安価な中古ミラーレス機にマニアックなレンズを装着して、
コスパの良いアダプター遊びを楽しむシリーズ記事
今回はキリの良い第50回目。
まずは、このシステムから。
カメラは、NEX-7
レンズは、SMC PENTAX M 100mm/f2.8
1970年代後半のMFレンズであり、小型軽量一眼レフ、MX,ME
等のいわゆるMシリーズ一眼に合わせ、レンズもMシリーズとして、
小型軽量化された物である。100mm/f2.8というと、他社製品
では結構大柄なレンズとなるが、本レンズはさすがに小さく、
フィルター径も49mmΦと、このクラスにしては小さい。
そもそも、PENTAX Mシリーズは、その数年前に発売されていた、
OLYMPUS OMシリーズの小型一眼を凌駕する為に開発された
カメラ(およびレンズ)群なのだ。
しかし、小型軽量化で性能を落としてしまった例も、この時代の
レンズにはよくある話だ。さて、本レンズはどうだろうか?
平面被写体は、まずまず写る、ボディがNEX-7なので必要に
応じてデジタルズーム等をかける時もあるが、換算150mm
相当の画角は、まあ通常被写体であれば、あまりそれ以上の
望遠域は必要としない。
フレア、ゴーストも少ない模様で、逆光耐性はまずます。
ちなみに、PENTAXのレンズなので、K-01に装着しようと思ったの
だが、近年のPENTAX デジタル一眼(ミラーレス機K-01含む)は、
Mレンズは装着はできるが、絞りが動かず開放でしか撮影できない。
これは実質上「撮影不能」と一緒であり不便だ。
初期のPENTAXデジタル一眼(*istDsやK10D等)では、
プレビュー操作を行うと、Mレンズでも絞りが動作して一応撮影が
できたのに、何故改悪してしまったのであろうか?
結局、K-01や近年のPENTAXデジタル一眼では、P(K),Mシリーズ
は装着できず、MFレンズだと、Aシリーズおよび、古いM42マウント
(マウントアダプターK使用)のみしか装着できない事になる。
M100/2.8だが、ボケ質破綻は若干発生するが、絞り値操作等で
回避可能である。
PENTAXのこのあたりの焦点距離のレンズについては、
M42マウントの時代(1960~1970年代)では、105mm/f2.8
および120mm/f2.8があった、
SMCT120/2.8(第21回記事)は、かなり優秀なレンズだ。
105/2.8は、所有しているので、いずれまた紹介しよう。
Kマウントになってから(1970年代後半~)は、M42のレンズ
構成のままKマウント化され、P(K)シリーズとして、105/2.8,
120/2.8があった。
そしてMシリーズとして小型化された際、105mm/f2.8は無くなり、
本M100mm/f2.8となった。少しでも小型化する為、焦点距離を
5mm短くしたのではないか?と推察される。
まあ、悪く無いレンズだ。
だが、100/2.8は、本レンズだけが特別優秀という訳でもなく、
第11回記事,ロシアンレンズ KALEINAR-5N 100/2.8
第16回記事,CONTAX Macro Plannar 100/2.8
第24回記事,NIKON シリーズE 100/2.8
第33回記事,MINOLTA AF Soft 100/2.8
CANON FD 100/2.8(未紹介)
と、100/2.8は、優秀あるいは個性的な特徴を持つレンズが
揃っている激戦区だ。
本レンズの中古購入価格だが、2000年代に12000円であった、
まあ、その値段であれば、さほど高いとは思わず、適正な相場で
あろう。現代においては、玉数が少なく入手困難と思われる、
もし見つけたら、妥当な相場かの判断は、やはり12000円くらい
であろうか・・
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さて、次のシステム。
カメラは、お馴染みDMC-G1、こちらは予備機の方だ。
普通、同じカメラは1台あれば十分だが、何故予備機が必要か?
