安価なミラーレス機に様々なマニアックなレンズを装着して
楽しむというシリーズ記事の5回目。
シリーズが深まるに連れて、だんだんマニアック度を高めて
いくとしようか・・
今回は、まずは、30年ほど前のオールドレンズを使ってみよう。
ここで使用したのは、1970年代から1990年代にかけて発売された、
オリンパスのOMシステム用のマニュアルフォーカスレンズだ。
ズイコー (Zuiko) 90mmF2マクロ(以下 OM 90mm/f2)を
OM→μ4/3 アダプターを用いて、LUMIX DMC-G1に装着している。
この時代(1980年代)、マクロレンズの開放f値は、f3.5か、
まれに f2.8であったが、その中で唯一、開放f2.0を誇ったのが、
オリンパスの 50mm/f2 および90mm/f2 の2本のマクロレンズだ。
その後、コシナ・ツアイスからも、f2級のマクロレンズが何本か
出て来てはいるが、以降現代に至るまで、マクロレンズとしては、
f2級が最大口径となっている。(撮影倍率1/2倍未満のマクロ
もどきでは、f1.8級もある)
OM 90mm/f2のマクロ倍率は1/2倍、
しかしマイクロフォーサーズ機に装着しているので、概算では
あるが,画角も倍率も2倍相当になり、等倍マクロレンズ相当として
利用することができる。
このOM 90mm/f2のレンズの描写力は文句のつけようがなく、
銀塩時代においては驚異的な部類の”スーパーレンズ”であった。
ただ、このレンズは他のOM用ズイコーに比べ、かなり高価で
あったし、小型コンパクトな OM-1 や OM-4Ti に装着して
使うには大きすぎる(&重過ぎる)という問題があった。
また、他のOM用ズイコーは、絞り環がレンズ前面に近い位置
についていたのが、本レンズにおいては、レンズの根元であり、
他のレンズと一緒にOMシステムで使うには若干の使いにくさが
あった。(むしろOM以外のレンズと共用すると使い易いが)
OM 90mm/f2の優秀さは、銀塩時代から広く知られてはいたが、
中古が殆ど出ず、たまに出ても高価であったので、私がこれを
入手したのは1990年代後半であったと思う。当時私は、主に
OM-4Ti等で、その後、デジタルの時代が訪れてからしばらくは、
「オリンパスにはオリンパス」の発想の元、フォーサーズ機の
Eシリーズで、OM→4/3アダプターを用いて使っていた。
しかし、銀塩時代では90mmマクロは使いやすい画角であったが、
フォーサーズや、その後に続くマイクロフォーサーズ機では、
焦点距離(画角)が2倍相当になってしまい、180mmマクロと、
常用目的には、かなり使いにくい性格のレンズになってしまった。
まあ、今時であれば、APS-C やフルサイズのセンサーを持つ
ミラーレス機が存在しているので、画角の問題は緩和されるのだが、
まあ、それでもマクロに慣れれば、180mmでも特に問題は無い。
すなわち、マクロレンズを使う場合、被写体を探す視点が、
目の前に平面的(2次元的)に広がる空間ではなく、
自分の手元から遠距離方向に伸びていく直線的な空間である、
と、頭を切り替えることで、画角の問題は気にならなくなる。
このあたりは言葉で説明するのは難しい事柄なので理解しずらい
かも知れないが、単純に言えば被写体を平面的に捉えるのでは
なく立体的に捉えるという意味だ。これは90mmマクロに限らず、
他の焦点距離のマクロレンズを使う場合でも同様な思考方法だ。
拡大解釈すれば、全ての交換レンズは平面的な思考(視点)で
写真構図を捉えることはせず、立体的な視点で被写体を捉える
必要性があるという事だと思う。
このレンズと似たスペックのOM用レンズで、OM Zuiko 85mm/f2
および、OM Zuiko 100mm/f2 がある、しかし、それらはマクロ
レンズではなく、一般的レンズであり、使いこなしや描写の傾向
