さて、今回も超基本のカメラのメンテナンスについて。
「トラブルシューティング」の(その1)である。
トラブルシューティングとは、何か(カメラ)に問題が起こった時に、どう対処するか
のことであるが、普通はデジカメも含め、今時の電化製品には、取扱説明書の後ろに
「こんな時は△△をする」と長々と表と説明が出ているのであるが、まあ、普通は
そんな所まで読まないか、読んでも覚えてないか、撮影時に説明書をいちいち持って
いかないので、まったく役に立たない(苦笑)
で、まあ操作ミスとかによる分はしかたない面もあるのであろうが、
撮影時、出先で問題になるの致命的な故障は、以下のような事である。
①電池切れ
②AFカメラやデジタルカメラで、(暴走して)まったく動かなくなった。
③AFカメラやデジタルカメラで、シャッターが切れなくなった。
④マニュアルカメラや機械式カメラで、シャッターが切れなくなった。
⑤銀塩カメラで、フィルム給送系のトラブル。
⑥デジタルカメラ(や銀塩)で写真が真っ白、または真っ黒になった。
(注:銀塩の場合は、シャッター速度異常が感知できなければ
現像してみるまでは、まずわからないが・・・)
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今回は特にカメラ本体の電気系のトラブルについての対処方法をあげる、
機械系のトラブルあるいはレンズと関連するトラブルについては、また
別途記事を書いてみたいと思う。
◇まずは、電気系でもっとも困る「暴走」である。
カメラの電源は入っているのだが、エラーマーク(表示)が出たり、あるいは
エラー関連の表示がなくとも、操作をまったく受け付けなくなってしまう。
そして、メモリーカードに画像を書き込み、あるいは読み出しの最中にそれが
起こった場合は、最悪は、メモリーカードの中のデータの一部または全部が
(電気的に)壊れてしまい、読み出せなくなる場合もあるので、まずその点は
覚悟しておくしか無いだろう。
ともかく時間を置いても回復しない場合は、電源スイッチを切るしかない。
カード関連の読み書きに関連しない場合は、まずそれで回復すると思う。
銀塩のAFカメラだったら、まあ、裏フタを開けない限りは、電気的故障でも
撮った写真はしっかり残っているので問題は無い。
電源スイッチ自体が切れない場合も稀にある、
そんな時は、しかたが無い、いきなり最後の手段だが電池を抜いてしまう
のが最強の手段である。
↑①電池フタを開けて電源を強制的にOFFにする。
注:今回は何度か同じ書くが、この手段は銀塩カメラの場合にはラフにやってもいいが、
デジタルの場合は、よく注意をして本文の内容を理解してからでないとやってはいけない。
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そもそも何故「暴走」が起こるか、というと、これはAF、デジタルカメラや電化製品に
搭載されているコンピュータ(CPU)に独特の現象である。
正常にCPUが計算をつづけていればよいが、バグ(プログラム上のミス)や
電気的なノイズによるなどの原因で、CPUのある処理が無限に繰り返されて
しまったり、あるいはやってはいけない計算(簡単な例としては、ゼロで割り算
するなど・・(実際には対処されているが、例としてあげている)たとえば、0÷1=0で
あるが、1÷0は答えが出せない)をやってしまった時などである。
コンピュータは、そんな場合は、リセット(初期化)することによって、また再び
正常に計算を続けることができるようになる、ユーザーができる簡単な処置としては、
電源を切って入れなおせば良い。
機械的にOFFできるスイッチがついているカメラならば強制的に電源を切る
事は容易であるが、電源スイッチ自体もコンピュータが状態を監視している
カメラも多々ある、それに何の得があるかと言えば、簡単な例を上げれば、
いきなり電源がOFFされても、コンピュータがすべての処理を終えて安全に
終了できるまで待てるからである、そうでないと、いきなり計算の途中やメモリーカード
に書き込んでいる途中で、ブツッと処理が中断されたら危険だからである。
でも、もしコンピュータが、わけのわからない計算を始めてしまい、そっちに
気を取られている場合は、どこのスイッチを押そうが、電源をOFFしようが
「忙しくてわからない・笑」場合もある、そうなると、いわゆる「暴走」状態で、
何の操作も受け付けなくなる。
少し待てば回復する場合もあるというのは、たとえば、ある計算を100回繰り返すという
処理ならば、コンピュータは一瞬で終わるものが、なんかのデータかプログラムの間違いで
「100万回繰り返せ」となってしまうと、計算するのに時間がかかるが、元の状態に戻る
可能性があるからである。
しかし、そうではなく「100億回繰り返せ」という風にデータが変わってしまった場合は
もう待っていてもしょうがない、その間、電源を切れないならばもう電池を抜いてしまうしか
方法は無い。
