安価な中古ミラーレス機に、マニアックなレンズを組み合わせ
コスパの良いアダプター遊びを楽しむシリーズ、第49回目。
今回は、まず、このシステムから、
カメラは、LUMUX DMC-GX7
レンズは、京セラCONTAX Sonnar T* 180mm/f2.8
1980年代のMFレンズである。マウントはヤシカ・コンタックスだ。
いわゆる「オリンピアゾナー」直系のレンズである、
それは何か?と言えば、今から80年も前の1936年のドイツ冬季
オリンピックの撮影で活躍した独CONTAX製のレンズの事だ。
だが、実際にそんな昔の事を知っている人が現在居る筈も無く、
過分に「神格化」された話なのであろう。
しかし、当時の独CONTAXと言えば、一眼レフではなく、
レンジファインダー機である、よくもまあ、レンジ機で
180mmのレンズを使えたものだ、と思ってしまう。
それからおよそ50年近くの時が流れ、京セラ・コンタックスの
一眼レフ用に再設計されたのが、この「ゾナー180mm/f2.8」である。
発売前には「オリンピアゾナー」と呼ばれた事もあった模様だが、
発売時には単に「ゾナー」表記となった模様だ。
その話にもちなんで、なんとなくCONTAX Ⅱ型のような雰囲気の
GX7に、Sonnar 180mm/f2.8を装着してみた。
実はCONTAX Ⅱ型の方が、GX7より200g近くも重い、形も違う、
でもそういう事はどうでも良く、あくまで「雰囲気」だ。
GX7との重量比だが、本体が約400g、レンズが約800gと
2倍以上重い、このあたりの重量バランスや総重量は限界を
超えていて、本来ならば装着するべきでは無いレンズである。
また、μ4/3機であるGX7での本レンズの画角は360mm相当
となり、被写体を見つけるのに苦労する。
ただ、最短撮影距離は1.4mと極めて短く、180mmレンズで
このスペックを超えるレンズは、マクロレンズを除いては、
フォクトレンダー・アポランター180mm/f4 (第29回記事)
の1.2mの1本しかない。
その優秀な最短撮影距離は、搭載されたフローディング機構
から来ているのだと思う。フローディングとは何か?と言えば、
まず、通常のレンズの場合は、ピントを合わせる際に、
レンズ群全体を繰り出すか、あるいは前群だけを繰り出す。
その方が、レンズの構造が簡単だからだ。
しかし、レンズ全体を動かすのは重く、AFが遅くなったりする
デメリットがある。また、前群だけを繰り出すのは撮影距離、
すなわちピント距離によって、レンズの収差が発生しやすく
なったり、画角が変わってしまう危険性もある。
フローディングの場合は、各レンズ群がそれぞれ独立して動く。
この為、多くのピント位置、特に近接撮影時によく収差が
補正されて、通常のレンズでは画質劣化の問題があって
最短撮影距離をあまり短くできない所が、フローティング機構
により補正され、短い最短撮影距離が実現可能となる。
同様な機構を持つCONTAXレンズは、Distagon 35mm/f1.4
がそうだったと思う。
ちなみに、この時代以降のAF高倍率ズームレンズ等では
フローティング機構は当たり前のように採用されていた、
しかし、当時は単焦点MFレンズとしては珍しく、しかもCONTAXだ、
フローティング機構は救世主のようにあがめられたに違いない。
完璧に見えるフローディング機構だが、弱点が3つ程ある。
まず1つは、ピントリングがやたらと重い事だ。
まあ、このレンズは勿論元々MFレンズなのは幸いだ、
AFであれば、このガラスが沢山詰まった重いヘリコイドを
廻すトルクを生じさせるのは困難であったであろう。
(まあ、AF高倍率ズームでは動かすレンズの数を少なくしたり
抵抗を減らしたり、そもそも小口径であれば動かすレンズの
重量は大きくならない、など、色々工夫をしていたと思う)
2つ目の弱点だが、これは現代においてはあまり問題は
無いかも知れないが・・1990年代には確かにあった。
1990年代、本レンズを入手しRTS(初代)で使っていた頃の事、
本レンズの近接能力の高さを活かし、接写リングを用いて
菖蒲の花を望遠マクロ的に撮っていた。その時はあまり気が
つかなかったが、これは、フローティング機構のレンズの場合
には、やってはいけない事であったのだ。
それが分かったのは、もう数年してからの事、
はるか昔の記事でも紹介した事があるが、1990年代後半に、
「CONTAX AX」という特殊なカメラを入手した、このカメラは、
CONTAXのMFレンズを装着しても、AFが効くというカメラだ。
(ちなみに、マウントアダプターを使って、他マウントレンズを
装着しても、そのレンズもAFとなる!)
