写真はニコンD2Hのカスタムファンクション設定画面である。
このD2Hは40項目以上のカスタム機能を設定する事が可能である。
私は、カメラを買った時にすべてのカスタムファンクションを自分の使いやすい
ように設定するのが常である。
銀塩のカメラでは、α-7とか、(今だったらF6もか・・)背面に設定用の液晶がついて
いる高級機では、カスタムファンクションの内容が液晶に文字(文章)で表示できる
カメラでなければ、取扱説明書が無い限り、カスタムの設定は不可能であった。
銀塩中古カメラを買ってくると取説が無い場合があって、今でこそネットでPDF
なりで取説をダウンロードできるのであるが、数年前まではそんなサービスも無く、
たとえばEOS-100 というカメラ(名機である)を安く買ったのはいいが、取説が無く、
カスタムの機能がわからず、物凄い時間をかけて、1つ1つの機能をいじくりながら
内容を予想(想像)して設定をした事もあったが、今やそれも昔話である。
現代のデジタルカメラでも、背面の液晶モニターを用いてカスタム機能をわりと
簡単に設定することができる。 2000年発売のα-7から背面液晶がついて一番楽に
なったのはまさにこの点であり、要はこのカメラ以降の液晶付きカメラでは、
どのカメラも実質的に(私にとっては)取扱説明書が不要となったのが嬉しい。
「取説が無くても操作がわかるのか?」
・・・そりゃそうだ、だって、MENUというボタンを押せばそこにすべて日本語で
書いてある、これは簡単だろう?
他の操作系だって、ボタンには文字やマークが書いてあるし、そんなのたいがいどの
カメラでも一緒である、使いやすいとか使いにくいとかは勿論あるが、まあ、基本は
どれも同じようなものである。
撮影会や写真教室の指導で、初級者の人達が「匠さ~ん、カメラの設定がわからない」
と、ありとあらゆるカメラを持ってくる場合があるが、そんな時に、カメラの使い方
がわからないと格好悪いだろう? まあ、格好悪い以前に、設定ができないとその人は
写真が撮れないから困るだろう? だから、どんなカメラでも使えるようにしておかな
ければならない。
「本当にどんなカメラでもわかるのか?」
・・・くどいなあ(怒)、そりゃあまりに特殊な操作のものはわからないよ。
でも、まあ一般に初級者が買えるような、あるいは普通の家庭にあるような一眼レフなら、
全てオッケーだ。 ただし、そのカスタムファンクションを除いてはな・・・・
「で、カスタムファンクションって何だ?」
・・・ズデッ!(汗)
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そう、中級者までの人で、カスタムをしっかり設定したカメラのオーナーを見た事が無い。
ニコンのD70やらを持ってきている人から「ちょっと写して」って頼まれて、後ろダイヤル
で露出補正をしようとしたら・・・動かない(汗)
・・・何? 簡易露出補正してないの?
「何それ?」・・・ズデッ!
また別の中級者。名機α-7を持っているから、ちょっとはわかっているかなと思って、
・・・そこでは、ピントがシビアなのでDMF機能をつかってな!
「DMF? 何それ?」・・・ズデッ!
こんどは上級者。高級機D2Hを持ってきていて、借りてISO感度を変えてみようとすると、
400→500→640→800→1000
・・・何これ? なんでISO感度調整を 1/3段の細いままで使っているの?
「え? そんなの変えれるの?」・・・ズデッ!
・・・ヲイヲイ、私は今日はちょっと機嫌が悪いよ。 そろそろ辛口モードだよ(汗)
何のために、みんな10万円以上もする高いカメラ持っているの?
簡易露出補正もDMFもISO設定を粗くするのも、カスタムの基本じゃないのかな?
そりゃあ、簡易露出補正したら、補正を戻し忘れるリスクがあるから、、という意味で
それをしていないのならわかるよ、というか、むしろ良くわかっていると思うよ。
けど、知らないでやってないのは、何の自慢にもなるまい。
DMFだって、これがついているのは、α-7とα-70と、α-7Dの3機種しかないんだよ、
(新しく出た α-Sweet Digital にもついているようだが、操作方法は未確認)
だから高級機の証とも言える、αユーザーが誇るべき非常に重要な機能なんだ、でも、
デフォルト(買ったまま)ではこの機能は使えない、必ずカスタムを変更しなければ
ならないんだ。
「そんなに重要なDMFって何だ?」
・・・これは ダイレクト・マニュアル・フォーカス の略語である。
DMFをオンにしてフォーカスモードをAに切り替える。
すると、どんなα用のAFレンズを使った場合でも、AFでピントが合った瞬間に
レンズを自動的にマニュアルフォーカスで使うことができるようになる。
「それのどこが凄いんだ?」
・・・ズデッ。 君はAFで写真撮って困った事ないのかいな?
