ブログの撮影仲間である女性のKさんから、プレゼントを貰った。
「匠さん、これ・・」
周囲にはブログの友人達。「匠さん、おやすくないね・・・」そんなヤジが飛ぶ(笑)
・・・なんじゃこりゃ~?
「私のレンズ、壊れてしまって・・ 修理出したらこれが故障した部品だって・・」
周囲にいる仲間も寄ってきて、「なんだこれは?」と頭を捻る。
・・・ううむ、私も最近のレンズは分解したことないけど、おそらくエンコーダだな。
「エンコーダ~??」
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そう、エンコーダ(Encode,Encoder)とは、パソコンあるいはデジタルの用語で
符号化という意味で、具体的にはアナログの情報をデジタルに直す処理のこと、
あるいは、その機械、ソフトなどを言う。
そんな機械(部品)が何故カメラのレンズに入っているのか?
それは、レンズの(アナログ的な)情報を、カメラに伝える目的があるからである。
「レンズのアナログ情報って何だ?」
・・・具体的には、それは3つある。
1)開放絞り値、あるいは、ズームの場合、各焦点距離毎に変化する開放絞り値
2)ズームレンズの焦点距離
3)レンズがピントを合わせた距離(合焦距離)
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このうち、昔のマニュアルカメラでも、AE(自動露出)を使う場合などは、
レンズの開放F値(開放絞り値)をボディに伝達する機構を必須とするマウントも
多数存在した。
有名なのは、ニコンAiマウントである。
Aiマウントでは、Ai爪というハード的な機構を持ち、これにより開放絞り値をカメラボディが
理解し、露出計の値との組み合わせで、絞り込んだり、AEを実現するのである。
もっとも、この方式は単焦点レンズだと有効に働くのであるが、ズームレンズで
開放F値変動タイプ(たとえば、28-80mm/F3.5-F5.6など)を使うと、広角端であれば
問題無いが、望遠側にズーミングをした時点で、ボディが知りえる開放F値が変化
してしまう。
しかしそれでも、入射する光の量が変化するのだから、光学的な処理により露出値が
狂う心配は無い。
困るのは、絞りリングに表示されているF値と、実際のF値が異なる事である。
それは、具体的例としては、28mm側で、絞りリングをF3.5に合わせたとしても、
80mm側にズームすると、実際の絞り値はF5.6にまで落ちてしまう事などを意味する。
もし、絞りリングではなく、ボディ側のダイヤルで絞りを制御しようとすると、
28mmでF3.5に設定しても、80mmでF5.6に落ち込み、ズームを戻すと、またF3.5に戻る、
これでは、たとえばフラッシュの到達する距離を手動(暗算)で計算しようとすると
わけがわからなくなる。 だから、絞り値は、たとえばボディでF5.6にセットしたら、
ズームが変更されても、同じF5.6のままである方が望ましい。
ニコンAiマウントでは、現在でも多くの絞りリングを持つレンズが存在しているが、
このズーミングの問題を回避するために、絞り値をレンズではなく、ボディ側から制御する
場合は、絞りリングを最小値に固定しておく事を要求される。
そこで、ニコンの入門用のズームレンズなどでは、もう最初から絞りリングを持たない
タイプのものを販売されているし、中級機以下のニコン製のカメラでは、絞りリングを
一切使えないようにして、ボデイのダイヤルのみで制御するような仕様になっている。
しかし、1959年発売のニコンFから現代に至るまで、50年近くもレンズの互換性を
重視しつづけたニコンであるから、高級レンズには依然として絞りリングが存在し、
かつ、高級機では、ボディ側のダイヤル以外に絞りリングの使用も可能な設計としている。
ただ、これらの関係は複雑であり、初級者が簡単に理解できるものでは無いかもしれない、
なので、ニコンの高級機と高級レンズを持つ初級者にこれを教えるのは大変苦労する。
結局「絞りリングは使わないで、最小絞りに固定して、ボディ側で制御するように」
としか言えない。
ちなみに、絞りリングを持つ互換性の高いシステムを提供するPENTAX もまったく
同様の問題があり、初級者の悩みどころである。
なお、EOS やα、フォーサーズでは、最初から絞りリングは存在していない事を述べて
おく。
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さて、寄り道が非常に長くなったが、ともかく、開放絞り値はレンズからボディに伝達