魔法のような仕様の種明しだが、なんと、カメラボディが二重構造
になっていて、フィルムの位置が前後に動いてピントを合わせに行く!
カメラ全体を動かすという途方も無い仕掛けなので、そのAFは
亀のように鈍重で、決して実用的とは言えない性能ではあったが、
実は、このAXの最大のメリットはAFが効く事ではなかったのだ。
この機構を用いて、フィルム面を1cm下げる事で、レンズとの間に、
接写リングをかましているのと同じ効果が得られる。
つまり、あらゆるレンズをマクロレンズとする事が可能になるのだ。
私は喜び勇んだ
匠「凄い! これでマクロプラナーは勿論、マクロゾナー、
マクロテッサー、マクロディスタゴンが実現するでは無いか!」
定価で25万円もしたAXであったが、すぐに安価な中古が出回って
いた、AFの遅さに閉口したユーザーが手離したのかも知れない。
私は8万円で中古のAXを入手し、CONTAXレンズでマクロ撮影を
楽しもうとした。
だが、説明書を読むと注意書きが・・すなわち、フローティング
機構を用いたレンズの場合は、AFが上手く動作しなかったり、
近接撮影効果が得られにくかったり、画質が劣化する等の
問題があるという事だ。
現に、このゾナー180/2.8や、ディスタゴン35/1.4では、
AXのAF化、マクロ化のメリットは十分には得られず、なにか
動作がちぐはくだったように記憶している。
まあ、ここにきて気がつく「そうか、AXでは単にバックフォーカス
を変えているだけなので、フローティングの仕組みとは根本的に
矛盾するのか!」と・・それと同時に、フローティングレンズに接写
リングをかますのも好ましく無いことにも、やっと気がついたのだ。
その後、AXの大きなボディの弱点を逆利用し、大柄のゾナー
180/2.8との組み合わせで重量バランスを取る事もしたが、
AFやマクロ機構は使用しなかった。
第3の問題だが、これはゾナー180/2.8には関係無い事だが、
近代の高倍率ズームにおいては関係する。
フローティング機構を用いて、ピント位置を変えると、
レンズの画角が変化してしまう場合があるのだ。
普通、レンズの焦点距離と画角は、イコールの関係である、
焦点距離を伸ばせば画角も狭くなる、つまり望遠になる。
だが、フローティングの場合は、ピント位置によっては、それらが
比例関係で無くなる場合があるのだ。
具体的な例を上げる、200mmまでの高倍率ズームがあった
とする、フローティングを採用していて、最短撮影距離はなんと
驚異の50cmだとする。
匠「すげ~!200mmでも50cmまで寄れるのか、もの凄いマクロ
レンズになりそうだなぁ」
ここでも喜び勇んで、レンズの焦点距離を200mmいっぱいまで
廻す、そして、おもむろに近接被写体に近づき、MFで(勿論AFでも
良い)50cmあたりまでピントリングを廻し、被写体を見る。
匠「あれ・・?さほど凄いマクロでも無いよ、どういう事??」
実はこの時、フローティング機構の宿命で画角が変わってしまって
いるのだ、焦点距離は200mmだ、それは良い、けど、それで
200mmレンズを使って50cmまで寄った時と同じにはならない、
