まず写真を見てもらおう。【匠のデジタル工房】得意の完全同一構図による手持ち2枚撮り。
2枚の写真は、ホワイトバランスを変えて撮っている。
左: IXY Digital L f2.8 ISO200 1/50秒 -1/3EV 200万画素 「オートホワイトバランス」
右: IXY Digital L f2.8 ISO200 1/50秒 -1/3EV 200万画素 「白熱灯ホワイトバランス」
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「色が違うのはわかった、そもそもホワイトバランスとは何ぞや?」
・・文字通り、白を白く写し出す事である。
「今までの銀遠(フィルム)カメラにはなかったぞ」
まあ、それはそうである、ネガフィルムの場合には、DPE店のオートプリンター、あるいは
熟練の店員の技により、ホワイトバランスは1枚1枚プリント時に調整されていた。
以下余談:
1)DPEプリント写真の裏を見ると、NNNN あるいは 0000などと書かれている、
これはCMYKである。すなわち、シアン(青)、マゼンタ(赤)、イエロー(黄)、
そして濃度Kを意味する。
Nまたは0はノーマルつまり未調整、1とか2とか-1とか書いてあったら調整済みである。
2)フォトマスター検定等で、RGBやCMYKは出題されるので受験者は覚えておく必要がある。
語呂が良い「YMCA」と混乱するので注意(笑) 正解は頭が「CM」と覚えておけば簡単!
余談終わり;
そして、昼間は普通に太陽光であるから、正確には「デイライト(昼光色)」タイプ
と言われる普通のフィルムでは、特に色味がおかしくなるという問題は発生しない。
また、暗い室内や雰囲気のあるお店の中での撮影も、99%の人はフラッシュを使うので、
フラッシュの太陽光に極めて近い色味の撮影では、昼間と同じ色を出す事ができた。
それでも、中には、高感度フィルムを使ったり、大口径レンズを使ったりして、
宴会の写真等をフラッシュ無しで撮る人もいただろう、でもそんな写真は間違い無く
オレンジの色がかかった色味になっている。
さすがに、ノン・フラッシュで撮るような人ならば、オレンジ色の写真が白熱灯の仕業で
ある事は理解しているから、DPE店のオートプリンターが対応しきれない・・・
(理由の1つは、ある程度の調整しかできない事。もう1つは、あえてそんな雰囲気の写真
が撮りたかったかどうかは、撮った本人で無いと判断できない事から)・・・場合において
も色味に文句を言うはずもなく、
「よしよし、いい雰囲気だ・・・」とか満足して、
さて友人にその写真をあげたとしよう、 すると、写真を知らない友人は
「なんだこの赤い写真は! オレ、そんなに酔って赤い顔していたのか?
オマエのカメラ変な風に写るな!」
・・とか怒って、写真を進呈した方もがっかりするのである。
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あるいは、会社の中で写真を撮る場合、やはり中級者以上だとノンフラッシュで撮る、
今度は、写真が緑色がかかってしまう。 これは、白色蛍光灯の色の仕業である。
また今度は、雰囲気のある公園とか、桟橋なんかでノンフラッシュで撮る、
こんどは青緑色である、これは水銀灯の色の仕業である。
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ネガなら、まあ、プリント時に多少は色調整もできる。
しかし、ポジやデジタルは撮った写真の色をそのまま使うため、何もしなければモロに
その場所の照明の色が写真に出てしまう。
「今まで回避する手段は無かったのか?」
1つだけある。タングステン・タイプ、というフィルムを使う事である。
これは、白熱灯用の色味に合わせている、写真電球とも呼ばれるこの照明はオレンジ
かかった色をしているので、フィルムはそれを打ち消すために、青が強くでる仕組みに
なっている。(タングステンは白熱灯のフィラメントに使われる素材(元素)の事)
