さあ、国内最長の1000mという距離で争われる、ドラゴンボート
大会、"びわこ1000m選手権大会”の日がやってきた。
比較的歴史の浅い大会だったよな・・と思っていると、もう既に
7回目だと言う。関空大会同様に、月日の経つのは速いものだ。
聞くところによると、以前、滋賀県ドラゴンボート協会が、
海外の大会の視察に行った際、海外では1000mや2000m、
中には5000mといった長距離レースが良く行われている事が
わかったという。
国内大会は、現在では200mないし250mの短距離の大会が
ほとんどであり、長い方では、びわこペーロンが400m、
堺泉北港大会が500m。
・・そういえば以前の天神大会も500mだった(現在は250m)
それから、相生ペーロンが600mだ。
で、滋賀県協会では、(長距離の多い)海外にも通用する
チームを育てようという目的で、この1000m大会をスタート
させる事となった。 それが7年前の話だ。
1000mという長距離のレースを実現させる場所はあまり多く
無いと思われるのだが、幸い、琵琶湖には、歴史のある
”朝日レガッタ”等の開催場所として著名な、瀬田の
”琵琶湖漕艇場”がある。
7回の大会はすべて見て(撮影して)いるのだが、幸いにして
この大会は天候に恵まれることが多い。
記憶にある限りでは、数年前、大会開始直前まで酷い雷と豪雨の
回があったが、開会式の始まるころにはすっかり天候は回復した。
また、昨年は台風12号の通過翌日で、瀬田川の水門(南郷洗堰)
を開けた為、水流がとても速く、とんでもない記録が出たのだが、
この時もまあ、雨は降っていなかった。
ここのところ毎日のように関西地区を襲うゲリラ豪雨や異常気象。
今年は、そうした悪天候の影響で、滋賀県ではドラゴンキッズ大会と、
グランドシニア大会は中止になり、びわこペーロンは中断短縮となった。
そうした事から”今年の琵琶湖大会は荒れる”と囁かれているのだが、
幸いにして今日は天気は持ちそうな気配だ。
さて、開会式が始まった。
選手宣誓は、地元大津市の「池の里Lakeres!」
ご存知、最強の”町内会チーム”であり、ここ滋賀県のみならず
日本選手権(天神)大会で2年連続決勝出場など、もはや全国区で
活躍する強豪チームだ。
開会式が終わると、次々とレースが行われていく。
今日の大会のカテゴリーは、男女混合とオープンの2つだ。
出場チーム数はあまり多くなく、小規模の大会なのだが、
その代わり出ているチームはいずれもベテランの強豪チーム
ばかりで、見ごたえのある大会になりそうな予感がする。
選手達のボートに次いで、警戒艇(レスキュー艇)がスタート。
今日の天候および出場チームの実力からすると、危険は
あまり無いとは思うが、それでも”荒れる琵琶湖”(?)だ。
運営側も万全を期している。
ドラゴンボート大会は、どの大会もいつも、手馴れたスムーズな
運営で見ていても心地よい。
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さて、1000mという長距離のレースのタイムだが、混合カテゴリー
では5分前後、オープンでは4分30秒前後となることが予想される。
これは、通常の200m短距離のタイム、混合1分、オープン50秒台
を単純に5倍したタイムと、ほぼ同じだ。
ドラゴンの艇(ボート)はかなり重い為、スタート直後はやや遅く、
それからしばらくしてトップスビードの約時速16km前後に到達する。
そのため、中距離または長距離の大会でも、全体にペースダウン
する分と、スタート時の遅さの分とが相殺されて、200mのタイムを
距離に応じて倍すれば、だいたいのゴールタイムとなる。
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さて、まずは、混合カテゴリーの部の出場チームを順次紹介して
いこう。
まずは、「すいすいコロンズ」
京都の「すいすい丸」のメンバーに和歌山県選抜の「コロンズ」が
加わっている。
「コロンズ」は通常の大会では聞きなれない名前だろうが、
和歌山県の強豪チーム「もっこりドラゴンボート部」や「熊野水軍」
等による合同チームが琵琶湖の大会に遠征する際のチーム
名であり、この1000m大会や琵琶湖スプリント大会で多数の
入賞経験がある。
すいすい丸とコロンズが合体したことで、今日の混合カテゴリーでの
注目チームとなっている。
