ソフトレンズというと、なにやらコンタクトレンズのような柔らかいものを連想
してしまうのであるが、カメラ用のソフトレンズは、柔らかいレンズでは無い(笑)
とは言え、↑の写真のようなクラッシックな外観をしているわけでもない(笑)
まあ、見た目は普通の一眼レフ用交換レンズである。
普通のレンズと唯一違うのは、ソフト目盛というのがついていて、これを適宜回すと
被写体を柔らかく(紗がかかる、ソフトフォーカスになる)写すことができる。
冒頭のクラッシックカメラの写真がその効果でであるのだが、まあ、まずは色々な被写体を
ソフトレンズで撮ってみよう。
実はソフトレンズの歴史は古く、銀塩時代、MF時代のかなり初期のころからソフト
レンズは存在した、画像がソフトになる理由であるが、簡単に説明すると収差を
利用しているからである。 もっと詳細に言えば、普通のレンズは被写体から
来た光は、レンズにより1点に集中して、画像を鮮明に写すことができるのだが
ソフトレンズは、その光束が1点に集らないという球面収差をあえて作り出して
いるレンズである。 1群2枚など比較的単純なレンズ構成でこの仕様を作り出す
ことができるし、レンズの性格上、あまり高画質を得る必要は無いので安価に
作ることもできるので、結構昔から存在しているのである。
そしてMF時代の代表的なソフトレンズ、たとえばケンコーやキヨハラ社製のそれは
絞りを絞り込むことでソフト量を調整するタイプのレンズが殆ど全てであった。
つまり絞り開放時で最大ソフト量、絞り込むとどんどん収差が消えて普通のレンズ
とあまり変わらない写りになるという仕組みである。
そしてMFで絞り開放ではソフトレンズを使った場合で肉眼でのピント合わせは
極めて難しかったので、ピント合わせの利便性やソフト効果の確認のため、それらの
レンズは絞込み測光やプリセット絞りという仕様になっていた。
AF時代、キヤノンのEOS用のEF135/2.8SOFT とミノルタα用AF100/2.8SOFT
の2本のレンズだけは、AFが効き、かつ、絞りの値とはあまり関係無く、
ソフト量を別途調整できる目盛がついていたことから、大変重宝するレンズとなった。
しかし、世の中には、ソフト効果を出すためのフィルターも安価に売られており、
一般的な用途であれば(たとえば女性ポートレートや結婚式の花嫁の撮影、あるいは
花の撮影など)ソフトレンズでなくてもフィルターで十分、特にマクロと併用する
ならフィルターでないと無理、ということもあり、ソフトレンズはほとんど売れて
なかったと思う。
ただ、厳密に言うと、ソフトフィルターとソフトレンズではその効果が異なる、
特にハイライト(光が強くあたっている部分)での、光の滲み(ハロと言う)が
両者では全然違うので、ソフトレンズでなければ得られない描写というものもある。
また、最近ではアフターレタッチにおいてもソフト効果を簡単に付与できるので
ソフト量やハロの量などを適宜パラメータとして調整してあげれば良いので、
手軽になってきて、ますますソフトレンズの需要は少なくなってきた。
今回使っている(コニカ)ミノルタのα用のソフトレンズAF100/2.8 Softは、
以前は7万円台の定価で販売されていたが、2005年ごろに発売中止になり、
さらに、2006年のαショック(=コニミノのカメラ事業撤退とSONYへの移管、
ちなみに本来のαショックとは 1985年の本格的AF一眼レフα-7000の発売の
事を指す)により市場から一瞬で消滅し、プレミアム価格により取引されることに
なってしまった。
私は数年前に中古で35000円で購入したのであるが、市場で見かけなくなってから
オークションで20万円近くの価格で取引されたこともあると聞く(汗)
いつも「無くなってから探すのはもう遅い」と言っているのであるが、
それにしてもその高騰ぶりはあきれるばかりである。
そして未だに、中古市場で見かけることは、まず無い・・
EOSユーザーだったら、EF135/2.8SOFTが、今なら2万円以下の中古相場で入手できる
ので興味があれば買っておくのが良いであろう。
ただし、レンズ本体の描写性能は、ミノルタもキヤノンも同スペックの通常の単焦点
よりは劣ってしまうのはやむを得ない、だからノーマルのレンズにレタッチでソフト
効果をつける、という選択肢もありだし、
逆に言えば、レンズの基本性能などは、今時はある程度レタッチでコントロール
できるから、あまり気にしなくても良い、という考え方もできる。
・・というわけで、最後の作例は、GR Digatal で普通にパンフォーカスで撮った
写真に、後づけ(レタッチ)の、ソフトフォーカス加工を施したもの。
まあ、そういうことで、ソフトレンズは必携のレンズではなく、あくまで興味が
あれば持っていても悪くない、という範囲で留めておくのが良いであろう。
比較的時間に余裕がある場合での、女性ポートレート撮影、結婚式、花の撮影、
あるいは今回の作例のような古い町並み、などの撮影には役にたつ場合もある。