本シリーズでは、現有の古いデジタル一眼レフについて紹介
及び、発売時の時代背景を含めた評価を行っている。
今回は、PENTAX K10D (2006年)について紹介しよう。
使用レンズは、FA 31mm/f1.8 Limited
(ミラーレス・マニアックス第11回、第60回記事)
このシステムで撮影した写真を交えながら記事を進めていく。
さて、PENTAXはこの時期、HOYA社に吸収合併されている。
カメラ界においては、ユーザー層がデジタル化したと同時に、
いや、それ以上の深刻な問題としてメーカー側のデジタル化が
あったのであろう。
従来のアナログ回路・光学系・機構系技術者は、いくら熟練の
技術や技能を持っていたとしても、デジタル技術にそう簡単に
移行する事はできない、まるっきり技術の内容が異なるからだ。
同様に、企画も営業もサポート、製造、部品調達、販売戦略
等も、全て業務の内容が変わってしまう・・
カメラの初級ユーザー側は、ただ単にフルオートのモードで
シャッターを切ればそれで良く、フィルムが必要か否か?と
その程度の差の認識しかなかったのかもしれないが、メーカー
側がデジタル製品を作り、それを販売する上では、様々な
大きな変革が必要な事であっただろう。
事実、この時代の直前に京セラCONTAXはカメラ事業から撤退、
MINOLTAもKONICAと合併後、やはりこの時期にカメラ事業から
撤退してSONYにαシステムを譲渡した。
大メーカーにおいても「激動の時代」であったと思う。
PENTAXだが、それまで推進していた「*istDsシリーズ」の
低価格帯機種を止め、この時代から中級機Kシリーズの展開に
シフトしていく。
実際のHOYAとの合併は2008年頃となったのだが、この数年間
PENTAXは、どの企業の傘下となるかで、いくつかの企業との
交渉があった(韓国の企業がその代表例だ)なので企業価値
を高める為にも、この時期に製品展開の方針転換や新技術
(手ブレ補正等)のアピールが必須であったと思われる。
で、Kシリーズの最初の機種はK100D(2006年)であり、
ボディ内手ブレ補正機構をPENTAXとして初搭載した。
このK100Dは、*istDシリーズの流れを汲むところもあり
初級ユーザー向けと言える機種かも知れない。
本機K10Dは、その数ヶ月後の2006年11月に発売された。
PENTAXデジタル一眼としては*istD(2003年)以来の中級機だ。
本機も勿論手ブレ補正内蔵、それを利用したゴミ取り機構も
搭載している。
シリーズ機種名の「K」の意味だが、これを説明しようとすると、
かなり昔に遡るが、せっかくの機会なので記載しておく。
そもそもPENTAXには、今からおよそ60年前の1958年に
アサヒペンタックスKという機種が存在していた、これは、
大ヒットした著名な「SP」の数年前の製品で、M42マウントの
半自動絞り機構であった。KはKINGという意味だが、この時点
では対外的にはその語源は曖昧だったかも知れない。
M42マウントは他社機との互換性も高く、PENTAXにおいても、
その後も長期間作られたが、レンズ交換時の「ねじ込み」が
面倒であり、レンズからボディへの情報伝達機構や開放測光、
絞り優先等の機能を持たせるのが難しく、だんだんと時代遅れ
となっていく。
各社では新機能を実現する為にM42を改良したが、そうなると
せっかくのユニバーサル(汎用性の高い)M42のメリットが
無くなってきてしまった。
1975年、PENTAXは旧来のM42マウントはもう限界と見たのか、
新しいバヨネット式マウントを用いた新機種3つを発表。
これがK2,KM,KXである。うち最高級機K2は、なかなか優れた
カメラであり、私は銀塩時代に使っていた。
で、「K2」というのは、前述の「K」が1950年代に存在して
いた故の2代目の名称だ。
この新マウントは、Kマウントと呼ばれ、それから42年経った
現在においても基本的な形状は変更されていない。