この時の画角は200mm相当ではなく、もっと広角になるのだ。
匠「う~ん、そういう事か・・・」
ちょっとがっかりしてしまい、やっぱ高倍率ズームは面白く無い、
とばかり、また、妙な(笑)レンズを持ち出すのであった・・
まあ、フローティングは使っているが、本レンズゾナー180/2.8
は「妙なレンズ」では決して無い、それどころか、ニコンAi(ED)
180/2.8(第46回記事)と並んで、望遠の名玉と呼ばれる逸品である。
けど、実は、200mm/f2.8級のレンズは、どれも良く写るのだ、
キヤノンの FD200/2.8(第42回記事)も同様、それと未紹介だが、
ミノルタαのAF200/2.8もある。
本レンズの購入価格であるが、1990年代に7万円であった、
これは勿論高すぎた(汗)でも、当時は第一次中古カメラブーム
であり、CONTAXのレンズは高価に取引されていた。
高価であっても買う人が居るから高くなる、誰も買わなければ
相場が下がるのは当然なのだが、当時の私にはそうした考えは
なかった、買わないといけないような切迫感があったのだ(汗)
CONTAXがカメラ事業から撤退した後、2000年代後半に一部の
不人気CONTAXレンズの相場はかなり低下、安価であった頃で
あれば、3万円弱程度で入手できたものだ。(実は、その安価な
時期に、もう1本買ってある。いわゆる、平均購入単価を下げる
「ナンピン買い」だ・苦笑 高く買いすぎたという不満・反省が
こういう行動になったのだろう)
で、性能、というか、使い勝手から考えると、重たい(800g強)、
大きい、ピントリング重い(フローティングの為)、と欠点が
多すぎる。
そして、何のボディに装着するの?という極めてシンプルな疑問
がある、まさか今時、CONTAXの銀塩一眼など使う訳ないだろうし、
アダプターでEOSか、α7にでも装着するのであろうか?
であれば、EOSでは総重量が重たすぎるし、α7では重量バランスが
悪い、そしてレンズ自体のMFの操作性の悪さでは、いくら優秀な
ボディを使ったところで、イヤになってくるのは見えている。
フルサイズ以外のデジタルカメラでは、画角もかなり狭くなり、
270mm相当、または360mm相当の望遠だ、いったいそれで
何を撮るの?という問題もある。それこそオリンピアの名のごとく
スポーツ撮影にでも使わない限りは、本記事で紹介したような、
野鳥とか、野良猫とか、そんな被写体しか無いだろうし。
現代のスポーツ撮影で、この重たいピントリングの単焦点レンズを
上手く使える人など、いや、使いたい人など、皆無に違いない。
現代では、少し玉数が減ってきているし、CONTAX MFレンズの
相場は上昇気味だ、まあ、これは、昨今の第二次中古カメラ
(レンズ)ブームにより、アダプターを用いて「あの高名な
CONTAXレンズを使ってみたい」という新世代のユーザー層が
増えてきているからだと思われる。
だが冷静に考えてみればわかるように、いくら新型オリンピア
ソナーだと言えども、そもそものオリンピアゾナーは80年前、
本ゾナー180/2.8も、30数年前のレンズである。
それに、そんな大枚を払う価値はあるだろうか?
