なら燈花会(とうかえ)は、1999年より始まった、ろうそくを
使った幻想的な行事であり、現在は各地で行われている同様な
ライトアップイベントの先駆けになったイベントである。
今年で16回目くらいになるかと思うが、私はこのイベントが
好きで、過去10回以上訪れている。
2014年8月、さて、今年も、近鉄電車に乗って奈良公園に向かう
としよう。
普段の近鉄の「赤と白」の電車ではないレトロな装いであるが、
こちらは「近鉄奈良線100周年記念」の車体らしい。
その名の通り、1914年(大正3年、 第一次大戦の年)に
近鉄奈良線(上本町~近鉄奈良間)が開業したとのことで、
その後1970年(大阪万博の年)に、近鉄難波駅が出来、
しばらくは大阪難波駅を基点としていたが、2009年に、
阪神なんば線が繋がり、近鉄奈良~神戸三宮が直通となった。
まあ、大阪の私鉄ではベテランの部類であろう。
さて、私も燈花会の見学10回超ともなると、もうベテランの域か?
見学ルートでいちばんまずいのは、ろうそくが点灯される頃の
時間に奈良駅を降り、各点灯区域を順に巡る事、これは当然ながら、
あまりに一般的な思考のため、たいへん混雑する。
・・なので、点灯開始の1~2時間前に、ともかく遠くの会場
例えば、近鉄奈良駅より北東の東大寺近辺の春日野園地や浮雲園地、
あるいは南東の、浅茅ケ原会場や浮見堂会場に進んで、そこで点灯を
待ち、だんだん近鉄(またはJR)奈良駅に近づくように戻って
くるのがベテラン好みのルートだ。
ただ、近年はこのイベントはとても来場者が増えてしまったので
会場間の移動を一方通行で制限し、順路を指示していたりもする、
これは警備上では安全かつ効率的かとは思うのだが、混雑感が
増えるのと自由にルートを設定できないので個人的には面白くない。
まあ、仮に、そうした順路で人ごみに押し流されるような状況に
なったとしても、私は、このあたりの土地には詳しく、抜け道や
裏道はいくらでも知っているので、あまり問題にはならないが・・
見学に行く日程も大事だ、開催は例年8月の上旬(6日から14日
位までの日程が多い)のだが、後になるほど盆休みなどの関係で
混雑する、最終日かつ、春日大社の中元万灯籠(8/14~15)と被る
14日は、特に混むので注意する必要があるだろう。
あと、会期中、土日を1回挟むのだが、そこもやはり混雑する。
なので、開催直後の7~8日くらいの平日が一番良いという事になる。
けど、今年はちょっと例外だ・・
ガラガラの三条通り、奈良のメインの観光用ルートなのに、
何故こんなにすいているのか?
それは、この日、台風11号が近畿地方を直撃したからだ。
昼すぎまで、台風の風雨の影響で、多くの列車ダイヤは混乱、
各種のイベントも中止、そんな中、この燈花会は開催を決定して
いたのだ。
HPで開催を確認、近鉄電車が通常運行していることも確認、
だったら、見物には最適の日ではなかろうか?