という点については、私はG1を1台購入し、その優秀な操作系は
他に無いカメラだと思い、中古市場から無くなる前に、もう1台
購入したという理由からだ。
それだったら後継機のG2,G3,あるいはG5でも良いのでは?と
思うかもしれないが、G2以降はタッチパネル操作が加わって、
一部の操作系を悪化させてしまっている。(そもそも、EVF
搭載機で、タッチパネル操作というのがおかしい。EVFを覗いて
撮るのに、タッチパネルなんか触りようが無いではないか!)
で、私はカメラに限らず、レンズも予備を持つ場合もあり、
オーディオ機器でも、MP3プレーヤーやイヤホンは、同一機種を
複数購入する事が良くある。これらも同じ理由で、特に優秀な
機種(機器)と判断した場合、後継機が必ずしも改良されている
とは限らず、さらに言えば、後継機はもう無いかも知れない。
(イヤホンにいたっては、同一機種を4本持っているケースもある、
壊れたりした時に買いなおそうとしても、すでに市場には無い
可能性が高いからだ)
さて、レンズは、KONICA AR HEXANON 40mm/f1.8である。
2000年代にデジタル時代になって、しばらくの間はARレンズは
使いようが無かった。フランジバックが他社よりも短いARマウント
は、他社デジタル一眼にアプダターで装着できなかったのだ。
一時期「フォーサーズ機に装着可能」という噂が流れたが
あくまで都市伝説の類である。そう簡単には装着できなかったし、
仮に装着できたとしても、フランジバックが微妙に異なるので
自在な撮影は困難だ。マウントごと改造してしまえば上手く
いったかもしれないが、そこまでは、やりすぎであろう。
同様な伝説として「PENTAX KマウントとSIGMA SAマウント」
がある、これらもマウント形状は酷似しているが、フランジバックが
かなり異なる、おまけにAF/デジタル一眼では、電子接点からの
情報伝達方式が全く異なれば、どう考えても自在な撮影は出来ない。
まあ、という訳で、KONICAレンズは、もうアウト(使用不能)と
諦めていたのだが、2010年代、ミラーレス時代になって、
μ4/3やEマウントはARよりさらにフランジバックが短く、
AR用のアダプターも簡単に作ることができたのだ。
これは朗報であって「ARレンズを売らないで良かった」と
思った次第である。
ARレンズ復活で、中でも一番嬉しかったのは、本AR40/1.8が
使えるようになった事であった。これは銀塩時代に、
AutoReflex T3や、ACOM-1に装着して撮っていた時から、
結構気に入っていたレンズであったのだ。
本シリーズ記事において、ARレンズは何度か登場している、
ただ、今回ミラーレス機で性能を評価していると、銀塩時代には
良いと思っていたレンズも、さほどで無かったり
逆にノーマークだったレンズが、かなり優秀だったりして
驚いた事もある。特に良かったのは、AR35/2.8(第8回記事)
であった。
今回、AR40/1.8を使ってみた感じでは、残念ながら、本レンズ
は評価ダウンだ。
まず、フレアが結構出る、これは勿論厳しい光線条件において
使ってみての話だ。
銀塩時代のコニカ一眼レフの最高シャッター速度は1/1000秒
であった、本レンズの開放f値は、f1.8である。
これだと、ISO100程度のフィルムを使った場合、日中ではとても
絞りを開けることはできない、すぐにシャッター速度オーバーに
なってしまうのだ。
なので、日中屋外では絞り込んで撮影し、日陰、夕方、室内とか
そういう時に初めて絞りを開けて使える訳だ。
今回、DMC-G1の最高シャッター速度は1/4000秒、
そして、絞りの効果をフルレンジで確認するために、
ND4(減光)フィルターを装着している。
なので、日中だろうが逆光だろうが、絞りを開けてガンガン撮れる、
けど、その代わり逆光耐性等のレンズの弱点はモロに出てしまう。
EVFで拡大画像を見ると解像度も低そうだ、G1の設定で
シャープネスを 0から+1に変更する。
そして、ボケ質破綻が大きい。
特に開放f1.8は、撮影距離、背景距離、背景の絵柄等について、
多くのケースでボケ質が破綻する。
その場合、f2.8程度まで絞れば少し回避できるが、背景条件に
よっては、それでも無理だ。
ここまでボケ質破綻が大きいレンズだとは認識していなかった、
やはり銀塩一眼レフの光学ファインダーでは、全くボケ質は判断
できないので、DPEから上がってきた写真の、たまたま良いものを