そのあたり、ちょっと疑問がある、
まあ、実際の中古相場はともかく、3万円台まで、というのが
本レンズの性能・特徴面からの妥当な相場であろう。
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さて、次のシステム。
カメラは、FUJI X-E1
レンズは、ニコン AiAF50mm/f1.4である。
1990年頃発売のAFレンズ、既に第46回記事で紹介しているが
その時は、マクロテレプラスとの組み合わせで使っていた、
これは、ちょっと懲りすぎた使い方であり、レンズそのものの
性能が見えてこない。なので、今回再登場となった訳だ。
出自、特徴などは、すでに紹介済みなので、ばっさり割愛する。
まあ今回は、銀塩時代の「真の標準レンズ」である、50mmの
バリエーションの多い撮り方というか、そういう点に留意する。
もっとも、APS-C機であるX-E1では、画角は75mm相当の
中望遠になってしまう、けど、デジタル一眼初期から10年以上も
50mm標準=75mm画角、という感覚に慣れてしまうと、逆に、
これが現代では最もしっくりと来る組み合わせだ。
X-E1は、MF性能に致命的とも言える問題を抱えている。
精度が悪いピーキング機能、使い物にならない拡大操作系、
撮影後のEVF画像もなにかおかしく、プログレッシブJPEGが
途中までしか表示されない状態のごとく、ボケボケでピントが
ちゃんと合っていたか否か、判別不能である。
はっきり言って未完成のカメラであるが、欠点を責めても
しかたがない、どんなカメラにも何かしらの欠点はある、
それをどう回避して使うか、その使いこなしが肝心なのだ。
勿論長所もある、本カメラの最大の長所は、その絵作りだ。
ベルビアモード、つまり高彩度モードでの発色は、まさに
ポジフィルムのベルビアを彷彿させて好ましい。
だが、ちょっと今回は、その長所にハマる中程度の彩度を
持つ被写体があまり多くない、まあそれはしかたない、
カメラの特徴を活かす必要性は確かだが、それに拘りすぎる
のは本末転倒であろう。
ちなみに、AiAF50/1.4には、ND2減光フィルターを装着している、
本来 f1.4級レンズを、1/4000秒シャッター、最低ISO100の
ボディで使うには、ND8が必要となるが、今回は曇天気味で
あったのでND2を使っている、これは勿論、絞りをフルレンジ
(f1.4~f16)で使えるようにする為の措置だ。
まあでも結論としては、X-E1のボディでこうしたf1.4大口径
レンズは厳しい、露出以前に、ピント精度の問題があるからだ。
AiAF50/1.4自体の性能は問題ない、だが、AFレンズとは言え、
そろそろ30年に到達するオールドレンズではあるし、そもそもの
基本設計は、MF時代と大差ないであろう。MF時代の50/1.4は
完成の域に近いレンズとは言え、感動的とも思える写りの要素は
無く、ごく普通に、良く写るレンズであるという事だ。
もうそろそろオールドの50/1.4は食傷気味になってきた、
2010年代の最新設計の50/1.4に手を出してみたい気もするが、
定価が高すぎるし、中古でもあまり値段が下がらないのが
問題点である・・
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さて、次のシステム。
カメラは、DMC-GF1 、最初期の非EVFミラーレス機であり、
仕様的な老朽化が酷く、現代では相場がつきにくいほど
安価である。
レンズは、キヤノン FL28mm/f3.5
1960年代のMFレンズ、およそ半世紀も前のオールドレンズだ。
FLレンズは、名機F-1登場前の、FX,FTシリーズ用のレンズ群で
ある。まあでも、現代においてFDアダプターでミラーレス機に
装着する上では、FDやNew FDレンズと同じ使い勝手が可能だ。
50年も前のレンズと、古くて中古価値も無いカメラの組み合わせ、
こういう自虐的なシステム(汗)は、個人的には好みだ。
ついでと言ってはなんだが、今回GF1は、ノーマルな設定では
撮っていない。いわゆるエフェクトと呼んで良いのかどうか?