は少々異なってくる、これらの中望遠f2の3兄弟は、幸いにして
全て所有しているので、機会があれば、また取り上げてみよう。
OM Zuiko 90mm/f2 マクロは、現在ではかなりレアなレンズと
なってしまっている。中古は滅多に出ず、出ても比較的高価
(7~8万円前後)だと思う、ただ、価格に見合うレンズでは
あると思うので(本ブログでは、そういうレンズを”スーパー
レンズ”と呼んでいる、いくら性能が良くても、価格がとんでも
なく高いモノは、”スーパー”ではなく、”贅沢レンズ”だ)
まあ、もし中古を見かけて、懐に余裕があるのであれば、買って
しまっても悔いは残らないレンズだと思う。
さて、次はOM 90mm/f2 より、さらにマニアックなレンズを
使ってみるとしよう。
上の赤色とは色違いの青のLUMIX DMC-G1 に装着しているのは、
清原光学研究所の KIYOHARA VK70R 70mm/f5 ソフトレンズだ。
こちらもOM 90mm/f2と同様に、およそ30年前の1980年代に
発売されたマニュアルフォーカスのレンズであり、私は確か
1990年代に中古で入手したと思う。
様々なマウントの製品があったと思うが、こちらはニコンF
マウント版だ。このVK70Rの販売本数はさほど多くないと
思われ、現代においては中古は入手困難であろう。
入手時の中古価格は15000円ほど、現在では入手性が
悪いので相場は「時価」になると思われるが、まあ2万円を
越えてまで入手すべきレンズではないと思う。
写りは、これはある意味”びっくり”である・・・
およそ何処にピントが合っているのかわからない写り。
まあ、撮る際も同様で、ピントの山がわからない(汗)
当時の銀塩ニコン一眼で使用時も、元々ニコンのファインダーは
さほど優秀ではなかった為、フラッグシップのF2,F3,F4,F5を
使っていたのだが、いずれも殆どピントの山が掴めず苦戦した。
デジタル時代、ニコンD2Hに装着して使っていた時期があったが、
多少ファインダーが良いこの機種でも勿論ピントは掴めず。
なので、D2Hの高速連写機能を悪用(笑)し、連写中に少しづつ
ピントをずらし、たまたま当たってそうなのを使うという裏技に
頼る事もあった。
現代のミラーレス機でも同様だ、背面モニターは言うに及ばず、
EVFによる拡大やピーキングでも、全くピントが不明だ。
このレンズの設計思想から発売までには、物語がある。
いにしえの大正時代に流行した、ベスト・ポケット・コダック
(Vest PocketKodak)というカメラの、単玉レンズ、すなわち
”ベス単”を改造して、ソフトフォーカスレンズとすることが、
今からおよそ80年も前から行われていたらしい、その改造方法を
「ベス単フード外し」と言って、その後、数十年間にわたり、
その方法がカメラマニアの間で引き継がれていた。
ただ、さすがに、時代が下ると”ベス単”のレンズそのものが
入手が困難になってきて、その言葉だけが語り継がれる状況で
あった。
1980年代、某カメラ誌による企画で、大手カメラメーカーから
スピンアウトした清原光学研究所とのコラボにより、
この「ベス単フード外し」を再現したレンズの開発が行われた。
その後、短期間だけ本レンズが市販された訳である。
まあ、そういう点では、現代風に言えば、これは「復刻限定生産」
という感じであろう、VK70Rという名称のVKも、ベスト(ヴェスト)
キヨハラの略という説もある。
という事で、このレンズはかなりのマニア向けである。
今時であるので、ソフトフォーカスレンズの効果はPC上の
レタッチや、カメラ内部のフィルター機能を用いて容易に得る
ことは出来る。ただ、実際のソフトレンズによる効果は、
そうしたエフェクトを使った場合とは微妙に異なる。
特に、光源を中心とした光のにじみ(ハロ)の出方や
