本シリーズでは、現有の古いデジタル一眼レフについて
発売時の時代背景を含めた評価を行っている。
第9回から第11回目までは、デジタル一眼「第三世代」の
2008~2009年の間に発売された機種について紹介している。
今回は、CANON EOS 7D (2009年秋)である。
装着レンズは、EF85mm/f1.2L
EFレンズの中では被写界深度が極めて浅い部類だ。
AF性能に定評のあるEOS 7Dだが、果たしてこのクラスの
大口径レンズがAFで使えるものかどうか?
以下、本システムで撮影した写真を交えながら、本機を
紹介していこう。
さて、デジタル一眼「第三世代」(第一回記事で定義)は、
完成度が高い機種が発売された時代だ、と前回第9回記事の
NIKON D300(2007年末)でも書いた。
そのD300又は後継機D300S(2009年秋)のライバルとして
登場したのが本機EOS 7Dである。
この型番のEOSが出て来た時、私は少し驚いた。
それまでのデジタルのEOSは、
ハイエンド機であるEOS-1Dシリーズ(フルサイズorAPS-H)
フルサイズ高級機のEOS 5Dシリーズ
そして中級機としてEOS 2桁シリーズ(APS-C)
エントリー機としてEOS Kiss デジタルシリーズ(APS-C)
と、はっきりとしたシンプルなラインナップが特徴であった。
(ちなみにEOS-1Dシリーズのみハイフンが入る)
が、ここに来て新たな「7番」という新しいランクが出来た。
けど、今までのラインナップでも十分ではなかったのだろうか?
とも一瞬思ったわけだ。
まあでも、フルサイズ機が不要な(APS-C/Hで良い)場合、
EOS 7D発売前の2009年時点ではEOS 50DかEOS-1D(MarkⅢ)
どちらかの選択肢しかなかった訳だ。
で、50Dは、別に旧機種の40Dや30Dでも大差は無いし、
それらならば中古で数万円と安価に買える。
が、1Dクラスは数十万円もしてしまう。
数万円か数十万円か?という選択になれば実質的にはコスパの
良い安い方を買うしか選択肢は無い。1Dクラスを買ったら持論
の減価償却ルール(1枚3円の法則)をクリアする事が困難だ。
まあ減価償却の話はともかくとして、一般的な視点から見ても
ハイエンドと中級機の間が離れすぎていたのは確かだと思う。
あるいはNIKON D300の成功を見て定価20万円級の高級機市場の
必然性をCANONも強く感じたのかも知れない。
つまり、完璧と見えたCANONのラインナップに穴があった
という事だ。
EOS 7Dはそこを突いてきたので当然ながら人気機種となり、
ハイアマチュア層向けや、1Dシリーズのサブ機として、
定番の位置を固める事となる。
だが正直言って、こういった「どこからでもかかって来なさい」
的な死角の少ないカメラは、あまり好きでは無い。
マニアックでは無いし、カメラの欠点をカバーしながら使い
こなすという楽しみも少なく、なんだか
「カメラに使われてしまう」(カメラの方が偉い)ようにも
思えてしまうからだ。
そして私の場合、装着するレンズにしてもf2.8級ズーム等の、
誰もが欲しがったりする定番レンズは使用していない。
もっとマニアックなレンズばかりを使っている、という事は、
ミラーレス・マニアックスの記事等で紹介して来た通りだ。
じゃあ、元々好きな部類のカメラでは無いし用途も無いだろう
本機EOS 7Dを何故所有しているか?という点が疑問かと思う、
それは、ズバリ「安価だったから買った」という理由だ。
本シリーズ第5回記事でEOS 30D(2006年)を使用していると
書いた。その機体は、長年使っていたEOS 20D(2004年)が、
2010年代初頭に寿命(?)で故障してしまった為、代わりに
購入したのだ。