たとえば、動物園の撮影で、計らずも檻にピントが合ってしまった、こんな場合でも
MFにいちいち切り替えなくても、何の操作もせずに、そのままピントリングをくいっと
回せば奥にいる動物にピントを合わせることができる。
あるいはポートレート撮影でAF85/1.4といった非常に被写界深度の浅い大口径レンズを
使っている時、モデルさんの目に合わせるべきなのが、長いまつげに合ってしまった、
被写界深度はわずか数mm、ごく僅かのピントのずれが写真の印象を大きく変えてしまう。
そんなとき、DMFでピントをごく僅か変えてしっかり目にピントを合わせることができる、
他にもマクロ撮影とか、この機能が無くてはならないシチュエーションはいくらでもある。
キヤノンのUSMレンズ、ニコンのAF-Sレンズ、コンタックスNシステムの
シームレスAF、一部のペンタックスDAレンズ、オリンパス・フォーサーズのS-AF+MF等
の各々のモードでも同じようにAFとMFを組み合わせて使うことができるよ。
でも、これらのシステムは必ずレンズを選ぶんだ、つまり所定の(純正あるいは対応)
レンズでないとその機能を使うことができない。
しかし、αのDMFは違う、どんなAFレンズをつけても、MFに切り替えて使うこと
ができる。 そう、各社の手ぶれ補正の考え方と一緒だよね、コニカミノルタだけは
「どんなレンズをつけても手ぶれ補正が効く」というメーカーポリシーを持って製品の
仕様としている。 自社純正だけでないよ、シグマでもタムロンでもオッケーだよ。
DMFの仕掛けは簡単である、何のことは無い、AFが合焦した瞬間に、AFモーターの
レンズへの伝達機構をクラッチ(車やバイクのそれを想像して欲しい)を用いて切るだけ
である。 でも、これだけでOK。ヘリコイドの回転トルクとかそこまでうるさいことを
言わないかぎりは、実用性は非常に高い。
「何でそれを今まで教えてくれなかった」
・・・何を言ってるか・・ 自分が勉強してなかっただけであろう?
DMFを知らずしてαの操作性がうんぬん、なんて言ってるのは100年早いわ!
もう一度取扱説明書の隅から隅まで目を通して、測光パターン表示とか、PAシフト
とか、7Dだったらゾーン切り替えとか、そういう重要な機能は全てちゃんと理解
しておく必要がある。そのままでいったら、悲劇のペンタックス「ハイパープログラム」
みたいに、ユーザーや評論家があまりに無知だった故にまったく理解されずに消えていった
大変優秀かつ革新的な機能、そんな事をまた繰り返してしまう事になるぞ。
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「カスタムファンクションというのは、それほど重要な事なのか?」
・・・いや、それだけではない、そういう重要な機能がさりげなく入っていると思えば、
銀塩で言ったら「巻き戻し時にフィルムの先端を残す、残さない」とか、「フィルム
カウンターを順算にするか逆算にするか」とか、まあ、あまり重要でない機能を設定
する要素も多い。 けど、よく見ていくと中には使い勝手に大きく影響する非常に重要な
設定も混じっているんんだ。で、そういうのを同じ階層(注:ユーザーインターフェース
の考え方であり、メニューや機能を呼び出す手順の複雑さの度合いと考えても良い)に
置くのが、そもそも間違っているだろう?
α-70、銀塩ミノルタ最後の機種では、DMFは一階層上がって、左手のFUNCダイヤル
で設定できるようになった・・しかし、直後にコニカと合併して、次機種α-7Dではまた
カスタムの階層に逆戻りである、こういうのをカメラを知らない人が設計していると
言うのである。 7Dの操作系の悪さは7に比べて雲泥の差がある。文句を言いたい点は
山ほどあるのであるが、まあ、その7Dでも、他のデジタル一眼に比べてはマシな方で
あるともいえるから今のところ我慢している。というか「デジタルの撮影技法の事なんか
良くわかっていないで設計してるんだな・・・」と冷ややかな目線で見るしか手段が無い。
カスタムの話に戻るが、カスタムのデフォルト値を決定するのも、設計者のカメラ知識
が問われるのである。 おおむねニコンのそれは、項目は良いのだがデフォルトが
大きくズレていて笑ってしまう。そしてキヤノンはカスタムの機能そのもののがおかしい。
また、銀塩の末期コンタックスでは設定がマニアックすぎてわけのわからないものが多い。
そして、カスタムファンクションの重要性が少し理解できたとしても、皆こう言うのである
「カスタムを設定しようとしたが、設定項目の意味がさっぱりわからん」
・・・それは2つの原因がある。
1つは、ユーザーが撮影技術について勉強不足であることである。
とはいえ、α-7/7Dにおいて、AEロックボタンを押すと、露出計が自動的にスポット
測光に切り変わって基準露出値との差を露出計バーグラフ上に差分をプロットする意味が
どれだけ重要なのかを理解するのは、上級者レベルでも無理であり、【玄人専科】レベル
においてやっと意味がわかる事である。 こういうのをさらりと仕様にもりこんで、
しかもカスタムでは「AEロックボタンの切替は、押している間? それとも押すたび?」
なんて問われても、簡単にどちらが良いのかは理解できないであろう。
ちなみに、私は、押すたびに切り替え(トグル)に設定している。
この設定によって、設定した露出値において、ハイライト部をスポットで測光し、
そこがフィルムあるいはCCDのラティチュード内に収まるかどうかをグラフ上で確認
する事ができるからであり、そのためには、押している間というのはちょっとしんどい。
押すたびにしておけば、右手親指をフリーにして、後ろダイヤルで露出補正を併用できる
からである。(ちなみにαでは後ろダイヤル露出補正もカスタムで設定しなければならない)
こういうレベルであるから、たとえ中上級者がカスタムを設定しようとしても理解できな
いのもうなずける、非常に高度な撮影技術に精通していることが条件になってしまうので
ある。
2つ目は、メーカーがきっちり説明していないことも問題である。
とは言え、たとえば1つのカスタムの設定の説明をするだけで、前述のAEロックボタン
の機能ような複雑かつ高度なレベルの解説を取扱説明書に盛り込むのも困難であろう、
じゃあ、ムック本(△△カメラの使い方等)などで解説すればいいのか?