ピント(フォーカス)の崩れ具合などは、エフェクトとは
異なっている。PC上の効果でもパラメータが調整可能であり、
ホンモノとどちらが良いかとは一口に言えないし、どう違うのかも、
言葉では説明しずらいのだが、ともかく違うものは違う。
VK70Rでは、レンズの前面についているダイヤルリングを廻して
絞り値を大きくすると、むき出しの絞り機構が出てきて、その
絞り値に応じて、ソフト効果が減っていく。これはまあ原理上、
球面収差が、絞りの効果で低減していくので、そうなるわけで、
実際のソフトレンズの殆どが、そのように絞りの調整に連動して
ソフト効果を調整できる。
逆に言えば、絞りとソフト効果が一緒くたになってるので、
不満なところも多々ある。
(ごく一部、ミノルタα用のAF100m/f2.8ソフトレンズ等では、
絞りとソフト効果の2つを、独立して調整することができる)
VK70Rで、絞りを最大のf11位まで絞れば(注:目盛りを超えて
さらに絞り込める)ピントの山もだいたい分かるので、そこで
ピントを合わせてから絞りを開けていけば、盛大なソフト効果を
出す場合でも、目視でのピント合わせが可能なのだが、
いかんせんレンズ前面の絞り調整は、場所的に極めて使いにくく、
手探りでそれを廻している間に、ピントがずれてしまったりして、
元もこうも無い。
そして、ソフト効果を出さないソフトレンズなんて何の意味も
無いので、ソフト効果は、絞り値5~7で、盛大に出すことに
して使う事が殆どになる。
だから、VK70Rを絞って使う、なんて事は有り得ないのだ。
普通の写真を撮りたかったら、最初から普通のレンズを持ち出して
やれば良いと言う事になる。
まあ、VK70Rは、そういう数々の欠点を承知した上で使うという、
完全なマニア向けのレンズだ、一般的には、まずおすすめできない。
で、ソフト効果がとり急ぎ必要であれば、PC上でレタッチして
しまえば良い。その手法だったらソフト効果を取り消して普通の
描写に戻すのも容易だ。
でも、まあ、いつも言っている事だが、その場にソフトレンズを
持ち出して、ソフト効果の欲しい被写体を探す場合と、PCで
効果を後付けする場合は、思考のプロセスが根本的に異なる。
普通に効果無しで撮った写真を、後から「ソフトにしよう」なんて
考えつく事は、その場で効果をつけて撮るよりも、はるかに創造力
を必要とする。まあ、その後付け発想は無理だと思った方が良いで
あろう。それならば、まだソフト効果フィルターをカメラバッグに
常備しておいて、必要に応じて(若干面倒だが)レンズに装着する
方が、まだ思考のプロセスが容易だと思う。
なお、私はこれ以外にも何本かのソフトレンズを所有している、
ソフトレンズに興味のある方は、昔の記事の、
α用AF100/2.8
や
DC105&VK70Rの記事も参考まで。
ただし、いずれのレンズも現在では極めて入手しにくい事は確か
であるので、どうしても欲しい方は気長に中古を待ちましょう・・
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さて、今回のソフト効果のテスト撮影は、京都伏見で行っているが、
同じ場所に他のカメラを持ち込んでいるので、続けてまた別の機材
での写真の紹介を・・
こちらは何度かこのシリーズに登場している PENTAX Q7
レンズは 02 Standard zoomというありふれたもので、
ここまで紹介したレンズのようなマニアックさは、かけらも無い
のだが、このカメラシステムの特徴は、その多彩なエフェクトだ。
エフェクトがあまりに多彩であるので、選択するのに迷って
しまう、前述のソフト効果でもそうだが「ここでこの効果を
用いる」とかいう事を考えるのは、かなりの創造力を必要とする。
下手をすると、いつも使う効果がワンパターン化してしまいがち
