さて、新シリーズの開始である。
本シリーズは、所有しているレンズの内、コストパフォーマンス
に優れる物を実写した写真を交えて順次カテゴリー別に紹介する。
記事第1回目のカテゴリーは「AF標準レンズ」である。
ここで言う標準レンズとは、43~58mm程度の焦点距離の
一眼レフ用の交換レンズを指す(フルサイズ用、APS-C用は
問わない)
そして「AF」とはAF機構を持つ、またはAF動作対応のレンズを指し
”AF一眼レフ用のマウントに装着できる”という意味では無い。
なお、過去のシリーズ記事「ミラーレス・マニアックス」では、
ミラーレス機を使うという条件で、基本的にマウントアダプター
を使用したが、本シリーズではレンズを装着するボディの種類は
問わない。加えてレンズ自体が極めて安価な為、システムの
組み合わせによっては、本ブログでのルール(持論)である
「装着レンズよりもカメラ本体の価格を高くしない」に
沿わない場合も多々生じるが、その点は無視する事とする。
そして「コストパフォーマンス」とは、購入時のレンズ価格
(その多くが中古購入である)に対して描写表現力はもとより
マニアック度やエンジョイ度を含んだ評価の高いもの、
すなわち「値段以上の所有価値があるもの」を指す。
可能な限り「ミラーレス名玉編」で取り上げたレンズは
重複掲載しないつもりだが、やむなくダブッてしまう事もある。
また、掲載写真は、レンズ性能を紹介する為。ほぼ撮ったままで
縮小する程度であり、レタッチ等の画像加工は行わない。
さて、最初のシステムは、
カメラは、SONY α65
レンズは、SONY DT 50mm/f1.8 SAM(SAL50F18)
(中古購入価格 9,800円)
2009年発売の、エントリー標準レンズ。
SONY A(α)マウント用で、DT型番なのでAPS-C機専用レンズだ。
本レンズの最大の特徴は、低価格かつ高性能な所だ。
高性能とは、描写力のみならず、最短撮影距離が34cmと、一般的
な標準レンズの最短45cmに対して、かなりのアドバンテージだ。
この為、近接撮影での被写界深度の浅さ(ボケ量)は、
より大口径な一眼用標準レンズをも上回る。
具体的な計算例をあげよう
(便宜上、許容錯乱円径は全て0.03mmとする)
50mm/f1.0 最短60cmでの撮影 被写界深度=8.6mm
50mm/f1.2 最短45cmでの撮影 被写界深度=5.8mm
50mm/f1.4 最短45cmでの撮影 被写界深度=6.8mm
に対して、本レンズにおいては、
50mm/f1.8 最短34cmでの撮影 被写界深度=5.0mm
つまり、マクロを除く一眼レフ用50mm標準レンズの中では、
本レンズが近接撮影で最も浅い被写界深度(大きなボケ量)を
得る事ができる。
被写界深度を浅くする撮影を想定して、本レンズにはND(減光)
フィルターを装着している。適正な段数のNDフィルターを使用
する事で、明所においても絞りをフルレンジ(開放から最大迄)
で使用できる。適正な減光段数というのは、光源状況そして
カメラの最高シャッター速度と最低ISO感度性能および撮影者の
手ブレ限界技能にも依存するので、少々複雑だ。
また機会があれば詳しく説明するとして、今回は簡単に言えば、
f1.8級レンズにおいては、だいたい曇りや雨天の際にND2
そして晴天時にはND4またはND8を装着すると良い。
なお今後の本シリーズでも、多くの場合レンズにはNDフィルター
を装着する。
そして本レンズの隠れた特徴だが、それはミノルタの時代から
続く長い歴史の中にある。
その事はミラーレス・マニアックス等のいくつかの記事に書いて
来た事なので詳細は割愛するが、要点をかいつまんで書くと・・
ミノルタは銀塩MF一眼時代の1970年代に、他社との小型化競争で
50mm/f1.4レンズをNew MD型にリニューアルしたが、その際
小型化の弊害で描写性能を若干落としてしまっていた。
しかし様々な事情で新規の50mm/1.4レンズを開発する機会に