見つけて、ボケが綺麗だと誤認していたのかも知れない。
まあしかし、ボケ質がヤバそうだと思った時は、ボケ質回避の
手法を用いれば良い、これはこのレンズだけの問題ではなく
多くのオールドレンズは同様な問題を抱えている。
本レンズについて、私の持っていたイメージでは、
準パンケーキ型標準のニコンAi/E 50/1.8(第21回記事)や
OLYMPUS OM50/1.8(第26回記事)と類似の、優秀な描写を
するレンズだと記憶していた、しかし、実際はちょっと異なる感じだ。
(ちなみに、Ai50/1.8,OM50/1.8,AR40/1.8の各レンズ構成を
調べてみると、いずれも5群6枚で同じであった)
で、OM50/1.8は、ジャンクで購入してカビが発生、逆光性能を
大きく落としてしまったので、本レンズもカビが出たのかと思い、
確認してみたがどうやら大丈夫な模様だ。
すると、フレアの多さはやはり性能の悪さか・・・
フレアはまあ良い、光線状況を工夫すれば回避できるからだ、
だが、絞り開放でのボケ質破綻は、ちょっと問題だ。
本レンズの最短撮影距離は45cmと、標準レンズとしては普通の
性能なものの、焦点距離は短めの40mmなので、できれば
35cm位まで寄れて欲しい所だ。
よって、寄れない状態でボケ量を大きく取ろうとすると、
絞りを開けるしかなく、その開放f1.8がボケ質的に使い難いと、
ちょっとストレスになってしまう。
まあでも、これらの話はかなり厳しく評価した場合だ、
基本的には、あまり問題が無い類のレンズである。
銀塩時代にはマニア間での評価も悪くなかった事も記憶している。
本レンズの購入価格は、1990年代に13000円であった。
現在では玉数は少ないが、稀に見かける事がある。
ただ、準パンケーキ型レンズであるので、中古店がその事に
着目すると・・・
つまり、1990年代後半にパンケーキレンズのブームが起こり、
その頃は、皆、訳もわからず薄型レンズを買いあさり、
その結果、パンケーキの相場が恐ろしく高騰してしまったという、
「パンケーキ・バブル」の時代があったのだ。
勿論そうした根拠の無いブームはすぐ終息した、何故ならば、
パンケーキで優秀な描写力を持つレンズなど皆無だったので、
まず、上級マニア層が、すぐに飽きてしまった。
その後、高値を出して買うのは、一部の好事家だけになり、
それもほどなく収まった。(転売も出来ない、高く売れない、
誰も買わない・・そうなれば、バブルは必ず崩壊する)
で、そのあたりの経緯があったのだが、事情を詳しく知らない
一部のユーザーは、現代に至るまで、パンケーキをありがたがる
風潮がある。よって、そうしたユーザー層を狙った中古店等では、
パンケーキの価格を、今なお高く設定してしまうのだ。
そんな場合、このKONICA AR40/1.8 も餌食である(汗)
性能的・仕様的な面からの適正な相場は、9000円~1万円程度
が妥当な線だと思う。性能面では12000円をつけても良いが、
アダプター利用以外では、装着できるカメラが存在しない事を
考えると、その点2000~3000円程、マイナス評価だ。
しかし、準パンケーキであり、ややレアであるから、中古店
によっては、高くても売れると考え、18000円や20000円の
強気の値付けになってしまうかもしれない。
まあ、そういう価格設定を見たら、買わないのが賢明だ、
そこをパスしても、どこかで必ず安価な値段で売っている。
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さて、次のシステム。
カメラは、DMC-G5
レンズは、PENTAX スーパータクマー 150mm/f4
1960年代のMFレンズで、自動絞りに対応したという事だが、
それは後年のレンズでは当たり前の仕様だ。
で、現代においては、M42アダプターで問題なく使用できる。
SMC多層コーティングでは無いので、一見使い方には注意が
必要なように思われるが、まあ、本シリーズで、過去いくつかの
単層コートのレンズを紹介しているが、あまり複雑なレンズ構成
で無い場合は、特に問題は無い模様だ。(本レンズは5群5枚と、
シンプルな方だ)
μ4/3機のG5に装着した時点で、画角は300mm相当。
さらに、デジタルズーム操作系に非常に優れるG5である、
何のボタンも押さず、そのままレバーで連続的に最大2倍まで
画角変化可能で、300~600mm/f4(相当)レンズとして使える。
加えてデジタルテレコンをかければ、最大2400mm相当の超々