近年、EOS 30Dも発売後およそ10年を経過し、まだ現役で
使えるのは確かだが、「絵作り」の古さ等が気になってきた。
こういう場合は「雨天専用機」とする選択肢は十分にある事は
他の様々な記事でも述べた通りである。
雨天等の低コントラスト下での絵作りの差は出にくいし、
厳しい撮影環境で、仮に壊しても惜しくないからだ。
そこで晴天用に、絵作りを含めた完成度の高い「第三世代」
(2008~2009年)のEOSを代替機として探していたのであった。
それが2016年初頭の話である。
ちなみに、最新のカメラは買わない、常に数年程度古い機種を
中古で買う。最新機種を高値で購入したら減価償却ルールを
守るのが困難だ。
で、最初に候補に上がったのはEOS 50D(2008年)であった、
その機種から画像処理エンジンが新型に変わっていたからだ。
50Dの2016年時点での中古相場は3万円程度。
「まあ、このあたりで良いかな?」と思っていたら、ふと
見かけたのが本機EOS 7Dで、3万9000円という価格であった、
50Dの上位機種で、価格も大差無し。
相場よりだいぶ安価だが、程度が悪いという訳でも無い。
「ならば、これは買いでしょう」となった。
しかし店頭で実物を手にして最初に思ったのが「やや重い」
という点であった、
本体重量は20Dが685g 30Dが700g このクラスの機種を従来
使っていた訳だが、候補となった50Dは730gと少し重量アップ、
でもまあ中級機は大体このあたりまでの重さで留まる。
ところが、EOS 7Dは820gと一気に100g以上も重くなった。
このカメラを多く使う用途は、ドラゴンボート競技撮影で、
主にTAMRONの200-400/5.6ズームを装着する。
そのレンズの重量は400mm級では最軽量の部類の1.2kg台で
あるが、これをEOS 7Dに付けると、付属品を入れて およそ
2.3kgとなる。
この望遠セットは1日中、手持ちで移動しなけらばならないので、
経験上、2kgを超えたあたりから重量負担が大きく感じるのだ。
(このセット以外にも複数台のカメラを同時に使用する)
一瞬「重過ぎる、やめておくか?」と思ったのであるが、
今更しかたが無い、店舗に取り寄せてもらっているし
せっかく安価に買える機会にキャンセルは勿体無いであろう。
で、実はこの失敗の為に、もう1台カメラを買う羽目になって
しまったのだが、その話は、いずれまた・・
さて、今回の撮影でも1kgを超える重量級レンズEF85/1.2Lを
装着していて、トータル重量は2kgを上回る。
重いという事は確かに欠点ではあるが、私も銀塩時代から
重たいカメラを使っていなかった訳では無いし、デジタルでも
本シリーズ第1回記事のNIKON D2Hは1kgを超えていた。
だが、そういう機種は、複数のカメラを抱えて丸1日撮影する
という用途には向かないのだ。D2Hとか、銀塩時代のF5や
EOS-1HS等の1kgを軽く超える重量級カメラは、休める状況
(例:三脚使用や、屋内やスタジオ等でカメラを常時手で
持っていなくても良い状況)でしか使えない。
仮に軽量級のレンズを装着して屋外に持ち出すとしても、
短時間だけ使う等でないと、1日持ち歩くのでは体が持たない。
そもそも重すぎたら途中で嫌になってくるだろう、快適に撮影
が出来ないのでは「何かの修行か?」となってしまう。
で、重たいカメラは、それ1台しか所有していないのであれば
多少我慢する必要もあるかも知れないが、カメラを何台か所有
していれば、わざわざ屋外等に重い物を持って行く必要も無く、
撮影目的や状況に応じ、もっと軽いカメラを持ち出せば済む。
まあでも、このあたりは、EOS 7Dの重欠点という訳では無い、
800g程度で文句をつけていたら、他の高級機も全て使えなく