と言っても、残念ながらそこまで高度なムック本なんか存在していない。
だって、そもそもムック本は、△△というカメラが欲しいけど、買おうかどうか迷って
いるようなユーザー層向けのものがほとんどである、だから、そんなに複雑な内容に
誌面を割くことはできないのである。
じゃあ、カメラ教室で教えたらどうか?ってか?
チッチッ・・・(指を振る) カメラ教室に習いにくるレベルでそこまで分かる人
なんか誰もいやしない、分かるなら、わざわざお金を払って習いに来るわけないよ。
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結局、現状ではカスタムファンクションは、プロ、マニア向けの玄人/専門家レベルの
御用達の機能となってしまっている。
しかし、カスタムを設定していないままで、かつ、そのデフォルト値がいいかげんな
デジタル一眼などは使いにくくてしかたがない。 気が向けば初級者~中級者の
そうしたカメラのカスタムを設定してあげることもあるが、それとて何ヶ月かすると
いつのまにか、電池がなくなったか誤ってクリアしたかで、設定がリセットされて
また使いにくいままに戻っている事も多々あるのである。
何をどうしたら、どうなるのか分かってないけど、なんとなく使いにくいから
また設定して欲しいと言ってくるのであるが、いつも言っている「操作と原理」の
差と同じことで、「操作」を習うことばかりに目が行って「原理」を理解しようと
しないから、カスタムの何番をどうして、とかそんな事ばかり覚えようとするので、
いつまでたっても自力で設定する事ができないのである。
「じゃあ、結局カスタムはどうしたらいいんだよ?」
・・・そんなこと、私に言われても知らん!(汗)
ややこしい機能をつけるメーカーと、それを理解できないユーザーのギャップが問題
なのであって、私はそれについては何も手だすけしてあげることはできない。
メーカーに言うなら「もっとわかりやすくして、初期設定もちゃんと考えろよ!」
ユーザーに言うなら「もっと撮影技法を勉強して、カスタムくらい理解しろよ!」
そんなもんである。
カスタムはもともとユーザー個人の好みを反映するものである、これでなければいけない、
という機能であれば、わざわざカスタムで設定できるようにしなくても、最初からそういう
機能として盛り込んでおけば良い。
露出補正が1/2段きざみで変わる方がいいのか、1/3段きざみの方が良いのかなんて、
どちらを是としても、屁理屈になってしまう。 だからカスタムで設定されるのである。
「じゃあ、カスタムの設定例を教えてくれないか?」
・・・だからぁ(怒) それは、貴方の撮影スタイルに大きく依存するのであって、
これでなければならないなんていう設定は無いんだよ、自分のクセや好みや腕前を
ちゃんと把握できる人だけが設定できるんだよ。それをいちいち聞いてくるような
素人さんに教えることなんて、何もないよ。 出直してらっしゃい。
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最後に1つ、カスタムファンクションは、カメラの「操作を学ぶ」という考え方では
まず理解も設定もすることはできない。 あくまでカメラの「原理を学ぶ」という
考え方にシフトできて、それを実践して勉強しているユーザーのみが設定できる機能
なのである。
・・・だから、カスタムファンクションを全部見れば、そのカメラを使うユーザーが
どれだけカメラの知識と技術を持っているか、そんな事までわかってしまうのである。
どんなに上手な写真を撮っていようが、カスタムをまるでいじくっていないユーザーは
私はあまり認めたくは無い、自分の「道具」を使いやすいようにする事にこだわらない
ユーザーは、カメラマンとして重要な何かが欠けていると言わざるを得ない・・・