現代のエフェクト機能の元祖となったような「マイカラーモード」
を多用している。
まあ、MF性能に限界があるGF1に、恐らくはまともには写らない
であろう50年前のFLレンズだ、28mm広角であるが、開放f値は
3.5と暗く、かつ最短撮影距離も40cm弱と、28mmレンズにしては
少々長い。なので、ボケの利用も期待できず、接写も出来ない
(そうだからこそ、MFに問題があるGF1に装着可能と見て、
この組み合わせにしている)
なので、普通にパチリとやるだけの撮り方になるのだが、
そうした50年前の撮影技法では、クリエィティブな要素が無いので、
当然すぐに飽きが来る。
本来ならばエフェクトを使用したいところだが、GF1にはそれも
無く、古い。(といっても僅か7年前の製品だが・・まったく現代は、
必要以上に時間のテンポが速く、せわしない)
よって今回は、エフェクトの元祖となった「マイカラー」を
試してみようと思った次第だ。
「シック・モード」、この設定は被写体を選べば悪くない。
現代的なエフェクトには、あまり無い地味な効果なので、逆に
好感が持てる。つまりGF1にしか付いていない機能なのであれば、
それを使いこなす、という点で意味が出てくるからだ。
なお、撮り方だが、絞りをf8、撮影距離を3mにゼットして
撮影待機する、被写体状況に応じて、絞りをf5.6~f16の範囲で
再設定、基本的にこれでパンフォーカスとなり、ピントは合うが、
被写体距離が極端な場合(無限遠や1m前後の近距離被写体)は、
ヘリコイドもそれに合わせて少し廻す。
近接被写体を見つけた場合は、背景ボカしを意図するのであれば
絞りをf8→f3.5の開放に変更、同時にピントも最短の40cmにし、
被写体に近づく。
同時にGF1の、左十字キーを押し、想定される構図に合わせ、
ピント位置に拡大フレームを設定、さらに中央キーで拡大しながら
ピントの詳細を決定。
次いでシャッター半押しで拡大解除し、最終フレーミングを見て
撮影するという方法だ。
この操作系の流れは悪くない。古いGF1であっても、こうした
良好な操作系であれば、あまり問題なく使える。
廃アパートを「レトロ・モード」で撮る、これもまた悪くない、
GF1あなどりがたし、という感じだろうか。
誰もが見向きもしない、スペック的に(他と比較して)老朽化
したカメラであっても、写真を撮る上での基本性能は十分で
あるという事だ。
まあ、MFが厳しいというのは、とるに足らない問題であり、
GF1であっても、実は、DMC-G1と同様な優秀なMF操作系を
持っている、ただ足りないのは、EVFが無い事、あるいは
背面モニターの解像度が低い(僅か23万ドット=320x240x3色)
という点だけであり、優秀な操作系を使えば、MFでもさほど
多きな弱点にはならない。
レンズの性能だが、予想していたほど悪くない。
50年前のレンズだから、フレア等が酷いものだろうと覚悟して
いたが、そうでも無い。ボケ質はあまりチェックしていないが、
わざわざカメラやレンズが苦手だと思われる撮り方をする
必要も無いであろう。
実のところ、MF時代のキヤノンの広角単焦点レンズは
比較的性能の良いものが多かったのだ。
当時の設計・開発において、得意分野だったのかも知れない。
AF時代に入ってからは、キヤノンは戦略転換し、他社が弱かった
望遠・スポーツ部門で、シェアを獲得しようとした。
その際、MF時代の広角単焦点の良さ、という特徴も各レンズの
ズーム化によって、あいまいな状態になってしまった。
技術の伝統を引き継ぐには、現代の世の中は変化が速すぎるの
かも知れない・・・
本レンズの購入価格は、1990年代に1万円であった、
ちょっと高すぎたと思う。
現代においては、FLレンズは殆ど値が付かず、よほど程度の
良い個体でなければ、ほぼジャンク扱いであろう。
相場も数千円程度で取引されていると思われる。
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さて、次は今回ラストのシステム。
カメラは、PENTAX K-01 、唯一のKマウントミラーレス機、
毎回書いている事だが、その構造上、AF/MF両方のピント
合わせが絶望的というカメラである。
最近で特に酷かったのは、第44回記事でFA★85/1.4を使用
した時だ、まあ、極限に被写界深度が浅いレンズでの限界性能
テストであったので、ピントが合わない事は覚悟の上であったが、