予定通り、近鉄奈良駅より東へ東へと向かう、時刻は午後6時前、
点灯予定時間の19時まで1時間以上ある。
日曜日だと言うのに、観光客が極めて少ない、まあ、それはそうだ、
つい先ほど台風が通過したばかりなので、ほとんどの人は、今日は
家から外に出ることはしないであろう。
目立つのは外国人観光客、おそらくは昨日からホテルで足止め状態
であったろうから、台風通過で嬉々として夕刻の奈良観光を楽しんで
いるのだろう。
「鹿の角きり」は、例年10月ごろなので、この時期の牡鹿には
まだ立派な角がある、奈良の鹿は人間に慣れているので、滅多に
人を襲ったりはしない、しかし、逆に、妙に知恵が発達している
模様で、観光客に近寄ってきて、食べものをねだったりするが、
その際、多くの場合「おじぎ」をするのだ。
おそらく、そうすれば食べ物がもらえるから、という事なのだが
動物園や水族館のように、そうしつけをしているのではなく、自然に
その知恵を身につけた様子なので、奈良の鹿、恐るべし(笑)
7~8年前の、人気TVドラマ「鹿男あをによし」では、言葉を
話す鹿まで登場したのだが、まあ、ドラマの中でも言っていたが
鹿の口の構造では言葉を発することはできないので、さすがに
そういう鹿は、奈良にも何処にも居ない(笑)
ただ、「ぴい~」と悲しげな声で鳴くのみだ。
こちらが、燈花である、カップの中にはろうそくが入っている、
従来は白だけだったのだが、数年前から赤などのカラーカップが
登場している、ろうそくの周囲には水が注いであるのだが、この
水を飲むために、鹿たちが集まってくるのが問題となっている。
中には、鹿がそうろくを食べてしまうケースもある模様で、その為
ろうそくは「植物油製」として、誤って鹿が食べても害が無いように
なっているとのことだ。
燈花(ろうそく)の数は、一説には2万本以上とのことだが、
奈良公園界隈の非常に広い範囲に分散している。
これらのろうそくの点灯やかたづけは、市民ボランティアの手による。
その数は1日あたり300人以上とも言われているが、希望者は多い
様子で、年々増えているとも聞く、事実、いくつかの点灯ポイントで
「当日でもボランティアの受付をしてくれた」との話が聞こえてきた。
範囲が広いので、点灯開始時刻は、午後7時とは言うものの、
早い場所では、6時半過ぎから、遅い場所では7時半近くに
なって点灯される事もある。
今日に関して言えば、つい先ほどまで台風が来ていたためか、
準備が追いついていない様子だ、ろうそくの数も例年よりも
はるかに少ない、半分以下の数ようにも思えるが、まあ、
それはやむを得ないであろう。
それよりも、観客が少ないことで快適に見物できるのが個人的には
メリットだ(勿論、主催側ととしては沢山来場してもらいたいの
だろうが、本来中止になっいてもおかしく無い状況なので、まあ、
なんとも言えないところだろう)
午後7時過ぎ、だいたい各地の点灯が終了した模様だ。
今日のカメラは2台、一眼がPentax K-5+FA31/1.8 Limited と、
コンパクトが Fujifilm XQ1 だ、中でもK-5は、最大ISO51200と
高感度が使える一眼である。まあ、他の最新鋭機種では、ISO10万、
20万あるいは40万という超高感度機もあるが、それらはまだ高価だ。
K-5であれば、中古で3万円前後と、極めてリーズナブルに高感度
を用いることができる。
ただ、今回、K=5では表示(絞り、シャッター速度、ISO)が
同時点滅するという不具合が発生した、いちおう写真は撮れて
いるのだが、何かの故障か?と気になる。 特に今日は台風通過
直後後で湿度が異常に高く、カメラもなんだかベットリした感触に
なるほどなので、そのあたりの水分による不調かと思い、経験的には
乾かすと正常に戻るので、あまり撮らないようにしていた。
帰宅後、取説を読んでもこの症状は記載されていなく、測光範囲外?
という噂もあったのだが、せっかくの高感度カメラで、多少暗い
くらいで測光範囲外になってしまうようだったら、最大の長所が
相殺されてしまう事になる。まあ、K-5は途中から復活したので
また使用を再開したのだが、原因が、暗くて測光範囲外だったのか、
あるいは湿度などによる一時的な不調だったかは定かではない。
ちなみに、FA31/1.8は、FA Limitedシリーズで最後(3番目)
に発売されたレンズだ。前2作(FA43/1.9 , FA77/1.8)が大変