その「すいすいコロンズ」のレースの模様を録画しようという、
「すいすい丸」の控え選手。
最近のドラゴンボート大会では、自身のチームや他の強豪チーム
のレースの模様をビデオ撮りして、色々と研究したりする事が多い。
ただ、この大会は1000mという他には無い長距離だ、ビデオカメラを
最大望遠にズームアップしても、レース前半はおそらくボートは
豆粒くらいにしか写らないであろう・・
ちなみにデジタルカメラによるスティル写真(注:”スチール写真”
は誤り)の場合は、実用的な最大望遠の焦点距離はおよそ1000mm
(注:銀塩35mm判換算、以下;銀塩換算)程度だ。
こうした超望遠カメラは、例えば、近年のレンズ一体型高倍率ズーム機
(コンパクトデジカメの一種)がおよそ600~800mmを実現している。
ただし、これらの多くは、撮像素子のサイズを小さくすることで
(つまり写る画面が小さいから)結果的に超望遠を実現しているので、
例えば明暗差の大きな被写体などでは、撮像素子の大きい一眼レフに
対して写りは若干不利になる。
一眼レフでは、400ないし500mmクラスの望遠レンズを、APS-C
サイズあるいはマイクロフォーサーズ級の撮像素子を持つカメラに
装着し、銀塩換算600~1000mmの超望遠撮影を実現できる。
ただ、1000mmでもさすがに1000m先の被写体(ボート)を撮ることは
遠すぎてできない。結局、200m以内位までボートが近づいてきてから
撮るので、実際の撮影では、さほど望遠でなくても良いのだが・・
さらについでの話だが、望遠ズームを持って撮影をしていると
「それ何倍ズームですか?」と聞かれる事がある。
”何倍”というのは、実際には”ズーム比”の意味であり、
望遠側(端)焦点距離を広角側(端)焦点距離で割った値の事だ。
例えば望遠が720mm、広角が24mmであれば、これは30倍ズームだ、
これは元々ビデオカメラの場合の用語で、スティルカメラでは
従来は、この言葉は使われることが無かった。
スティル用レンズで、例えば70mm~210mmの望遠ズームは
3倍ズーム。
しかし、24mmから72mmの標準ズームもこれもまた3倍だ、
私が良く使う200~400mmの超望遠ズームは僅かに2倍ズームだ。
24mmからの10倍ズームよりも、超望遠2倍ズームの方が大きく写る。
これでは何が何だかわからないので、かつては絶対と言っていいほど
スティルの世界では”何倍ズーム”とは言わなかった。
ただ、近年では一部のメーカーは、コンパクトデジカメラなどで
”何倍ズーム”などカタログに書いてある事が多い。
何倍と言われても、ほとんど意味の無いスペックなので、こういう
情報は無視して、広角が何mmから望遠が何mmと、ちゃんと仕様を
見てからカメラを買うのが良いと思う。
さらにちなみに、あまりズーム比の倍率を大きくすると、レンズ
設計に無理が出てきて、望遠側の開放F値が暗くなったり、写りにも
色々な影響が出てくる場合が多いので、スティルカメラでは、あまり
ズーム比を欲張らない方が賢明だ。
それから、ドラゴンボートの撮影に限って言えば、望遠側の開放
F値は5.6や6.3、ないしは8.0などの暗い値であっても、晴天で
あれば、あまり関係は無い。
完全な晴天(ピーカン)の時では、絞りF8でも、ISO感度を200~400
に設定すれば、およそ1/1000秒のシャッター速度が得られる。
これは銀塩換算で1000mm迄の望遠においては、手ブレ限界である
”焦点距離分の1”のシャッター速度を超えるので、三脚はもとより
手ブレ補正機能もいらない状況となる。
・・とは言え、雨天の場合や日没が近い時でもドラゴンボート大会は
行われるので、そんな時は望遠レンズの開放F値は明るければ明るい
ほど良いのであるが・・
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寄り道が長くなったが、次なるチームの紹介。
兵庫教育大チームだ、OBの森本愛美(まなみ)さんも来ている。
天神、関空大会などで活躍している強豪チームだが琵琶湖の
大会への出場はちょっと珍しい。
ところで、ドラゴンボート大会ではお馴染みの兵庫教育大だが、
そういえば、いったい何処にあるのだろう?
メンバーに聞いてみよう。
兵「え~と、兵庫です!」
匠「(ズデッ・・)それは知ってますよ。
神戸? 明石? それとも相生なのかな?」
兵「加東市です。」
う~ん、加古川の近くかな・・・??
