ギタピスライブ撮影の第2回目である(第1回、機材編は
こちら)
今回はかなり高度な撮影テクニックの話である、加えて音楽(楽器)の知識も必要で
あるから、簡単には理解しずらいかもしれない。 しかし、もともとライブを撮るというのは、
かなり専門的撮影領域に属すると思う。
難しい内容についてもあえて細かい解説は行わない、ライブ撮影を必要とする場合に
またこの記事を熟読してもらって、わからない用語や項目は他の記事等で勉強し直して
もらえれば幸いである。
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さて、ライブ撮影の本番前に、まずは楽屋に入って行く、どうしても最初にチェックして
おきたい項目があった。
ギターの方にお願いする。
・・・すみません、16ビートのストロークを弾いていただけますか?
いくつかシャッター速度を変えて写す、よし。こんなもんでオッケーか。

①↑α-7D AF20/2.8 f=2.8 ISO800 1/10秒
<シャッター速度の設定>
たとえば、四分音符=120の標準的なテンポの曲の場合、四分音符1つを演奏する時間は
1/2秒である。 16ビートというのは、十六分音符のリズムで演奏するという意味である。
十六分のリズムは「タカツク・タカツク・タカツク・タカツク」と普通に読み上げれば
だいたい合う。 タカツクの1つ1つが十六分であり、これは、1/2秒÷4であるから
1/8秒で1つのリズムとなる。 ギターのストロークで16ビートというのは、ストローク
のピッキングがアップ、またはダウンの1動作において成り立つから、各々は1/8秒前後に
なる計算である。 したがって、この写真のように1/10秒でシャッターを切れば、
1つのストロークを捉えることができる。 もし、1/30秒でこれをきると、1/8秒の
約1/4の時間しかストロークは動いていないから、弦2本分くらいしかピックが動いて
いないので、十分な動感を得ることができない。
さて、ライブが始まった、通常の撮影である。

②↑α-7D AF100/2.0 f=2.8 ISO800 露出補正 +1/3 1/300秒
<大口径望遠の利用>
スポットが当たった状態においては、ステージ上はかなり明るい。
大口径の望遠を利用するのは、1つは背景のボケを利用する事、暗い状態でも撮れるよう
にする事(速いシャッターを切れるようにする事)が理由である。
AF100/2.0は幻のスーパーレンズ、絞り開放でも十分な画質が得られるが、丸ボケが
周辺において口径食の影響が出る可能性もあるので、口径食回避の為、1段だけ絞る。
シャッター速度を見ると、数百分の1秒あたりをウロウロしているので、手ぶれの心配は
無い、もしシャッター優先にしてしまうと、深度が変わってしまうのと、暗い場合に
絞りが開けきれなくなる(=すなわち、このレンズだとf2.0までしか開かない)から、
絞り優先で撮る。(デジタルまたはポジの場合) ちなみに、ラティチュードが広い
ネガまたはモノクロの場合、M(マニュアル)露出で撮るという裏技もある。
さらに、ステージライトが逆光気味であたっているので、念のため1/3段だけプラス補正
をしている、あまりプラス補正をすると、絞り優先モードの場合は、シャッター速度が
落ちるので注意する必要がある。
この状況のように十分な明るさがある場合は、ISO感度を1段落して400にしても良い。
カメラの性能によっては、ISO400とISO800では、ノイズに大きな差が出る場合もある。

③↑α-7D AF100/2.0 f=2.0 ISO800 露出補正 +2/3 1/50秒
<撮影アングルの工夫>
小規模ホールやクラブなどで、かつ、ステージパスなどの撮影許可がある場合、
撮影アングルは(お客さんのひんしゅくを買わない程度で)自由である。
だから、別にステージ正面から狙わなくても良い。
特にドラマー。普通ドラムスは、前から撮るとタムやシンバルに囲まれ、かつマイクが
林立しているので、ドラマーの顔が見えない。
この場合は、ステージの袖に上ってドラマーの横顔を捉えている。
曲のリズムをよく聞けば、右側のタムやハイハットを叩くタイミングで右に顔を向ける
一瞬があるであろう。その一瞬を捉える、または連写すればよい。