なので、なるべく、色々なレンズとかと併用したり、様々な被写体
を選びながら、創造(想像)力のトレーニングをしていくとしよう。
Q7 のレンズを、07 Mount Shield Lens に交換、こちらは
まあ一種のトイレンズであり、周辺の画質が流れ、同時に
ピントが外れていく効果が楽しめる。まあ、このように固定的な
効果である方が、前述の創造性をあまり使わないで済むので
楽といえば楽であるが、撮る事に飽きやすいのも1つの欠点だ。
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さて、今回の記事の最後は、また、さらにマニアックなレンズを
使ってみるとしよう。
まずカメラは LUMIX DMC-G5 だ、ミラーレス機等で同時に
複数のレンズを持ち出す際、外でレンズ交換はしたくないので、
同じパナソニックのGシリーズでも、複数台のカメラを所有して
併用している。
で、そもそも、だいぶ風変わりなレンズばかりなので、中には
取り外しすら面倒であったり、難しいものもある、ますますレンズ
交換とかが、おいそれとは出来ないのだ(汗)
で、このレンズは、その「面倒くさい」レンズの代表格のような
もので、コシナ・フォクトレンダー(Voigtlander) 製の
SC SKOPAR 35mm/f2.5 である。
同じスペックの別マウント版として、LおよびMマウントの
カラースコパー 35mm/f2.5が数種類存在しているが、SCマウント
版は販売数量(流通量)も少なく、高価で、かなりレアである。
そもそもレンズ名に冠してある SCマウントとは何か?と
言えば、これは、NIKON Sマウントと旧コンタックス Cマウント
の事である。
「旧コンタックス」とは、1970年代に日本の京セラがCONTAX
ブランドを取得しカメラの製造販売を始めるより、はるか以前の、
およそ1930年代のツアイス・イコンおよびその後の東西ドイツ
分裂後のカール・ツアイスによるレンジファインダーカメラの
通称で、およそ1960年位まで、長期に渡り多数のカメラが
製造されていた。
戦前の当時は、コンタックスはライカと並ぶ世界的な2大高級
カメラブランドであり、特に(旧)コンタックスは、ゾナーや
ビオゴン等の、現代まで名前の残る高性能レンズ群をシステムの
中核として打ち出しており、写りのよさで人気を博していた。
しかし、戦前、その価格は天文学的に高価であったと聞く、
「家を売ってコンタックスを買った」という話もあるくらいだ。
それゆえ、その後数十年にわたりコンタックスという名が
高級ブランドの代名詞として、多くのカメラファンの脳裏に
刻まれていった。
この歴史を知らないと、何故コンタックスが現在に至るまで
神格化されているのかが、わからない事であろう。
その後の一眼レフやそのレンズ群の性能とは無関係なのだ・・
また、旧ソ連ではキエフという、旧コンタックスのコピー品の
ボディが普及しており(これもコピー品の)ジュピター等の
レンズ群も安価な割りに写りが良かったので、ソ連のみならず
世界的に(勿論日本へも)広まっていた。
で、それら、旧コンタックスおよびキエフのレンズマウントの
規格を「Cマウント」と日本では呼んでいる。尤も、Cマウント
には、以前の記事で紹介したが、監視カメラ等用のCマウントが
存在するので、混乱を避けるため、マニア等の間では、こちらを
「旧コンタックス・マウント」と呼んでいるわけだ。
で、戦前より続く(旧)コンタックスのレンジファインダーの
影響力は世界的にも非常に強く、戦後、国産カメラの高性能化を
目指したニコンも、Sシリーズのレンジファインダー機の設計に
おいて(旧)コンタックスの仕様を「大いに」参考にしていた。
ニコンSシリーズは、1950年代に発売が開始されたが、ファン層
も多く、数十年を経過した2000年代にS3およびSPが復刻再生産