何度も言うが、メモリーカードへの読み出し、書き込み中に、こういう最終手段に近い
事をすると、データが壊れてしまう可能性がある、つまり撮った写真が消えてしまう
という事である。 こういう非常時は、それは十分に覚悟して対処する必要があるし。
銀塩ならまだしも撮った写真は安全に守られているが、デジタルの場合は、もっと
慎重に構えるなら、ノートPCや、ストレージ(ビューワー)に、まめに撮影データを
コピーするとか、たとえば512MBのカードを1枚ではなく、256MBを2枚持っていき、
撮影半ばで交換して使うなどすれば良い。
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さあ、電源を入れなおせば、9割方問題は解決すると思うが、それでも暴走が
止まらない場合があったとしよう。この時は、考えられるのは、レンズその他
の接点の不良か、あるいは、カメラ(のコンピュータ)自体の故障である。
一眼レフならば、まずはレンズを付け直してみるなり、別のレンズに変えて
みるなりして試してみる、それでも直らない場合は、残念ながら修理行きであるが、
このへんはまた、別途「機械的故障、レンズ不良編」の記事で述べよう。
なお、純正のメーカー製では無いレンズを使っている場合、あるいは、ボディと
レンズの製造年代が著しく異なる場合、あるいはレンズが非常に古く磨耗している
場合などは、電源のON/OFFよりも、むしろ「レンズとカメラが喧嘩している」方が
可能性が高いケースもある、電池を抜くといった最終手段の電源強制OFFよりも、
レンズとの相性がよくない場合は、こちらを先にやるべき事かもしれないが、これとて
電源をONしたままの状態では危険性を伴う事なので、やるならば、メモリーカードの
アクセスランプが消えている状態で慎重に処理する必要がある。
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そして、もうひとつ、これをしても直らないケースは、「電池の消耗」である。
今時の若い人は、たとえば、携帯ゲーム機、携帯おもちゃ、携帯音楽プレーヤー、
携帯電話、ノートパソコンなどの電池の消耗が「数時間~数日」というスパンで
無くなることは十分に承知していて、電池消耗に関する対策・対応が、習慣的に
理解できていると思うが、そのジャンルに疎いシニアなどでは、電子機器の電池は
数ヶ月あるいは数年持つ、という感覚があり、常識というレベルに大きな差がある。
具体的には、時計や、MFカメラ、AFカメラの電池は数ヶ月から数年持つのが
当たり前なのである。
ところがデジカメになると、数時間ないし数日しか持たない。
だから、予備電源に関する感覚が鈍い場合がある。
メカに弱い人は、予備電池を持つ習慣が無い、そして残念ながらメカに弱い人に限って、
電池切れで予備電池無し、などのトラブルが発生してしまう。
これは「マーフィーの法則」(つまり貧乏くじをひきやすい、という法則)ではなく、
メカに弱いから、電池の寿命にも神経を払わず、結果的に予備電池を持っていない、
という、ごく当然の結末なのである。
私は初級者の多い撮影会では、CR123,CR2,2CR5,LR44 という予備電池を持って行き、
メカに弱い初級者(特に若い女性・・)の銀塩カメラでの万が一の電池切れ&予備電池無し、
の状況に備えてはいるのであるが、デジタルカメラの場合の電池は、互換性がほとんど
ゼロなので、なくなったら完全にお手上げである。
まあ、予備電池を持たない事自体が心構えが出来ていない事であるので、
1~2度そんな事を繰り返せば「勉強」になって、身にしみて次回から
注意するとは思うのであるが、しかし「知らなかった事」を責めてもしかたない
から、そこはとやかく言ってもしかたないであろう。
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さて、銀塩の機械式のカメラ、たとえば NIKON F2,FM2,FM3a,CANON F-1,FTb
CONTAX S2,S2b,PENTAX MX,OLYMPUS OM-1 などでは、電池が無くても露出計が
動かないだけでとりあえずシャッターが切れるので、絞りとシャッター速度を山勘、もしくは
他のカメラの露出値を参考にするなどして撮影が続行できる。
しかし、AE方式(すなわち電子式シャッター搭載)の銀塩マニュアルカメラ、
具体的には、NIKON F3,FE2,CANON New F-1,PENTAX LX,MINOLTA X-700,
OLYMPUS OM-4Ti などでは、電池が無くなると、シャッター自身が切れなくなってしまう。
けど、一部の機種では、そんな非常時でもシャッターが切れるメカが存在している。
それが「非常用メカニカル(機械式)シャター」である。
これは覚えていて損は無いので、いくつかの機種を例にして、AEマニュアル
カメラでのトラブルシューティングをあげてみよう。