だから、タングステン・フィルムを昼間、あるいはフラッシュを焚いて使うと、
青色の写真になる。間違えて買ってきて使ったり、カメラに残っている状態で光線条件を
間違えて使うと、文字通り「真っ青」(汗)になるフィルムである。
「変なフィルムは、それ一種類しかないのか?」
その通り。通常はタングステンの1種類しか無い。不便なようだが、まあ色々な照明に
合わせて様々な製品を作っていたらきりが無い。
たとえば「山田さん家の台所照明用」とか「喫茶ルノアールの1階窓際用」とか、
「山之内公園のベンチ用」とかそれぞれ作っていたら大変な事になってしまう(笑)
「じゃ、実際に”四菱商事”の受付嬢をフラッシュ無しで撮るときはどうしてたんだ?」
いい質問である。そんな場合は、LB(ライト・バランシング)とかCC(カラー調整)と
言われる色付きのフィルターをカメラのレンズの前に取り付けて撮影していた。
しかし、これはカラーメーターと呼ばれる、やや特殊な、露出計のような機械を使って
その場の照明の色味(=色温度)を測定したりする、プロの領域の撮影技法であった。
だが、フィルム時代のプロでもそんな面倒な事は滅多にしない。
フラッシュをポンと焚いてそれで終わりである、いつでも間違いなく同じ色味で撮れる。
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しかし、デジタル時代。フィルムを入れ替える事ができない事は、逆にホワイトバランス
設定をカメラ側にきっちり搭載する必要が出てきた事を意味する。
「山田さんち家の台所・・・」とは言わないまでも、様々な光線状況にきっちり対応
できるようにしておかなければならない。 幸いデジタルの世界であるから、
調整しなければならない事が明らかであれば、それがタングステンの1種類しかなくても、
あれやこれや10種類あっても、(カメラから見た)調整の手間はあまり変わらない、
だから、ホワイトバランスを連続的に、または段階的に調整できるようにしてある。
こんどは使う側の問題が出てきた。いちいちその場の状況にあわせて、やれ、これは
水銀灯だろうか? それともナショナルの白色蛍光灯? あるいは東芝の昼光色蛍光灯?
なんて考えていたら写真などなかなか撮れやしない。
だから、デジタルカメラには、概ね6種類くらいのホワイトバランスの調整方法が
混在する事となった。
(例によってメーカー間の統一性の無さで機種により用語が微妙に違うという不親切がある)
①オートホワイトバランス型
もう貴方は何も考えずにカメラにまかせておきなさい! っていうやりかた。
まあ、99%の人はデジカメをこのセッティングにしている。 通常はそれで困らない。
カメラは、写真を撮る前に、その場の光線の状況を測定して、それに合わせて白を
きちんと白く出すように考えて設定をする。なかなか賢いが、これには2つほど問題がある。
1)厳密には被写体に白い部分が無いと、オートホワイトバランスはきっちり動作しない。
2)その場の雰囲気をどこまで残したいのか? そんな事はカメラは知るよしもない。
冒頭の写真を見てみよう。左のナポリタンはオートホワイトバランスで撮ったもの、
「う~ん、これはこれで、どこかの喫茶店かイタリア料理店で撮った雰囲気が出ていて
悪くないな。もし右の写真のように普通の色になってしまったら雰囲気出てないよ。」
って言う(思う)人もいるかもしれないし、
「いや、いくらなんでもここまでオレンジ色だと気持ち悪い、ちゃんとした色で写って欲しい」
って思う人もいるかもしれない。 でもどちらが良いかは機械には決める事ができない。
だから、オートホワイトバランスは、原理的には絶対に完璧にはなりえないし、
恐らくカメラの機種によっても微妙に味付けが違うと思う。
②色温度指定型
いちばん厳密なやり方である、これまで説明していなかったが、色味の違いは色温度
とよび、その単位はK(ケルビンと読む)である。
簡単には、虹の7色を思いおこしてみよう。 赤・橙・黄・緑・青・紫あたりだろうか?