されている、これらのSシリーズで使われているのが、ニコンS
マウントである。
ニコンSマウントと旧コンタックスCマウントは、見た目や
サイズが同じであり、レンズも相互に装着が可能だ、ただし、
ヘリコイドの繰り出し量が変わるため、ピント位置が異なる。
広角レンズでは、被写界深度が深く、SマウントとCマウントの
レンズはほぼ同一のものとして扱うことができるが、50mm
の焦点距離の標準レンズ以上、望遠レンズなどは、SとCでは
ピント位置がずれてしまって相互互換できない。
たとえば、本家コンタックスのCマウントのゾナー85mmや
そのコピー品のキエフ用のジュピター9(85mm)は、
ニコンSには装着できない。
また、ニコンS用の85mm(海外の有名なカメラマンが、それを
使って写りに驚いた →故に、ニコンが世界的に有名になった、
という説があるが、彼はライカに付けて使ったという事であり、
マウントが全く異なるので、どうも話の真偽が定かではない)
およびSマウント用の、コシナ・フォクトレンダーSアポランサー
85mm/3.5は、それぞれ、Cマウントへの互換性は無かった。
ふう・・ しかし、このあたりの歴史的な詳しい説明をした所で
一体誰が読んでくれるだろうか?古くからのカメラマニアであれば、
このあたりの話は「常識」の範囲で、いまさら説明する必要は無いし
カメラマニアでなければ、こうした話に興味を持つはずもない、
ましてや、今時のデジタル時代のカメラマニアは、画素数や
センサーサイズの事には興味があるかもしれないが、このあたり
の歴史には、残念ながらカケラも興味は出ない事であろう・・
ただ、歴史を知らずして「コンタックスのレンズって良いのですか」
といった、とぼけた質問をしてくる輩も多いので、書かざるを
得ない訳だが・・ちなみに、京セラがカメラ部門から撤退して以降
CONTAXのブランドは宙に浮いたままで、何処も使用していない。
で、このレンズ、SCスコパーとは、そのニコンSマウント
および、旧コンタックスCマウントで使用可能な、国産(コシナ)
製の、超マニアックな部類のレンズだ。
SCレンズ群は、ニコンSシリーズの復刻版に合わせて発売
された節もあるが、それらの復刻版カメラは超高額であったので、
コシナ社からも、フォクトレンダーブランドのレンジファインダー
カメラのSおよびCマウント版が2002年に発売された。
ベッサR2S/R2Cというのがその製品名だ。両カメラは生産台数が
極めて少なく、R2Cは特に少ない。私はそのR2Cを当時新品購入して
今回紹介したようなコシナSCマウントのレンズの他、旧ソ連製の
ジュピターなどを装着して使っていた。R2Cは現在も保有して
いるが、まあ、勿論今時であるから、フィルムを通す事はない。
SC SKOPAR 35mm/f2.5 であるが、その名のとおり、S,C
マウント共通で利用できる準広角レンズだ。
S.Cマウントのボティ、とは言っても、選択肢はさほど
多くは無く、Cマウントであれば、オリジナルの旧コンタックスの
Ⅱa や Ⅲa、そのコピー品のキエフ、あるいは、コシナ社の
ベッサ R2Cしかない、Sマウントの場合は、ニコンの旧Sシリーズ
か、または超高額な復刻Sシリーズまたは、ベッサR2S、これら
しか(銀塩時代は)無かった。
デジタル時代が到来して、およそ10年弱の間は、これらの
S、Cマウントレンズ群は忘れられていた、いや、もしかすると
カメラのデジタル化がもう数年遅かったら、復刻Sシリーズや
コシナのS,Cマウント機はもう少し盛り上がりを見せていた
かも知れないが、市場の変化は速く、恐らく、デジタルカメラ
から始めた人達は、こうした、S,Cのカメラやレンズ群の存在
すら全く知らない事であろう。で、そもそも、フランジバックが
短いこうした、S,Cレンズはデジタル一眼レフには装着不可で