望遠となるが、画質劣化及び、ブレが大き過ぎて実用的では無い。
今回は600mmあるいは必要に応じて1200mmまで使う事とする。
(写真は1200mm相当、すでに輪郭がパキパキになっている)
この焦点域だと実際のところ、撮れる被写体は限られる。
スポーツ撮影、動物園、野鳥、野良猫、あたりだろう。
で、スポーツ撮影はさすがに、ここまで(50年以上も前の)古い
レンズを使う酔狂な人はいまい。動物園あたりで使うのが
楽しそうではあるが、その場合は画質的な面でも、デジタル
ズームには頼らず、光学ズームの400ないし500mmの
本格的望遠を持っていくのが良い。
まあ、すると、やはり野鳥か野良猫かあ・・(笑)
こちらは最短撮影距離のテスト、本レンズの場合は1.8mと、
150mmという焦点距離の通常1.5mよりも少々長い。
デジタルズームを併用して、物足りなさを緩和する事としよう。
なお、ボケ質は思ったより悪くない。
「ボケ質破綻がかなり出るかな?」とも覚悟していたのだが、
ちょっと嬉しい誤算だ。
で、150mmというちょっと変わった焦点距離の件だが、
第21回記事の、SMCT120/2.8の時に、そのあたりの
PENTAXの設計思想を述べている。
まあ、設計思想というよりも、今にして思えば、マーケティング的
発想だったようにも思うが・・
再び野鳥だ、どうしてもこういう被写体に目が行ってしまう。
まあ、やむを得ない。母艦としてDMC-G5を選択した時点で、
デジタルズームの便利さに頼ってしまう事は明白だ。
しかしこれは、ある意味、レンズとカメラの相互の欠点を相殺し、
パフォーマンスを発揮できる組み合わせという事でもある。
つまり150mm/f4という、何に使うかわからない(失礼!)レンズ
なのだ。銀塩時代から所有しているのだが、ほんと、何を撮ったら
良いのか、良くわからないレンズであったのだ。
結局、殆ど使っていなかった、というのが正直な所だ。
本レンズが、G5との組み合わせで300-600mm(1200mm)/f4
相当の望遠ズーム機となれば、野鳥や野良猫用カメラとして
最適なシステムになる。
本レンズの購入価格だが、1990年代に中古で15000円であった。
正直高かった(汗)珍しい焦点距離なので、つい買ってしまった
のであった(反省)まあ、性能的には悪いレンズでは無いが、
現代の価値感覚で言えば7000円程度が妥当であろう。
(性能的には9000円と見たが、単層コーティングを嫌う(怖がる)
ユーザー層が多いので、その分2000円のマイナス評価だ)
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次は、今回ラストのシステム。
カメラは、LUMIX DMC-GX7
レンズは、CONTAX N Planar 50mm/f1.4
第9回記事で既に紹介したレンズの再登場である。
NシステムやNプラナーの歴史や悲運については、当該記事や
本ブログのかなり昔のNシステムの記事を参照してもらうとして、
そのあたりは、ばっさりと割愛しよう。
前回第49回記事で「オールドの50mm/f1.4は飽きてきた」と
ボソっと書いたのであったが、まあ、その記事で紹介した
2009年発売のDA★55/1.4は、そのストレスを吹っ飛ばす
痛快な写りであった。
もう1つ位、快適に撮れるレンズは無いものか?と思い出したのが、
本レンズである。出来ればもっと新しいものが良さそうだが、
なにせ、2010年代以降の最新鋭高性能50mm/f1.4は値段が
高すぎて、まだ「圏内」では無いのだ。
最新鋭50mmの中古相場がこなれてくるまでは、しばらく、
2000年代の、ちょっと新し目の50mm標準で我慢するとしよう。
なお、高価なレンズであるので、カメラもそれなりに高価な
ものを使っている、このあたり、カメラとレンズの価格バランス
に留意するという点も、本シリーズ記事のコンセプトの1つだ。
具体的には「カメラがレンズより高すぎてはならない」という
持論であるが、その比率(何倍まで)とかは特に定めていない。
まあ、それを逆に言えば、GX7は比較的新しいカメラであり
(・・と言っても購入価格は29000円と、さほど高くも無いが)
これに装着するレンズは、GX7よりも高価な30000円以上の
レンズが基本的には望ましい、というルールとなる。
で、本レンズであるが、銀塩MF時代の RTS(Y/C)マウントの
Planar 50mm/f1.4(第22回記事)と、何処が違うのであろう?