恵まれず、同じレンズ構成のまま1980年代のミノルタα用、
さらには2000年代のSONY α用の50/1.4まで、その基本設計を
引き継いでしまっていた。
したがって、本レンズは(ミノルタ系小口径標準を除き)およそ
30年ぶりに描写力の問題点をある程度解消しリニューアルされた
ミノルタ→コニカミノルタ→SONY系の標準レンズとも言える訳だ。
本レンズの描写力はまずまずであり、近接性能に優れ、ボケ質も
破綻も含めて許容範囲だ。
弱点だが、構造がプラスチックで安っぽい事があげられる、
ただ、その点はレンズの軽量化には役立っている。
超音波モーターでは無いがAFモーター搭載だ。
そもそもAFにおいては、合焦速度はともかく被写界深度を極めて
浅くする場合において精度が出ないと思う、これは本システムに
限らず、例えば85mm/f1.4レンズやマクロレンズを使用する際も
同様で、AF機構における性能的限界を超えている。
よって本システムでは、被写体状況に応じて、AF/MFを適宜
切り替えて用いる。その場合、本レンズにはAF/MF切り替え
スイッチが搭載されているのて使いやすい。
ピントリングは狭く、MF操作性には劣るが、MF操作全般を考えると
本機α65は高精細なEVF搭載機であり(2010年代のSONY αフタ桁
機であれば同様)MF時にはピーキング機能を併用する事ができる
ので、むしろ他の一眼レフよりMFのピント合わせは容易だ。
ただし、被写体状況や被写界深度の状況によってはピーキングが
反応しにくくなるので、その検出レベル設定を被写体に合わせて
行う必要がある。この操作は機能の概念を含めて上級者向けだが、
もともとビギナーが行うような撮影技法では無い。
手ブレ補正機能は搭載されていないが、SONY一眼の場合は、
ボディ内手ブレ補正機構があるので不要だ。
レンズ側に手ブレ補正機能を持たせる必要が無いことで、
レンズのコストダウンが可能な事も、ボディ内手ブレ補正
マウントの利点だ。
なお、元々この類のレンズでは手ブレ補正機能そのものが不要だ、
手ブレを回避するには、そうした機構を用いない場合は、知識や
技術(技能)等が必要ではあるが、中級者以上であればその事は
良くわかっている事であろう。
実際に手ブレ補正機構の恩恵を感じるのは、超望遠レンズを使用
する場合や、非常に暗い被写体等、特殊なケースのみであり、
一般的な撮影条件では、ほぼ手ブレ補正機能は不要である。
近年のNIKON/CANONマウントの新レンズが、超音波モーターや
手ブレ補正機能を持たせ非常に高価になってしまった事は残念な
事実である、それらの機能が必要なケースは限られているので
過剰な装備であるとも思える。なお、サードパーティ製レンズも
純正レンズとの性能差を回避するため、同様な機構を搭載せざる
を得ず、結局高価となってしまう。
ユーザー側としては、手ブレ補正「非」内蔵マウントのカメラを
出来るだけ使わないという対策か、または、非手ブレ補正内蔵機
での非手ブレ補正レンズの組み合わせ、という選択しか無くなる。
そうしないと「コスパが悪くてやっていられない」訳だ。
まあ、メーカーとしては(デジタル)一眼レフ市場が縮退している
昨今の状況においては、レンズ側に高い付加価値をつける、つまり
そこで利益を上げないとビジネスにならないという事情もあるだろう。
それは、メーカー側とユーザー側とのバランズのせめぎ合いという
事にもなる。そのあたりの事情や価値感覚が理解できないならば、
結局、高いシステムを買わされてしまう訳だ。
そして数多くの記事で述べた通り、近年においては、そうした
コスパの悪いシステムを購入するのはビギナー層ばかりという
状況になってきている。まあ、それでカメラ市場が潤い、購入者
も満足するのであれば、誰も損しない状況ではあるが・・
で、「コスパ」をメインのテーマとする本シリーズ記事であるから、
そういう風なコスパの悪いシステムは、今後たりとも、いっさい
登場する事は無い。そのあたりからも、本シリーズの記事内容は