そして、この時点で「K」の意味が市場にも明確化された。
それは「KING」であり、「一眼レフの王者」という命名だ。
1980年代にはPENTAXはKマウントのままボディを小型化した
Mシリーズを展開し同時にレンズも小型化、他社の例えば
OLYMPUS OMシリーズとは熾烈な小型化競争が繰り広げられた。
が、Mシリーズはそこそこ商業的に成功したと思う。
1980年代後半、AF化の時代に突入した。歴史的な「αショック」
(1985年にミノルタが実用的なAFシステムで他社に先行した)
の社会現象的事件により、PENTAXを含む各社は急遽AF化の
開発を進めなければならなくなった。
しかし、PENTAXの急ごしらえの「SFシリーズ」は不人気で、
実用的なAF機種は、その後のZシリーズ(1990年代前半)
およびMZシリーズ(1990年代後半)を待つ事になる。
(MZ-3については、本シリーズ第2回記事で紹介)
2000年代以降、PENTAXの銀塩機としては「*ist」があったが
これはすぐにデジタル機に移行し、その後の流れについては、
シリーズ第2回記事「*istDs」で述べた通りである。
本題に戻るが、実に1970年代後半から30年もの長きにわたり、
「K」の名前を冠するPENTAX製一眼レフは無かった。
残っていたのは「Kマウント」の名称だけだった。
そして2006年、ついに「K」の称号がPENTAXのカメラに
復活する事になった、以降十余年、依然この名称は
PENTAXデジタル一眼レフにおいて使い続けられている。
さて、本機「K10D」を中級機として位置づける最大の特徴は、
その「HYPER操作系」であろう。
HYPERプログラム、HYPERマニュアルは前述のSFシリーズの
失敗の反省から、連写速度等の表面的なカタログスペック
ではなく「操作系・操作性」という使用利便性での性能を
突き詰める戦略に転換した1990年代の「Zシリーズ」に
おいて初搭載された中上級者向けの機能である。
この時代のバブル崩壊は、一般製品のコンセプトにも様々な
影響を与えた。派手で表面的なスペック競争は影を潜め、
実用本位の本質的かつ感覚的な付加価値が求められていく。
これはカメラだけの話では無いが、カメラの世界も同様であり、
かつ、PENTAXだけに留まらず、例えばミノルタにおいても、
自動化新機能を多数搭載したバブリーな「α xiシリーズ」が
市場に受け入れられず、真面目な「α siシリーズ」に方針転換
した事も時代の流れだと思われる(シリーズ第3回記事参照)
「HYPER操作系」の機能は非常に優秀な露出制御概念であるが、
高度な撮影知識が必要とされる為、残念ながらビギナー層では
使いこなす事ができず、1990年代後半のMZシリーズでは、
これを廃して、より安易な操作性にダウングレードされた。
PENTAXが高級機路線を進めていたのであれば、この機能は
受け入れられたのかも知れないが、時代は既にNIKON,CANON
の高性能AFハイエンド機に上級ユーザーの関心は移っていた。
PENTAXでは2003年の*istDでもHYPER操作系を復活させたが
これは同機の価格が初期デジタル一眼であり高価だった事を
理由として、中上級又はマニア向け機能として搭載したので
あろう。続く*istDs/DLシリーズおよびK100Dは低価格帯の
モデルであったのでHYPER操作系は搭載されていない。
さて、そうした歴史において、本機K10DではHYPER操作系が
再び復活している。
また、この後のPENTAX中上級モデルにおいても、現代に至る
までHYPER操作系が引き続き搭載されている。
まあ製品の製造コストから言えば、HYPER操作系はダイヤルが
2つ必要なだけで、それ以外に余分に原価がかかる訳でも無く、
搭載するのは簡単なのだろうが、問題はユーザーが使えるか
使えないか?という部分だ。
だが、HYPER操作系搭載機であってもフルオートのモードは