あったのだ。
しかし、ミラーレス機であれば、ニコンSマウントアダプターを
利用して、各ミラーレスマウントで、S、Cマウントレンズを
復活させる事ができる。ただ、もともとこれらのレンズを今なお
所有している人は少ないだろうから、その需要は多くは無いが・・
で、SC SKOPAR 35mm/f2.5 のレンズであるが、
写りは、かなり良いものの最短撮影距離が90cmと非常に長く、
大きな不満である。
まあ、レンジファインダーのS,Cマウント機の距離計連動の
限界の最短距離がそれであったのが理由なのであるが、現代の
高性能な最短撮影距離のレンズ群に慣れてしまうと、アホらしくて
使う気にはなれない。ライカをはじめとするレンジファインダーは
皆そんなものだから、銀塩時代に最短撮影距離に文句を言う人は
少なかったのであるが、それらの昔のレンジ機マニアも、さすがに
現代の世相(環境)においては、レンジファインダー機用の
レンズの最短撮影距離の長さには閉口するのであろう、だから、
近年は、クローズド・フォーカスという類の、ヘリコイドを延長して
レンズ繰り出し量を増やし、最短撮影距離を短くする事ができる
レンジファインダー用レンズ→ミラーレス機のマウントアダプターが
何種類も発売されている。
ただ、クローズドフォーカス系のアダプターは、まだ少し高価だし、
ただでさえ使いにくいS/Cマウントレンズを主力に用いる筈も
無いので、私はそうしたアダプターは所有していないし、
購入する気もないので、しばらくは、たまにこういうレンズを
使う際にブツブツと文句を言い続けることであろう・・
レンズ使用上の注意点であるが、ベッサR2Cを用いる場合は、
ボディキャップやレンズの装着や取り外し、ピントの操作方法、
内爪、外爪について、など、他の一眼レフなどとは相違点が多く、
複雑なそれらについての知識が無いと、他の誰も操作ができないので、
ある意味痛快ではあったが、ミラーレス機でアダプターを用いて
レンズ装着やピント合わせをするのであれば、他のマウントの
レンズ群と、さして変わる事はなく容易に理解・操作ができる。
しかし、ピント目盛りと実際のピント位置がかなり変わるという
問題がある。やはりS、Cマウントのボディで無いと、これらは
合わないのだろうし、かつ、S,Cマウント間の微妙な差異が
吸収できる限界の焦点距離の35mmだ、そこに仕様上の差が
ある事がわかりきっているSCレンズであるから、ピントの目盛りが
ずれている事で目くじらを立てるマニアは居ない。
まあ、そういうレンズの特性なので、例えば遠くの被写体だからと、
他マウントのレンズと同様に、反射的に、手癖でピントリングを
いっぱいに廻して(これは、MFに慣れた人の特有の操作だ)
撮ろうとしても、そのリング位置でピントが合うとは限らない。
だから、結局優秀なEVFや、その他のフォーカスアシスト機能
(拡大やピーキング等)を搭載しているミラーレス機で無いと、
事実上、このレンズを使うことは困難だ。
しかし、レンズの描写力以前に、この手のレンジファインダー用の
レンズ群はミラーレス時代においては、お世辞にも実用的とは
言えない。前述したように、銀塩時代は、よく皆は我慢して
これらのレンズを使っていたなあ、と思ってしまう。
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さて、長くなってきたので、今回の記事は、このあたりまでと
したいが、今回は、少々マニアックすぎたかも知れない、
第一、今日紹介したようなレンズ群は、現代では、もう恐らくは
入手が極めて難しいレアな製品ばかりだ。今後、このシリーズの
コンセプトをどうしていくか、さらにマニアックに行くか、
あるいは、現代でもシステムの再現性があるものにするのか、
そのあたりは、迷いどころ、という状況だ・・