多分、車で一度通ったことがあると思うけど、そのあたりの
場所の事は、あまり良く知らない(汗)
こういうときは話題を変えて・・
匠「そうなんですか。 え~と今日はG教授は来ていないの?」
(G教授とは、ドラゴンボート部の顧問の先生だ)
兵「はい」
匠「いつもの力を出せば、今日はいいところまで行くと思いますよ、
がんばってくださいね」
兵「本当ですか? ありがとうございます」
兵庫教育大、私は行けると思ったのだが、後で意外な事となる・・
こちらは「フォーティーズ」だ。
最近、積極的に各地の大会に参加している。
匠「40代のアラフォーのチームなんですか?」
フ「あはは、そんな事は無いのですが・・
いや、やっぱりそうかな?」
・・とは言っているようだが、40代らしきオジサン選手はともかく
20代の若い女性も沢山参加しているようで(まあ、混合カテゴリー
参加であるから、20人の漕ぎ手中、8人以上の女性がいるのは
当然なのだが)結局何ゆえにフォーティーズなのかは聞きそびれた、
今度詳しく聞いてみよう。
匠「おっと、”師走の会”さん、お久しぶり!」
師「こないだも、びわこペーロン大会で会ったじゃあないですか、
それに、匠さんのびわこペーロンの記事で、途中まで師走の会の
話が思わせぶりに書いてあって、決勝進出した話が出るのだと
期待していたら、最後”大阪から参加の師走の会”だけしか・・
決勝で活躍した、とか書いてもらえなかったし、
で、そもそも大阪から来てませんしね(怒)」
匠「あはは~ 京都でしたね! 間違いでした、すんませ~ん」
(ちなみに、京都人には、大阪人と一緒に扱われることを極端に
嫌う文化がある、なにせ京都は1200年の歴史を誇る古都だし・・
歴史が浅く、県(府)民性も大きく違う大阪と、京都を
同じように見られてほしくないということなのであろう。
ヤバイヤバイ、こういうときは話題を変えるに限る・笑)
匠「で、今日は師走の会は、GPOさんと合同なんですか?」
師「はい、師走のPO(ぽ)です」
匠「GPOさんは滋賀県でしたかね?」
G「まあ、基本は滋賀ですが、他からも色々と・・」
匠「そうですよね、大阪・関空飛龍から来ているメンバーも
いらっしゃいますしね。
ところでGPOの意味は、確か、ゴールド、パワフル・・
Oは何でしたかね?」
G「オレンジですよ」
匠「・・え? そうでしたか? なんでオレンジなの?」
G「よくわからないんですよ、結成時からの名前なので」
匠「ところで、GPOさんが始めた、ナンバー入りのユニフォーム、
最近はいくつかのチームでもやっているみたいですね。」
近年では、印刷の世界もコンピューター化が進んできているようで、
”オンデマンド”等と言われるPCで制御されたプリンターを用いて
たとえば同じデザインのTシャツで、その一部のナンバーだけを
順次変更して印刷する等が容易に出来るようになっている様子だ。
こちらは、大阪のチーム「風KAZE」
「風」は、大阪府ドラゴンボート協会(ODBA)の運営上の
中心的チームであり、ドラゴンを良く知るベテランメンバーが多く、
大阪で行われる各大会では、スタッフとして見事な運営手腕を
発揮している。まあ、そうした事情だからか?大阪の各大会では
チームとしての戦績はあまり振わない。
しかしながら「風」は、琵琶湖の大会との相性は良い模様で、
昨年のびわこスプリント大会では、地元強豪の「琵琶ドラ」を
抑えて、混合の部で準優勝の好成績をあげている。
琵琶湖の大会では、滋賀県ドラゴンボート協会および、滋賀県の
主なチーム(琵琶ドラ、池の里、小寺製作所、師走の会、GPO等)
が運営スタッフとなるので、「風」は大会運営の負担から開放される、
そのあたりが好結果に結びつくのかも知れない。
こちらは各大会で、お馴染みの「TEAM BANANA」
本当に様々な大会に出場しているのであるが、いったい
いつ頃からドラゴンボートをやっているのだろうか?