決してビギナー向けでは無く「マニアックス」なので、念の為。
余談が色々と長くなったが、ともかく本DT50mm/f1.8は、
SONY α(Aマウント)ユーザーであれば必携の単焦点標準レンズ
であると言える。
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さて、次のシステム。
カメラは、NIKON D300
レンズは、NIKON AiAF 50mm/f1.8
(中古購入価格 5,000円)
1990年発売のAFレンズ。価格が安価なのは、AF初期型であり
かつ値切ったからだが、レンズ自体の程度には問題が無い。
前述のα用50mm/f1.4が30年以上の長きに渡り同一の光学設計を
踏襲していると書いたが、本レンズもそれと同等か、それ以上だ。
元々は、1970年代にAiニッコールとして設計された50mm/f1.8は
1980年頃に「シリーズE」向けに小型化された。ただミノルタと
違うのは、小型化の際に、優秀であったそれまでの50mm/f1.8
の光学系を引き継いだ事だ。
その後1990年頃に、そのままAF対応となって、本レンズ
AiAF50mm/f1.8となった。以降若干のマイナーチェンジがあったが、
2000年代前半に他のレンズに遅れて距離エンコーダーを内蔵した
D型となった。ここまでレンズ構成は5群6枚のままで変化は無い。
2011年には超音波モーター内蔵のAF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
となった。この時点で30数年ぶりにレンズ構成が変化し、
6群7枚となった。なお、このレンズは後にNIKON Dfのキットレンズ
となった。
すなわち最新のG型を除き、MF時代からのどのNIKON 50mm/f1.8
を購入しても、中身は殆ど同じで描写力もほぼ同等と言える。
ちなみに、人気があるのは1980年代のシリーズE用のE50mm/f1.8
(海外向け)と、その国内版Aiニッコール50mm/f1.8Sである。
これらは薄型レンズであり、1990年代後半の「パンケーキブーム」
で需要が増えた為、逆輸入品も含め、良く流通していた。
(Ai50mm/f1.8Sはミラーレス・マニアックス第21回記事参照)
パンケーキブームの当時は、薄型レンズと見れば皆ありがたがって
高値で取引していたのだ。性能的には何ら特徴の無いGN45/2.8が
10万円の相場になった時には、あきれて物も言えなかった。
当該レンズは流行前に所有していたが、性能に不満があって
処分したのであった。
そうしたパンケーキレンズのバブリーな流行が、2001年頃の
Aiニッコール45mm/f2.8Pの新発売につながっている。
(当時、MFレンズの新発売は異例であった。ミラーレス第19回)
50/1.8の中で逆に人気が無いのは、ずばり本レンズである。
これは発売から十数年間、D型にならなかった為もあるかも知れない。
つまり初級ユーザーでは、D型の意味(効能)がわからないため、
「Dがついていないと嫌だ」「安かろう、悪かろう」という
思い込みがあったと思われる。
で、D型であろうがなかろうが、本レンズの性能は問題は無い。
いちいち長所や短所を書く必要もなく、MTFの変化やボケ質も含め、
様々な被写体状況で安心して使えるレンズだ。
この安定感(安心感)は、ニコンレンズ中でもトップクラスで
あろう。
長らく生産が続けられた、という点だが、ミノルタが長期にわたり
α50/1.4のレンズ構成を変更できなかったのは、タイミングが悪い
等の色々な問題があったと思われるのだが、本レンズの場合には、
「性能が良かったのでレンズ構成を変更する必要性が無かった」
とも考えられる。
高い完成度のまま、長期に渡り生産し続けられた名レンズである。
最新型の50/1.8Gは所有していないので、性能はわからないが、
絞り環の無いG型で超音波モーターであるから、ニコン機以外での
アダプター等で使用時のメリットが無い。
まあ、コスパの観点から言えば、完成度の高い本レンズで十分、