優れたレンズだったので、高価ではあったが購入したのだが、
正直、コストパフォーマンス的には、前2作ほどではなく、
購入後も滅多に使用することもなかったのだが、防湿庫のこやしに
するにはあまりに勿体無いので、今日は特別に出動となった次第だ。
DAタイプではなくFAタイプなのでフルサイズ対応だ、銀塩PENTAX 、
あるいはマウントアダプターを介して他社フルサイズのデジタル一眼
でも使用できる、ただ、31mmという焦点距離は、APS-Cセンサーで
換算約50mm程度の画角の標準レンズとなるので、APS-Cで使うという
のも有効な利用方法だ。
撮影には勿論三脚は使わない、こうした70万人も来場するような、
混雑するイベントに三脚を持ち込むような非常識なビギナーカメラマンは
最近ではかなり減ってきているのだが、まだ多少は見かける。
勿論殆どの点灯地域で三脚使用は禁止されていることは言うまでもない。
そして、近年は、スマホ、携帯のカメラで撮影する観客が増えたことで、
”フラッシュパカパカ”が減ったことも良い傾向だと思う。
従来の銀塩コンパクトや、コンパクトデジカメ、あるいはフルオートで
のモードで撮る一眼レフでは、暗い被写体だと自動的にフラッシュが
炊かれてしまう、そのため、こうしたライトアップイベントで、フラッシュ
の消し方が分からず、あるいは、フラッシュを使ったら何も写らない事を
知らない観光客が次々にフラッシュをパカパカと炊いてしまうのだ。
たまたまそっちを見ていたら、いきなり目の前でフラッシュを炊かれる、
これは大きなマナー違反だ、喧嘩になってもおかしくない。
ところが、スマホや携帯のカメラには、フラッシュが搭載されていない
ので、こうしたマナー違反(あるいは無知)は減ってきているのが、
嬉しいところ。まあ、近年のスマホカメラは、ISO感度が12800程度も
ある模様なので、フラッシュ無しでも問題なく写る。
ちなみに、フラッシュを使うのは、スローシンクロ(夜景ポートレート)
の場合のみだ、これは、前景に人物を立て、背景にろうそく等の光が
写るように、シャッター速度を落としたフラッシュ撮影の事で、
たいていのカメラにはそのモードがついている。ただし、そのモード
の意味、そして設定、フラッシュの光量調整、手ぶれ対策、マナーへの
配慮など、いくつもの知識や技術が必要なので、初心者には使うのが
容易ではないモードではあろう。そういう写真が撮りたい場合は、
そうした状況で、何度も何度もトライして技術や経験を磨くしかない。
ということで、こちらもコンパクトデジカメ XQ1を主力カメラとして
ISO感度を手動で 明るさに合わせ 2000~5000程度の範囲に調整しつつ
撮影を行う、ちなみに AUTO ISO の上限は、このカメラではISO3200
なので、状況によっては厳しい、シャッター速度を見て、かつマイナス
露出補正をしてもシャッター速度が足りない場合は手動で感度を上げる。
マイナス補正は、構図内に暗い部分の面積が広い場合、露出計が
暗いと判断し、より明るくしようとして結果的に写真が明るくなり
すぎる誤差の補正だ、加えて、絞り優先モードでシャッター速度を
速める「擬似増感」の効果も得られる。
この燈花会イベントが始まった15年前は、まだフィルムの時代であった、
ISO感度が400か、せいぜい800のネガフィルムを、EOS-1やPENTAX LXに
入れて、少しでも明るくと、F1.4や、F1.2の大口径標準レンズをつけて
持ち出したのだが、それでも、シャッター速度は、数分の1秒程度
にしかならず、撮った写真は、ほとんどブレブレであった。
現在は、それらの銀塩一眼レフよりはるかに安価な価格で、
感度51200+手ブレ補正といったカメラが使えるのだから、時代は
変わったものだ、と思う。
浮雲園地→浅茅ケ原→浮見堂と、駅方面に戻るようにしながら見物を
続ける、時刻は午後7時半過ぎ、このころになると、前述のように
「午後7時前に奈良駅到着→会場へ」という、一般的なルートを
取る観客が増えてきた、観客の増加で警備体制も厳しくなったのか、
例の「一方通行」モードが発動された模様で、観客たちは、まるで
上野動物園に初めてパンダが来たときのように、ゾロゾロと列を
つくって進んでくる・・
各地のろうそくの数は例年に比べ非常に少ない、勿論台風の影響
だからしかたないが、それでも、イベント開催開始当初は、もっと