なんとなく、同じレンズのように思える・・
調べてみると、どちらも同じ6群7枚だ。
変形ダブルガウス型の6群7枚の50/1.4というのは比較的
ありふれた構成であり、1970年代くらいからすでに、ほぼ
完成の域に達していたレンズ構成である。エンジニア的に言えば、
いわゆる「枯れた技術」であり、良い言い方では「熟成した技術」
でもある。
しかし、AF化した事で、レンズは極めて大くなってしまった。
そう言えば、マニアの間では、2000年くらいに、こんな噂が
流れていた。
マ「今度出る、CONTAX Nのプラナーは、今までの50mm/f1.4
の外側に、AF用の側を被せただけだよ」
Nプラナーが高価であったので、購入を自重するという意味での、
マニアの言い訳だったのかも知れない。なにせ第一次中古カメラ
ブームは、そろそろ終息を迎えていた時代だ、そこでまだ
生き残っているマニアは相当のヘビー級であるから(笑)、
CONTAXの新製品が出ると言えば、有り金はたいて、借金しても
買ってしまう危険性もあったのだ。なので、こういう噂レベルの
話でも信じて(流して?)自分を制御しないと身の破滅だ(汗)
ちなみに、私は自重した。高すぎてコスパが悪いと思ったのだ。
だが数年して、Nシステムが不人気で(商業的に失敗し)、
相場が大暴落すると、その瞬間、N1,NP50/1.4,NP85/1.4を
大枚はたいて新品購入してしまったのだ(汗)
で、レンズの大きささだが「AFの皮を被った」という話の真偽は
ともかく、実際のところで信用できる説としては、
「Nシステムは、最初からフルサイズ撮像素子を意図して設計
された為、テレセントリック特性(レンズ後玉からの光束が、
デジタルの撮像素子面にできるだけ垂直に到達するように
配慮した設計の事、これはフィルムとの特性の差が理由)
を変更したため、レンズが大型化した」との事だ。
ちなみに、今回、後玉を見比べてみると、従来のプラナー50/1.4
は平らまたは少し凹に見えるが、Nプラナーは、凸になっている。
事前に想像していたのは、Nプラナーの後玉は非常に大きくなって
いるのでは?と思えたのだが、その点はあまり変わりが無かった。
まあ、それが大きいのはf1.2級の超大口径レンズとかであり、
どちらもf1.4と、口径比は変わらなので、そんなに差が出る訳
でも無いだろう。
で、両レンズには、およそ四半世紀の時代の開きがある。
どこがどう違っているのだろう?