しなければならない、リングが無くて、あるいはそれを使わないで、どうやって
その情報を伝達するのかというと、幸いにして現代には機械的な手段の他に電子的な
手段がある。 簡単に言えば、レンズの中に入っている、CPUやROMといった
電子部品が、電気接点を介してボディにその情報を教えるのである。
単焦点レンズであれば『私は、F2.0のレンズですよ』と、だけボディに伝え。
ズームであれば、焦点距離はさておき、『私の今の開放F値は、F4.5ですよ』などと
伝えておけば良い。 ちなみに設定した絞りの値は、レンズ側の絞りリングを使わない
状態であれば、レンズの情報というよりは、むしろ、ボディ側の持っている情報である。
だから、『今回は、F5.6まで絞りなさい』という情報は、レンズからボディへでは無く
ボディからレンズに向けて伝える事になる。 したがって、現代のシステムでは開放F値
以外に、現在の絞り情報をレンズからボディに向けて発する必要は無い。
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次に、焦点距離の情報である。
これは、具体的には、今ズームが何mmになっているか(画角はどれくらいか)という
情報である。 これに関しては、レンズ側で人間がぐりぐり回すものであるから、
レンズからボディに対して常にその情報を伝えてあげる必要がある。
『ん? ズーム変えたって写る範囲が変わるだけだろう? なんでそんな事を
レンズからボディに伝える必要があるんだ?』
・・・おっしゃる通りである。 現に一昔前までのカメラ・レンズのシステムであれば、
これは不要な情報であった。 ズーミングで写る範囲が変化するが、
だからといって露出の設定やらピントの設定やらを変える必要は無い。
だから、「エンコーダ」なんか、昔のズームレンズには入ってなかったし、それで
困る要素も何もなかった。
でも、今のカメラシステムでは、焦点距離情報が必要な場合もある。
様々な情報をカメラの内部でどう処理するか、というアルゴリズムについては、
残念ながら一般には公開されていない、各社のノウハウである。
しかし、それを知らなくても、容易に推察できるものはある。
その一つに、フラッシュ(ストロボ)のズーミング制御がある。
たとえば、広角28mmでフラッシュを使う場合は、フラッシュは広い範囲に均一に
光を拡散させなければならない。 また、望遠90mm側でフラッシュを使うならば
その画角に応じた狭い範囲に光を集中させる必要がある。
そこで、比較的新しいフラッシュ(あるいは外付けストロボ)では、レンズの焦点距離
に応じて、機械的(あるいは電子的に)、フラッシュの照射範囲を変えられる仕組みが
ついている。 初期のこの手のフラッシュは、フラッシュ側で手動でレンズの焦点距離
を設定した事もあったが、ズームを多用する現代の撮影技法では当然自動化して欲しい
部分である。
これはあくまで一例であるが、そうしたニーズに応え、現代のズームレンズには、
焦点距離の情報を、レンズ側からカメラボディ側(あるいはそれを介してフラッシュへ)
伝える機能を持つわけである。
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なお、今回エンコーダが入っていたKさんのズームレンズは、28-300mmといった
銀塩用のレンズではなく、18mm-200mmのデジタル専用ズームである。
けど、焦点距離の情報はどうボディに伝わっているのであろうか?、単純に広角ならば
18mmとしてボディに伝わってるのではなかろうか? 何故なら、焦点距離(画角)の
換算比率は、各社、というより、各カメラの機種によって異なるから、レンズ側は
そこまで面倒見切れないのである。 じゃあ、フラッシュに伝わる情報はカメラ側が
変換するのか? デジタル専用フラッシュなんて無いのだから、おそらくそうして
いるのであろう。 さもないと、18mmですよ、なんて、そのままフラッシュに
伝えたら、フラッシュの内部で、本来28mm程度までの反射鏡が、ウイーンって開いて、
いってパツンと壊れてしまうかもしれない(笑)。(注:これはジョーク)
だから、きっと、デジタル一眼は、カメラ側が、しっかり付属品に対しても、
焦点距離の情報を変換して伝える機構を持っているのであろう。(・・・と思う)
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さて、最後は、ピント位置(合焦距離)の情報である。
これも、以前のカメラ・レンズのシステムにはなかった概念である、
たとえば、MF機の原理からすると、ピントの距離の情報はカメラは何に使うのか?