広い範囲にろうそくが点在していたと記憶しており、それでは勿論
点灯や後かたづけも大変だろうから、近年は、いくつかの会場に
集中的にろうそくを固めてしまう方針になっているように見える。
運営上はその方が楽なのだろうが、こうなると、その地点に観客が
集中するから、混雑感が強く、次の会場までベルトコンベアー式に
順路を運ばれていくだけで自由度が無く、顧客満足度は減ってしまう。
「もうそろそろこのイベントも潮時かなあ、来年は見物をやめよう」
とも最近はよく思うのだが、1年お休みしても、その翌年には、
また行きたくなってしまうのだ。
浮見堂会場を出たところで、駅方面から次々に向かってくる
観光客の列に正対する事を避け、裏ルートで戻ることにした。
こちらは新型の「鹿飛び出し注意」看板、従来から異なるパターンの
看板(交通標識)があったのだが、地元民は標識が無かったとしても
それは知っているし、それを知らない外からの観光客は、小さい標識
を見ても意味が掴めず、鹿が飛び出してきて慌てて急ブレーキを踏む
という状況が続いていた、私も、急ブレーキや接触という現場は
何度か見たことがある。恐らく日常的にそれは起こっているのだろう、
また、最近では、道路にも鹿のマークがペンキで描かれている。
裏道から到着したのは「奈良町(ならまち)」のエリアである、
一般的には殆ど知られていないが、ここにも燈花がある。
おまけに今日は台風の影響で非常にすいている、奈良町の道路を
歩いている観光客は皆無に近く、雰囲気の良い静かな夜の町の
燈花がほぼ貸切状態だ。
奈良町を抜け、猿沢池へ、このあたりは燈花会の会場であるから
さすがに観光客は多くなってくる、
写真は猿沢池近くの「率川船地蔵」
色々と言い伝えがあるのだが、このあたり一帯にあった元興寺関連の
施設という話も聞く、奈良の観光人力車も、ここで止まって乗客に
なにやら説明をするくらいなので、名所になっているのだろうと思う。
ただ、昼間はともかく、夜に見ると、少々不気味だ。
さて、猿沢池より近鉄奈良駅は、東向商店街を抜ける道を通り、
さほど遠くはない。
時刻は午後8時半、混雑するイベントであるから帰路が心配に
なるだろうが、この時間帯ならまず問題は無い、おまけに今日は
台風だったので、帰路、大阪(三ノ宮)方面、あるいは京都方面
に向かう近鉄電車は、いずれも、がらがらにすいていた。
ちなみに、車での来場は駐車場の確保の点で難しい、
混雑する日は、恐らく駐車可能な場所は、会場の一番遠い所から
2km以上離れたところになるであろう、もっとも、燈花会の
会場自体も範囲1~2kmにわたって分散しているので、車で来た
からと言って会場近くで降りて、近くを見学して戻る、という訳には
いかない。最低でも4~5kmを歩いても体力的に問題ないので
なければ、あまりおすすめできないイベントではある。
電車で来る場合も、午後6時半~7時に(近鉄/JR)奈良駅着、
会場を順次順路どおりに巡って、点灯終了まぎわの9時半ごろに
会場を後にして、10時~10時半の電車で戻る、というスケジュール
は、最も混雑するパターンにハマってしまう。このケースだと最初から
最後まで、常に混雑の中に身を寄せる事になる。おまけにこれでは
食事をするタイミングも逸してしまう。
燈花会はたいへんロマンチックなイベントなので、デートに利用する
カップルも多いとは思うが、もし、こうした平凡なスケジュールを
立てると彼女を疲れさせるばかりになって逆効果だ。
さらに、もし浴衣に草履という服装で、人ごみで混雑する中を
4kmも5kmも歩かせたら・・
浴衣ではトイレに行くのも容易ではないだろうし、おなかもすくだろうし
車に戻るのも2~3kmは歩く、電車で帰るにしても混雑して座れない、、
・・まあ、まちがいなく彼女は不機嫌になり、場合により破局だ(汗)
デートのみならず、家族連れでもまったく同様だ、
子供や奥様を喜ばせようと思ったのに「もう帰る~」と冷たい反応(汗)
これはイベント見物の手法そのものに工夫が無い、という事が問題だ。
だから、スケジューリング企画力というのが非常に重要なポイントに
なる、何も考えずに、ただ流されるままにイベント見物に行ったら
(これが、まさしく「イベント・ドリブン」状態だ)疲れるばかりで
何も良いことはない、せっかくの夏休みの楽しい思い出が台無しに
なってしまうであろう・・
何をするにしても、知恵を働かせるのは必須なのだ。