いや、むしろ高く評価するべきであるとも言えよう。
本レンズは、ニコン一眼ユーザー必携レンズである、
銀塩時代からのレンズであるから、勿論フルサイズ対応だ。
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さて、次のシステム。
カメラは、CANON EOS 7D
レンズは、CANON EF50mm/f1.8 Ⅰ型
(中古購入価格 11,000円)
初期型(Ⅰ型)に拘りつづけて、やっと近年に購入できたレンズ
である。市場にはⅡ型の中古が安価かつ豊富に流通しているので、
それでも十分だったが、マニアックさを追求した為であった。
カメラの方の価格が突出する「オフサイド」であり、当ブログでの
ルール違反だが、それは今回は無視しよう。
このレンズは価格以上の価値があるからだ。
本レンズの出自はミラーレス補足編5に詳しいので、そのあたりは
ばっさりと割愛する。1987年発売のCANONのAF最初期のレンズだ。
当時のCANONは、それまで続けていたMFのFDマウントを捨て、
AFのEF(EOS)マウントに方向転換した。FDからEOSはアダプターも
使えず全く互換性が無かったので、当然FDユーザーからはブーイング
の嵐の状態になった、CANONを見限り他社マウントに走ったり、
あるいは反発心の表明で、その後も頑なに長期にわたりNew F-1
等のFDマウント機を使い続けるユーザーも多数居た。
こんな状況であるので、新しいEOSシステムには、それ相応の
魅力が無いとFDユーザーがEOSには買い換えてはくれない。
なので、初期のAFのEOSおよびその交換レンズ群には、なかなか
気合が入って作られたものが多い。
ここでそれらを紹介していくときりが無いので割愛するが、
まあ、本レンズEF50/1.8(Ⅰ)も、その中の1つである。
その後、本レンズは1990年ごろにEF50/1.8Ⅱになってからは、
「高コスパレンズ」として初級マニアや中級ユーザーの間で
有名になった。
2015年にEF50/1.8STMとしてリニューアルされるまで、
EF50/1.8は30年近くの長きに渡り生産しつづけられた事になり、
前記のα50/1.4やNIKON 50/1.8系統の話と同様だ。
これもまた完成度が高いという証であろう。
ただ正直言うとEF50/1.8Ⅱの「神格化」は、私としては眉唾ものだ。
すなわちCANONの純正レンズは超音波モーターや手ブレ補正内蔵で
極めて高価なレンズが大半だ、その中で、実売で1万円以下という
飛びぬけて安価なEF50/1.8Ⅱが、
「試しに買ったら、良く写ってびっくり!」
という感じで、CANON初級中級ユーザーに受け入れられ、
その話が広まった結果だと思っている。
すなわち、本シリーズ記事にあげるような「ハイコスパレンズ」
では、このEF50/1.8系統と同等の高性能なレンズばかりであり、
かつ価格も、本レンズはむしろ高めの部類であり、本レンズより
安価で、同等あるいは、これ以上の写りをするレンズは、
AFでもMFでもいくらでもあるのだ。
まあ「レンズの性能は価格には比例しない」という事である。
銀塩時代の1990年代後半に他社に先駆けて手ブレ補正を実現した
CANONであるが、当時の銀塩においてはセンサーシフト技術を
採用する訳にはいかず、当然レンズ内で手ブレ補正を実現する
しかなかった。
この結果、それから20年にも渡りCANONレンズは高級品には
手ブレ補正を内蔵せざるを得ない、が、これだと後発のデジタル
時代からのボディ内手ブレ補正に対して価格面での不利がある。
なので、超音波モーター(USM)や高画質仕様のLレンズ等の
テクノロジーを採用し、レンズの付加価値を上げなくてはならない。
「付加価値」とはユーザーからみれば「製品の魅力」であるが、
メーカーから見えれば「利益」そのものだ。
高いレンズであっても売れる方がメーカーにとってはありがたい。
勿論、新技術開発にはコストもかかっているからその減価償却も