存在している、だから「何のことやらさっぱりわからない」
という初級ユーザー層が、PENTAX高級機を買って使っても
特に問題にはならない訳だ。そしてマニア層やベテラン層は、
HYPER操作系を使って「PENTAXらしさ」を堪能すれば良い、
ただそれだけの話だ。
さて、本機K10Dにおいては銀塩時代よりもパワーアップされた
HYPER操作系が搭載されている。
少々ややこしいが、各操作系の説明をしておこう。
<ハイパープログラム>
まず、P(プログラム)露出モードは、ハイパープログラムと
なっている。
これは、シャッター半押しでカメラが決めた絞り値または
シャッター速度が気に入らない場合、後ダイヤルを回すと
すぐに絞り優先、前ダイヤルでシャッター優先となる仕組みだ。
プログラムシフトと何処が違うか?と言えば、だいたいは
同じである。
違いがあるとすれば、まず意識的に絞り値やシャッター速度
を目的の値に変える、という心理的な事だ。それらを変更中
にはファインダー内に下線が出て、絞りとシャッター速度の
どちらを変えている状態かが明白に分かる。
それから、グリーンボタンを押す事で、すぐに通常のPモード
に復帰できる。
普段は殆ど絞りやシャッター速度を意識しないで、たまに
それらを調整する程度、例えば標準ズームを使用する際等では
有効なモードかも知れない。
弱点は、前後の2ダイヤルがこの操作系で使われてしまう事で
「露出補正が簡単には出来ない」という点だ。
他社機等でのプログラムシフトでは、Pモード時に、例えば
前ダイヤルにプログラムシフト、後ダイヤルに露出補正を
割り振る事ができる。
ただし本K10Dにおいても、カスタム設定で、HYPERプログラム
を通常のプログラムシフト操作系にも変更できる。
なお、K10Dのカスタム設定項目はかなり多くて、その点は
良い事なのだが、何故かメニュー位置記憶機能が無いので、
その設定を行う度にメニューの奥から掘り出して操作するので
相当面倒だ。
また、ハイパープログラム時に露出補正をしたい場合は、、
露出±ボタンを押せば前ダイヤルで露出補正が可能となる。
でも正直言えば、露出補正がすぐに出来ないのはしんどいので、
Pモードに関してはハイパープログラムよりも、旧来からの
「プログラムシフト操作系」の方が使い勝手が良いであろう。
<プログラムライン変更機能>
HYPER操作系の基準となる「プログラムライン」の設定だが、
これを、通常、開放優先、絞込み優先、MTF優先(f5.6優先)
の4通りの中から選択できる。
これを装着するレンズに合わせて設定しておけば、殆ど
ハイパープログラムやハイパーマニュアルだけでも事足りる
ようになる。
具体的には、大口径レンズ使用の場合は開放優先にする等だ。
また後述のSvモードを使用する際にも本設定は密接に関連する。
なお開放優先の場合の設定には「HiSpeed」と書いてあるので、
やや意味がわかりにくいと思う。というか、そもそもこの機能が
何であるか理解するのは一般ユーザーには難しい、このあたりは
上級者向け機能だ。
<ハイパーマニュアル>
M露出モードでのハイパーマニュアルは、結構使い出がある。
まず、Mモードでグリーンボタンを押すと、プログラムライン
又は、設定した絞りを維持、あるいは設定したシャッター速度
を維持して、適正露出を得る事ができる。
ここで言うプログラムラインは上記の設定にも依存するので、
やや複雑だが、上手く使えば一発で、ほぼ希望通りの設定を
得る事ができる。ただ、せっかくのハイパーマニュアルなので
絞り維持(TVシフトと書いてある)のモードにしておくのが
良いであろう。
この状態で、前ダイヤルでシャッター速度、後ダイヤルで
絞り値を変更し、露出インジケーターを見ながらマニュアル
撮影が可能である。
意図的な露出オフセットで、露出補正操作が不要な事と
絞りとシャッター速度の両要素を同時に作画意図に反映できる
事がハイバーマニュアルのメリットだ。