かなりの古参(ベテラン)チームには違いない。
しかし、こちらの「BANANA」も、「風」同様に表彰台には恵まれない。
私が覚えている限りでは、「BANANA」が入賞した大会の記憶は無く、
いつも勝敗よりも、大会に参加する事を純粋に楽しんでいる印象だ。
だが、今回の大会では「BANANA」も健闘し好結果を生む・・
その様子は追々述べていくこととしよう。
混合カテゴリーの1回戦がどんどん進んでいる。
今回の1000m大会は、トーナメント方式ではなく、2回戦方式だ、
2回戦方式は、2度のレースの合計タイムで順位を決定する。
これは参加チームが他のメジャー大会程多くない、という事情も
あるのだが、特にこの1000m大会は、長距離であるがゆえに、
体力的に何度も漕げない、という事も2回戦方式の理由の1つと
なっている。
なにせ1000mのスタート地点まで行って帰ってきて往復2km、
これを3本も4本も漕いだらヘロヘロになってしまう。
かつて、この大会で「スピリッツ」チームだったか?の若手女子
選手が都合4本、往復8000mを漕いで平然としていたのを見た
ことがあるが、若く体力のある選手ならともかく、オジサン達は
まあ、2本か3本が限界という様子だ。
レースの模様を記録する選手。
近年では、デジカメでも動画撮影が出来るので、その機能を
活用する人も増えてきている。
またカメラの余談になるが、動画撮影では、動く被写体を捉える
場合、そのビント(フォーカス)、被写体の明るさ(露出)、ズーミング
(画角)が動画とともに連続的に変化する(させる)必要がある。
しかし、ビデオカメラに比べ、デジタル(スティル)カメラでは、
そのあたりのAF(ピント)、AE(露出)、画角(ズーム)のコマ毎の
追従が、カメラの機能的に、まだ不完全な(動かない)場合も多い。
最新機種などではそうした機能も搭載されてきているので、
もう数年たてば、デジカメでも動画撮影中に様々な機能が動作する
ようになるとは思うが、現状ではまだ技術的には未完成の状態だ。
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混合予選第一組のレースだが、ここでは注目の「兵庫教育大学」が
出場する、対戦相手は「師走のPO」と「風」だ。
私は兵庫教育大学が逃げ切ると思っていたのだが、レース開始直後、
どこかのチームの艇が大きく蛇行、他の艇とぶつかりそうになっている。
ただ、その模様はおよそ800m先だ、肉眼はもとより望遠レンズでも
何が起こっているのかわからない。
その後も、蛇行したチームは、右へ、左へと迷走しながら、まっすぐ
進まない様子。
匠「これは舵(の問題)だな・・」
蛇行は、ドラゴンでは珍しいことではない。舵とりは簡単そうに
見えて、高い技術や経験を必要とする難しいポジションなのだ。
スタートから、およそ600m地点、見えてきたのは「師走のPO」チーム。
遅れた位置からそれを猛追するのが「風」
「風」は「師走のPO」にあと3秒まで迫るがおよばず2着。
迷走していたチームは「兵庫教育大」であった、意外な結果だ。
で、「風」は、「兵教大」と接触しそうになり回避、一度失速状態に
なってから、レースに復帰、ある程度まで「師走のPO」を
追い上げたのだが、及ばなかったようだ。
”進路妨害”が適用されるかどうか微妙なところだったのだが、
「風」への影響は軽微と見て、レース成立となった様子だ。
「兵教大」は、通常のタイムの約2倍の9分もかかって、ようやく
ゴール。
帰ってきた「兵庫教育大」メンバーに様子を聞く。
兵「はい、スミマセン、深く反省しております・・・」
匠「まあまあ、それはさておき、いったいどうしたの?」
兵「ウチのチームは、ほとんど漕ぎ手の練習ばかりしていて、
いつも舵取りは、”協会”より派遣してもらうのですが、
今日は練習がてら、自分達で舵もやってみようかと・・
匠「それで迷走ですか、まあ、しかたないですね」
兵「風さんのボートにもぶつかりそうになってたりして・・
いや、ほんとに反省しています」
匠「ま、大幅のタイムダウンなので、今日の大会ではもう結果を
出しにくいと思うけど、また別の時にがんばってくださいね」
その時、大会本部からアナウンスが。
本「兵庫教育大チームの代表者の方は本部まで起こし下さい。」
・・ああ、大目玉かな?(笑)
いや、まあ、実際には「舵を派遣する」と言う話だと思うけどね。
チームメンバーは結構落ち込んでいるかな?と思いきや、
次のレースが始まるころには、すっかり元気になった様子で
いつもの明るい「兵庫教育大」のメンバーだ。
1レース目のロスタイムが響き、結果、最下位になってしまったが、
まあ、また別の大会で元気に活躍してもらいたいと思う。
しかし、1000mという長距離は、なかなか、選手には負担を強いる
過酷なレースのようだ、帰ってくる選手達は、一様に「しんどいよ~」
と言っている。ただ、本当に疲れていたら、口も聞けないだろうし、
表情にもまだまだ余裕があるようだ。
さて、すっかり長くなってしまったが、次回後編では、
混合カテゴリーのレース結果、それと今回まったく紹介できなかった
オープンカテゴリーの部の参加チームや勝敗についても書いていく
ことにしよう。
以下、後編につづく・・・