別にどこに(どの距離に)ピントが合っていたって、いいじゃないか・・
・・・となるのであるが、現代のシステムは違う。
まずは、先ほどのフラッシュの制御に関して。
たとえば、ある焦点距離に応じて、フラッシュの照射角度が変わるとして、
じゃあ、5m先にある被写体(つまり、ピント位置が5mの場合)と、70cm先の被写体に、
同じ量のフラッシュをあびせたらどうなるか?
たとえば人物であったら70cm先の被写体は、光が強すぎて真っ白になってしまうだろう。
(勿論、最近の賢いカメラでは、TTLフラッシュという機能があるのだが、まあ、最初から
距離がわかっていればTTL機能に頼らずとも、フラッシュを焚く時点で強さを変えて
あげる方が合理的である。)
まず、この時点で、距離情報は意味があることになる。
さらには、評価測光の露出計のアルゴリズム(計算方式)にも、合焦距離情報は
意味が出てくると思われる。
具体的には、簡単に言うために、画面を5分割して測光する計算方式のカメラがあった
とする。 5分割の例としては、中央部、左上、左下、右上、右下 である。
カメラが測光すると、画面の中で、中央部がとても暗く、左上がとても明るかったとしよう。
・・・さて、カメラの評価測光は露出値をどう決定するのか? 例をあげる。
A)左上はおそらく太陽だろう、これを無視して、中央の暗い部分を明るくしよう。
B)いやいや、これは左上と中央の中間の明るさにしてあげよう、それが親切だ。
C)う~ん、きっと、夕日に映える人物のシルエットだよ、だから左上の夕日に
露出を合わせてあげて、中央部はおもいきり暗く(黒く)してあげよう。
・・・正直、カメラから見て、どれが正解なのかはわからない。
相撲の行司ではないが、もし同体だなと思っても、とりあえずは、どちらかの力士に
軍配をあげなくてはならない・・ 行司さんの責任は非常に重いのであるが、まあ
同じようにカメラの露出計の責任も重い。 A、B、Cのどの答えを選択するかで
最終的にできあがってくる作品(写真)の意図がまったく異なるからである。
そこで、手馴れた上級者以上のカメラマンは、こんな時は、カメラに過剰な責任を
押し付けることはしない。
「評価測光」を、中央重点、あるいはスポット測光に切り替えて、自分が意図する、
A、B、Cのいずれかに応じた露出の調整(補正)を行うのである。
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だが、もし、ここで、カメラが中央の部分にピントを合わせていたといして、
そのピントの距離をカメラが知ることができるのであれば・・・
カメラによる露出の判断は少し容易になる。
同じように、中央部がとても暗く、左上がとても明るい時。
もし、距離計が∞(無限遠)を示していたらどうなる? カメラはこう判断する。
D)う~ん、距離無限なら風景写真に違いない。 これは、左上は太陽だな、
中央は影だよね・・ ならば、答えとしては、太陽の部分を弱めつつ全体を平均化
する露出に決めてあげよう。
さて、同じ状況で、ピント位置の距離が2mだったらカメラはどう考える?