え?6色しか無いってか?(笑)まあ、虹の7色も説によって色々と呼び方があるから、
そのへんはあまり厳密に考えなくても・・・(汗)
で、これを色温度に対応させると、赤っぽい色は(色)温度が低い。
逆に青っぽいあたりは、(色)温度が高い。 実際の炎の温度みたいなものである。
そして、だいたい赤のあたりは2000度(K)であり、中間の黄色や緑のあたりが5000K
くらいで、一番高い紫のあたりが7000Kくらいである。
代表的な光源と色温度をあげると、
ろうそく 2000K
白熱灯 3200K
夕焼け 3500K
白色蛍光灯4500K
太陽光 5500K
フラッシュ5500K
昼光蛍光灯6500K
雪景色 7000K
くらいになると言われている。
まあ、これは覚えるのは大変だから、あくまで「連続的に変更できる仕組み」とだけ
覚えておけば良い。デジカメだから何枚も撮ってみて、いちばん合う所を探したら良い。
それと重要な事は、この光源の種類に合った色温度にホワイトバランスを設定すると、
その時に、白は普通に白く写る。
もし、その光源よりも高い色温度に設定すると → 赤っぽく写る
逆に、その光源よりも低い色温度に設定すると → 青っぽく写る
③パラメータ(数値設定)型
色温度は入門者にはわかりにくい、という理由で +1 とか -2とかいう数字で
設定する方法である。 しかし、じゃ、+1がどれくらいなのか? ってのが分からない
為に余計に分かりにくい。また数値が等間隔に設定されているという保証も無い。
「+2にしました」と言われても、そのカメラを使っていない限り絶対にわからない。
ある意味、こういうユーザーインターフェース(操作系)は、上達を妨げる、
「余計なお世話」的な設計思想だと思う。
「初心者は数字なんかわかるわけ無い」というメーカーがユーザーを舐めた思想で
あるとも思う。こういう機能は絶対使わないように! 返金訴訟の対象である(怒)!
④条件設定(プリセット)型
よく用いられている方式である。
AWB(オートホワイトバランス)を外すと、このプリセット選択になる機種が多い。
ちなみにプリセットとは、「あらかじめ設定(セット)してある」という一般用語、
楽器でもパソコンでもTVでもラジオでもステレオでも電動ミシンでも、あらゆる分野で
使われる、つまり「常識」である。
こういう言葉の意味そのものがわからないレベルだとかなりヤバイ。精進するべし。
プリセットの種類は、機種によって異なるが、だいたい以下のようなものがある。
昼光、曇天、日陰、白熱灯、蛍光灯、フラッシュ。
また、それぞれを選んでから微調整できるような機種もある。
普通は、オートホワイトバランスでなければ、このモードで使うのが最も簡単である。
各プリセットの色温度がわかっていれば、もちろん②の色温度方式と何ら変わらない。
ちなみに、冒頭の写真右は、プリセットモードの「白熱灯」を使って撮影している。
⑤手動設定(マニュアル)型
「そんな事言っても、光源の種類がわからない時だってあるだろう!」あるいは
「いや、プリセットでも所詮は適当に決めているにすぎない、私は厳密に計りたい」
などと言う意見もあるだろう、もっともな話である。
そんな時は、これ、手動設定型(マニュアル・ホワイトバランス) (ドラエモンか?汗)
まあ、カメラにより多少やり方は異なるが基本はこうである、
まず、真っ白な紙を用意する、プリンターの用紙や広告の裏で十分である。
その白い紙が全体になるようにカメラに見せてやる(撮影する場合もある)、
「ほら、これが白い色だよ、これで覚えなさい・・」という方式である。
これは、あたかもカメラをペットのように訓練してあげるイメージがあって痛快である、
「カメラに人間が使われている」という意識も減って撮影意欲も増すであろう。
そして、さすがにこの方法は最強である、まず99%オッケーでバッチリの色が出る。
太陽光+蛍光灯のようにミックスされた光の場合でも全然問題無い、
けど、面倒である。まあ、さすがに1枚1枚写真を撮る前に設定する必要はなく、
ある光線状況においては1回だけやれば良いのであるが、それでもやはり面倒である。
もう一つ注意点がある。
「せっかくマニュアル・ホワイトバランスで完璧だと思ったのに白が灰色っぽく
くすんで写るんだよ。 なんだこれは、このカメラ壊れてやがる!」
・・・壊れているのは、その人の頭の方かもしれない(失礼!)