ある、そもそも使用部品の価格(コスト)等は殆ど差異が無い。
ガラスとメカの塊にすぎないレンズの価格が、物によって10倍以上
も違うというのは開発費の減価償却コストに依存するからだ。
このへんの事情を十分に理解して、レンズを購入する事が、
メーカーとユーザーとの間でのバランス感覚なわけだ。
これはまあ、取引でありビジネスでもある。何も知らずに高い
レンズを買って「良いレンズだ」と思って喜んでいられる
初級中級ユーザーにも、そうした「コスパ」の概念を考えて
もらいたい訳だ。
しかし、皆がそういう風に「コスパ」にシビアになってしまうと、
今度はカメラ市場が縮退してしまう。新品はもとより中古市場もだ、
安価で良い機材が買えなくなるのは、私個人としては困った事に
なるので、まあ、今後ともビギナーには、何も考えずに高い機材を
買っていただき、カメラ市場を活性化して貰いたいと思う節もある。
さて、本レンズは、EOSユーザー必携という訳では無い、
より安価なEF50/1.8Ⅱで十分だし、最新STM型は最短撮影距離も
相当に短くなっている(ただし、EOS機でないと使用できない、
電子アダプター以外で使用時には、MFもAFも効かなくなるのだ)
本レンズEF50/1.8Ⅰは、マニアックさに拘って購入したレンズ
である。
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本記事ラストのシステムは、ちょっとコスパの概念を変えている。
カメラは、PENTAX K-5
レンズは、DA★55mm/f1.4SDM
(中古購入価格 42,000円)
2000年代後半のレンズ、DA型番なのでAPS-C機専用だ。
若干高価なレンズである、その理由は前述のCANON EF50/1.8の
話の中でもあったが、超音波モーター搭載や★マーク(高品質仕様)
で「付加価値」をつけているからだ。
「だったら、そのコストは無駄だから、コスパは悪いのでは?」
と思うかもしれないが、半分はその通りだ。
残る半分には、いくつか理由がある、
まず1つ目には、私はAF性能が壊滅的なPENTAX K-01を使っている
のだが、本レンズであれば何とか使用できるので”K-01を救った”
という功績だ、でも、これはK-01が悪いのであって、K-5等の
PENTAXのデジタル一眼で使う上では何ら関係ない。
もう1つの理由だが、このレンズに流れる「血脈」が、かなり
マニアックなのだ。
本レンズは、FA★85mm/f1.4(ミラーレス名玉編1参照)の
デジタル版とも言える。
55mmの焦点距離の場合のAPS-C換算画角は82.5mm
相当になるし、描写の傾向も両者は極めて似ている。
話によると、同一の設計者の手によるものらしい。
「描写の傾向」というと、数値特性などを連想してしまうかも
知れないが、ここで言いたいのは、もっとずっと感覚的なものだ。
具体的には、色味、コントラストの出方、ボケ質、および、
ボケの遷移など、レンズの持つ全般的な「雰囲気」だ。
これらをPENTAXでは「空気感」と呼ぶ事もある模様だが
(例:FA77mm/f1.8 Limited初期カタログでのキャッチコピー)
それもまた抽象的な表現であろう。
沢山のレンズを使ってきたベテランや上級マニア等が(銀塩の)
ファインダーを覗いて言う「良く写りそうなレンズだね」という
感覚に近いものだ。これは、肉眼で見るよりも、ファインダーで
見る画像の方が綺麗に感じる「雰囲気」がある場合を指す事が多い。
デジタルの場合では、ファインダーを見るより撮影後のレビュー
(自動再生)画像を見た瞬間に、自分が撮った写真の雰囲気が
撮る前よりも綺麗に感じる事、その感覚があるか無いかだ。
勿論カメラの差もあるのだが、そこはさておき、この感覚が
得られるレンズはさほど多くは無く、数えるほどしか無いと思う。
その中にFA★85mm/f1.4もDA★55mm/f1.4も入っているのだ。
なお、ミラーレスの高精細EVF搭載機でレビュー画像を見る方が