で、ダイヤルでの設定変更の度合いが大きく、露出値が
わからなくなったら、適宜グリーンボタンを押せば、すぐに
(自身で設定した手法に基づいて)適正露出に戻る。
この時、マニュアルシフト機能、すなわち露出値を維持した
まま、絞りを変えるとシャッター速度が逆方向に追従する
ようになると便利だが、それは、AELボタンを押す事で実現
可能だ。
マニュアルシフト中は、AELの*マークが表示されている、
シフトを解除するには、もう一度AELボタンを押せば良い。
他機では、AELを、押している間、押すたび、と動作変更
できる場合もあるが、本機ではその設定は無い。
また、裏ワザだが、ハイパーマニュアル時に設定した絞り値を
キープしたまま、露出モードダイヤルをAv(絞り優先)位置等
に強引に変更する事ができる、つまり即時、絞り優先等に移行
できる。
露出ダイヤルはファインダーを見ながらでは回し難いが、
MからAvはクリック2つ分、等と覚えておけば、さほど困難では
無い。
なお、この時、前後ダイヤルのカスタマイズ機能で、例えば
後ダイヤルは常に絞り値またはシフト系操作、前は露出補正
操作、のように自分で決めて設定しておくと、絞り優先移行
時に継続して同じダイヤルで絞り値を変更できるので良いで
あろう。
さて、ここまでの機能は銀塩時代でもあったのだが、
デジタル時代での新しいHYPER操作系は2つある。
<TAvモード>
1つはTAvモードである、これは「絞り&シャッター優先」
モードと呼び、後ダイヤルで絞り、前ダイヤルでシャッター
速度を決めると、ISO感度がそれに追従するというモード
なのだが、本K10DのISO感度は、僅かに100~1600の5段の
範囲しか無いので、このモードは実質的には使い物にならない。
ただ、この考え方自体は悪くない。この時代の技術では
ISO感度の可変範囲が追いついていないだけである。
この件の詳細については必要なISO段数がどれ位になるのか
等も含め、本シリーズ第4回、D70の記事に詳しく書いてある。
なお、2017年発売のPENTAX KP(未所有)では、ISOが80万迄
あるので、この機能が有効に働く可能性が高い。
<Sv(感度優先)モード>
これは、例えば後ろダイヤルでISO感度を決め、前ダイヤルで
プログラムシフトができる。
これの何が良いか?といえば、まず、この時代までの他機では、
ISO感度を直接ダイヤルで制御できる操作性を持つカメラは
存在していなかったと思う。
なので、一々ISO設定ボタンを押してから変更したり、下手を
すればメニューの中からISO設定を選ばなくてはならなかった。
AUTO ISOを使えば良いではないか?と思うかもしれないが、
まず、この時代のカメラのISO感度は、最高1600か、良くて
3200程度でしか無い。
私の感覚では「カメラの最高感度およびその下はノイズが多い」
という風になっていて、各社のAUTO ISOでも最大感度の2段落ち
位までしか自動で追従しない。具体的にはISO400~800程度
までしかこの時代のカメラでは自動では上がらないのだ。
これは勿論、暗所等では感度が足りなくなってしまう。
第二の問題は、AUTO ISOではシャッター速度が1/30秒前後
まで落ち込んでから、初めて1つ上の感度に変更される。
しかしこれは50mm標準レンズや標準ズームだったら、それでも
良いが、300mm望遠レンズ等を使っている際に1/30秒前後
まで落ちてしまったら、優秀な手ブレ補正があっても手ブレ
必至だ。
これらの理由から、当時のカメラではAUTO ISO機能は特定の
(普通の)撮影条件でしか使用できず、ちょっと凝った
撮影では使用不可であった。
よって、手動ISO設定が常に必要であったのだ。
それと、これより前の時代のカメラ、例えば、第1回記事の
NIKON D2Hや第4回記事のNIKON D70等では、AUTO ISOのモード
が存在していない、だから必ず手動ISO設定が必須となる。