E)ふむふむ、おそらく、人物の逆光ポートレートだな。 ならば、人物(あるいは
特定の被写体)は、明るめの露出にしてあげなければなるまい。 そしたら、
左上の明るさは無視して、中央の暗い部分を適正にするまでプラスに上げてやろう。
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このように、距離情報をボディが知る事で、露出精度が上がる。
・・・いや、上がると言うと語弊があるかもしれない。
「露出の失敗が少なくなる可能性が高まる」という事である。
こうした、距離情報をボディに伝えることができるタイプのレンズを「Dタイプ」
または「距離エンコーダ内蔵」と言って、ニコンや旧ミノルタのレンズでは、
一般のレンズとは区別して売られていた。
(勿論、たとえDタイプのレンズを使ったとしても、ニコンF2やらF3の古いMF機や
新しいカメラでも評価測光を持たない FM3a等に使っても露出値は何も変化は無い)
そして、たとえDタイプのレンズであったとしても、たとえば前述の逆光ポートレートに
おいて撮影者が、人物を普通に明るく写したいのか、それとも、シルエットで表現したい
のかは、カメラ側は知るよしも無い。
だから、ここでも、上級者は、評価測光のモードの使用をあきらめて、中央重点や
スポットに切り替えて、自分なりの作画意図に応じた露出の設定を行う。
場合によっては、反射式のカメラ内蔵露出計にも頼らず、単体の入射式露出計を持ち出し
モデルさんの所まで行ってその場の光を計るという手法を使う事もあるかもしれない。
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さて、このように、レンズの中に入っている部品であるエンコーダは、
開放F値と、レンズ焦点距離と、ピント位置(距離情報)の3つをカメラボディに
伝えている事が予測できた。
しかし冒頭写真のエンコーダは、よく見ると、2つの金属片、つまり2種類の情報しか
伝えて無い様子だ。 だったら、どれとどれか?
まあ、普通に考えたら、レンズの開放F値は、焦点距離によって依存して変化する
情報であるから、エンコーダを持つ必要は無い。 つまり、人間がぐるぐる回す
アナログ的な操作をデジタルの数値に直して伝える役割がエンコーダであるから、
このレンズには、ズームリングとピントリングの2つがあるので、その2つの値、つまり
レンズ焦点距離と、ピント位置(距離情報)を伝えるのがエンコーダの役割である。
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次に、エンコーダに書かれている模様に着目してみよう。
これは、デジタルでお馴染みの2進数である。
2進数は、1、2、4、8、16という数字を組み合わせて、数値を表す。
そして、写真下側のエンコーダは、4bit すなわち、1、2、4、8の4ケタの
数字を組み合わせてデジタル情報を作り出す。
具体的には、0000(2進数)~1111(2進数)となり、10進数で表すと、0~15までの
16通りの数値を表すことになる。
写真右側のエンコーダは、5bit つまり、0~31までの32通りの数値を表現できる。
『じゃ、焦点距離と、ピント位置。どっちがどっちだ?』
・・・まあ、それは推察になるが、おそらく、4bitの方が焦点距離で、5bitの方がピント位置
であろう。 bit数が少ない方が粗い情報しか表現できないから、重要度が低い。
『むう、では焦点距離は、0mmから15mmまでしか表現できないのか?』
・・・いやいや、そうでは無い。 前述の通りこのレンズは、18-200mmのズームである。
つまり、簡単に言えば、0番から15番までの16通りの札に、18-200までの数字のどれか
が割り振ってあるという事である。
『ふむふむ、たとえば、0番は、18mm 、1番は20mm・・ という具合か?』
・・・その通り。 けど、ここで注意する事がある。
何番を何mmに対応させるかというのは、ちょっと計算が面倒だという事である。
もし、算数の世界で、単純に等間隔に、番号と焦点距離を対応したいとしよう、
計算式は以下の通り。
(200-18)÷(16-1)≒12.1 すなわち、約12mm毎に焦点距離が変わる。
すると、0番=18mm、1番=30mm、2番=42mm、3番=54mm・・・
14番=188mm、15番=200mmm
『をいをい、広角のあたり、メチャ粗くないか? で、望遠は細かすぎるよ・汗』
・・・うん、いいところに気が付いた、実はレンズの焦点距離というのは、広角側
では、1mmとか2mmとか違っても変化が大きいのに、望遠側では、10mmや20mm
程度異なっても大きな差は無いんだ。
これを別の言葉で言えば「焦点距離は、リニア(直線的)に変化するのではなく、
エクスポネンシャル(指数的、対数的)に変化している」
『ひえ~、指数とか、対数とか、さっぱり、わからないよ・・汗』
・・・なんで分からない? 学校で習っただろう?