なってしまう。
さて実際に本機を使った際の第一印象だが、すぐわかったのは
「ファインダーがNGだ・・」という点であった。
まず、AFフレームが中央部に集中していて狭い。でもそこは
論点ではなく、そのAFフレームがある部分と、周囲の部分と、
光の透過率が異なるのだ! これはどういう状況かと言うと
前述の開放f値5.6のレンズを装着した際、ファインダー画面
周辺が暗く、まるで周辺光量落ちを起こしているように見える。
これは実使用上かなり気になるし、欠陥であると思う。
おまけに、ピントの山も殆どわからない、MFはお手上げだ。
加えて、アダプター使用時にはフォーカスエイドが効かない。
私はCANONの一眼レフは銀塩MF一眼、銀塩AF一眼、デジタル一眼
を、高級機を含め、それぞれ4台づつ所有しているが、それら
12台の一眼レフの中では、本機は最低レベルのファインダーだ。
所有していないEOS機でもファインダーを覗いた事がある機種
は多いが、ここまで酷いものは無かったと記憶している。
いったいこれはどういう事なのだろうか?と、ちょっと理由を
調べてみたのだが、どうやら本機EOS 7Dでは、CANON一眼で
初めて透過型液晶が採用され、グリッド、AFフレーム、水準器
の切り替え表示ができるようになった。が、恐らくそれの
構造上、あるいは初搭載で十分な品質が得られていなかった事
が原因となっているのであろう(ちなみに、ファインダー内の
水準器表示はかなりショボい、このレベルならば不要であろう)
で、実のところ、CANON FDマウントの最後のフラッグシップ
にして最大の名機CANON New F-1 (1981年)ではスクリーン
を全面マットに換装する事で、全一眼レフ(銀塩、デジタル)
の中でベスト3に入るほどの極めて優秀なMF性能を持っていた。
しかし、1987年に(銀塩)EOSになってから今年で30年、
その間CANON New F-1のファインダー性能を超えるEOSは
1台も発売されていない。
いつまでも改良されないという状況は、結局、改善点として
ピックアップされていないという事だろう。
これは非常に残念な事実である。
「ファインダーがダメなカメラは撮る意欲が無くなる」とは、
銀塩時代の古くからマニアの間で良く言われていた事である。
まあ、それは真実であると思う、特にMFのカメラでMF性能が
悪ければ、救いようが無い訳だ。
そして、AF時代に入っても、MFを絶対に使わないという訳では
無いし、もっと難しい事を言えばスクリーンの用途においては
ピントの山を知る以外にも、ボケの量や質の確認もある。
なお、EOS 7Dのファインダーあるいはスクリーンは、換装する
事はできない模様である。
重さとファインダー性能で、使い始めて僅か5分で、私の中では
ダメカメラの烙印を押されてしまったEOS 7Dであるが、
まあ幸いにして、それ以外に表面的には目だった弱点は無い。
表面的には、と書いたのは、本シリーズ第5回目のEOS 30Dでも
問題となった、例の「操作系」の未成熟の問題が、若干だが
本機でも残っている事だ。
しかしEOS 30Dの時とは別の新しい要因もそこには加わっていて、
前記事第9回目のNIKON D300で述べた事と同様な原因であり、
すなわち「新機能の追加に操作系の整備が追いついていない」
という点である。このあたりは後で少しだけ述べておこう。
本機 EOS 7Dの基本スペックであるが、
撮像素子は、APS-CサイズCMOS、1800万画素
ダスト除去機能がついている。この点は、内蔵手ブレ補正を
持たない本機であるが、ライバルのNIKON D300も同様に
この機能を持っている。
内蔵手ブレ補正が無いのに、わざわざその機構を、これの為に