マニュアルWBを使うくらいのレベルの人であれば、露出計の原理くらいは知って
いるだろう。もっと簡単に言えば露出補正の原理である。
露出補正は、中級者以上なら百も承知の、写真技術の基本中の基本。
「白い被写体の場合は、プラスに露出補正しなければならない」
それを忘れていたら、いちおうホワイトバランスを取っても、白が白く写る事は無い、
白は灰色(反射率18%のニュートラル・グレイ)に写ってしまう。
ホワイトバランスを取ったことで、つい忘れてしまいがちな基本であるが、露出補正とは
まったく異なるメカニズムで動いているから、両方いっぺんに調整したというのは
大きな勘違いである。もちろんすぐ分かるとは思うが、いちおう注意しておくのが良い。
⑥ホワイトバランス・ブラケット
どうしてもダメな場合、わからない場合はこれである、ホワイトバランスを、ある一定間隔で
づらしながら自動的(連続的)に数枚撮影する。
後で見ていちばんその場の雰囲気の出ている写真を選べばよい。
フィルムカメラの時代からあった露出ブラケットと同じことである。
ちなみに、数十年前の写真家の門外不出の秘技は「露出ばらし」であったと言う、
何枚か撮って1枚を残して全部捨てるという発想は数十年前には
(経済的観点からも)ありえなかった、だからごく一部の写真家は、それを秘伝の技
の「絶妙な露出技法」として武器や伝説(名声)にしていたと聞く。
しかし、今、デジタルの時代、たとえ何枚か、いや十数枚をWBブラケットしたと
しても何の経済的なデメリットも無い、あとは適切なものを選ぶセンスが必要なだけ、
ちなみに、見た目通りが最適とも限らない、イメージした色に近いものが得られれば良い。
沢山撮ってその中から選ぶ事は偶然性ショットとは呼ばず、立派な撮影技術となりうる。
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以上である、ホワイトバランスについてきちんと理解できたであろうか?
だから、わからない人は、撮影時に、むやみやたらにいじくりまわすものでは無い、
変にいじくると、下手をすると、どんどん悪い方向に設定されてしまう。
そんなんで、たまたま良い雰囲気の写真ができたとしても、それはまさしく
いつも口を酸っぱくする程言っている「偶然性ショット」である。
意味もわからず設定した、再現性の無い偶然性ショットは、作品としての価値は無い。
ちなみに、撮影後においても、レタッチソフトを用いる事でホワイトバランスを
ある程度変更できる。
よって多少間違って撮影しても、まあ、さほどあわてる必要もない。
また、撮影時にあれこれ悩んで貴重な撮影時間やシャッターチャンスを消費するよりも、
どうしてもホワイトバランスを変更したいならば、後でじっくりレタッチソフトを
用いてするのが良い。その方が自由度も高く、厳密にじっくりと行うことができる。
この記事が参考になれば
☆ブログ人気投票☆(1日1回カチッ!・・Thanks!)
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以下は【玄人専科】である。
「RAWモードは撮影後のホワイトバランス変更に強い」と言って、RAWで撮る事を推奨
するプロもいるが、たしかにカラー階調の解像度がJPEGの8bitよりも高い12bitのRAW
でWB変更する方が自由度と精度が高いことは確かであるが、
高級レタッチソフトでは、内部的にカラー階調を16bitに拡張して、その後で
カラーバランス変更演算を行い、それを最終的に 8bitに圧縮するから。
まあ、下位4bitの計算精度が「丸め演算」後でも、ある程度反映されるか否か、という
点での差異にがあるにすぎない。
具体的な数値で言えば 64.0000x2=128.0000と、64.4375x2=128.8750 の
差程度である。
128の答えが 128になるか129になるかの程度であり、こと色表現に関しては、殆ど差異
は無いと思う。人間の目はそこまで色に対して厳密な精度は無い。
色の深度が広がって1670万色がRAWで687億色まで広がると,RAWを勧めるカメラ
専門誌もあるが、上位ビットから数えた人間の目の判断力のDレンジを無視したたわごとで
ある、まったく、デジタルの基礎もわかっていないでよくデジタルカメラが語れるものだ。
簡単に言えば、同じ4bitの差と言っても1mと16mの差を語っているのではく、
1mと、1.0002mの差を語っているのである。そんな細かい差はどっちでも一緒だろう!
よって、ブログ用、あるいはデジタルコンテンツ用などの限られた目的であれば、
カラー階調の4bit分の差による、WBの後変更の差異などはわかりようがない、
ましてや、WB変更など、連続して行う操作でもない、デジタル処理は連続して行う
と誤差が蓄積され画質が劣化するが、1度くらいではほとんど関係が無い。
よって、
○「RAWモードは撮影後のホワイトバランス変更に強い」は正しいが、
×「ホワイトバランスを後変更するならRAWでなければならい」は誤りである。