一眼の背面モニターでのレビューより、この事は分かり易いと思う。
この事実を本ブログで何と呼ぶかは、「考え中」である。
("Atmosphere"という英単語が、意味的に近そうだが、仮に
そう言っても理解が困難である事は同じだろう)
で、FA★85mm/f1.4は現在レアになってしまっている、
私は一応所有はしているが、今から新規に中古を探すのは困難で
あろう(ちなみに、私の中古購入価格は本レンズと同等で
安価であったが、現在の相場は10万円を越えてしまう)
なので、それを代替できるのは本DA★55/1.4しか無いという訳だ。
この「空気感」(?)が得られるレンズは基本的には高価な
レンズばかりであり、その中でも安価な類なのが本レンズだ。
「たかが標準レンズに、中古で4万円以上も出せない!」とまあ、
買う前は私でさえも、そう思っていたのだ。現に本記事での
他の標準レンズは高々1万円であるが十分な性能を持っている。
でも、このレンズのマニアックさとエンジョイ度は、コストを
超えたパフォーマンスがあると思う、そして、それはSDM仕様
だから、とか★マークが付いているから、といった、そういう
見かけのスペックだけのものではない。
この「空気感」を何と説明したら良いか、もどかしい限りである。
値段の関係で必携レンズとは言い切れないのだが、PENTAX一眼
ユーザーであったら機会があれば一度使って見るのも良いであろう。
もし、この「空気感」を感じる事ができ、かつ、それが自身の嗜好
に合うのであれば、本レンズは必携レンズとなりうる。
なお「APS-C専用レンズだから、80mm以上の画角になってしまう」
とは言うなかれ、標準レンズとは言うものの、最初からこれは
82mm画角のレンズだと思って使えば良いだけだ。
(本記事では、他のレンズもすべて75~80mmの換算画角で使用
しているが、それで困っている事は無い)
「50mmは人間の目の見たままに近い画角だから」と言う人も
いるかも知れないが、「だからどうしたい?」と逆に聞きたい。
人間の目の画角に近い事が、写真を撮る上でどんなメリットが
あるのだろうか?
そんな事に拘っていたら、標準ズームですら誰も使えなくなるの
ではなかろうか?
それにそもそも、50mmは人間の視野では無い、実際には人間は
もっとずっと広い範囲を見ている。
単焦点レンズを使うのであれば、様々な画角感覚を経験則から得て
82mm相当画角のレンズであれば、その画角に合う被写体を見つける
までの話であり、それが単焦点を使うという意味と等価とも言える。
その画角感覚の引き出しの数が、どれだけ多いか?という事が
経験値として得られる重要な事である。
上記「人間の目に近い」うんぬんの話は、銀塩MF一眼レフの時代に、
一眼を買っても50mm標準レンズしか買わない(または最初から、
そのレンズがついていた)人達が大多数であった事から出てきた
話だ。
つまり40年も前の話で、しかも科学的、心理学的、撮影技法的な
根拠も何も無い。下手をすると当時の交換レンズは経済水準的には
高価であったので、標準レンズしか買えない人達が、その言い訳
(弁明)として言い出しだ話なのかも知れないのだ。
ズームレンズが主流となった現代では、仮に単焦点派であっても、
多種多様な焦点距離のレンズが新品や中古でも入手しやすく、
加えてデジタルのセンサーサイズの多様性から、換算画角も
様々な現代では、そして多種多様の撮影技法や撮影目的が存在し、
見たままの写真を撮るだけでは無くなった現代においては
「人間の目の画角」という話は、もはや何ら意味を持たない物と
なっている。
古い概念に捉われず、現代的な感覚でカメラやレンズの機材を
選ぶ事はとても重要だ、あるいは他人の意見に惑わされず、
あくまで自分の機材ポリシーを持つことも必要だと思っている、
だからこそ、この新シリーズ「ハイコスパレンズ・マニアックス」
の連載を開始した、とも言える。
「コスパ」と「マニアック」の概念は本シリーズ記事での
最重要なコンセプトなのだ。
次回シリーズ記事に続く・・