つけた訳で、その点、他社よりだいぶ遅れ目の搭載だ。
で、他社がつければこっちもつける、こうして、個性の無い
カメラが沢山市場に出揃うのだ・・
良く聞かれる質問での「メーカーの良し悪しは?」なんて、
こうした状況では、ある筈も無い。
ISO感度は100~12800(拡張時)
この時代から、ようやく高感度化の兆しが見えてきた。
(従来はISO6400が、ほぼ上限だった。また、この後の時代
では、どんどん高感度化が進んでいる)
絵作りは従来機より改善されているが大差という訳でも無い。
が、AWBはかなり優秀で、複雑なMIX光でもピタリと合う。
ただしMFレンズでは分割測光で露出のばらつきが非常に大きく
実用レベル以下となる。
簡素なピクチャースタイル機能を持つが、ビビッド系は無い。
が、そういう設定が必要な場合はユーザー設定を登録できる。
オートライティング・オプティマイザ機能が搭載されていて、
これはつまりコントラストの自動補正だが、他社にも同様な
機能がある。
測距点数は19点、多彩なAFモードを持つが、このあたりが
D300同様に機能肥大気味で、操作系全般が煩雑になっている。
ファインダー視野率は100%、倍率1倍と、スペック上は優秀
だが、前述の「見え」の問題点がかなり大きく、数値スペック
優先の印象があって、むしろ好ましくない。
連写速度は、毎秒8コマと高性能だ、NIKON機のように付属品
を使う事なく、この速度を実現しているのが、とても良い。
像消失(ミラーアップ)時間は短く、第1回記事の高速連写機
NIKON D2H(2003年)並みの高性能だ。このあたりは6年という
歳月を経てシャッターユニットもだいぶ改良されたのであろう。
連続撮影可能枚数は画質で異なるが、JPEGの場合は「99」の
表示が出ているので100枚以上はいけるという意味であろう。
なお、断続的な撮影であれば、その数値はすぐ99に復帰する。
実際にはカード容量まで、ほぼ無限の連写が出来る事になるが、
編集コスト(時間)を考えると、とてもそんな撮り方は
出来ない。そして、連写数十枚を超えると連写間隔が低下する。
記録メディアはCFである、当時の高速連写機ならば当然だろう。
最高シャッター速度は1/8000秒
ただしMFレンズ使用時はシャッター速度オーバー警告が出ない。
(AFレンズ使用で、セイフティシフトONであれば、警告+自動
での絞込みが可能)まあ、例の「排他的」仕様であろう。
NIKON D300と比較すると、ミラーショック等の振動が少なく
好ましい。
シャッター音は軽い音質で、連写時は少しだけうるさい。
いずれにしても、良いシャッター(ドライブ)性能である、
これは高速連写機としても快適に使える部類だ。
しかし実用的には秒8コマは速すぎる場合も多々あるので、
低速連写にしておく事も多いが、低速連写の速度は秒3コマ
固定であり、もう少し速めの方が良いと感じる場合もある。
ここは、ライバルのD300/Sのように低速連写時のコマ数を
自由に設定できる方が良かった(後継機7D MarkⅡでは可)
ストロボを内蔵している。GNは12と標準的。
動画撮影が可能である。
この時代あたりから、業務上の動画撮影も、ビデオカメラ
ではなく、デジタル一眼レフを使用するようになってきた。
が、本機を動画撮影メインに使ったら、せっかくのAF・連写
性能があまり生かせない。
バッテリーはインフォリチウム型で、使用していない場合でも
ほんの僅かに電力を消費する。
複数の使用電池の登録というのもあるが、やや過剰な機能だ。
時計用バックアップには、CR1616ボタン電池を必要とする、
これは交換も面倒だし、スーパー・キャパシタ(電気二重層型
コンデンサ)あたりで、なんとかならなかったものか?