それにしても全く合わず、酷いものであった。
次いで第47回記事では、小型軽量な DA35/2.4を使用したが
これでもやや厳しい。
あまりにこういう難しいシステムばかり使っているとストレスに
なってしまう、今回は、以前の第37回記事で使って比較的
ピントが良好であった超音波モーター搭載のDA★55/1.4を
再度持ち出してみよう。
SDMが動作して、シュっとピントが合う、その点は良いのだが、
実際にはかなり被写界深度が浅いレンズなので、正確なピント
精度は出ていないであろう。
そのあたりの対策は被写体の厚み(距離差)に応じて絞りを
少し絞ってやれば良い。
実際ここでは、f3.2あたりまで絞っていたと思う。
これで手前の菜の花の塊の距離にピントが合うと思われる、
背景の川や橋のボケ量にも絞り値は多きく影響する、もう少し
くっきりさせたかったら、絞りをさらに絞ってf4~f5.6程度に
したら良い。
f1.4の大口径レンズだから常に開放で撮れば良い、というもの
では無い訳だ。
ただし、その際、ボケ質破綻が発生するレンズだと、背景や撮影
距離などの状況によっては、設定した絞り値では、ボケが汚く
なってしまう事がある。
もしそうなると、ボケ質破綻回避の為、絞り値をさらに絞って、
f8にするとか、逆に開いてf2にするとか、そういう対策が必要だ。
つまり、作画上の被写界深度を優先するのか、ボケ質を優先するか
難しい選択を迫られることになる。
どちらも優先したかったら、そして、それがレンズ性能的に
実現不能であったら、下手をすると被写体を諦める必要も出てくる
かも知れない。
つまり、性能の悪いレンズでは、撮れる(撮りたい)ものも、
撮れなくなってしまうというジレンマがある訳だ。
まあ、本レンズDA★55/1.4の場合は、幸いにしてボケ質破綻は
ほとんど起こらない、だから気持ちよく撮影できる訳だし、
こういうレンズが本当に使いやすい名レンズなのだろうと思う。
(ちなみに、PENTAXの3本のFA Limitedレンズなどもそうした
長所を持つ)
ここでは紹介していないが、より厳しい状態、たとえば、
草叢の中の、ペンペン草(ナズナ)などの細い被写体でも、
DA★55/1.4では、K-01でAFが効いたケースがある。
ほぼ実用困難と思っていた K-01で、ここまでAFが合えば上等だ。
本レンズの弱点は1点だけ、SDMが可聴周波数の高域で「チーッ」
と音を発する事だ、これは非常に耳障りな音で、かなり気になる。
超音波モーターだから「耳に聞こえない周波数で作動して
くれれば良いのに、何故、可聴域?」と思ってしまうのだが、
まあ設計上の都合があったのだろう。でも、他社超音波モーターは、
ほぼ無音のものが殆どなので、ここは将来改善してもらいたい点だ。
第44回記事でFA★85/1.4を紹介した際、そのレンズが現在
中古市場で、プレミアム相場となってしまい、発売時の定価
(約10万円)を超える価格で取引されているのを疑問に思った
事を書いた。
DA★55/1.4を使うたびに、その事を繰り返し思い出す、
フルサイズK-1や中判デジタルを除き、PENTAXのデジタル一眼や
K-01は、すべてAPS-C機である、
APS-C機であれば、FA★85/1.4よりもDA★55/1.4の方が、
ポートレートにも一般撮影にも、使いやすい画角だ、描写の傾向も
両者は似ている。(同一設計者の手によるレンズと言う事だ)
おまけに、4万円強という低価格相場(最近さらに下落傾向)は
極めて高コスパだ。ここも本レンズの最大の魅力であろう。
まあ、FA★85/1.4は確かに優秀なレンズではあるが、同時に
使いにくさ(特にピント精度の面で苦しい)もある。
FA★85/1.4をプレミアム相場で買うくらいなら、DA★55/1.4を
3本買っておきたいと思う今日この頃。勿論「3本も要らないよ」
という向きには、FA77/1.8Limited(第40回記事)+DA★55/1.4
の、超強力タッグでも、FA★85/1.4を買う予算でお釣りが来るのだ。
コスパを考えるとこういう方向性になるのだが、それでも
「欲しい物は欲しい」という人間としての欲求もある、
私もまあ、そうして様々なレンズを、衝動のままに買ってしまった
訳だ(汗)
FA★85/1.4か、DA★55/1.4 か、はたまたFA77/1.8Limitedか?
非常に難しい選択だが、まあ最終的には自身の決断という事で・・
次回記事に続く。