AUTO ISOの話が長くなったが、現代の高感度時代のカメラでは、
AUTO ISOを用いれば十分なのだが、この時代のカメラでは、
その機能は使えない、という事だ。さらにちなみにだが、
現代ではFUJIやOLYMPUS,NIKON等の一部のメーカーでは、
AUTO ISOで感度が切り替わるシャッター速度を、ある程度
任意に設定する事が可能となっている。
という事で、ISO感度を頻繁に変更しつつ撮影する事は、
2000年代前半のデジタル一眼では必須であったが、どのカメラ
でも、それがダイレクトに変えられないという不便な状態が
続いてた。
結局、現在2017年に至るまで、ISO感度をダイレクトに変更
できるカメラは、数えるほどしか発売されなかった。
が、まあ、前述のように現代では超高感度AUTO ISOがあれば、
もう殆どISO操作子は不要になってしまったとも言えるが・・
で、本機K10Dでの、Svモードの話に戻る。
このモードを使えば、ほぼ史上初とも言える、ISO感度の
「常時直接変更」が可能となるのだ。
ただ、これを使うと当然だがダイヤルが1つ占領されてしまう、
そして、絞り値等の操作は出来ない、余ったダイヤルには
プログラムシフトしかアサインできないのだ。
おまけに露出補正も直接制御は出来なくなる。
(ただし露出±ボタンを押せば、前ダイヤルで露出補正が
効くようになる)
で、プログラム露出オンリーとなるのだが、前述のように、
本機のプログラムラインは、4種類を、好み、あるいは
使用レンズに合わせて設定可能である。
たとえば、ほぼ開放でしか使わない超望遠レンズなどでは、
プログラムラインを開放優先(HiSpeed)に設定しておけば良い。
この時、前述の「AUTO ISOが望遠レンズの手ブレ限界
シャッター速度を維持するようには変化してくれない」
あるいは手動ISOでも、例えば絞り優先モードでは
「望遠レンズをほぼ開放で使っている状況でシャッター速度が
落ち込んだら、もう絞りを開けられず、面倒な操作系で
ISO感度を変えなくてはならない」という問題点を、
このSvモードでカバーできる。
つまり、シャッター速度が落ち込みそうになったら、ISO
感度をダイヤルで直接手動設定し、高めてやれば良いわけだ。
本モードでの絞り値の変更は、必要であればプログラムシフト
すれば良い、露出補正操作はやや面倒だが、まあ実際のところ、
この時代(2000年代後半)以降のカメラでは、あまり頻繁な
露出補正操作の必要性が無くなってきている。
すなわち、初期のデジカメでは、それをちゃんとやらないと
まともには写らなかったのが、やっとの所、露出補正に無頓着
でも、まあなんとか写るようにカメラが進歩してきたという事だ。
実際、このSvモードはなかなか有効だ、ただ、前述のとおり、
本機ではISO感度の可変範囲が大きくなく、100~1600でしかない。
これから数年後のPENTAX機ではISO感度が25600や51200
となってきたので、その時代のカメラであれば、なおさらこの
機能は有効とは思われるが、しかし、その時代ではISO AUTOに
しておけば、望遠レンズとか以外の場合は何も問題ないので、
逆に出番は無くなってしまったのかも知れない。
さて、ここまでが HYPER操作系の概要だ、
理解できただろうか?まあ、正直言えば難解だと思う。
銀塩時代の単純なハイパープログラム、ハイパーマニュアルで
さえ、殆ど誰も理解できなかったのだから、デジタル時代の、
さらに複雑なHYPER操作系では、一握りの上級者で無いと
理解不能だろうし、理解できたとしても、さらにこれを
使いこなせるのは、もっと、ほんの一握りであろう、
1%か、それ以下のユーザーの比率でしか無いと思う。
だとすれば、あまりこの機能を過大に評価するのは禁物なの
かも知れない、殆ど全ての人が使いこなせないのであれば、
結局、あまり有益な機能では無いとも言えるからだ。
が、私個人的には、こういう複雑な機能は大歓迎だ、誰も使い