充電器はプラグ一体型であり、複数のこのタイプの充電器を、
一部のACコンセントに同時には挿せない。
ライブビュー機能が搭載されている。
背面モニターは可動式ではなく、固定式であるが、
故障リスクが少ないという点はメリットだ。
どうせ一眼レフでは、ミラーレス機のように可変アングル
モニターで撮影するというスタイルは似合わない(それでは
AF性能を十分に生かせない)
背面モニターを用いたGUI操作系の話を少ししておこう、
まず、INFOボタンに「撮影機能の設定状態」の表示を有効に
カスタマイズしておけば、その一覧がモニターに表示できる。
で、例えばISO感度を変えたいとする、
従来のEOS(例:第5回記事のEOS 30D)では、カメラ上部の
ISOボタンを押して、前ダイヤルで感度を変えるという操作性
であった(「押しながら」ではなく、タイマー式だ)
本機の時代あたりからは、上部ISOボタンを押すと、撮影機能
設定表示がONであれば、背面モニターにもISOの一覧が表示
されるようになった。
ただ、その選択は、依然、従来通りの前ダイヤルでしか感度を
変更する事ができず、2次元操作子の「マルチコントローラー」
は、旧来通り、この時には休眠している。
しかし、ボディ背面左上の「クイック設定」ボタンを使うと
背面モニターに設定画面が表示され、その各項目をこのマルチ
コントローラーで選ぶ事ができ、前後のどちらのダイヤルでも
値を変更できるようになって、操作系が少しだけ進歩した。
メニューについても前後ダイヤルでもマルチコントローラー
でも選択可だ、そしてページ毎にメニュー項目位置を記憶して
いる点は良いが、クリックが効かず、SETボタンが必須だ。
どうせこのようにするならばマルチコントローラーは一種の
2次元ポインティングデバイスであるから、PCにおけるマウス
操作のように中央ボタンでクリックして、そのまま値変更操作
に移行できるようにした方が、指の位置を変える必要が無く
合理的だ(そうすると終了又はキャンセル操作が必須になるが、
それはなんとでもなるだろう)
それと「クイック設定」では、前後ダイヤルは数値の変更しか
出来ず、マルチコントローラーでしか項目選択操作が出来ない
事を、他機種から持ち替えた時に忘れてしまう事もある。
で、本機にはカスタム・ファンクションで操作ボタンを様々に
カスタマイズできる機能があるが、これをするとシルク印刷と
実機能が異なってしまう事があり、カスタムした一覧を出す
画面も、設定時の物しかなく、階層が深い。
さらに言えばアサインする機能アイコンの意味がわかりにくい。
つまり、これは使い難い、あるいは使えない機能だ。
本来ならば自由に機能を割り振れる白紙のFnキーを複数用意
しておき、Fnキーの設定を背面モニター等で瞬時に確認する
事ができれば便利であろう(ミラーレス機の場合は設定した
機能を常時表示する事ができる)
で、カスタムでキーアサインを変えても、いずれにしても、
マルチコントローラーの有効範囲等の機能そのものは変更
できない。
それと、マイメニュー編集機能もあるが初歩的なレベルであり、
このあたりは後年のミラーレス機のそれの方が使いやすい。
でもまあ、クイック設定画面がついた事で、操作系全般は
従来よりかなりマシになった、これまでのEOSでは他社機より
相当に遅れていた操作系の概念が、やや追いついてきた模様だ。
しかし基本機能の設定は、このクイック設定画面だけで済むが、
カスタム・ファンクション系の設定画面の操作系は、旧機種と
あまり変わらず、ここに様々な新機能(特にAF系)の複雑な
設定を詰め込んでしまった為、わかりにくくなっている。
この問題は前記事D300とまったく同様の弱点だ。
AF系の操作は、例えば測距エリア選択をする場合、
カメラ背面の選択ボタンだけでは足りず、カメラ前面の
「M-Fn」ボタンを押して、これでAFエリアを選択する必要が
あるし、その設定可能な内容もカスタム設定に関連する
これはスポットAFや領域拡大AF等の使用制限部分もあり煩雑だ。
ダイヤルで直接測距エリアを変更するようにできなかったの
だろうか?
なお、被写界深度の浅い大口径レンズなどでは、スポット1点
AFモードを使用できるように設定しておくのが良いだろう。
で、この操作であれば「M-Fn」という意味がそもそも不明だ。
M-Fnは他にフラッシュ調光(FEロック)時にも操作子として
使われる。そうであれば「マルチ・ファンクション」という
意味か?が、AFエリア選択とFEロック位にしか使わないならば、
マルチとは言い難いし、また、このM-Fnボタンには、
FEロック、AEロック、JPEG/RAW、水準器のいずれかの機能しか
アサインできないので、有効な使い道が思い当たらない。
まあ、将来的な機能追加の余地を残していたのであろう。
なお、これらの各ボタン+ダイヤル操作は、その位置関係が
悪い事と、重たいカメラである為、右手でグリップのみで
カメラをホールディングしたままでの片手操作は困難だ。
必ず左手を添えないと操作が出来ない事は、不便に感じる。
でも、結局のところEOS 7Dでの操作系やカスタマイズ性は、
従来機よりもかなり向上している。
ただ、機能が多く煩雑であるので、果たしてそれらを十分に
使いこなせる状況になっているのであろうか?
