景がどんな状態に
なっていたら写真として自分が望むものができるのかは考えてもいない・・
この作例2枚は、花壇と石像の距離差が比較的小さいから、あまり極端な変化は
でていないが、背景の距離差が大きい場合、このような遠近感の変化はさらに出るし
背景のボケ量もズーミングによって大きく変わってしまう。
(注:この例では説明の為背景のボケ量はあまり極端に変わらないようにしている)
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そしてズームレンズを望遠いっぱいにして、絞りを開放にして、最短撮影距離近く
まで被写体に近寄って写せば、背景をボカして撮影をすることができる。

このやり方を覚えると、初級者にとっては楽しい・・
つまり見た目では背景がボケていないのに写真にするとボケる。
そして、今までのコンパクトや写るんです、では背景をボカして撮ることはできなかった
ので、「一眼レフは面白い」とばかり、どれもこれも、ズームを望遠いっぱいにして
撮るようになってしまう。
でも、良く考えてみれば、そういう撮り方をするならば、あえて望遠側開放f値が
暗いズームレンズで、シャッター速度の遅さによる手ブレや、あまり極端に背景を
ボカすことができないので常に被写体に近寄らなくてはならないという撮影条件を
強いられるならば、単焦点の大口径や、単焦点のマクロレンズの方が使いやすく
はないだろうか?
つまり、ズーミングで変換するパースペクティブ(遠近感)が思うようにならないならば、
背景を含めた構図やアングルをコントロールするのは、初級者、いや中級者
レベルでも難しすぎる。
だったら単焦点でパースペクティブの変化をあくまで撮影距離というだけの要素で
自分のコントロール下においたほうが構図や構図上での作画意図を決めやすい。
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「なるほどねえ・・ ズームは、なかなか難しいところがあるのですね」

カシャ。
まあね・・ でも、構図をあまり意識しないでとっさに撮るのは便利だよ(笑)
ちなみに、構図をあまり意識しないというのは、ズームの目的を考えるに逆説的で
あると思うかもしれないが。
まあ、良く考えてみればわかる。
上のポートレートで女性の顔の前に部分の背景になんやらゴチャゴチャあるのを
除こうとしたら、本来はアングルはここであってはいけない、もっと右から撮って
顔の前をすっきりさせたいところ。 そしてズーミングをして焦点距離を変えると
背景の遠近感が変わり冒頭の2枚の作例のように、背景の入る範囲や大きさが
変化してしまい、おまけにボケ量も変化してしまう。
そんなのとっさに考えて変えるのは無理だよ・・
全部変えようとしたら「足を使って前後左右に動き」「ズーミングの焦点距離を変え」
「絞り値を(ズームではあまり変化しないという弱点があるのに)変え」なくては
ならないという複雑な作業を同時に行わなくてはならないからだ・・
だったら、結局あれこれ考えずに「ズームを回して、カシャ」という少々手を抜いた
撮影になってしまいかねない。 背景がどうなっているかは、時の運だ。
もう「上手く撮れていたらラッキー」という世界かもしれない。
真面目に撮ろうと思ったら、大口径の単焦点で背景を意識しつつ最適のアングルに
足を使って動き、背景のボケ量を意識しつつ被写界深度の可変範囲が大きい絞りを
ズームではおよびもしない、f1.4だとかf1.8のあたりから必要に応じて調整する。
だから、ズームでは結局「構図をあまり意識しないでとっさに撮る」と逆説的に
言ったのはそういう意味がある。
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それから、被写体を平面的に撮るのだったら、ズームというのはあまり意味が無い、
たとえば、以下のような写真

実はこの写真は、画面を約半分くらいトリミングしたもの、
花びらの位置は結構遠かったのであるが、ズームを望遠側にいっぱいにしても
まだかなり小さかった。 そこでとりあえず撮っておいて、あとでトリミングで
約2倍(面積的には4倍)に拡大したもの。 こうした平面的被写体では、
ズーミングの変化によるパースペクティブの変化などはあまり関係が無い。
ちなみに画素数は200万画素で撮っているから、50万画素相当まで落ちるが、
ブログサイズでは殆ど影響は無い(528x352ピクセルでは18万画素しか無い)

このズームレンズはコントラストのメリハリが少ないが、まあ、単焦点に比べては
画質的な弱点は、やむをえない面もある、そしてデジタルにおいてはレタッチで
そのあたりをある程度調整する事もできるので銀塩時代ほど神経質になる必要は無い。
あるいはむしろ作例のような輝度差が大きい被写体状況においては、コントラストの
低さというのは弱点にはならない場合もある。
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ズームの弱点はむしろ最短撮影距離にある。
もっとも近年のズームレンズではそのあたりもだいぶ解決されてきているのであるが
このXR28-200においては、全域49cmであるので、200mm望遠側ならこの数値は
十分に満足いくが、広角側においてはかなり不満である。
(焦点距離の10倍以内が最短撮影距離の目安。つまり28mmなら28cm以内)
望遠側でマクロ撮影すれば良いでは無いか?と 思うかもしれないが、
よく言ってるように、広角マクロが必要な状態も多々ある。

これはGRDによる広角マクロ。少なくともこのズームレンズでは撮れない画(え)である。
広角域における最短撮影距離の足りなさはやはりズームレンズにおける大きな不満だ。
そしてやはり気をつけなくてはならない事は、被写体をどれくらいのサイズに
大きく写したいか? という部分に関しては、基本的にズームに頼らず、撮影距離を
もって調整するのが良いという概念だ。
マクロレンズの例を持ち出すまでもなく、被写体に近寄れば被写体をいくらでも
大きく写すことができる。
だから、大きく写せないという不満に関しては、「望遠の焦点距離が足りない」
のではなく「(広角の)最短撮影距離が長すぎる」というのがむしろ問題と言える。
結局だから、高倍率ズームを1本持っていても万能ではなく、
ついぞGRDなどの広角マクロができるサブ機が必要になるということだ・・