超初級編:広角レンズの特徴
広角レンズというのは、ただ単に
①広い範囲を写す(画角が広い)
ためのものでは無い。
広角レンズの他の特徴としては、
②遠近感を強調する(パースペクティブの誇張)
③奥行き全体にピントを合わせれる(パンフォーカス/被写界深度が深い)
がある。
具体的には、広角レンズで手前に小さい被写体を置き(作例では、怪獣のおもちゃ)
遠景に大きな被写体を置く(作例では、ビル)すると、遠距離のものはより遠距離に写るという
広角レンズの②の特徴から、両者のスケール感が同等になってきて、あたかも大型の怪獣が
街に出現したような画を撮ることができる。
さらに、③の特徴により、絞り込む(絞り値を大きくする)ことで、前景と背景の両方に
ピントを合わせることができる、但し絞り込むと(光の量が足りなくなるから必然的にカメラは)
シャッター速度が遅くなるので、この作例の撮影条件では、程ほどのところまでで留めて
おり、背景は少しボケている。
さてここからは、中級編であるが、
上記②のパースペクティブの誇張を行う為には、広角レンズの最短撮影距離はできるだけ
短いほうが良い、というか、短くなくては表現力の幅を阻害する事になる(もう少し寄りたい
のに、寄れない)
目標の最短撮影距離の目安は、フィルム、デジタルともに、そのレンズの焦点距離の10倍、
すなわち、20mmだったら20cm、28mmだったら28cm、である。mmをcmに変えるだけ
なので簡単に覚えられる。これ以下であればなおさら嬉しい。
さて、ここで初級~中級者が持つ代表的なレンズのスペックを見てみると、
28-200mmクラス、28-300mmクラスの高倍率ズームの最短撮影距離は、50cm前後
これは、望遠側で考えると非常に優秀な数値であり、マクロとも言える程の拡大撮影が
できるが、広角での目標値は、28cm以下なので、残念ながら広角撮影には適さない。
17-35mm/2.8-4級の普及広角ズームでも、30cm内外、超広角12-24mm級でも同様。
未発売のデジ一眼用11-18mm級でも、25cm前後。
大口径の17-35mm/f2.8固定級の超高級レンズでも28cm程度。
結論から言うと、広角ズームではどんな選択をしたとしても、期待する最短撮影距離は
得られず、思い切り寄った撮影はできない、ちなみに単焦点レンズであればこの限りでは
なく、超広角でも、20cm内外の近接撮影が可能なものも多数ある、というか当たり前の
世界である。
したがって、広角撮影に最短撮影距離の長いズームを使用する事は、単に画角を広く、
狭くと変化させている撮影技法しかできなく、パースペクティブの変化を用いた作品創り
には向かない。また、「初級からいつまでもこの事実を理解できないままのカメラマンが
大半である」ことは、非常に残念である。
ちなみに、デジタル一眼では、焦点距離換算が変化しても、フィルムと同様の
パースペクティブ誇張効果を得ることはできるが、残念ながら画角が狭くなる、
つまり中央だけトリミングしているのと同様の結果になる。
今後発売されるデジタル用の超広角ズームは画角的には待望であるが、
こうしたパース表現には、まったく向かないものであろう。
デジタル専用の10mm前後の超広角単焦点の登場を希望する。
私は、現時点では、デジタル一眼の広角の不足をカバーするために、GR等の
広角コンパクトを併用する事が多いが、これも、広角単焦点のデジタルコンパクト
ができてくれば、非常に有益に使えると思う。