前記事のD300でも同様だと思うが、ここまで機能が肥大化
してしまうと、初級中級者はおろか、上級者でも全ての機能
を把握して使いこなすのは難しいと思う。
中古で様々なカメラを買った際、まず、前オーナーのカスタム
設定を全部確認するのだが、殆どの場合はデフォルトのままか
ほんの少しいじくってある位だ。
本機の説明書は前記事のD300の456ページほど酷くは無いが、
それでも276ページもあり、くまなく読んで理解するのは大変だ。
結局、ほとんどのユーザーは、高性能機であっても、ただ単に
連写速度が速いとか、AFの精度が良いとか、そのあたりの
表面的な性能にしか注目していないのであろう。
まあ確かにそれらはカメラを手にして実際に撮影したらすぐに
わかるポイントだとは思うが、下手をすれば、高性能機が
欲しいからと本機を入手したビギナー層は、全自動モード又は
「クリエィティブ全自動モード」(CA)でしか撮っていないの
かも知れない。
あるいは動画専用機としての用途だったのかも知れない。
が、せっかくの本機の多種多様な機能を、殆ど使っていない
のであれば、実に勿体無い話だとも思う。
なお、AF性能が高いと思われる本機ではあるが、今回の記事で
挟んでいる写真はEF85mm/f1.2Lを装着して撮影したものだ。
この被写界深度が極めて浅いレンズの場合は、さしもの
EOS 7DのAF性能(精度)でも、そして、スポット1点AFモード
を用いても、かなり苦しかった事は述べておく。
---
さて、EOS 7Dに対応する銀塩名機であるが、
良く似ている型番のEOS 7 (2000年)をあげてみよう。
このカメラは銀塩末期の製品で、一応2007年まで生産されて
いた模様だが、時代が時代なので注目される事はなかった。
長所は、操作系が良く、その点では銀塩EOSの中では最も
優れていたと思う。また視線入力やAF速度、連写速度も速く、
そうした基本性能を見ても、銀塩EOS中トップクラスだ。
が、最高シャッター速度は1/4000秒で物足りなく、もしこれが、
1/8000秒であれば、銀塩ラストエンペラーの「MINOLTA α-7」
と肩を並べて、後世に語り継がれる名機となっていたであろう。
もう少し早く世に出て欲しかった、そういう意味では
「伊達政宗」的(?)なカメラかもしれない。
私は、EOS 7を2003年頃に中古購入、32000円程であったが、
この価格はEOS 7Dの中古価格と、さしたる差は無い。
本機EOS 7Dの価格だが、前述のように2016年に中古で
約39000円であった、ちなみに発売時の市場価格は19万円程だ。
最後に本機CANON EOS 7D の総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)
【基本・付加性能】★★★★☆
【描写力・表現力】★★★
【操作性・操作系】★★★
【マニアック度 】★
【エンジョイ度 】★★
【購入時コスパ 】★★★★
【完成度(当時)】★★★★☆
【歴史的価値 】★★★
★は1点、☆は0.5点 5点満点
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【総合点(平均)】3.1点
基本性能や完成度が高く、優秀なカメラではあるが、総合点は
平均的な値になった。いくつかある弱点が、全体の印象を悪く
しているのだと思う。
そして、人気機種であり、マニアックな部分は何もなく、
趣味的撮影に使っても面白味が無いし、アダプター使用時は
MFや露出もちゃんと動作しない。
気になる弱点を回避しつつ、ひたすら「実用機」として使う
のが良いかと思っている。
次回シリーズ記事に続く。