・・・等と言っても始まらない。
『何で絞り値の数字の変化がわからないんだ、簡単だろう?』と初心者に言う中級者と
同じことで、理解しずらい事は、簡単な例で教えれるようでなければならない・・・
・・けど、正直、ここの概念は難しい。
簡単に言えば、広角側は細かく変化して、望遠側には粗く変化するような数字の並びを
作り出さなければ、エンコーダにより焦点距離情報がどう伝わるか?、という推定は
できないのである。
「う~ん、何か簡単に計算して示せる手段は無いものか?」
「C言語か、Basic (Visual Basic)などのプログラミング環境があればいいのだが・・」
・・・しかし、昔のMS-DOS の世界とは異なり、今時のWindows では、そんな
プログラミング環境は入っていない(汗)
「ならば、EXCELの表計算か、あるいはVBAなどの計算機能を使うか」
・・・使い方が良くわからん・・ というか計算式がよくわからん。
for I=0 to 15 みたいなループを作って、logで変化する差分を計算していけばいい、
理屈はそんなもんだが、計算式はようわからん(汗) きっと、プログラミング環境があって、
色々試行錯誤すればすぐできると思うが、頭の中で式を考えているだけでは
バグだらけだ(笑) とは言え、手計算や電卓で試行錯誤なんかやってられないし、
なんか簡単な計算手段は無いものか・・・??
おお、そうだ、アレがあった、アレ・・・ 押入れをゴソゴソ・・・
・・・「じゃ~ん、計算尺~」 (<ドラエモンか? 笑)
10年ほど前に知人に譲ってもらった。計算尺である。
私の世代でも、世の中には既に電卓があったので、これを実用としていた訳では無いが、
この計算尺は、「アナログ計算機」としては実に合理的な機能を持つ。
計算尺の理屈は勉強したので知っている。
そのへんをはしょって簡単に言えば、
「さほど精度がいらない連続する掛け算に非常に強い」計算機である。
具体的な例をあげる。
「18という数字に、2.5から5.5までの数字を0.5刻みに掛けた各々の結果を出しなさい」
もし、プログラミング環境やら、Excel の表計算が無い場合、電卓でこれを計算する
とすると、18 x 2.5= 、クリア、 18 x 3 = クリア、 18x3.5= ・・・といった
同じようなキー操作が延々と繰り返される、非効率的な処理をしなければならない。
対して計算尺の場合はどうか?