↑②OLYMPUS OM-4Ti の非常用シャッター
マウント(エプロン)部のボタンを押しながらシャッターダイヤルを
赤の60に合わせると、機械式の1/60秒のシャッターを電池無しで切れる。
↑③NIKON F3シリーズ の非常用シャッター
マウント右部にある、絞込みレバーを内側に押すと、機械式の1/80秒の
シャッターを電池無しで切れる。
↑④NIKON FE2の非常用シャッター
シャッターダイヤルを M250 に合わせることで、機械式の1/250秒のシャッター
を電池無しで切れる。
なお、Mは、メカニカルの意味であり、ニコンの他の機種も、M90(1/90秒)とかの
機械式シャッターがついている機種は多く存在する。
またニコン以外の他社であっても、X(=フラッシュで使うためのシャッター速度=
シンクロ速度であり、X接点と呼ぶ)は機械式になっている機種が多く、
その他でもB(バルブ=シャッターボタンを押している間、シャッターが開く機構)は
機械式になっている機種が多いので、いざとなったら、MやらXやらBやらに
シャッターダイヤルを回すと、電池が切れていても写真を撮ることができる可能性が高い。
ちなみに、電池が切れて動作が止まってしまった・・具体的にはミラーが上がったままで
カメラが動かなくなった・・ような場合でも、M、X、Bなどにシャッターダイヤルを回すと、
そこから復帰できる可能性が高いので、まずはそれを試してみる必要がある。
逆に言えば、M、X、Bで正常に動くならば、ほとんどの場合、電池切れである。
キヤノンNew F-1 では、電池が無くなると、(電子)シャッターが切れなくなるが、
その場合に電池を抜くと(取り外すと)、機械式のシャッターが動き出し普通に撮影を
継続できる。
これは、電子式と機械式のシャッターを併用している「ハイブリッドシャッター」と呼ばれる
もので、あまり例が無い高級なメカである(他には、PENTAX ES, PENTAX LX ,
NIKON FM3a くらいか?)
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いずれにしても、電池が切れた場合でも、マニュアルカメラ(機械式、AE式)は撮影を
継続できるが、電子化されたAF銀塩カメラ、あるいはデジタルカメラでは(まずほとんどの
場合)電池切れでは撮影を継続する事ができない。
なので、電池切れに関しては十分な注意を払わなければならない。
電池切れ以外でも万が一の電気的・機械的な故障がありうるので、大切な撮影
ではカメラを複数持っていくのが常識である。
そもそも撮影会や重要な撮影(仕事や頼まれ撮影、記念的なイベントなど)で、
カメラを一台しか持っていかない、というのは「素人」である、重要な撮影なら
カメラは複数持っていき、さらに予備電池も持っていくのがのが常識である。
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さて、銀塩カメラの場合、暴走にしても、電池切れにしても、レンズの接点不良にしても、
問題点を解決して復帰した時に、そのまま撮影を続けようとするのはやはり危険が伴う。
銀塩カメラでフィルムが終っている状況では、あるいは入っていない状況では、
裏ブタを開けながらシャッターを切ることで、カメラが正常に動いているかを
チェックできる場合が多い。
すなわち、(銀塩)カメラの3要素は、絞り、シャッター、ピントであるが、
そのうち絞りとピントはレンズ側の問題であり、正常なレンズを使うならば、
カメラ側でチェックすべき項目は、シャッター(速度)しかありえない。
だから、シャッターがちゃんと動いているかどうかを、目視でチェックする
わけであり、そのためには、裏ブタをあけてカメラの動作を見てみるのが良い。
↑⑤OM-4Ti の裏ブタをあけてシャッターを切った状態。
なお、AF機の一部(例:PENTAX MZ-3など)では、裏ブタを開けると
シャッターが切れなくなる機種があったり(注:これは不親切な設計である)
ミノルタの多くの機種では、カスタムファンクションをいじくらないかぎりレンズをつけて
いないとシャッターが切れなくなったりする場合もあるが、まあ、たいがいの場合、
裏ブタを開けてそのままシャッターが切れるので、様々なシャッター速度で、
実際のシャッター(幕)の動作を目視で確認することができる。
銀塩カメラだったら、シャッターさえ動作していれば、正常なレンズをつければ、
必ず写真は撮れる。
なお、デジタルカメラの場合は、何かトラブルが起こった場合、銀塩のような
対処方法が無いので、電源OFFリセット以外は手の施しようが無い場合も多々ある。
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今回は主に銀塩カメラの場合の、電気的なトラブルのシューティングについて説明をした、
次回機会があれば、メカ(機械)のトラブルと、カメラではなくレンズ側のトラブルについて
述べる事にしよう。