ただし、この写真の場合、前方からのステージライトの逆光状態だったので、+2/3補正
してあるが、結果的に絞り開放でISO800でも1/50秒までしかシャッター速度が
得られなかった。ドラマーの速い動きは、1/50秒では止められないので、被写体ブレを
起こしていたが、まあしかたがない。
こう撮らない限りは、あえて絞り込んでブラすか、演奏していない時に写すしか無い。

④↑α-7D AF28/2.8 f=2.8 ISO800 露出補正 +0 1/60秒
<広角レンズの使い方>
広角の場合、ともかく、下から写す、近寄って写す、この2点が基本である。
分割測光(評価測光)を搭載した現代のカメラの場合、ステージライトの光は
望遠レンズほど被写体の明るさには強い影響を及ぼさない。 だから露出補正は
ゼロのままで良い。
ここでの構図の意図は、ベーシストの下にあるエフェクター群とアンプを同時に写す
事である、エフェクターは昔はベーシストはあまり使わなかったが、現代の演奏に
おいては、ギタリストと同様にたくさんのコンプ、リミッター、フランジャー、パライコ、
等のエフェクターを用いる、これを入れるかどうかで印象が大きく変わる。
エフェクターを入れた方が現代風で面白い。
そして、もう少し絞り込んでいくと手の動きがブレて写る、ベースの場合は、あまり演奏者
の動きが激しく無いから、それでも良いが。ギタリストの場合は、演奏と同時に体の動きで
曲の情感を表現するケースが多く、手だけブラすというのは難しく、ギターのネックや
体までブレてしまう。 だからと言ってストロボを焚いてスローシンクロにするのは、
演奏者や観衆への礼儀上、また演奏への影響上好ましく無いので、ストロボ使用は
避けるのが常識である。
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ライブ撮影。その他のテクニックとしては、
<ブレ無い手法>
ステージのかぶりつきで撮影する場合は、ステージの縁(へり)を利用して、そこに
へばりついて写すのが良い。
また、ステージ横からの斜めアングルにおいては、PA(場内音響用の巨大スピーカー)
を利用してそこによりかかるようにして撮影する。
ともかく、三脚なんかは使えないので、手持ちで少しでもブレないようにする工夫が
必要である。何故三脚が使えないのかは言うまでも無い、観衆に対して非常に迷惑が
かかるし、自由なアングルで撮ることすら出来ないからである。
三脚に頼る撮影技法は、手ぶれ限界を理解していない事と、技術的な未熟である、
ライブ撮影に限らず、その点は十分に知識と技術を身につけてもらいたい。
また、手持ちで撮る時には常にシャッター速度に注意する必要がある。
めまぐるしく変わる照明の明るさに応じて、1/4秒程度から1/1000秒程度まで変化する
シャッター速度で、現在の装着レンズの焦点距離と、自らの技術により、どれくらいの
速度の場合で、ブレるのかそうでないのか、あるいは、動感効果が出るのか静止して
写るのか、この判断を常に行いつつ撮影する必要がある。
<動感効果>
ライブ撮影におけるシャッター速度について、もう少し具体的に述べるのであれば
低速域:1/10秒~1/30秒
この領域においては、ギタリストの左手の運指、右手のストロークあるいはピッキング、
ライトハンド奏法、管楽器のスケールの運指、ドラマーのスティック、キーボードの運指、
ベーシストの右手(左手はベースの場合あまり動かない)、このようなものを動感を
生かして撮る事ができる。
ただし、体全体が激しく動いている場合は無理である、あくまでプレーヤーの動きを
見ながら一部の手等が動いている瞬間を狙う。
そして、望遠レンズを使う場合は、このシャッター速度で手ぶれしないようにするには
相当の技術が必要であるので、手ぶれ補正機能を用いても、初級者では無理だと思った
方が良い。
中速域:1/60秒~1/125秒
この領域は中途半端である、動感を生かすこともできないし、プレーヤーの動きが速い
場合は、それをきちんと止めることもできない。
また、広角レンズではブレ無いが、望遠ではブレる可能性もあるので注意する。
基本的には、あまり使わないシャッター速度の領域だと思った方が良い。
高速域:1/250秒~