こなせ無いのであれば、むしろマニアックさを感じる事もある。
K10Dの弱点といえば、まずはISO感度であろう、最大1600
ではさすがに厳しい。ただ、PENTAXのデジタル一眼としては
恐らく初めてベース感度をISO100とした(他機はISO200~)
この為、本機は大口径レンズ(FA77/1.8やFA85/1.4等)の
母艦として、人物撮影(成人式や七五三等)で良く使用した。
(上写真は、FA77mm/f1.8使用)
もう1つの弱点は、上記にも関連するのだが、ポートレート
撮影などで厳密なフレーミングが出来ない事だ。
視野率は一応95%と上々なのだが、縦位置でポートレート撮影
を行う際、ファインダー像と撮影画像が縦に若干ずれてしまい、
構図上の余白が出来たり逆に余白が減ったりしてしまう。
これはもしかすると故障だったのかも知れないが、その原因は
考えにくく、そういう仕様(欠点)であったと思うのが妥当だ。
シビアな構図が出来ないと、ポートレート写真のプリント時
に困ってしまう、なにせ、六つ切りとかのアスペクト比は、
撮影画像の縦横比とは異なり、印刷時に周囲から切り詰める
ので、どんどん余裕が無くなってしまうのだ。
例えば、全身像で印刷時に顔を入れると裾が入らない、足を
入れると髪が入らない等の問題が良く発生した、結局、本機で
人物撮影をする場合には、周囲にある程度の余白を持たせた
構図でしか撮れなくなってしまった。
厳密なフレーミングを行う際には、視野率100%の高級機で
無いと無理だという事を実感したカメラでもあった。
それから、AF精度があまり良く無い事も弱点としておこう。
思っているよりもピンボケが多く、歩留まりが悪いので、
ポートレート撮影ではMFを併用するのが良い。
さて、K10Dに対応する銀塩名機としては、やはりHYPER操作系
を搭載したZ-1シリーズであろうか。
こちらが Z-1 (1991年) 1/8000秒シャッターを搭載した
当時の銀塩フラッグシップ機である。
SFシリーズの失敗から、気合を入れて作ったカメラだと思うが、
ちょっと機能を詰め込みすぎたバブル期的な要素もあり、
個人的にはあまり好きなカメラではない。
ちなみに定価は約10万円、私の購入価格は1990年代後半に
中古で3万円だった。
余談だが、Zシリーズであれば後年のZ-20(P)がマニアックだ。
この機種は、プログラムシフトでユーザーが行った操作を記憶
して、次回からはその値を優先するという「学習機能」を搭載
したユニークで珍しいカメラである。
まあ、パソコンや携帯での漢字変換の学習機能と同じような
もので、そのあたりをヒントにした発想なのであろう。
でも実際には、あまり実用性は無い。銀塩時代に面白半分で
購入したが、すぐに飽きて知人に譲渡してしまった。
本機K10Dの購入価格だが、2008年に中古で35000円であった、
2006年の発売時定価がおよそ12万円であったのでずいぶんと
安価だったが、これは知人が後継機のK20Dに買い換えた為に
本機を安く譲って貰ったからだ。
さて、最後に本機K10Dの総合評価をしてみよう。
(評価項目の意味・定義は第1回記事参照)
【基本・付加性能】★★★
【描写力・表現力】★★☆
【操作性・操作系】★★★★
【マニアック度 】★★★☆
【エンジョイ度 】★★★☆
【購入時コスパ 】★★★
【完成度(当時)】★★★☆
【歴史的価値 】★★☆
★は1点、☆は0.5点 5点満点
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【総合点(平均)】3.1点
評価点は標準的だが、なかなか面白いカメラではある。
基本性能、特にISO感度の変化幅がもう少し大きければ、
かなり使い勝手が良いカメラとなったと思う。
まあでも、昼間や明所で使うのであれば十分で、マニアックで
そこそこ楽しめるカメラだ。
勿論、現代でも十分に使用できる事は言うまでも無い。
次回シリーズ記事に続く。