感覚的なところでの最も顕著な差異は、Nプラナーでは、
RTSプラナーに比べ、ボケ質の破綻が起こり難いという事だ。
ボケ質破綻に関しては、銀塩(デジタルでも)一眼レフでは、
開放測光の為、絞り・背景条件の差での関連が分かり難い
という問題があった。
ミラーレス機でリアルタイムでEVFでボケ質破綻を目の当たりに
しない限りは、その条件の策定を行うのは困難であろう。
銀塩時代から一般的に言われるツアイスレンズの優位点、
すなわち、T*(ティースター)コーティングによる、
コントラストの高さ、ヌケのよさ、階調表現の豊かさ、
シャドウの締まり(注:これらはいずれも技術的に言えば、
コントラストというパラメーターに、ほぼ集約される)
という点は、現代のミラーレス時代においては、あまり重要な
点では無い。なぜならば、コントラストカーブは、たとえば
GX7であれば、暗部補正というカメラの持つパラメータと
フィルムモードに付随するコントラスト設定の両者で
ある程度コントロールできるし、それでも足りなければ
PCでトーンカーブレタッチを行っても良い訳だ。
(ちなみに本シリーズ記事の全ての写真は、レンズの特性を
そのまま紹介するため、PCでのレタッチは行っていないが、
カメラ側の設定はレンズに合わせて適宜変更している)
で、逆に銀塩時代から言われている、ツアイスレンズの弱点
(というか、プラナー構成の弱点)は、「プラナーボケ」と
マニア間で呼ばれているボケ質の破綻、および、焦点移動、
そして被写界深度の浅さによるピント歩留まりの悪さ、の3点だ。
うち、焦点移動と被写界深度の浅さは関連があり、どちらも
多数のピンボケを誘発する原因となっている。
この点は、2000年頃のCONTAX Nシステムでも改善できなかった
模様だ。なので、旗艦CONTAX N1では「フォーカス・ブラケット」
と呼ばれる「ピントずらし連写」機能が、この弱点の救済策として
備わっていた。
だが、ミラーレス時代、絞込み測光で、MFでしかピントが
合わせようが無いNマウントレンズだ、原理的に焦点移動は
発生しない。そして、ピンボケはやむを得ない、ミラーレス機
ではどこをどうしても(まあAF一眼でもだが)ピンボケが
ある程度のパーセンテージで発生するのは防げない。
(4Kフォーカス・セレクト技術の今後の発展に期待しよう)
残る問題は「プラナーボケ」の回避だ。
本シリーズ記事では「ボケ質破綻の回避方法」については、
毎回のようにテーマとしている、これはオールドレンズを
ミラーレス機で使う上では避けては通れない課題だ。
で、喜ばしい事に、NP50/1.4も、NP85/1.4(第13回記事)
も、旧来のRTSプラナーより、ボケ質破綻が出難いのだ。
勿論、平面被写体を撮る上では、そのあたりは何の問題も無い。
でも、逆に言えば、プラナーでこういう撮りかたをしては
面白く無い。というか、やってはらなない、と言う方が良いかも
知れない。何故ならば、プラナーの使いこなしの妙は、立体的
被写体における、ポケ量、ボケ質のコントロールが生命線で
あるからだ。(CONTAX の標準レンズで言えば、テッサーの方が
絞り込んだ際にその特徴を発揮させやすい。第47回記事参照)
ところで、Nマウントレンズでのボケ質破綻の回避は難しい、
というのも、使用しているアダプターが、絞り羽根が内蔵されて
いて、それを機械的に絞り込むタイプだからだ。
で、レンズ内部にある本来の絞りは動作していない。
後玉からの光束を、その後で遮って光量を減らしているだけの
状況だ。詳しい光学的原理はちょっと不明だが、この方式では、
ボケ質の破綻を絞り値の変更で排除するのは、上手くいかない
可能性が高い。(EFマウントで同様な機構のアダプターを
使っているが、それもボケ質破綻の回避が難しい)
まあ、そのあたりは、Nプラナーがボケ質破綻が出難くなって
いる事はラッキーであったと思う。
本レンズの購入価格だが、2000年代に新品で33000円、
これは相場暴落後の価格だ、それまでは5万円以上していた。
現在は玉数減少で入手困難、見つけても「時価」になるだろう。
さて、ここまで本シリーズ記事で紹介したレンズ数は、
(多少の重複もあるが)丁度、延べ200本になった。
まだしばらくシリーズは続く・・