この速度になると、たいがいの被写体を止まって写せる。
プレーヤーの手の動きもそうである。
ただし、大口径のレンズを使ったとしても、この速度を得るためには、絞りを開放に
近い状態にしなければならない、よって、被写界深度が浅くなり、今度はブレではなく
ピンボケの可能性が出てくる。
ポートレート撮影では無いので、プレーヤーの目にピントを合わせる必要は無い、
手のみあるいは、手と顔の両方、というのがピントの基本となる。
したがって、中央に偏ったAFフレームに頼っていては無理であり、MFがピント合わせ
の基本である、その状況によって、MFで手あるいは手と顔にピントを当てる。
<絞り優先のテクニック>
絞り値はいくらにすればよいのか? という質問に関しては、
1/30秒前後のシャッター速度を得る場合と、1/300秒前後のシャッター速度を得る為の
2種類の絞りを使い分ける。 と答えておく。
これは、照明の変化と、設定したISO感度によって決まるので一概には言えないが、
高速シャッター領域では当然開放に近い値になる。
望遠レンズを使う場合、f2.8、f2.0、f1.4 の使えるもので無いと無理であろう。
望遠は、35mm銀塩換算で135mm前後が必要である。
デジタルで言えば85mmまたは100mmレンズが望ましい。
それ以上望遠になると遠距離でないと写せなかったり、ブレる可能性がある。
そして、初級ズームの望遠側のf5.6やf6.7などの開放f値では、高速シャッターが
得られずブレて使い物にならない。
1/30秒前後のスローシャッターを得る場合、絞りをf11、f16、f22あたりを使う。
ちなみに、1/30秒だとして、被写体ブレではなく、手ブレを引き起こす可能性がある
焦点距離は、銀塩換算で 28mm以上の標準・望遠レンズとなる。
だから、デジタルにおいては、20mm以下の焦点距離の超広角が必須となる。
手ぶれ補正機能を用いる場合、安全焦点距離は、初級者で銀塩換算 100mmまで。
すなわち、デジタルでは標準50mm以上の望遠は使えないという事になる。
中級者以上であれば、銀塩200mm、デジタルでは135mmまでが手ぶれ補正を使った
場合でのスローシャッター利用時の安全限界焦点距離となる。
次にカメラ操作上の問題であるが、f2.0前後の開放に近い絞り値と、f16前後の
スローシャッター用の絞り値の2種類を多用する事になる。
したがって、2種の設定した絞り値を瞬時に切り替えれるカメラがあれば良いのであるが、
残念ながら現代のダイヤル式絞りでは、この切り替えは瞬時には不可能である。
昔の絞り環が存在するレンズだと、勘で切り替えることも可能であるが、やはり瞬時とは
言えず、かつ熟練が必要であろう。
また、シャッター速度を微妙にづらしながら撮影する「シャッター速度ブラケット」が
あれば便利であるが、これも残念ながら歴代のカメラには存在しない機能である。
(同様に被写界深度ブラケットも無い)
このように、いくら現代のカメラが便利になった、進化したと言っても、本当に必要な
機能が搭載されていない。このようにシャッター速度を大きく変化させる撮り方は、
ライブ撮影に限らず、動物園、スポーツ、あるいはドラゴンボートに至るまでも(笑)必要
な基本的な技術であるが、近代カメラの歴史約100年の間、カメラ開発者の誰ひとり気が
ついていない盲点である。いや、盲点と言ったら甘い・・・欠陥と言ってもいいであろう。
カメラのユーザーインターフェース、すなわち操作系については、まったく進化して
いないので無いかと思われるくらい原始的な状況が続いている。
今までの話題は、すべて「操作性」すなわち、ダイヤルがどこについているか、とか
回しやすいか、とか、そんなレベルの話にとどまっている。
メーカーの開発者は、写真を撮らないのでわからないのであろうか?
そりゃそうだろう、デジタル技術者がよってたかって、半年に1つづつ新機種を開発して
いたら、写真を撮る暇どころか、寝る暇も無いのであろう。
じゃ、わからなければ、ユーザーやプロやライターがそれを指摘したら良い。
「このダイヤルは回しやすくなった」とか、そんな低次元な話ばかりをしていないで、
カメラに本当に必要な機能は何であるのか、そういう意見を皆が述べる必要があるのでは
なかろうか・・・