「D尺の1.8にC尺の1.0の目盛をあわせ、C尺のカーソル位置の2.5~5.5の各々に
対応するD尺の数値を読めば良い」
実際にやってみるとわかるが、こういう計算の場合、計算尺は電卓の数倍早く計算が
可能である。
「18mmから200mmまでの間隔で順次対数的な焦点距離を15分割して答えを出せ」
という課題の計算には最適なアイテムと直感的に思った。
じゃ、計算尺で、対数計算をするのは、どうするのか・・
フフフ・・計算尺の原理は、実は対数目盛にあるんだ。
普通の定規を2つ計算尺のように組み合わせると、足し算と引き算を可能とする
アナログ計算機となる。 しかし、対数目盛をふった定規でその操作をすると、
対数の足し算は掛け算 log(a) + log(b)=log(a * b) の公式により、掛け算と
割り算が可能なアナログ計算機と変貌する。 それが計算尺だ。
そして、計算尺における対数計算は、普通の定規のように等間隔目盛となるので
その等間隔目盛を 15等分した値を順次拾っていくだけで、数秒で全ての答えを
出すことができるであろう・・・
・・・じゃあ、やってみよう・・・
「ぐっ! (汗) 操作がわからん・・・(泣)」
まあ、それはそうだ、原理を知っていれば、掛け算や割り算、あるいは三角関数や
対数を求めるという、ごく初歩的な計算はできるが、今回のような、中級者向けの計算は、
より複雑な原理の理解と、計算尺の操作に慣れていなければ出来ない。
ましてや計算式そのものも、ちゃんと思いついてないではないか・・
慣れない計算尺の上で、試行錯誤するなんて考え、甘くないかい・・(汗)
即刻断念・・ きっと、計算尺の中上級者であれば、苦もなく簡単に計算するので
あろうが、そのへんは素人のあさはかさであった・・(苦笑)
ちなみに、この計算尺はリコー製である、おそらく30年ほど前の製品であろう、
このリコーの計算尺の写真を撮ったカメラは、リコーGR Digitalである。
「う~ん、なんだかなぁ・・時代の変化を感じるよ・・」
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そして、計算尺が使えなかった反省は、まるでカメラの操作みたいなものであるとも思った。
まずは原理の理解、これを知らなければ、適当に絞りやシャッター速度や露出補正を
いじくったところで、まともな写真は撮れない。
そして、操作の理解。 露出補正の操作はこれだ、ということがわかっていても、
それが何を意味するのか、どんな時に露出補正をするのか、ということがわからなければ
やはり写真は撮れない。 さらには、慣れないカメラを使って、どこに露出補正が
あるのだという事もわからなければ、やはり意図する写真は撮れない。
そして原理の応用とその知識、あるいは経験・・ つまり、原理だけ知っていても、
どんな光の状況のとき、どれくらいの露出補正をするのか、あるいはどう補正したら
どんな効果になるのか、そして、それが作画表現上何を意味するのか・・
そういう事を理解していないと、やはり高度な表現技法は使えない・・・
つまり、計算尺で言えば、計算結果を出すことができない。
さらには、原理も応用もあいまいな状況で、色々試行錯誤しても求める結果は出ない。
つまり、計算式がわかっていない状態で計算尺上で色々試してみようとしても、
答えはやはり出てこない。
すなわち、絞りとシャッターを自在に制御できるM露出モードで撮ったとしても、
原理も応用もあいまいなままで試行錯誤を続けていたら時間の無駄である。
計算尺の上級者(今時そんな人がいるのか?汗)に聞けば、この程度の計算は
さっさとこなす事であろう・・・ けど、上級者は、計算尺の操作に長けているだけ
ではなく「レンズの焦点距離を4bitで対数的に分割する」という目的を理解して
それを計算式と計算尺の操作に展開する知識と経験を持たなければならない。
単に「計算尺のカーソルをいかに正確に目的の数値に合わせるか」、という技術・技法の
話では無いのである。
まあ、ともかく、今回は色々反省事項になった。
別に「レンズの焦点距離を4bitで対数的に分割する」結果が欲しいわけではない、
時間をかけて冷静に解けば、PCなり電卓なりで、答えはすぐ出る事であろう。
それよりも、計算尺を持ち出せば早いという発想のプロセスは自分なりに評価したい
と思った。ただ、発想はあっても、実践するための知識、技術、経験が無いもどかしさ、
それを知り、それがカメラの世界でも言える事がわかった事がとても勉強になった。
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私が今回求める結果は、別に4bitで分割した計算結果を知らされる事でもなく、
ましてや計算尺の使い方や今回の答えの出し方を知らされる事でもない。
写真の写し方がわからない、と言うと、「ああ、それじゃ、そこで、+0.5に
露出補正して・・ その場合、このダイヤルをこういう風に回して・・」と教える
方法では全然的外れなのであろう。
自分が必要とする結果を出すために、どんなプロセスを踏めばよいのか、その
流れを理解することが必要である、ということが、計算でも写真でも同じなんだなあ、
とつくづく思った・・・・